会長日記

2013年7月 弁護士会の三権分立

会 長 橋 本 千 尋(36期)

■弁護士会の中の三権分立

私は現在、福岡県弁護士会の会長という職務に就いていますが、これは、国の組織で言えば内閣総理大臣のようなものです。

内閣総理大臣は行政権のトップであり、大きな権限を持っていますが、法律を制定したり裁判をしたりすることはできません。それは、国会や裁判所の役目です。

同じように、弁護士会でも会長がすべてを取り仕切っているのではなく、国の三権分立に似た仕組みを持っています。

新人弁護士も増えてきましたので、少しおさらいをしてみます。

■弁護士会の中の国会

国の場合は衆・参両議院の議員を選挙で選びます。つまり、間接民主制です。

弁護士会の場合は、直接民主制です。重要なことはすべての弁護士会会員が参加する総会で決めます。毎年5月に定期総会を開催していますが、今年の定期総会では会則の一部の改正を審議・採決していただきました。しかし、何かを決めたいときに、その都度、総会を開くことは困難です。そこで、弁護士会でも国会と同じように選挙された議員で構成する議会を持っています。「常議員会」という名称です。国会の議員を国会議員というように、常議員会の議員は「常議員」といっています。

国会と同じように、常議員会では常議員会議長が選任されます。会長・副会長も必ず常議員会に出席して提案した議題などの説明をし、審議していただきます。その状況は、規模は小さいながら国会中継をイメージしていただければ結構です。

■弁護士会の中の裁判所

弁護士会には弁護士法に基づいて自治権が与えられており、弁護士が非行を行ったときの処分は弁護士会自身で行うことになっています。近時、非行を超えて犯罪に至る事案について国の裁判所で裁かれたことにより、弁護士会の中の裁判所の存在感が薄れてしまったのは残念です。

弁護士会の中の裁判所の中心的な役割をするのは、懲戒委員会です。委員会という名称がつきますが、内閣総理大臣が裁判所の裁判に関与できないのと同様に、会長である私も懲戒委員会の審議には全く関与できません。

懲戒委員会の構成員は、弁護士だけではなく、現役の裁判官、検察官、そして学識経験者(=大学教授)の方々です。

■弁護士会の中の行政

弁護士会の活動で目立つのは、やはり、国と同じように行政です。

福岡県弁護士会では、会長、副会長、事務局長の行政権を担う私たちを、「執行部」と呼び習わしています。他の都道府県の弁護士会では「理事者会」と呼んでいるところもあるとのことです。そして、私が内閣総理大臣であれば、「執行部」は内閣です。

では、各省庁はといえば「委員会」です。福岡県弁護士会では、60前後の委員会があり、様々な活動をしています。

たとえば、本年6月からDV被害に関する無料相談のシステムを立ち上げました。これにかかわったのは、犯罪被害者支援委員会と両性の平等に関する委員会です。両委員会が協議のうえ素案を創って常議員会で審議され、審議の過程でいくつかの問題点を指摘されて必要な修正をし、本年6月から正式に活動を開始しました。

組織のことばかり述べましたが、こうした活動を支えているのは、個々の会員です。
国との違いで述べましたように、直接民主制ということがキーポイントなのかもしれません。