「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
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2017年7月19日

有給取得の日、会社が変更できる?

▼Q 先日、私の会社の従業員から8月に年次有給休暇(年休)を取りたいと申請がありました。その頃は人手が足りず、勤務してもらえると助かるのですが、取得日を変更してもらうことは可能なのでしょうか。

▼A 労働者は、労働基準法が定める一定の条件を満たせば、年休を取る権利が当然に発生します。会社は取得を拒否できません。しかしその取得が「事業の正常な運営を妨げる場合」、会社側は取得日を変更することができます(時季変更権)。

変更が許されるケースかどうか機械的に判断できる基準はありません。過去の裁判例は(1)会社の事業の規模・内容(2)従業員の担当する職務の内容(3)業務の繁閑(4)代替勤務者を配置することの困難性-などを考慮して、個別に判断しています。

このうち(4)は特にシフト勤務(勤務割)の会社では重要になります。

最高裁は、勤務割の制度を採用している会社では、通常の配慮をしても代替要員の配置が可能でなかった場合、時季変更が許されるとしています。ただし裁判例の中には、会社側が人員不足の状態を長年放置していたような場合には、変更は許されないと判断したものもあります。

したがって、あなたはまず、代替要員を確保できるかどうかを適切に検討する必要があります。

事業者からの相談について、福岡県弁護士会は「ひまわりほっとダイヤル」で受け付けています。初回は無料。電話は、(0570)001240。

西日本新聞 7月19日分掲載(前園健司)

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