「ほう!な話」

2017年8月16日

「ほう!な話」九州北部豪雨災害スペシャル版

福岡、大分両県に甚大な被害をもたらした7月の九州豪雨。生活面の法律Q&A「ほう!な話」(毎週水曜掲載)を担当する福岡県弁護士会の弁護士4人に、被災地に多い困り事への対処法や、支援制度の使い方などについて解説してもらった。

●流入土砂、誰が撤去?

▼Q
私の土地に、お隣から土砂やがれきが流れ込みました。誰の費用と責任で片付けるのでしょうか。住宅への被害はどうすればいいですか。

▼A
今回の九州豪雨のような大規模災害の場合には、不可抗力として、隣地の所有者が責任を問われることはないと考えられます。

すると、土砂などは自力で撤去することになりますが、災害救助法などにより、自治体が公費で撤去するケースがあります。どのような場合に撤去してもらえるかは法律で定められているので、自治体や弁護士に問い合わせてください。

自力で撤去する場合は、所有者が明らかなものを勝手に廃棄すると、不法行為責任(民法)を負うことがあります。まずは誰のものかを調べ、所有者が分かるものについては、許しを得てから撤去・廃棄すべきです。

住宅が「半壊」と判断されると、災害救助法の「応急修理」として、日常生活に必要な最小限度の部分を応急的に修理してもらえます。ただし「自らの資力では応急修理をすることができない」ことが要件です。「大規模半壊」はこの資力要件はありませんが、いずれの場合も期限や実施方法について制約があります。

自治体によっては修理業者を指定していて、自分で業者を頼んで修理した後に申請しても、自治体の支援が受けられないことがあるので、事前に相談してからにしましょう。

なお、住宅や家財道具の被害は、写真を撮るなどして後日確認できるようにしておいてください。

(植村康太)

●公的支援の内容は?

▼Q
土砂崩れに巻き込まれて自宅が倒壊し、住めなくなってしまいました。公的支援はありますか。住宅の倒壊で死亡したり負傷したりした場合は、行政から何らかの給付を受けられるのでしょうか。

▼A
7月の豪雨災害では、被災者生活再建支援法の対象地域として、福岡県全域と大分県日田市が指定されています。これらの地域では住宅被害の程度に応じて最大100万円の基礎支援金を、住宅再建方法に応じて最大200万円の加算支援金を受け取ることができます。

申請には被害程度を証明する罹災(りさい)証明書が必要なので、市町村に証明書発行のための調査を要請してください。

災害で亡くなった方の遺族には、災害弔慰金支給法に基づき、最大500万円が支給されます。持病が悪化したり、避難所生活で体調を崩したりして後日死亡したケースも、災害との関連性が認められれば支給対象になります。高度の障害が残った方には災害障害見舞金が用意されています。

自治体が条例などで定めた独自の災害見舞金もあり、福岡県では床上浸水から全壊までの住宅被害、重傷や死亡・行方不明の被害に最大各20万円を支給します。人的被害は法律に基づく弔慰金と重複して受け取ることはできません。

いずれも窓口は市町村で、申請したのに不支給となった場合や、被害判定や支給額に不満があるときは、弁護士などの専門家にご相談ください。 

(服部晴彦)

●弁護士会、無料の出張相談も

▼Q
災害について弁護士に相談したいのですが、どこへ行けば相談に応じてもらえますか。電話相談や出張相談はありますか。

▼A
福岡県弁護士会では県内17の法律相談センターで、面談による相談を無料で受け付けています。時間は60分です。

事前予約の際に「豪雨に関する相談」とお伝えください。予約は電話=(0570)783552(なやみここに)です。

無料電話相談も行っており、当面は土日も含む毎日午後1~4時に受け付けています。電話=092(753)6364。

各避難所へ伺い、直接悩み事の相談にも応じています。出張相談の開催は不定期ですので、避難所の掲示板などでご確認ください。

今回のような災害では、壊れた借家の修繕方法をめぐる家主との意見の食い違いや、流入土砂に関するご近所同士のトラブルといった、民事上の紛争も起こりがちです。こうした場合は、弁護士があっせん人となり、当事者双方の言い分を聞いて、話し合いで円満な解決を図る調停制度(災害ADR)もあります。

原則3回以内の期日で解決を目指すので、裁判より迅速です。詳細は天神弁護士センターの電話=092(741)3208にお問い合わせください。

弁護士会のホームページ=http://www.fben.jp/=や、公式ツイッター=@fben2016=などでも被災者向けの情報を提供しています。

(若林毅)

●ローンが払えなくなったら?

▼Q
自宅に土砂が流入し大規模半壊になりました。建て替えが必要ですが、住宅ローンが残っていて、子どもの教育ローンや自動車ローンもあります。ローンを払い続けながら、建て替えのため新たに借り入れるのは到底無理です。これからどうやって生活していけばいいのでしょうか。

▼A
「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」を利用することができます。災害の影響で住宅ローンなどの債務(教育・自動車ローンなども含む)を弁済できなくなった被災者は、一定の要件を満たせば債務の減額・免除を受けることができます。

ガイドラインの利用は(1)破産した場合などと違い「ブラックリスト」に載らず、将来の新たな借り入れも可能(2)一定の財産(最大500万円の現預金、家財地震保険金最大250万円、災害弔慰金など)を手元に残せる(3)無料で弁護士など「登録支援専門家」による手続き支援を受けられる-メリットがあります。

制度は個人が対象で法人は使えませんが、個人事業主は利用が可能なので、まずは最も多額を借り入れている金融機関に利用希望を申し出ましょう。手元に残せる財産以外の資産が負債額より大きい場合などは基本的には利用できません。こうした要件を満たすかどうかの計算は難しいので、専門家が支援します。気軽にご相談ください。

(奈倉梨莉子)

西日本新聞 8月16日分掲載

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