会長日記

2019年7月1日

会長 山口 雅司(43期)

皆さん、こんにちは。

5月29日に当会の定期総会が終わり、6月14日には日弁連の定期総会が終わりました。当会の総会は、新会館になって初めての定期総会でしたが、つつがなく終了し、日弁連の総会も、大きな波乱や混乱もなく、ほぼ時間どおりに終了しました。

さて、これらの総会においては、「宣言」とか「決議」というものを出しますので、今回は、「宣言」「決議」「意見」「声明」といったものについてお話ししたいと思います。

◆「宣言」「決議」「意見」「声明」?

当会の今年度の定期総会では、
消費者行政の一層の充実・強化を求める決議」及び
すべての人にとって平等な婚姻制度の実現を求める決議
を可決しました。前者は、消費者庁設立10年の節目に、これまでの消費者行政の評価と今後の課題などを述べて課題の実現を求めるもの、後者は、性的少数者の婚姻制度の法制化を求めるものです。

宣言・決議・意見・声明などの区別は、明確に定義されている訳ではないのですが、当会では、大まかにいえば、「宣言」は、当会自身が一定の事項を遂行することの決意表明として、「決議」は、その多くは他者(政府や自治体など)に対する要求や要望などの働きかけの意思表示として行われており、どちらも総会での承認手続を経て表明されます。そのほか、「意見」は、当会の常議員会の承認のもとに行われる意思表示、「声明」は、(会長声明のように)ある程度臨機応変に行う意思表示となります。

◆弁護士の考えは十人十色

宣言や決議などの当会の意思表明において、会員全員が同じことを考えているというのであれば何も難しいことはないのですが、当然ながら会員各自の考えていることはそれぞれに違います。

特に、憲法改正問題や死刑制度の評価など、一定の価値観や考え方が強く反映するものについては意見の分かれる幅が広がります。時に、弁護士会は強制加入団体であるから意見が分かれる問題については団体としての意思表明を行うべきではないという趣旨の意見も聞こえます。さて、どうするか。

◆「法律家」集団としての責任を果たす

確かに、対立が大きく、意見が均衡するような問題については、意見のとりまとめを急ぐべきではないと言えます。

しかし、我々がその業務範囲とする司法や法令に関わる問題について、弁護士会が、何も意見を表明しないということは考え難いように思います。

あくまでも当会としての最大公約数的な相対的多数意見ということになりますが、憲法をはじめとする法令に従えばどのように考えるべきか、論理的にどのように考えるのか、条約等の世界的観点からどのように考えるのか、当会や連合会がどのような議論をしてきたのか、時には歴史的な観点も考慮しながら、会員個人としての意見や思惑や感情ではなく、弁護士という地位や弁護士会という立場でどのように考えるべきかを検討します。

当会の意思表明は、必ずしも個々の会員の考えと一致するとは限りませんが、できるだけの議論を尽くしながら、「法律家集団としての多数意見」を述べることは社会に対する責任ではないかと考えています。

福岡県弁護士会 会長日記 2019年7月1日