会長日記

2016年10月15日

会 長 原 田 直 子(34期)

福岡県弁護士会のHPにおいでいただき ありがとうございます。

スポーツの秋、読書の秋、食欲の秋・・・ 皆様はどんな秋を楽しんでおられますか。秋の七草ご存知ですか。春の七草は七草がゆで食べる七草ですが、秋は、萩、ススキ、桔梗、撫子、葛、藤袴、女郎花とか。幾つご存知ですか?10月6,7日と行われた日弁連の人権大会参加のため、福井に行きましたが、もうススキの穂が真っ白でした。福岡も一雨ごとに涼しくなるようですね。

日弁連の人権大会が福井で開催されました。

日本弁護士会連合会では、毎年秋に人権大会を開催し、その時々の人権課題について議論し決議を挙げ、その実現に向けて活動しています。今年の人権大会は福井で行われ、

  1. 憲法の恒久平和主義を堅持し、立憲主義・民主主義を回復するための宣言
  2. あるべき主権者教育の推進を求める宣言
  3. 死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言

を採択しました。

死刑制度廃止に向けた議論-大激論に

上の3つの宣言の中では、死刑廃止に向けた宣言が大激論になりました。

日弁連は、すでに2011年の人権大会で、死刑がない社会が望ましいことを見据え「罪を犯した人の「社会復帰のための施策の確立を求め、死刑制度についての全社会的議論を呼びかける宣言」を採択しています。生まれながらの犯罪者はおらず、犯罪者となってしまった人への刑罰は、応報であることにとどまらず、犯罪を犯した人を人間として尊重することを基本とすべきであることは、国際社会でも一致した見解です。死刑制度は、基本的人権の核をなす声明に対する権利を国が剝奪する制度であり、「人の命を奪うなかれ」に反するものであること、死刑制度にも誤判の恐れがあり(現に日本でも4件の死刑事件が再審で無罪になっています)、刑罰としての死刑に重大犯罪の抑止効果が乏しいことが認識されるようになっているからです。

一方、犯罪被害者やその遺族の方からの厳しい批判もありました。日弁連は、被害者・遺族のために何をしてきたのか(何もしていないではないか)、被害者・遺族の気持ちを逆なでするものであるとの厳しい意見でした。また犯罪被害者支援をしている会員からも、世論調査や会員の中では死刑存続の意見が多いのに、なぜ今このような宣言をするのか、これからの被害者支援活動に有害であるなど、人権大会で決議すること自体への反対も相次ぎました。

私達弁護士は、どんなに極悪・非道といわれる被疑者・被告人でも、適正な手続きによる刑事裁判を受ける権利を守るために、弁護人として活動します。その過程では、検察官の起訴内容に間違いはないかチェックするのはもちろん、どうしてこの人がこんな犯罪を犯してしまったのだろうと真剣に考えます。そうしなければ、更生の道筋を見つけることができないからです。そんな場面で、「この人は死刑でも仕方ないな」と思うことは皆無だと思います。

一方、犯罪被害者のご相談を受け、刑事手続きに被害者参加したり、損害賠償の請求をする場合もあります。そんなときは、被害者の苦しみに寄り添い、その悔しさ、悲しみをどうやって裁判所に分からせるかに力を注ぎます。そんな時、被害者・遺族の方が最も重い刑を科してもらいたいと思われることを否定する気にはなれません。仮にそれが死刑であっても同様だと思います。

個々の弁護士が個々の場面で弁護活動をするときには、依頼者の気持ちに寄り添って、精一杯の弁護活動をする・・それが、私たちが誠実に仕事をするということだろうと思います。

福岡の法曹三者の交流

法曹三者とは、裁判所、検察庁、弁護士会です。その構成員である裁判官、検察官、弁護士は、ともに司法試験を受け、合格後一緒に司法修習を経て、それぞれの道へ進みます(5月15日の会長日記にその一端をご紹介しています)。

私たちは、国の司法を担う法曹として、迅速で適正な裁判手続きを目指し、法曹三者の協議会や勉強会を行ったり、交流をして懇親を深めるなどし、円滑な司法運営のために忌憚のない話し合いができる関係を築く努力をしています。

先日は、民事手続きに関して地方裁判所民事部、家庭裁判所と弁護士会で協議を行いました。来月には、刑事手続きに関して地方裁判所刑事部、検察庁、弁護士会との協議も行います。

日ごろの裁判の中で感じている手続き上の問題をお互いに出し合い、争点を明確にして皆様に信頼される司法の実現に向け、法曹三者が一緒に努力しています。代理人がつかない事件(当事者のみで裁判される場合)についても、わかり易くするにはどうしたらよいかなどの議論も行っています。当事者と最も近い関係にあるのは弁護士会です。弁護士に依頼されている場合はもちろん、依頼されていない場合でも、手続き上わからないことや当事者が置き去りにされているように感じられる場合には、ご意見を戴ければと思います。

RKBラジオ祭りに参加しました。

10月15、16日はRKBラジオ祭りでした。福岡県弁護士会は、2013年からこのラジオ祭りにブースを出し、無料法律相談会を行ってきました。始めたころには、あんなに人通りの多いところで、相談に立ち止まってくださるかと心配しましたが、多くの方にご利用いただくことができました。今年は、去年も来たといわれる方もおられて、ここで無料相談をしているということが認知されたのかなと思いました。

また、アンケートを取らせていただきました。弁護士に対する評価は、概ね評価をいただいていますが、弁護士に相談するのは複雑な事案とか、争いが深刻な時と思われている方が多いようでした。私たちは、紛争の予防にも力を入れており、契約する前に!とか、高齢になって判断力が落ちる前に!のご相談も重視して取り組んでおりますので、ご心配な時は気軽にご相談ください。

また、当会の法律相談センターやナビダイヤルも御存じない方が多かったようです。弁護士会は、広告媒体を通じての有料広告は、費用の関係で難しいのですが、このHPや自治体等においていただいているチラシなどを通じて各種無料相談や法律相談センターのご案内をしております。お目に留まりましたら、是非ご覧いただきますようお願いいたします。