「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
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2017年3月8日

夫と別居、当面の生活費どうする

▼Q 夫との離婚を考えています。まずは別居してから話し合いをしようと思っていますが、出産を機に仕事を辞めたので収入がありません。当面の生活費はどうすればいいでしょうか。

▼A 夫婦はお互いに扶養義務を負っているので、離婚を前提として別居した場合でも、収入の多い者(多くの場合は夫)は収入の少ない者に、同居時と同程度の費用を負担しなければならないとされています。これを「婚姻費用」といいます。

婚姻費用には衣食住などの費用のほか、子育てや医療にかかる費用などが含まれ、算定には、夫と妻の年収、子どもの数・年齢などが影響します。具体的には、家庭裁判所のホームページに算定表が掲載されているので参考にするとよいでしょう。

例えば、年収400万円の夫と専業主婦の妻との間に5歳の子どもが1人いて、妻が子と一緒に別居した場合の婚姻費用は6万~8万円となります。

ただ、この算定表は「実情に合わない」などの批判があったため、日弁連が最近、新しい算定表を作成しましたので参考になります。なお婚姻費用を支払ってもらえるのは「請求したとき」からです。別居したらすぐ請求することをお勧めします。ちなみに裁判所も日弁連も、離婚した場合の子どもの養育費を記した算定表も用意しています。

夫婦間の話し合いで額を決められない場合は相手に内容証明郵便などを出して請求し、それでも応じない場合は、家庭裁判所に調停を申し立てる方法が有効です。

西日本新聞 3月8日分掲載(今泉多映子)

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