会長日記

2023年6月1日

会長 大神 昌憲(48期)

◆シンポジウム・研修会ラッシュ!

皆さま、こんにちは。

新型コロナウイルス感染症が感染症法上5類に移行したためでしょうか、5月から6月上旬にかけてはシンポジウムや研修会等が目白押しで、私も大変勉強になりましたので、少しですが紹介させていただきます。

(1) LGBTQ+の自死予防を考える研修会(5月14日(日))

現行の自殺総合対策大綱(令和4年10月14日閣議決定)において、性的マイノリティは社会や地域の無理解や偏見等の社会的要因によって自殺念慮を抱える者の割合が多いことが指摘されています。2022年に発表されたLGBTQ子ども・若者調査でも、10代LGBTQの自殺念慮は3.8倍高く、自殺未遂経験は4.1倍も高い状況にあるそうです。LGBTQ+の子ども・若者の自殺リスクの高さが示され、その対策の重要性が明らかとなりました。

そこで、今回の研修会では、特に対人支援に関わる対人援助職・相談援助職・弁護士・教職員・支援団体・行政関係者・企業の人事労務担当者などを対象に、自殺リスクに配慮した相談対応のあり方が示唆されました。

(2) 精神保健当番弁護士30年記念シンポジウム・STOP強制入院!「精神障害のある人の尊厳の確立を求める決議」の紹介と実現に向けた取り組みを考える(5月20日(土))

当会は、1993年、全国に先駆けて精神保健当番弁護士制度を立ち上げました。この制度は、当会から九弁連へと波及し、九弁連を構成する全ての弁護士会はこの当番弁護士制度を立ち上げています。近年は、東京の多摩地区、千葉県、新潟県、静岡県などの複数の弁護士会から見学の申入れや講師派遣の依頼を受け、徐々にではありますが全国的な拡がりを見せています。

しかしながら、問題の根本は、精神障害がある方々を病院に強制的に収容し、長期間に亘り入院させるという国の政策にあります。

少し古い数字ですが(2001年時点)、WHOが把握している世界の精神科病床の総数約185万床の内、2割近い約32万床が日本に存在しています(驚きの事実です!)。

そして、昨年度の厚生労働省の精神保健福祉資料(いわゆる630調査)によれば、日本の精神科病院には現在もなお約26万人もの入院者がおり、その半数の約13万人が精神保健福祉法により強制的に入院させられた方々です。これは日本における令和3年末時点の受刑者数が3万8366人であり減少傾向にあること(令和4年版犯罪白書)と比較すると、その3倍以上であり、しかも強制入院については期間も決まっていない、いわば不定期刑ともいうべき身体の自由に対する制約です。

精神科病院入院者に対する権利擁護は、弁護士・弁護士会が取り組むべき極めて重要な人権課題です。

(3) 取調べ立会い弁護実践 研修・意見交換会(5月27日(土))

日本の刑事司法は人質司法であると言われています。

2019年6月に、裁判員裁判対象事件及び検察官独自捜査事件について、身体拘束下における被疑者取調べ全過程の録画を取調官に義務付ける刑事訴訟法等の改正法が施行され、取調べが一定程度可視化されました。しかしながら、プレサンス事件が典型例ですが、不当な取調べはなくなっていません。

そこで、日弁連は、現在、取調べの可視化に続く課題の一つとして、取調べへの弁護人立会いの問題に取り組んでおり、この問題に関する研修・意見交換会が開催されました。

(4) シンポジウム「いらんっちゃない?校則」(5月28日(日))

当会は、1993年に行った中学校での丸刈り強制の実態調査に始まり、2021年には「体罰について考える」シンポジウム、2017年にはシンポジウム「LGBTと制服」を開催し、学校問題に取り組んできました。そして、2021年にはシンポジウム「これからの校則」を開催するとともに、「中学校校則の見直しを求める意見書」を公表しました。当会の意見書公表のあと、福岡県内では校則見直しが行われました。しかしながら、校則見直しの状況は不十分なものであると言わざるを得ないものでした。

そこで、当会は、5月26日に開催した定期総会において、「校則見直しに関する意見書」を採択するとともに、5月28日には、「シンポジウム「いらんっちゃない?校則」」を開催しました。

このシンポジウムでは、基調講演とパネルディスカッションが行われましたが、学校が従来の考え方にとらわれずに子どもの権利を中心に据えて校則の抜本的見直しを進めることが重要であり、その見直しによって学校現場が混乱することはないことが確認されました。

(5) 事業承継研究会(6月1日(木))

当会は、2021年3月16日、九州北部税理士会と「事業承継支援の連携に関する協定書」を締結していますが、この協定書に基づき、両会の会員が参加して、第1回の事業承継研究会が開催されました。

中小事業者においては、現在、後継者不足が深刻な問題になっており、親族や第三者に対する事業承継の需要が高まっています。

円滑な事業承継のためには、法務と税務の両輪は欠かすことができないことから、この研究会において良い成果が上がることを期待しています。

(6) 第16回高校生模擬裁判選手権・福岡予選(6月3日(土))

日弁連は、第16回高校生模擬裁判選手権を主催していますが、福岡県内の高校から複数の応募があったため、予選を兼ねた法教育イベントが開催されました。

参加校(高校生)には事前に教材が配布されており、模擬裁判(証人尋問等)で出てくる証拠や証言と併せて、犯人性(被告人は犯人か?)が問題になっている事案について、発表が行われました。

◆当会と福岡県事業承継・引継ぎ支援センターとの「事業承継等支援の連携等に関する協定書」調印式

事業承継の需要が高まっていることは先に述べたとおりですが、当会は、常議員会の承認を得て、5月30日に、福岡県事業承継・引継ぎ支援センターと「事業承継等支援の連携等に関する協定書」を締結いたしました。

中小企業庁の報告にもあるように、経営者の高齢化に伴う後継者不在問題等を背景に、中小企業のM&Aは足下では年間3~4千件程度実施されるまでに拡大しています。もっとも、潜在的に中小企業M&Aの対象となり得る事業者数は約60万社との試算もあり、まだまだきめ細やかな支援の実施によるM&Aの拡大が求められています。

事業承継(中小企業M&A)に弁護士が関与し、小規模M&Aであっても、取引の安全が確保されることは非常に意義深い重要なことであると考えています。

福岡県弁護士会 会長日記 2023年6月1日