「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
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2016年4月13日

離婚の財産分与は事情考慮

▼Q 離婚協議中の専業主婦です。夫名義の自宅マンションは、夫が出ていき、私と子どもが住んでいます。夫婦の財産は自宅マンション(価値1千万円、ローン残高1300万円)と、預金200万円。夫は「マンションから出ていけ。自分がローンを払うから預貯金もマンションももらう」と主張します。子どもの預金まで取られるのではないかと心配です。

▼A 財産分与は、単純に足して2で割るものではなく「一切の事情」を考慮します。夫の希望だけが尊重されるわけではなく、あなたやお子さんの今後の生活も考慮されます。

専業主婦であればアパートなどを借りるのも難しいし、お子さんのことを考えて住み慣れた自宅マンションでの生活を希望されるのも分かります。このような例で、離婚後の妻や子どもの生活を考慮して、妻に自宅で生活を続けられるよう賃借権を認めた裁判例があります。

また、ローン残高が価値を上回る不動産がある場合に、ローンを夫に負担させて不動産を夫に与え、他の預貯金などの財産とは一緒に計算しないとした裁判例もあります。これが認められれば、あなたの場合は預金200万円を夫婦で分けることになります。さまざまな解決方法がありますので、一度、弁護士に相談してはどうでしょうか。

お子さんの預金は、夫婦が子ども名義でためたのなら財産分与の対象となりますが、お年玉やアルバイト代など子ども自身がもらったものなら、お子さんに残せます。

西日本新聞 4月13日分掲載(小谷百合香)

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