「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
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2013年8月7日

非嫡出子の相続、半分だが・・・/お茶の間学

▼Q 結婚していた前妻との間に子どもがいます。今の相手との間にも子どもがいるのですが、内縁関係です。私が事故などで突然死んだ場合、今の子に財産は残りますか。

▼A 民法の規定では、両親が婚姻関係にない子ども(非嫡出子)の相続する権利を認めています。もっとも、婚姻関係にある夫婦から生まれた子(嫡出子)に比べ、相続できるのは半分とされています。質問のケースも、前妻の子の半分ということになります。

しかしながら、両親が婚姻関係にあるかどうかによって相続分に違いを設けている民法の規定が、不合理な差別を禁止している憲法14条との関係で問題があるのではないか-と、かねてから指摘されてきました。

この点については、1995年に最高裁が、民法が一定の手続きによって婚姻が成立するとの立場を取っている以上、相続分に違いを設けるのは、あながち不合理とはいえず合憲であると判断していました。

しかしその後、事実婚やシングルマザーが増えた▽多様な家族のあり方がある▽国際的には相続分に差を設けない国が多数派となっている▽非嫡出子側が人としての価値まで半分しかないように受け止めてしまう-など、さまざまな理由から、もはや相続分に違いを設けることは合理的とはいえず、差別だとする意見も高まってきています。

最高裁は今秋にも、新たな判断を示すと予想されています。家族制度のあり方についての大きな価値判断がなされる時期が来ているとみることもできるでしょう。皆さんはどう評価しますか。

◆福岡県弁護士会の相談窓口案内=(0570)783552(なやみここに)。

西日本新聞 8月7日分掲載(栃木史郎)

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