福岡県弁護士会コラム(会内広報誌「月報」より)

月報記事

2015年10月 1日

「転ばぬ先の杖」(第19回)

会員(消費者委員会)藤 村 元 気(61期)

1 私は現在、消費者委員会に所属していますが、電話や訪問により勧誘を受けて断りきれずに契約をしてしまったという問題にしばしば触れます。中には、一人暮らしの高齢者の方からのご相談で、お金も払ってしまったのだけれど、買った商品は言われていたような良いものではなかったので、契約をキャンセルしたいということを希望されるというようなものもあります。

もちろん、事業者の勧誘行為に不実の告知等があれば、法律上、契約を取り消すことができる可能性があります。ケースによっては、取消しを待たずとも、契約自体を無効にできるものもあるかもしれません。

しかし、この勧誘をしたのが悪質業者であればあるほど、支払った代金を取り戻すことは困難になります。悪質業者は、自らの販売方法が法に触れることを知りながら売っているわけですから、そもそも名前や所在を明確にしていなかったり、また、一定の量が売れて苦情が出始めると行方をくらませたりして、回収を困難にしてしまいます。

勧誘されても、その都度きちんと断ることができればいいかもしれませんが、突然勧誘を受けることで慌ててしまい、言葉巧みに契約を締結させられてしまう例は後を絶ちません。そうだとすると、現状、市民の方々にとっては、そもそもこのような勧誘に巻き込まれないことが望ましい、ということになろうかと思います。しかし、どうすれば勧誘に巻き込まれないようにできるのでしょうか。これはとても悩ましい問題です。

2 そこで、今、特定商取引法に「事前拒否者への勧誘を禁止する制度」を導入しようということが提案されています。

「Do-Not-Call制度」、「Do-Not-Knock制度」という二つの制度を合わせたものを「事前拒否者への勧誘を禁止する制度」と呼んでいます(日弁連「特定商取引法に事前拒否者への勧誘禁止制度の導入を求める意見書」2015年(平成27年)7月17日参照)が、これは、海外でも比較的広く導入されているもので、どちらも、電話勧誘や訪問販売による勧誘を受けたくない消費者が、事前に登録などをすることによって、それらの勧誘を受けたくないという意思を示すことができるようにしておき、事業者は、そのような勧誘を拒否している消費者に対して、電話勧誘や訪問販売による勧誘をできないようにする、というものです。さらに、「Do-Not-Knock制度」においては、登録をすること以外にも、「訪問販売お断り」というようなステッカーを貼っていれば、そのような家への訪問販売を禁止するという制度も検討されています。

消費者の中には、欲しい物は自分で調べて買うから、勧誘は一切受けたくない、という方もおられると思います。そのような方は、予め電話勧誘や訪問販売勧誘を受けたくないということを登録などしておけば、個別に事業者とやり取りをせずに済むことになります。

3 もちろん、この制度については、登録した情報が適切に管理されるか(登録した情報が却って悪用されてしまうことになると本末転倒になってしまいます。)などといった課題もあります。

そこで、制度の導入にあたっては、リスクをいかに管理するのかということについても十分に検討される必要がありますが、「その都度その都度断るのは大変。」という思いを抱いておられる方や、「きちんと断れないかもしれない。」と心配される方にとっては、この制度が導入されれば、とても有益な「転ばぬ先の杖」になるのではないかと思います。

あさかぜ基金だより

弁護士法人あさかぜ基金法律事務所 弁護士
河 野 哲 志(67期)

はやくも9か月たって・・・

私が、司法過疎地で仕事することを目指して、当事務所に入所し、早くも9か月以上が経ちました。

当事務所では、司法過疎地への赴任に向けて、専門性の高い案件も含め、多種多様な事件を経験できるよう、福岡県弁護士会と九州弁護士会連合会に配慮をいただいています。

具体的には、指導担当制度、応援団制度、県外からの紹介制度などがあります。これらを通じて、自分達だけではなかなか経験できない類型の事件にも携わることができています。

私が、経験した業務の一部をご紹介します。

破産管財人代理

福岡では、破産管財人候補者名簿への登録は、弁護士登録後3年以上の実務経験が必要です。

しかし、司法過疎地では、赴任後すぐに、破産管財人に選任される可能性があります。そこで、当事務所では、福岡県弁護士会の経験豊富な先輩弁護士から、破産管財業務についての研修講義を受けました。

私の場合、指導担当弁護士の管財人代理に選任される機会もありました。破産管財業務の一連の流れを実際に体験するとともに、債権認否の一部を担当しました。

指導担当弁護士の裁判所へのきめ細かな報告、そして慎重かつ迅速な対応を目の当たりにしたことは、日々の弁護士業務にも役立っています。

中小企業・個人事業主からの法律相談

司法過疎地では、地元の中小企業・個人事業主から、法律相談を受ける機会も多いと考えられます。利益相反の問題はありますが、企業や個人事業主の方々が、時間をかけることなく、地元で法律相談ができることで、地元経済にはプラスの効果があるものと考えます。

ところが、企業や個人事業主の方々が、あさかぜに相談を持ち込むことは、ほとんどありません。

私は、指導担当弁護士を通じて中小企業の経営権に関する法令・制度の調査報告を行うことができました。

このように法律相談に関する調査報告のような形でも勉強になります。

裁判員裁判

司法過疎地に赴任したら、裁判員裁判を担当する可能性もあります。

私は、指導担当弁護士と共同受任する形で、裁判員裁判に参加することができました。裁判員に対して、ケースセオリーをわかりやすく伝えることがいかに重要であるかが、よくわかる裁判の展開でした。

処理方針の相談

刑事事件の被告人への対応について、指導担当弁護士に相談し、被告人に見通しを明確にすることが大切であると、とても勉強になった事案がありました。

また、指導担当等の制度ではありませんが、委員会活動を通じて知り合った先輩弁護士に相談し、とても勉強になった事案もありました。

不当解雇の事案で、相手方が、解雇撤回を主張した場合の対応について、委員会活動で知り合った先輩弁護士に方針を相談し、最終的に依頼者が望む結果を得ることができました。

事件の方針を相談できるチャンネルをたくさん持っておくことは、赴任後、自分が多種多様な事案を処理するうえで重要であると感じました。

多種多様な事案への対応

司法過疎地では、専門案件の発生数・比率は、それほど高くないのではないか、という心配もあるかもしれません。

これは、大先輩である春山九州男弁護士の受け売りですが、そうした案件が一旦持ち込まれた場合、他事務所を紹介するのではなく、自分で処理できなければ、司法過疎地に赴任する意味は乏しいのではないかと思います。

多くの司法過疎地は、同時に、物理的アクセス障害を抱えた土地でもあります。物理的な障害から、専門案件を抱えた人が泣き寝入りをすることはあってはなりません。
多種多様な事案に対応できるよう、今後とも研鑽を積むとともに、自分が考える方針について、相談できるチャンネルをたくさん作っておく努力を続けたいと考えています。

中小企業法律支援センターだより 「北極しろくま堂」園田正世氏講演会報告

中小企業法律支援センター委員長
池 田 耕一郎(50期)

1 はじめに

当会は、日弁連及び全国各弁護士会とともに、平成19年度から中小企業のための全国一斉シンポジウム(講演会)を開催しています。

本年度は、9月9日(水)、福岡、北九州、筑後の3地区で講演会を開催しました。北九州、筑後で開催した「マイナンバー制度」をテーマにした講演会に関しては、次号(11月号)「部会だより」にて開催報告がなされる予定ですので、本稿では、福岡地区で開催した講演会について報告します。

2 講師:園田正世さんについて

福岡地区では、「創業」をテーマに、女性起業家として著名な園田正世さんによる講演会「毎日が戦い!?私のビジネス奮闘記!!」を開催しました(当会主催、福岡県中小企業振興センター(福岡県よろず支援拠点)共催、日本政策金融公庫福岡支店後援)。

園田さんについては、著書、数々の表彰(日本商工会議所「女性起業家大賞」、日経ウーマン「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2006」、平成18年静岡県男女共同参画社会づくり活動に関する知事褒賞、内閣府「平成20年度バリアフリー・ユニバーサルデザイン推進功労者特命担当大臣表彰奨励賞」等々)、テレビや新聞等様々な媒体の報道でご存じの会員も多いかと思います。

園田さんは、もともと企業経営には全く関わりがなかったそうです。第一子の子育てで悩み、仲間と始めた育児サークルの活動で、アメリカ生まれの抱っこひも「スリング」に出会い、「困っているお母さんに教えてあげたい」という純粋な気持ちから、「北極しろくま堂有限会社」を設立されました(現在は3人の子のお母さんでもあります。)。

その後、日本人の体格や日本の気候に合った改良の必要性を感じ、アメリカの企業と契約して、日本生産のライセンスを取得しました。さらに、オリジナルだっこひも「キュットミー!」や顧客の要望から始めた昔ながらの「おんぶひも」がヒットを呼び、一大ブランドとして事業を確立しています。

現在、東京大学大学院博士課程で「抱っこ」の研究をされているほか、経済産業省の音頭で設置された「抱っこひも安全協議会」の常任理事に就任するなど、その真摯な活動が社会的にも評価されています。

3 臨場感あふれる講演内容

会員の皆様も、創業支援セミナーや講演会を聴講した経験がおありかと思いますが、どちらかというと創業資金融資を得るための計画書の策定のヒントであったり、具体的な道のりの説明を欠く成功体験報告であったりと、起業への意欲をかき立てる要素が強いものの、経営に伴うリスクやその回避の必要性を認識させる契機が少ないと感じることが多いのではないでしょうか(だからこそ、私たち弁護士ないし弁護士会は、創業の段階から積極的に事業者に関わり、事業開始後の様々なトラブル発生のリスクを伝え、円滑な事業継続を支えるべき役割があります。)。

この点、園田さんの講演の内容は、どれも具体的で、講演会に参加された経営者ないし創業希望者にとって、一つ一つの場面を想定しながら、自分のことに置き換えて理解できるものでした。

企業経営において、キャッシュフローをいかに堅実に予測するかは基本的で重要な事柄であるものの、実際、起業家が陥りやすい点として、売上の過大予測、経費の過少予測があげられるのではないでしょうか。

園田さんは、主婦目線でのまさに「究極の」キャッシュフロー会計での経営方針でした。縫製工場への支払額がいくらで、何万円売れたら手もとにいくら残るのか、というように、常に現金勘定で考え、無謀な予測を立てることなく経営に取り組まれてきたことが手に取るように伝わってきました。

他にも、海外企業とのやりとりに伴い発生した契約書上の問題点、テレビ番組で取り上げられたことで対応困難なほど注文がきたものの企業運営のためには必ずしも好ましいものではなかったこと、高額の開店資金を借り入れて初めての直営店を東京の自由が丘にオープンしたもののその後閉鎖したこと、知的財産権に関するクレームをつけられ専門家のアドバイスを受けて危機を回避したことなど、シビアな局面に遭遇しつつもその状況を打開していく過程の話もあり、まさに創業希望者にとって「地に足がついた創業準備」を進めるために貴重な体験談であると強く感じました。

特に、「起業に使うエネルギーと継続するエネルギーは種類が違う」(起業するときは強い意欲を持っているのでスタートはそれで良いが、事業を継続するためには、自分は何のために企業経営をするのかという明確な目的意識が必要である)、「売上に直結しないことも大切にする」(取引の話ではなくても、声がかかればまず交流する)という指摘は、それを実践している園田さんの言葉であるからこそ説得力があり、心に染みました。

講演会終了後、来場者からの質問や相談、果ては、記念撮影やサインなど、会場の高揚した雰囲気を感じさせる光景が続きました。

園田さんの誠実でウラオモテのない人柄と論理的な思考が、来場者の共感を呼んだのだと感じました。園田さんが成功に至る過程での取引先や顧客からの支持は、園田さんの人格に対する信頼感によるところが大きいと思います。

4 おわりに

今回、企業経営者ないし創業希望者向けの企画ということもあり、会員の参加が少なかったのは残念でしたが、私たち弁護士が創業希望者から相談を受ける際の視点を得ることができる実に有意義な講演でした。
近い将来、園田さんに是非福岡にお越しいただき、お話をうかがう機会を設けたいと思いますので、その折には改めてご案内差し上げます。

マイナンバー研修

会 員 馬 場  勝(64期)

1 はじめに

平成27年9月4日に大阪弁護士会所属で日弁連情報問題対策委員会委員長の坂本団(さかもとまどか)先生にマイナンバー制度に関するご講演をしていただきました。坂本先生は司法修習時代を福岡で過ごされたため、福岡の地にはかなり思い入れがあるとのことでした。

2 マイナンバー制度について
  1. まずはじめに、福岡県弁護士会におけるこれまでのマイナンバー制度に対する取り組みについて、丸山明子先生よりご報告をいただきました。
    丸山先生からは、福岡県弁護士会として平成24年8月7日に「マイナンバー法案に反対する声明」、平成25年5月10日に「共通番号法制定に反対する声明」、そして平成27年8月6日には「マイナンバー制度の運用延期を求める会長声明」を出していることなどが報告され、併せて会員の皆さまには本研修を機に今一度マイナンバー制度の問題点について考えて欲しいとのお話がなされました。
  2. 丸山先生の報告に続き、坂本先生のご講演となりました。
    • マイナンバー制度とは住民票を有する全ての方に一人一つの番号を付して社会保障や税などの分野で効率的に情報を管理し、複数の機関に存在する個人の情報が同一人の情報であることを確認するために活用されるものです。マイナンバー制度は(1)公平、公正な社会の実現、(2)行政の効率化、(3)国民の利便性の向上というメリットがあるものの、実際には一般的に懸念されている情報漏えい以外にも多くの問題点が残されているようです。
      具体的には、「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」(マイナンバー法)19条では「何人も、次の各号のいずれかに該当する場合を除き、特定個人情報の提供をしてはならない。」と特定個人情報の提供が厳しく制限されていますが、その12号で「訴訟手続その他の裁判所における手続」が規定されているため、裁判所へ提出するためならマイナンバーを提供する(つまりマイナンバーが記載されている書類を裁判所に証拠として提出する)ことが認められています。しかし、例えば源泉徴収票にもマイナンバーが記載されるため、弁護士が依頼者から受け取った源泉徴収票を裁判所に証拠としてそのまま提出することが許されるのか(少なくともマイナンバー部分を黒塗りにして提出しなければならないのではないか)、あるいは後見人が被後見人のマイナンバーを取り扱うことや破産管財人が破産会社の従業員のマイナンバーを取り扱うことがどこまで許されるのかなど、解決しなければならない問題点が多く残されているとのことでした。
    • さらに、一般的にも、事業者が従業員からマイナンバーの提供を受けた場合には慎重な取り扱いや厳重な管理が必要となることはもちろんですが、マイナンバー法16条はマイナンバーを取得する際の本人確認を義務付けていることから、従業員本人のみならず従業員が扶養している親族からもマイナンバーの提供を受ける際はどこまで本人確認を行うべきか(扶養親族の本人確認までもしなければならないのか)などの問題もあるとのことでした。
3 坂本先生からのアドバイス

最後に、坂本先生からは、平成27年10月には国民に個人番号の通知が行われる予定となっているので、我々事業者はマイナンバー導入のための最低限の対策(事務所内でマイナンバーを取り扱う人を予め決めておく。マイナンバー取得の際には相手に利用目的を伝える。マイナンバー取得の際には身分確認を忘れない。マイナンバーが記載された書類は鍵が掛かる棚や引き出しに大切に保管する。パソコン内に保管する場合には最新のウィルス対策を行う。マイナンバーが必要なくなったら、マイナンバー記載書類は速やかに廃棄するなど)をしておくようアドバイスをいただき、本研修は終了となりました。

4 マイナンバー制度に関する補足

なお、マイナンバー法は平成28年1月より施行されますが、同年3月までに行う個人事業者の確定申告や源泉徴収票の発行に関しては、それが平成27年分の収入に対するものであることから、マイナンバーの取得・利用は不要となります。他方、平成28年1月以降の収入に関するものについてはマイナンバーの取り扱いが必要となります。すぐに必要なのは、例えば1月に退職された従業員に対する1か月以内に発行する源泉徴収票の作成(平成28年1月分以降の収入にかかるもの)のためのマイナンバーの取得・利用となります。皆さんお間違えのないようご注意ください。

5 最後に

本研修はマイナンバー制度の概要を理解するのみならずマイナンバーを取り扱う際に我々弁護士が注意すべき点についても具体的に説明があり、非常に有意義な研修であったと思います。
本研修については、福岡県弁護士会の会員専用ページから研修動画を見ることができますし、後日DVD研修も予定されていますので、本研修を受けられていない方は是非ご覧又はご受講いただければと思います。

シンポジウム「なくせ『女性の貧困』~男女がともに豊かな社会を創造するために~」

会 員 里 本 麻 衣(66期)

1 シンポジウムの開催

平成27年8月29日(土)午後1時半から4時半まで、天神ビルにて、「なくせ『女性の貧困』~男女がともに豊かな社会を創造するために~」と題する、第58回人権擁護大会プレシンポジウムが開催されました。

同じ女性として、また、女性の相談を受けることが多い立場の者として、「女性の貧困」という問題は、非常に興味があったので、このシンポジウムに参加させて頂きました。

2 シンポジウムのご報告

会場に入ると、席はほとんど満席の状態でした。シンポジウムの内容から、当然女性の出席者が多いのですが、男性の姿も、それなりに見受けられました。

シンポジウムでは、竹信三恵子氏(和光大学教授)の基調講演があり、その後、シングルマザーとして働く女性の実態報告や、阿部広美氏(熊本県弁護士会)の日弁連の活動、そして、竹信三恵子氏、鈴木泰輔氏(広島県弁護士会・マタハラ原告訴訟代理人弁護士)、樋口充喜氏(福岡県労働組合総連合事務局長)、大戸はるみ氏(しんぐるまざあず・ふぉーらむ・福岡理事長)をパネリストとして、そして、深堀寿美会員をコーディネーターとして、パネルディスカッションが行われました。

これらのプログラム全てに言及したいところですが、紙面上不可能なので、私が特に印象に残った、竹信三恵子氏の基調講演について、ご報告させて頂きます。

3 竹信三恵子氏の基調講演

竹信三恵子氏は、ジャーナリストでもあり、そのご講演はとても刺激的なもので、お話に引き込まれてしまいました。私のように、竹信氏のお話に引き込まれた人は、会場にとても多かったのではないでしょうか。

竹信氏は、「なくせ『女性の貧困』~家事ハラと再分配から考える」という題名でご講演をされました。

ご講演では、女性の貧困率は高いこと、女性の給与所得額において、年収200万円台が1996年以降徐々に増えていること、女性の正社員は少数派であること等の基本的知識の紹介がなされました。そして、女性の貧困が社会的に非常に問題であり、この貧困問題を解消するには、社会の意識改革をしなければならないこと等の問題提起がなされました。

その問題提起をされた上で、竹信氏は、非常に鋭い視点を与えてくださいました。現在政府が打ち出している女性政策は、本当に女性のためになされているのか甚だ疑問であること、本当のワークライフバランスとは一体どうあるべきか、現在の労働時間は男性の労働時間を基準とされているが、労働時間の基準は、女性を基準とするべきであること、家事労働が蔑視されていることの問題(家事の価値をかなり低く見られていること。竹信氏は「家事ハラ」と呼ばれていました。)等です。

4 シンポジウムを受けて

今回のシンポジウムを受けて、特に感じたことは、「今の日本の社会には、日常生活が一体どのようにして回っているのか、という大切な視点が抜け落ちているのではないか」ということです。この視点の欠落が、竹信氏の言う「家事ハラ」に繋がっているのではないでしょうか。

この視点を欠落させたまま、労働政策や女性政策が行われると、日本の将来に大きな影響を及ぼしてしまうのではないかと、私はとても不安を感じます。

「何を大げさな」と思われるかもしれません。しかし、日常生活をないがしろにするということは、人としての根本をないがしろにすることにもなるのではないでしょうか。日常生活をないがしろにして、果たして日本は幸せになれるのでしょうか。

私は普段シャワーで済ますことが多いですが、やはり入浴の際には湯船に浸かった方が断然、体の調子は良いですし、なるべく自炊をして野菜を多めに取るほうが、お腹の調子も良いです。そしてなにより、規則正しい生活は、心を健康にしてくれます。「お前は一体何を言っているんだ」と思われるかもしれませんが、日常生活は、心と体を健康に保つための重要なものであるということを、その日常を作り上げるのは、家族(人)なのだということを、もっと社会全体で認識すべきだと思います。
今回のシンポジウムを受けて、私は改めて、大事な視点を頂けました。良い機会を与えてくださって、本当にありがとうございました。

「先生のための〈夏休み法教育セミナー2015〉」を開催しました!! ~法教育委員会の皆で頑張りました☆~

教育委員会 委員長
春 田 久美子(48期)

法教育委員会として初めての企画「先生のための〈夏休み法教育セミナー2015〉」を8月10日(月)、アクロス福岡にて開催しました。

これは、当会が行っている法教育センターの出前授業のこと、すなわち、弁護士が学校の教室などに赴き、GT(ゲストティーチャー)として子供たちに直接の授業を行っていること♥を広くアピールするため、もっと言うと、思ったようには、なかなか普及していかない法教育の意義や魅力について、先ずは学校現場の先生方に直接伝え、知っていただき、法教育のファンを一人でも増やして、さらには先生方と私たち弁護士(会)との繋がり・ルートをしっかりとしたものとして作り上げたい・・・そんなことを目標・狙いとした企画です。

【初めての試み、を思いついたわけは・・・】

私は、法教育委員会の委員長になって2年目ですが、例年、夏休みに行っているJLS(ジュニアロースクール)では、参加する児童・生徒さんの数が期待するようには集まらず、"動員"をどうするかがいつも悩みの種であり、苦労している部分でした。委員長1年目の昨夏は、JLSのあり方について、準備段階から本番当日の様子を含めて問題点などを自分なりに浮かびあがらせようと、そっと様子を探っていました。そんな折、昨年の夏休み、岡山弁護士会より法教育についてのセミナーを開くとのことで、講師依頼があり行ってみると、びっくり!たくさんの学校の先生方が集まっていらっしゃったのです。主催者として法曹三者が名を連ねている他、岡山県・市の各教育委員会、岡山大学も後援していました。このセミナーの件を2ヶ月に一度位の頻度で開いている福岡法教育研究会(法教育委員会の弁護士全てと法教育に興味がある先生なら誰でも入れる集まり)にも情報提供したところ、羨ましいね~良いね~との声が・・・。"そっか!直接、学校の先生方にアクセスできる研修会、セミナーみたいな企画を実施したらいいのか!"。シンプルにそう気付いたのです。やるからには良い企画にしたい!でも、相当のマンパワーも労力もエネルギーも要るよね・・・う~ん・・・乗ってくれるかな~なにより例年実施のJLSはどうするの?・・・きっと突っ込まれるよね・・・・・・。今年は思い切ってお休みしよう、一回パスをしてでも先生向けの企画を実現した方が、きっと法教育の普及のためには早道かつ確実になるのは間違いない、それだけの充実した企画にしたら、きっと大丈夫...そう訴えよう...。そう心に決めて、思い切って委員会で提案したところ、意外(?)とあっさり了承(ホッ♪)。そうして、秋以降、少しずつ準備が始まったのです。

【企画内容を煮詰めるまでの道のり・・・】

今回の企画を練るに当たっては、福岡法教育研究会に参加して下さっている学校の先生方からのアドバイスが欠かせません。学校の先生方に如何に興味をもってもらい、たくさんの方に参加してもらえるような企画にするか!それが最大の目標だからです。

皆で議論して、コンセプトは"誰でもできる""明日から直ぐに授業に使える""一コマ(45~50分間)でできる法教育の授業の提案"、になりました(それが、学校現場のニーズなのです)。キャッチーなワードとしては、今、学校の先生方にとって最も関心が高い"アクティブ・ラーニング"を盛り込むことも決まりました。問題は内容ですが、喧々諤々の議論を経て、公法系、私法系(契約)、そして言語活動&法教育の3つの分科会方式をとること、全体を貫くトーンを示すような基調講演を行い、最後、参加者全員との意見交換・交流を行うひとときになるような全体会を設けること、どういう方々に協力をいただくか、いただくべきかなども徐々に決まっていきました。

【セミナーの内容と盛況だった当日の様子】

基調講演には、法教育を学習指導要領との関連でお話できそうな方、ということで大倉泰裕氏(元文科省教科調査官で現在は千葉県立高校の現役教諭)より「学習指導要領と法教育」とのタイトルで。もうお一人、祇園全禄氏(福岡教育大学監事)からは「法教育の裾野を拡げ内容の充実を図る教育風土の醸成」と題して、学校教育全般を見渡して法教育の有意義性と必要性についてお話しいただきました。

大倉氏は、以前、私が同様のセミナー(学校の先生向けの金融教育セミナー)に参加してみたときに出会ったのですが、具体的実践と関連づけたお話がとても面白く、非常に良い記憶が残っていたところ、修猷館高校の公民の先生が繋いでみる、と仰ってくれて実現しました。祇園氏は、中学校の先生から紹介されて個人的に繋がりがあった方でしたが、義務教育に携わる教員の方々にとってのネームバリューが非常に高い、参加者を呼べる方ということで決まりました。実際、祇園氏には、当日のセミナーに向けて、後援を頂いた学校の先生方の諸団体や福岡市の教育委員会の先生方など、具体的な効果を伴う顔つなぎの労を執っていただき、それ自体が非常に有意義であり大変お世話になりました。当日の講演内容は、いずれも参加者からのアンケート結果でも好評のようでした。

分科会は(欲張って)3つも立ち上げたので準備が大変でした。今回、分科会企画で意識したのは、モデル授業案を作るだけでなく、それを必ず授業として実践し、弁護士からだけでなく学校の先生との共同発表の形をとること、でした。徹底して現場目線を大切にしてみる、という方針で臨んだのです。なので、協力して下さる学校の先生をこの企画に巻き込む必要があります。心当たりのありそうな、力を貸してくれそうな先生方の顔を思い浮かべ、連絡をとりました♥今まで、法教育を通じて知り合った先生方との人間関係を大切にしてきて、本当に良かった、と思えたのがこの部分でした(かなり無理をお願いしたのかもしれませんが(^_^;))。

公法系は憲法、特に立憲主義&選挙の意義をとりあげることになったのですが、折しも公職選挙法の改正で選挙権年齢が18歳以上に引き下げられたのでタイムリーなテーマとなりました。甲木先生をキャップに、柏薫先生が若手委員を指導しながら警固中学校(3年生)での実践に向けて頑張ってくれました。

私法系は消費者教育の意味合いも込めて、契約の部分を、学校で喫緊の課題となっているネットモラル授業(ネットゲームやネットショッピングを素材にしたもの)と関連づけて行うことにしました。これは、家庭科や生徒指導の先生など、社会科以外の教科でも法教育が広く関連することを知っていただき、間口を拡げたかったからです。塗木先生と日浅先生を中心に、若手委員も奮起し筑紫丘中学校(2年生)の授業に臨みます。

言語活動は、主に国語の先生方を念頭に置いたのですが、諸々の理由で、ここだけは高校生を念頭においた授業スタイルにすることになりました。かつて受験予備校で本格的に小論文の指導経験のある八木先生にお願いし、私・春田が一コマ目にオーソドックスな法教育の授業を行うのと併せた形の授業として筑紫女学園高校(3年生)に打診し、快諾いただきました(授業の様子はNHKニュースや新聞でも報道されました)。

全体会では、相原先生の司会のもと、学校の先生方だけによる法教育の取り組み事例として紹介するべく、頑張っておられる宗像地区の中学校社会科研究会を代表して城山中学校(3年生)の先生方に発表して頂きました。

当日は、用意していた席を大きく上回る参加者を得(約100名)、立ち見の人が会場外にあふれるなど大盛況でした。質疑応答の場面では、にわかにクローズアップされてきた"主権者教育"、どうする?!に関し、非常に関心が高い様子が窺え、最後、お土産として諫山先生を中心に用意した教材集もお渡しし、たくさんのアンケート結果も得ることが出来ました。セミナーの様子は西日本新聞などメディアにも取り上げられました。総合司会の鎌田先生、ありがとうね!

【広報活動と今後のこと・・・】

個人的には、一番大変だったけど、一番今後につながったかな、収穫だったかなと思ったのは、後援名義を頂戴したりした各種研究会(福岡県・福岡市中学校社会科研究会や福岡県高等学校公民科研究会、福岡市中学校技術・家庭科研究会や福岡県高等学校国語科研究会)の会合や各教育委員会、私学協会、県教育センター等を訪れ、このセミナーの広報活動をしたこと自体、先生方の集まりに直接参加させていただき、その場で直接、学校現場の先生方とお話しが出来たことです。時間とエネルギーが必要でしたが今後の法教育委員会の活動を普及する上で、じわりと、でも確実に繋がっていくことを実感できました。

弁護士は、やっぱり憲法や法律の"先生"として学校や市民の方々から期待されているんだ・・・そういうことも実感できた経験となりました。

その他、アンケート結果で見えてきた多くの課題やヒントを宝物にして、今後、法教育委員会の活動につなげていきたい...心からそう思えた充実のセミナーでした。何よりも今回のセミナー企画が成功したのは、各委員それぞれが自分の持ち場で精一杯頑張り、力を合わせたからだと思い、嬉しかったです。参加した教員の方々からは是非ともこのようなセミナー企画を年に1~2回でも続けていって欲しい、たくさんの同僚を連れて来ますから~などの声も頂きました。
この記事を読んで、私も是非来年は!と思っていただけたら、どうぞ法教育委員会に御参加下さいね!委員一同、お待ちしております。Fin

2015年9月 1日

「転ばぬ先の杖」(第18回) 「交通事故に遭ったら早期に弁護士に相談を。」

会 員 宮 田 卓 弥(55期)

私の所属する事務所は、交通事故の案件を比較的多く扱っています。

この「転ばぬ先の杖」のコラムとして、交通事故の弁護士への相談を取り上げたいと思います。

交通事故は、日常生活の中でどんな方にも起こる可能性のある事ですが、ひとたび事故に遭うとその後の人生を左右するような事態にもなりかねません。その中でも、私がご相談を受ける中で感じることが多い、交通事故に遭った場合の早期相談の重要性について述べたいと思います。

1 交通事故発生件数の多さ

福岡県は他県に比べて交通事故が多く、平成25年には、4万3678件発生しています。この件数は、全国でワースト3位であり、福岡での交通事故の多さを物語っています。

実際に私たち弁護士が受ける相談においても、福岡県内での死亡事故、介護を要するような重大事故も多く、被害者救済の重要性を痛感しています。

2 早期相談のすすめ

私たち弁護士による交通事故被害者の救済という活動を行っていく中で、特に重要だと感じることがあります。

それは、交通事故直後のできるだけ早い時期に、弁護士に相談・依頼をすることです。

交通事故の被害に遭うのは、ほとんどの方が人生に一度のことです。突然の事故の後に、ご本人だけでなくご家族の方々も心身共に余裕のない状態で、警察、病院及び保険会社等様々な対応を求められます。何の知識もない状態では、どこに相談し、どんな対応をすればいいのか分からないというのが事故に遭われた多くの方の実情です。

しかしながら、事故後に警察、病院及び保険会社等へ適切な対応を行うことが、その後受取ることが出来る補償内容に大きく影響します。弁護士が早期に介入することにより、事故に遭われた皆様の悩みをお聞きし、関係各所に適切な対応を行うことが可能となります。

また、後遺症が発生しそうな重大な交通事故の場合には、症状固定の前に、弁護士への早期の相談が特に重要だと考えています。

なぜならば、交通事故によって後遺症が残りそうな場合には、交通事故の直後に適切な治療を受けていることや、後遺障害診断書の内容が適切かどうかによって、被害に遭われた被害者の方の実際の後遺症に見合う後遺障害等級が認定されないおそれがあるからです。適切な後遺障害等級の認定を受けるか否かによって、金額にして数千万円の賠償金の違いが出てしまう場合があります。適切で十分な補償を受けることは、ご本人やご家族が抱えて行くかもしれない負担を少しでも軽減できると思われます。

早期に弁護士に相談することで、症状固定の前の段階から、後遺障害の認定における対応や、その後の生活のことまで見据えたアドバイスをすることが可能なのです。

3 弁護士費用について

弁護士費用についてご心配される方も大変多いです。ご相談のタイミングが遅くなることの原因の一つではないかと考えています。

交通事故による怪我で就業が出来なくなっておられる方にも、早くご相談いただきたいのですが、ご本人の収入が絶たれていることにより費用の面で、躊躇されることも無理はないと思います。

しかしながら、交通事故の場合、法律相談料が無料であったり、弁護士費用を後払いにしてもらえる場合も多くあります。

さらに、ご自身又はご家族の自動車保険に「弁護士費用等補償特約」がついていれば、弁護士に依頼した場合の着手金や報酬金が、通常300万円までは、保険会社が支払ってくれます。つまり、弁護士費用が300万円の金額の範囲内であれば、弁護士費用を自己負担なく弁護士に依頼し、示談交渉や裁判を進めることができます。

このように、交通事故の相談に関しては費用の面でもご心配いただくことが少なくなってきていますので、お早めに弁護士にご相談いただく事をお勧めします。

4 弁護士の探し方

弁護士会の相談センターで相談する方法がありますが、最近では、インターネット検索で弁護士を探される方も多くいらっしゃいます。
交通事故に遭われた方が、情報収集にパソコンやスマホを使用される方も増えてきていると感じています。弁護士をお探しの方は、そのような情報発信を参考にされて、弁護士を探されてみるのも一つの方法ではないかと思います。

あさかぜ基金だより あさかぜにおける養成について

弁護士法人あさかぜ基金法律事務所 弁護士
中 田 昌 夫(67期)

私が、あさかぜ基金法律事務所に入所してから、9か月がたちました。
当事務所での養成期間は、だいたい2年程度と言われているので、すでに養成期間の3分の1ほどを終えたことになります。月日の経過の早さには驚かされるばかりです。
今回は、当事務所での養成の実情について、これまでの活動を振り返りながら、ご紹介させていただきたいと思います。

まずは、受任事件を通じた養成活動についてです。
弁護士過疎地においては、弁護士の数が少ないため、多種多様な事件が持ち込まれることになります。
そのため、当事務所の弁護士は、弁護士過疎地への赴任を見すえ、さまざまな種類の事件に対処する能力を養う必要性があります。
そこで、当事務所では、弁護士が法律相談等を通じて事件を受任するほかに、外部の事務所の弁護士に協力していただき、共同受任事件を通じて幅広い種類の事件を受任することができるよう、配慮いただいています。
ことに共同受任事件においては、一緒に担当させていただいている弁護士の活動を拝見しながら、事件処理の奥深さを実感するとともに、多くを学ばせていただいています。
たくさんの弁護士にご指導、ご協力をいただき、日々、感謝の気持ちで一杯です。この場をお借りして、改めてお礼申し上げます。

次に、事務所経営に関する養成についてです。
当事務所の弁護士は、事務所の経営についても、主体的に取り組んでいます。
赴任先において、事務所の経営や顧客開拓がうまくいかなければ、事件処理がとどこおり、法的救済を必要としている人々の依頼に応えられないことになりかねません。また、赴任先において、事務所の経営を安定化させ、広く顧客を開拓することができれば、弁護士過疎地域への弁護士の定着がより容易なものとなるからです。
具体的には、毎月、事務所内で会議を開き、キャッシュフローのデータを確認しながら、事務所の経営改善のために、どのような点を留意するべきか、どのような工夫ができるか、意見をかわしています。
また、広報や、受任ルートの開拓、事務局や弁護士の採用活動について、外部の事務所の弁護士からアドバイスをいただき、試行錯誤を重ねつつ、取り組んでおります。

こうして、当事務所における養成の取り組みを振り返りながら、改めて、貴重な機会をいただいていることを実感いたします。
もっとも、限られた時間の中で、どれだけのことを学び取れるかは、被養成弁護士の目的意識と積極性にかかっているものと考えます。
そうした目的意識や積極性を常に維持するうえで、弁護士過疎地へ司法サービスを供給し、法の支配の貫徹に寄与するという、同じ目標をもった被養成弁護士とともに、切磋琢磨できるという事務所の環境もまた、えがたいものだと思います。
養成の成果を、弁護士過疎地において結実できるよう、初心を忘れることなく、これからも精進を重ねていきます。

ITコラム 「無料でできるメール誤送信対策」

会 員 壹 岐 晋 大(65期)

1.はじめに

依頼者とのやりとりや会務など、メールでの連絡は頻繁になされています。その中で怖いのがメールの誤送信。典型的なものとしては、宛先を間違える、添付ファイルを間違える、「Bcc」で送るはずが「cc」で送ってしまうなどがあります。これらは守秘義務違反や情報漏洩等の責任問題に発展する場合も有り得ます。

メール誤送信対策については有料のソフト等を利用されている方もいると思いますが、今回は無料でできる範囲でのメールの誤送信対策についてまとめてみます。

ちなみに、一般社団法人ビジネスメール協会が発表している「ビジネスメール実態調査2015」によれば、ビジネスメールの送受信でもっとも利用されているメールクライアントは、Outlook(31.47% ちなみに2位はGmailの31.27%)とのことだったので、下記に述べる手順についてはOutlookのみ記載します(Outlook2010での手順です)。

その他のクライアントでも設定できる場合もありますので、参考にしていただければと思います。

2.対策(1)【送信フォルダに一旦預ける】

メール送信後に誤送信に気づくことは多いです(送信前に気づけば送りません。当たり前です。)。そこで、メッセージを一度送信フォルダにあずけて、再度チェックした上で送信をするという対策が考えられます。実際に送信前にチェックするということは有効な誤送信対策といえますが、面倒ではあります。

(手順)

設定時:「ファイル」→「オプション」→「詳細設定」→送受信「接続したら直ちに送信する」というチェックを外す

送信時:「送受信」タブから「すべてのフォルダを送受信」

3.対策(2)【オートコンプリート機能を無効にする。】

アドレスを途中まで入力すると、自動的にアドレスが全て表示される機能があります(オートコンプリート機能)。非常に便利な機能ではありますが、宛先間違いによる誤送信のもとです。全会員への誤送信回避のためにも「all」などから始まるアドレスを使っている知り合いがいる方は要注意です。

これと似た対策としては、アドレス帳の登録名を分かりやすくしておくというのは有効です。

(手順)

「ファイル」→「オプション」→「メール」→「メッセージの送信」「宛先、CC、BCCに入力するときにオートコンプリートのリストを使用して名前の候補を表示する」のチェックを外す

4.対策(3)【遅延送信】

対策(1)と似たものですが、送信ボタンを押して、1分から数分程度、送信をキャンセルできるように設定しておけば、誤送信が防げる場合があります。ちなみにGmailにも30秒送信を取り消せる機能があります。

(手順)

「ルール」→「仕訳ルールと通知の管理」→「新しい仕訳ルール」→「送信メッセージにルールを適用する」→「次へ」→「次へ」→「はい」→「指定した時間分後に配信する」にチェック→「指定した時間」→「1分後」に設定→「次へ」→「次へ」→名前を入力→「完了」→「OK」もしくは「適用」

5.その他対策

以上、代表的な対策を3つほど紹介しましたが、その他にも

  • CCを使うときは、文中に「Cc:○○様」と記載する。
  • 「Outlook宛先確認アドイン(拡張機能)」を入れて、メール送信時に宛先を確認するダイアログを表示する。
  • ファイルの添付にはパスワード付きのZIP圧縮ファイルを使用する。
  • 月報に誤送信についての記事を書いて自らプレッシャーをかける。

などの対策も考えられます。

ちなみに、私はThunderbird(上記実態調査3位:11.07%)を使っていますが、「Check and Send」というアドインを入れています。これは、(1)事前に指定しておいた単語(「添付」等)がメッセージ中にあり、添付ファイルがない場合、(2)事前に指定しておいた単語がメッセージ中にある場合、(3)宛先がアドレス帳にある(ない)場合等に、確認メッセージがでるように設定ができます。 それでも、メールの誤送信をしてしまった場合は、当たり前ですが速やかに削除を依頼することが重要になると思われます。

ホームページ委員会だより

ホームページ委員会委員長 菅 藤 浩 三(47期)

平成27年7月7日に、外部講師をお招きして情報セキュリティガイドライン研修を、弁護士向けに当委員会主催で実施しました。

多くの会員にご参加いただき、これで今年度の当委員会主催の研修企画はオシマイにしたいなと安堵したのもつかの間、今年度中に当委員会と他委員会との共催のかたちで、あと2つの研修企画が開催されることになりました。

1つは、年度当初から予定していた外部講師をお招きしてのIT利用研修です。自由と正義平成27年2月号の特集で「弁護士業務におけるIT利用入門の入門」を執筆された滋賀弁護士会の野田隼人弁護士を講師にお招きして、当委員会の委員も所属している任意の勉強会、IT法研究会とのコラボ企画を、12月4日(金)夕方に弁護士会館で実施します。

自由と正義の特集は体裁上活字ばかりが並んでいますけれども、そこに載せることができなかったITを利用しての業務時間短縮や隙間時間の合理的活用など、実践者ならではの貴重な話が聞けるものと確信しています。

もう1つは、急きょ実施が決定した弁護士業務におけるマイナンバー研修です。9月4日(金)にも日弁連主催で実施されますが、あっという間に席が埋まったということで、別の切り口から10月27日(火)夕方に当委員会所属の吉井和明弁護士に講演していただきます。

マイナンバーは平成27年10月から12ケタの番号が個人ごとに1つ、法人にも13ケタの番号が1社ごとに通知されます。番号漏えいにより不正に利用される場合を除き、一度付与されたマイナンバーが変更されることはありません。平成28年1月から、年金労働医療福祉といった社会保障・税・災害対策における行政手続でマイナンバーが必要となります。

そういえば10年ほど前に住基ネットが導入されましたが、あれとの違い自体ほとんど知られていませんし、マイナンバーの場合は近い将来の民間利用(例:預金口座との関連づけの強制)も視野に入れられているようです。

少なくとも平成28年1月から施行されることから、マイナンバー制度への賛否はさておき、それがどういう制度で弁護士業務にどうかかわってくるのかはきちんと知っておく必要があります。ちなみに、住基ネットにより行政機関が住民の本人確認情報を収集管理利用することは憲法13条の保障する個人に関する情報をみだりに第三者に開示公表されない自由を侵害するものではないという最高裁判例平成20年3月6日判例時報2004号17頁が出ています。
ITの進化や個人情報を巡る法改正により、市井の弁護士が学ばなければならない内容がますます増える一方です。会員の皆さんも、こういうITに関する企画を実施してほしいという希望があればぜひお寄せ下さい。

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