会長日記

2017年1月15日

会 長 原 田 直 子(34期)

福岡県弁護士会のHPにおいでいただきありがとうございます。

先週、特に週末はこの冬一番の寒さでした。皆様お変わりありませんか。ここ数年のデータでは、1月下旬から2月上旬が最もインフルエンザの患者さんが増えるとのこと。ご自愛ください。

新成人おめでとうございます~ワークライフバランスへ向けて

1月9日は成人式でした。遅ればせながらおめでとうございます。昨年から18歳選挙制度が導入されましたので、二十歳⇒成人⇒選挙権という感動が薄れてしまわれたかもしれませんね。

今年の新成人は123万人。一方、2016年の出生数は初めて100万人を切って98万1000人の見込みとのこと。人口減少が進んでいます(必ずしも増やすべきという意見ではありませんが・・・)

一方ネットで新成人600人に回答を求めたという調査では、約7割が結婚したら子どもが欲しいと思っており、そのうちの約9割は2人以上欲しいと思っているそうです。しかし、安定した仕事と収入、子育てと仕事の両立、安全で平和な社会・・安心して子どもを育てられる社会にはまだまだというのが現実です。

弁護士会でも若い会員が増え、子育ての苦労は皆様と同じです。女性弁護士が仕事に復帰したくても、なかなか保育園に入れず苦労しているようです。会としても、産休中や育児のために働く時間が少ない会員への会費免除や、研修などを受けやすくするための工夫などを行っています。

働きすぎ=長時間労働もワークライフバランスを損なう大きな要因です。日弁連は、昨年、残業規制について「『あるべき労働時間法制』に関する意見書」を発表し、労使協定で定められる残業時間の上限を年間180時間にするよう提言しています。180時間というのは月15時間が目安ですから、非現実的と思われるかもしれません。確かに弁護士会でも難しい課題です。しかし、仮に通勤に30分(保育園によれば45分)かかるとすると、朝7時30分に家を出て、8時30分始業、17時30分に終業で買い物をして保育園によれば帰宅は19時、ここから食事、風呂、寝かしつけ・・を考えると残業する余裕はない!というのが子育て中の方の実態ではないでしょうか。月60時間も残業して過労死に至るというのは論外です。

これからの社会を支えていく新成人の皆様が、希望をもって健康で楽しい人生を歩まれることをお祈りし、そのような社会の実現のために弁護士会も努力して参ります。

シンポ「政府批判はいけないことか?~共謀罪で表現の自由が奪われる!」

1月14日、標記のシンポジウムを福岡県弁護士会館で開きました。100名を超える方たちの参加で、寒さも吹き飛ばす熱気のこもったシンポジウムでした。

共謀罪とは、ある特定の犯罪を行おうと合意することによって成立する犯罪です。もともと日本の刑法は、実際に犯罪を実行した(着手して犯行を遂げた)場合に、処罰することを原則としています。重大な犯罪の場合(例えば殺人罪)にはその準備(予備罪)や着手したけれど遂げなかった場合(未遂罪)を処罰していますが、あくまで例外です。ところが共謀罪は、実際に犯罪を行わなくても何らかの犯罪を共謀しただけで処罰することができるというものです。このような犯罪類型を創設する組織犯罪処罰法の改正案が、1月20日から始まる通常国会に提出されようとしています。しかも、その範囲は重大犯罪に限らず、窃盗や傷害などを含め、全部で676にも及ぶとされているのです。

シンポジウムの発言で最も印象に残ったのは、元北海道警察警視長をされた原田宏二さんの発言です。仮に犯罪を共謀するときは、人に知られないように行うので、その捜査のためには、日ごろから怪しいと思う人物を尾行や盗聴、不正アクセスなどで身辺調査をしておかなければ立件できないということです。怪しいと思えばどんな人でも身辺調査できますから、うかつなことは言えない、目を付けられそうなところにはいかないという抑止効果が働いてしまうでしょう。怖いことです。

日弁連では、この共謀罪の危険性を伝えるパンフレットを作成しています。ご活用ください