会長日記

2023年3月1日

会長 野田部 哲也(43期)

◆ボーダーレス化する社会と弁護士

急速な技術革新を背景とした情報通信分野の発展は、目覚ましく、社会経済の仕組みも大きく変化し、様々な局面においてボーダーレス化が進んでいます。

弁護士も、このような社会経済の変化と無縁というわけにはいかず、その影響を大きく受けます。海外の弁護士が日本国内にも参入しますし、日本の弁護士も海外に進出します。法人化した弁護士事務所も、各地に支店を作ります。そのような形で、福岡県弁護士会に登録した弁護士の方々にも、弁護士会活動を担っていただき、活躍してもらっています。また、弁護士間だけではなく、他の業種、業態の専門職の方々も、アドバイザリー業務等への参入も増えています。このようなボーダーレス化する社会だからこそ、弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現し、人と社会に高い価値を提供し、その役に立つ活動をし続けなければなりません。

◆国際仲裁・調停のセミナー

国境を越えた取引や海外投資は、年々増加し、企業が、国際的な法的紛争に巻き込まれるリスクも増加しています。企業が活発な国際的な営業活動をするうえで、予め、海外取引紛争の解決手段について、基本的知識や最新の情報を得ることは、不可欠なように思われます。福岡は、日本からアジアへ、アジアから日本へ進出する窓口のようなポジションにあり、今後も国際的な取引が増加し、国際紛争に関する予防法務的助言や国際紛争に巻き込まれた場合の緊急対応を求められる場合が増えてくると思われます。このような場合、企業の地元で取引契約締結等に関与する現場の弁護士の役割が重要になります。

国際仲裁・調停等の紛争解決制度について、セミナーを開催したところ、100名(webも含む)を超える弁護士の参加がありました。

◆福岡―釜山フォーラム

2月4日、韓国釜山において、福岡―釜山フォーラムが開催されました。福岡と釜山の産官学が、協力して、広域経済圏を創出することを目標としたフォーラムです。その中で、福岡―釜山の経済、スポーツ、祭り等の文化を通じた交流について、意見が交わされました。

日韓の経済交流の規制について、概説し、経済交流の問題について、福岡県弁護士会と釜山地方弁護士会は、30年を超える交流が続いており、両弁護士会が協力して対応できることを紹介したところ、政治的な逆風状況等があっても、両弁護士会の交流が絶えることなく続いていることが高く評価され、期待の声が寄せられました。

◆日弁連理事会における議論

日弁連理事会は、月に1回開催され、河合副会長と二人で現実に出席しています。その資料は、開催日の1週間ほど前に送付されます。そして、当日配布分もあり、その厚さは、10センチを超えることもしばしばです。理事の中には、その資料を三日三晩かけて読み込み、質問や意見を整理してメールし、理事会に参加してさらに発言するという強者もいます。

各単位会の事情を反映して、反対意見が述べられることも少なくはありませんが、問題点の指摘があったとしても、建設的な意見や対応が多く、議案は、より良いものに改善され、決議されているように思われます。

◆国会議員へのお願い

日弁連の決議は、法律に関わることも多く、この場合、立法により解決しなければならず、国会議員にお願いに行くこともあります。

2月17日には、議員会館を訪問し、「死刑制度廃止」に向けたお願いをしてまいりました。今後も、日弁連の代替刑を付した死刑制度の廃止に向けた運動をさらに展開することになると思います。

また、この機会を利用し、「谷間世代の法曹に対する一律給付措置」も、お願いしてまいりました。「谷間世代の法曹に対する一律給付措置」は、とても困難なように思われていましたが、当会の市丸信敏弁護士らが尽力され続けたおかげで、既に330名を超える国会議員から応援メッセージや集会へ参加をいただいており、応援者が国会議員の半数を超えるのは目前です。

◆母校訪問企画―プロフェッショナルへの誘い

法曹界に有能な人材を確保するため、弁護士が、その母校を訪問する企画を推進しています。私も昨年12月に出身の中学を訪問し、本年3月に出身の高校を訪問する予定です。

福岡教育大学附属福岡中学校を訪問した時には、全校生徒と全教師の方に対し、法曹の魅力を伝え、後輩をプロフェッショナルへと誘いました。

この母校訪問企画は、優能な人材を法曹界に誘うことを目的とするものですが、将来の主権者である中学生等に対し、法曹の魅力を伝える中で、「法の支配」の意義を伝え、これを担ってもらい、法の支配を社会の隅々までいきわたらせることに大いに役に立つものと思われます。

私は、日ごろ、「もっと付加価値をつけよう」「一歩、一歩、着実に進んで陣地を広げよう」とかよく言っているのですが、母校訪問企画を通じて、これらは、母校の校訓である「行第二里」や「一歩々行万里」という考え方に原点があるのに気づかされました。自分の考え方が、中学生の時のまんまで、変わっていないというのには、驚きでした。

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