「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
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2018年5月30日

「特定空き家」に指定されてしまったら?

▼Q 亡くなった両親が住んでいた家を長年空き家のままにしていたら、役所から「『特定空き家』に該当しており、そのまま放置すれば倒壊など、著しく保安上危険となるおそれがあるため、家を除却(解体)してください」という内容の勧告書が届きました。どうしたらいいでしょうか。

▼A 勧告は、空き家対策特別措置法に基づくものです。この法律は、空き家が適切に管理されていないために生じる防災や衛生、景観上の悪影響から住民を保護することを主な目的として、2015年5月に全面施行されました。市町村長は、空き家のうち、放置すれば倒壊の恐れがある家屋を「特定空き家」と認定し、所有者に修繕や解体を助言・指導することができます。

従わない場合、勧告という手続きに進みます。勧告対象になると、居住用家屋の敷地に関する固定資産税の特例措置も受けられなくなり、固定資産税が増額します。

ご質問のように勧告を受けた場合、空き家の管理が不十分なため倒壊などの危険性が高まっていると考えられますから、勧告書に記載の期限までに修繕や解体などの措置をとるべきです。

勧告も無視していると、行政から所有者に対し家屋の除却命令が出されることがあり、従わない場合には法に定める手続きを踏んだ上で、行政が代わりに家屋を解体してしまいます(行政代執行)。その場合、もちろん費用は所有者の負担となります。
空き家に限らず家屋を適切に管理する責任は所有者にあるからです。

西日本新聞 5月30日分掲載(田中文)

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