「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
最新のコラムは水曜日朝刊に掲載されます。

2016年3月9日

自殺に保険金給付の場合も

▼Q 会社員の夫は業務多忙に悩み、3年前にうつ病と診断されました。心療内科に通院していましたが、先日、自宅で自殺を図りました。一命は取り留めましたが、長期入院が必要な見通しです。保険会社に「自殺を図った場合、保険金は下りない」と言われ、住宅ローンや治療費が払えるか不安です。

▼A 保険契約で免責となる(入院給付金や生命保険金が支払われない)のは、故意に給付金を得ようとする場合です。保険金取得目的の自殺は免責になりますが、今回のケースはうつ病の影響による自殺と考えられますので、保険会社に説明すれば、保険金の給付が認められる可能性があります。

もしも、保険会社が説明を受け入れなかったり、保険会社と自分で話ができなかったりする場合は交渉を弁護士に委任することもできます。また、健康保険による傷病手当を受給しながら、労働者災害補償の申請も検討してみてください。

住宅ローンについては、金融機関と協議して返済計画を変更する方法もあります。どうしても払えない場合、自己破産して債務を残さない方法もあります。

福岡県弁護士会では、自殺の危険がある人の支援者(今回のケースでは相談してきた妻)への弁護士による無料相談を行っています。必要に応じて、医師や精神保健福祉士、社会福祉士などの専門職が同席しての相談も可能です。詳細は福岡県弁護士会にお問い合わせください。

※「保険会社に『自殺を図った場合、保険金は下りない』と言われ」たという表現がありましたが、自殺で生命保険金などが支払われないのは原則、契約から一定期間(契約によって異なり、1~3年が多い)で、この期間を過ぎれば支払い対象となります。

西日本新聞 3月9日分掲載(阿比留真由美)

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