「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
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2016年11月23日

辞職に会社の承認は必要ない

▼Q 今の職場は毎日夜遅くまで残業があります。最近は夜もよく眠れず、心身共にきついので退職したいと思います。ところが上司に相談すると「辞めるなら会社に生じた損害を請求する」と言われました。私は会社の許しがないと辞められないのでしょうか。損害金を払わなければならないのでしょうか。

▼A 法律上、期間の定めがない労働契約の場合、労働者は2週間前か、就業規則で定めた予告期間に申し入れすれば辞職することができます。会社の承認は必要ありません。

他方、期間の定めがある場合は「やむを得ない事由」がない限り、雇用期間中に一方的に辞職できないのが原則です。この「事由」には、賃金不払いやパワハラ、相談者のような健康上就労が困難な場合が考えられます。

損害金については、期間の定めのない契約で予告をしないで辞めた場合や、やむを得ない事由がないのに雇用期間中に辞職する場合は損害賠償義務が生じる可能性はありますが、実際に賠償が認められた裁判例はかなり稀です。むしろ退職の際に損害賠償を請求するとして不当に退職を拒む会社の行為に問題があると考えられます。

最近ニュースでも過労死や過労自殺が大きな問題として取り上げられています。今の職場で働き続けることがあなたの人生を幸せにすることなのか、よく考えてみてください。そして今仕事を辞めるかどうか悩まれている方は、一度弁護士にご相談ください。

西日本新聞 11月23日分掲載(平岡芳隆)

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