福岡県弁護士会コラム(会内広報誌「月報」より)

月報記事

「成年後見の実務」研修 ~新規登録会員や若手会員対象として~

会 員 吉 原 育 子(64期)

1 はじめに

平成28年1月27日、「成年後見の実務」研修が行われましたので、ご報告いたします。参加者は65期から68期の方が多かったようです。

2 最高裁判所企画・作成のDVDの放映

最初にDVDを放映しました。40分弱のDVDです。後見制度支援信託についての説明もあり、コンパクトで大変分かりやすかったです。同じ内容ものが、最高裁のHPから動画で閲覧できますのでお勧めです。

3 「成年後見の実務~申立手続編~」(永田一志先生ご講義)

後見・保佐・補助のどの類型に該当するかの判断ですが、福岡家庭裁判所のHP「診断書付票」の書式の説明が非常に分かりやすいとのことでした。もっとも、最終的にはお医者様の診断書に基づくことになります。また、昨今、申立件数が増加してきています。早めに審問の予約をすることが肝要です。

後見相当の方の「本人申立」をする際ですが、永田先生が個人的に使っておられる判断の物差しは、「後見制度」は理解できないが、(1)誰かに助けてもらいたいということは分かる(2)委任状に名前が書ける(3)申立代理人である弁護士のことは分かる、の3点で判断されているとのことでした。なお、後見相当の方の「本人申立」をされる際は、法テラスとの契約能力との関係で民事扶助制度が利用できません。この点も注意です。

4 「成年後見の実務」~成年後見就任後の職務等~(岡田武志先生ご講義)

折しも、福岡で数十年ぶりの大雪が降って数日後の研修でした。冒頭に岡田先生より、お住まいの地域が断水になったお話、そのお話の流れから、後見人の職務は生活に関わる内容も多いので、いきいきセンター、役所、ケアマネージャー等とこまめに連絡を取ることが大事であるとのお話がありました。

就任後は、財産管理や裁判所への財産報告を行うことがメインになってくるとのことで、やはりこの辺りのお話が一番耳に止まりました。日々の出納については、「後見人業務経過表」などと題してエクセルで適宜つけておくことが大事とのことです。新たに口座を作る場合でも、口座の名義は絶対に後見人の個人の名前では作らないように、口座を作った場合は福岡県弁護士会の預かり金規定に従い届け出るようにとのことです。現在の家裁の運用では、流動資産が一定額ある場合(1200万円以上が目安)は、原則として、後見制度支援信託の利用が検討される事案となりますので依頼者の方へのご説明にも注意が必要です。
いざ就任してみると判断に迷うこともあります。処理に迷うときは家裁のHPのQ&Aを見たり、先輩弁護士に相談しましょう!とのことです。盛りだくさんで大変勉強になった研修でした。

2016年2月 1日

あさかぜ基金だより

弁護士法人あさかぜ基金法律事務所 弁護士 服部 晴彦(68期)

1 自己紹介

平成27年12月にあさかぜ基金法律事務所に入所しました、所員弁護士の服部晴彦です。実務修習(68期)は出身地の佐賀でした。

以下、私のこれまでの経歴とあさかぜ基金法律事務所を志望しました理由について話します。

私は、佐賀県の東部で生まれ、地元の高校を出た後、進学した大学では政治学を専攻していました。大学を卒業した後、国家公務員として関東で勤務することになりました。

国家公務員として、訟務業務、すなわち、国を当事者とする訴訟に関する業務を担当したことが法律家を目ざそうと思ったきっかけです。訟務では、裁判官や検事出身の訟務検事が主張書面の起案などの訴訟活動を進め、訟務官や事務官が事務方として、書面の提出、証拠の整理、他省庁との折衝などを行います。私は、事務官として、福岡高裁管内の行政事件を担当していましたが、大学では法律を専門的に学んでいなかったので、日々の業務をこなすのに大変苦労しました。しかし、業務を通じて裁判・司法が生活に密接に関わっていることを実感し、法律家として訴訟に携わりたいと思うようになりました。

退職して法曹を目指すのには勇気が要りましたが、一度きりの人生なのでやるだけやってみようと、法科大学院試験に合格したのを機に退職し、佐賀県の実家から福岡市箱崎にある九州大学法科大学院に入学しました。そして、平成26年の司法試験で合格できました。

平成26年の夏に司法試験受験生向けの実務演習講座に参加したところ、その懇親会で所員弁護士の青木一愛弁護士(65期)からあさかぜ基金法律事務所が司法過疎地域に赴任する弁護士の養成事務所であることを聞きました。また、同年11月に修習生向けの合同事務所説明会で中嶽弁護士、西村弁護士から、あさかぜ基金法律事務所の詳しい説明を受けました。

これまで司法の手が届かなかった地域に、弁護士を派遣して司法サービスを受けられるようにするというあさかぜ基金法律事務所の設立趣旨に感動を覚え、弁護士過疎地域で弁護士として働きたいと思うようになりました。また、地元の九州で働きたいとの思いもありました。

あさかぜ基金法律事務所ならば、弁護士過疎地域で働くための経験・能力を身につけることができる、自分の進路の希望と合致すると思い、選考・面接を受け、縁あって入所することになりました。ロースクール生時代を過ごした福岡で働くことができてうれしく思います。

2 あさかぜ基金法律事務所の紹介と近況報告

あさかぜ基金法律事務所は、ご承知のとおり、司法過疎・偏在問題に関して、若手の弁護士を養成、派遣することを目的として、設立された法律事務所です。所員弁護士は、1年半から2年程度の養成期間を経て、九弁連管内の弁護士過疎地域に赴任します。

設立当初からの赴任実績は、ひまわり公設事務所(対馬3名、壱岐2名、西都、島原中央、小林各1名)、法テラス事務所(高森、指宿、五島、徳之島、壱岐各1名)、独立開業2名(福岡県大川市、熊本県人吉市各1名)、合計15名の弁護士が赴任あるいは独立開業しています。

あさかぜ基金法律事務所では、平成27年12月を持ちまして、中嶽修平弁護士(66期)が退所し、九州弁護士会連合会のご了解を得て、平成28年1月より、熊本県人吉市で独立開業することになりました。人吉市は、人口約3万4000人、鹿児島県との県境に位置し、球磨川が流れる自然豊かな街ですが、開業している弁護士は2名で、熊本県内では最も対人口比で弁護士人数が少ない弁護士過疎地域です。

私は、入所の時期の関係でわずか1週間という短い期間でしたが、中嶽弁護士と一緒に働くことができ、その温かい人柄や仕事への熱心な姿勢に触れることができました。奥様とともに二人三脚で事務所をやっていくとのことですが、新天地においても活躍されるものと確信しています。

あさかぜ基金法律事務所は、平成28年1月現在で、66期1名、67期2名、68期1名の4名の所員弁護士が在籍しており、68期はあと1名が2月に入所予定です。

3 おわりに

あさかぜ基金法律事務所は、管理委員会、運営委員会の委員の皆さま、指導担当・あさかぜ応援団など、さまざまな支援・協力を受けて、弁護士養成、事務所運営を進めています。今後とも福岡県弁護士会会員の皆様の支援をいただきつつ、これに甘えることなく、所員一同、精進していく所存です。引き続きのご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願い申し上げます。

対外広報委員会だより パックン!きょろぱく KBCテレビ番組「聞かせて!本当にあった"争族"話」に出演しました♪

委 員 春 田 久 美 子(48期)

今回は、テレビ局(KBC)のバンセン用ミニ番組に出演したときの裏話の巻!です・・・。

ん?バンセンって?・・・そうそう、番宣、つまり番組の宣伝のことです(ギョーカイの人って、短縮するとか逆さまにするとか本当にお好きですよね~~)。

対外広報委員会では、テレビやラジオに当会の法律相談センターをPRするためのCMを有料で流していますが、局側から、その"おまけ"つまりパブリシティとして様々な番組に登場させてもらえる枠をいただいています。今回はそのパブリシティとは別に、急遽、執行部のもとに誰か出演してくれる弁護士さんはいませんか~との連絡があった、とのことで対外広報委員会に話が回ってきて・・・という経緯で出演することになったのです。

宣伝する番組はテレビ朝日の『遺産争族』。伊東四朗さん演じる大企業の社長さんの遺産を狙って家族が争族に・・・という怖~い(?!)番組です。主演は、あの!ゲゲゲの女房に出ていたのが好きだった♥向井理さん&決め台詞「愚か者~」がちょっぴり怖かった(>_<)榮倉奈々さん。

担当ディレクターさんから申し渡されたリクエストは、「今までで一番こじれた話」や「珍しい相続話」を是非!とのこと・・・タイトルが「本当にあった、おそろしい話」なのも思い返し、さぁ~て何を喋ろうかなっ♪

マスコミの方、とりわけテレビ局は、絵になりやすく(ビジュアル的にインパクトがある)、ほぉ~っとかへぇ~という意外感、驚き感あふれるネタ(素材)を喜ばれますので何とかしたいのですが、いつもちょっぴり悩ましいのが"本当にあった"という部分です。私たちの仕事には守秘義務がありますから、もちろん本当にあった事件のことをそのまま喋るのはNGですよね・・・だから、生の事件の持ち味が損なわれない程度にちょっぴりデフォルメして喋るようにしています。

打ち合わせの段階で、私なりに用意してみたネタを3つ程、提案してみます。ディレクターさんの反応を見ながら、もう少しネタを加えてみます・・・。じゃあ、これとこれと~とお好みのネタをチョイスされ、それを台本にしていただけるということで打ち合わせは取り敢えず終了。あとは台本のやりとりを何往復かして、当日を迎えます。

指定された日時に北天神のKBCに伺うと早速7階に案内され・・・あっちょっとお化粧室に~(いつも思うのですが、テレビ局のトイレには、大体、どこにも、うがい薬と紙コップが置いてあるんですよね~やっぱりアナウンサーは喉が命、なのかな♪)最近あまり履かなくなった高めのハイヒールに履き替えます(気分を上げます(*^_^*))。いよいよ、アナウンサーの方お二人(小林アナ&増田アナ)が待つ会議室に。すぐに始められるよう大きなカメラがスタンバイされていて、CA(カメラアシスタント)さんや照明さんが大きな傘のような機材を移動させています。先ず、私が最初にすることはマイクをつけること。スカートの場合はその場ですぐに付けられるのですが、今日の私はワンピース!そうなのです・・・その場合は、音声さんからマジックテープで出来ている長~いベルトのようなものを受け取って、(トイレなどで)腰に巻いて器具を留める必要があるのです。それから首もとに小さなマイクピンを付けて~という具合。はい、用意はOKです。あとは、2人のアナウンサーの方とお互い自己紹介をして和み、軽~く進行を確認しながら打ち合わせ。ディレクターさんが用意してくれた当日版台本に目を通すと、3つのネタの順番を入れ替えた方が良さそう・・・と思ったのでお願いしました。さあ、いよいよ本番です。照明があかあかと灯されます(熱っ)。出だしの「聞かせて~!本当にあった~」の部分、アナウンサーのお二人が耳に手を当てダンボのようにするのですが、その仕草が二人揃わなかったようでやり直し・・・今度はバッチリです(当たり前ですが、プロのアナウンサーは声の大きさはもちろん、声音に独特の説得力があります)。

台本に従って進んでいくのですが、アナウンサーの方から思わぬ質問が出たりすることも。法律相談と同じだわ、と思いながらこなします。そんな収録の様子をじ~っと座って見ていらっしゃるのはプロデューサーの方。。。この方、ほとんど表情が変わらず、ちょっとそれが不・気・味かも・・・と思っていたら、やはりというか、「もってドンドン喋ってもらって」とディレクターさんに指示が。。。。あまり面白くないのかな~と思いつつ、これでもか、これでもかって感じで、思いつくままのエピソードを5~6個は喋ったでしょうか・・・ようやくOKが出ましたが、実際に映像に流れたのは、最初に私が提案した3つの中の2つでした♥(なぁ~んだ、これで良かったのか~と安心しました)。画面には〈家政婦は見た!〉と〈遺言書の内容に家族騒然〉の文字が・・・。私の解説が終わると小林アナが、すかさず「ドラマのラストよりドラマっぽいですね~」と受けて下さり、お上手だわっと感心しながら収録は終わりました。オンエアは、番組の予告の合間に絶妙なタイミングで私たちのお喋りが効果的なBGMとともに流れるように仕上がっていました(編集がさすがです!)。

収録が終わった後、「でも、親も住まなくなった自宅って欲しい人とかいるんですかぁ?」とか「代償金っていうけど、現金ない場合は、どうしたらいいんでしょうかね~」という鋭い質問が次々に繰り出され、私がそれに答えていると、「そっちの方も面白いですよね~!だって知らなかったですもん。」「視聴者の人も知らないと思うな~。あ~教えてあげたい!」と興味津々って感じで言われたので、私は「是非、続編を(しましょうね)♪」とにっこり返してスタジオを後にしました。映像は、「KBCムービー 遺産争族」で検索するとネットでご覧になれます。2月には委員会としての企画、KBCラジオ「まずは、弁護士に聞いてみよう」(毎週金曜15時~15時10分放送)も流れます。委員会のイベントなどで告知したいものがありましたら是非ご連絡下さいね、お待ちしております。

『全国一斉奨学金問題ホットライン』

生存権の擁護と支援のための緊急対策本部員 阿比留  真由美(66期)

平成27年11月18日13時から19時、日本弁護士連合会及び各弁護士会主催『全国一斉奨学金問題ホットライン』が開催されました。

奨学金問題を抱える相談者(主債務者・連帯保証人・親族等)から、各弁護士会の担当者が電話で相談を受け、当会では、生存権緊急対策本部の委員4名が担当しました。

教育費の高騰及び経済的困窮者の増加に伴い、進学費用を奨学金に頼る人が増加しましたが、労働環境の悪化や就職困難、収入の不安定さにより、奨学金債務の返済に窮する人が増加しています。特に、独立行政法人日本学生支援機構は返済困窮者への対応が厳しく、返済免除・猶予の条件も制限し、返済に窮する若者及びその家族が経済的・精神的に追い詰められています。

当会に対する相談件数は、合計26件であり、返済期限の猶予・減額返済等の方法を知りたい、延滞金が多いため返済しても減らない、奨学金の取立てが厳しいなどの相談が多く、日本学生支援機構や制度自体に対して不満を持たれている方もいらっしゃいました。

病気や低収入で返済が不可能、連帯保証人が父母というケースが多く、高齢の父母が返済するも延滞金が多いため返済しても一向に減らない、連帯保証人に迷惑を掛けられず、自宅を手放せないなどの理由から破産できないという方もいらっしゃいました。

本企画を通じ、猶予及び免除条件の緩和や給付制への移行など、奨学金制度の変更に向けて活動する必要性を強く感じました。

遺言・相続全国一斉相談会

高齢者障害者委員会委員 原 口 圭 介(63期)

お世話になります。高齢者障害者委員会の原口と申します。

去る平成27年11月16日、「遺言・相続全国一斉相談会」を開催いたしましたので、報告いたします。

1 いいいごんの日(11月15日)にかけての相談会であり、本年は、各地の弁護士会による無料電話相談と、各地の信用金庫での無料面談相談が行われました。

2 福岡での結果は、下記詳細のとおりです。

電話相談は、広報の関係からか、件数がやや伸びなかったようです。

面談相談は、福岡信用金庫、遠賀信用金庫、田川信用金庫にて行われましたが、予約でほぼ埋まり、好評だったようです。

3 私は、遠賀信用金庫古賀支店で面談相談を担当しました。相談内容は、遺言作成、遺留分、特別受益、成年後見、事業承継、相続税等で、相談者は、すべて信金の紹介による方々でした。

地元密着を旨とする信金は、地元の優良顧客の弁護士ニーズを把握できる機会・能力があるとも考えられ、弁護士と信金との連携は、お互いにとって有意義なものなのではないかと感じました。なお、信金側からは、このような相談会の開催については、大変ありがたいとのお話を頂きました。

4 以下、詳細です。

(1) 日時:平成27年11月16日(月)
     10:00~16:00

(2) 主催:日本弁護士連合会、信金中央金庫、各地の弁護士会、NPO法人遺言・相続リーガルネットワーク

(3) 結果:(福岡部会)
会館 7件(うち電話4件、面談3件)
遠賀信用金庫古賀支店 5件(面談)
福岡信用金庫本店   3件(面談)

(北九州部会)
会館 4件(うち電話3件、面談1件)

(筑後部会)
会館 1件(電話)

(筑豊部会)
田川信用金庫伊田支店 4件(面談)

2016年1月 1日

あさかぜ基金だより ~あさかぜを卒業します~

弁護士法人あさかぜ基金法律事務所 中 嶽 修 平(66期)

1月から人吉市で

あさかぜの弁護士は、2年の養成を受けたあと、九弁連管内の弁護士過疎地域に赴任または開業することになります。私があさかぜに入所してから2人の先輩弁護士があさかぜを卒業していきましたが、ついに私自身があさかぜを卒業する順番となり、平成28年1月から、弁護士過疎地域の一つである熊本県人吉市にて独立開業することになりました。

あさかぜ事務所での養成について

あさかぜ事務所は、弁護士過疎地域に赴任する弁護士を養成するための事務所であり、福岡県弁護士会のあさかぜ基金法律事務所運営委員会や九弁連のあさかぜ基金管理委員会をはじめとして、多くの弁護士先輩に携わっていただいています。

私も、あさかぜ委員会の委員をはじめとして、指導担当、あさかぜ応援団など多くの弁護士先輩と事件をご一緒してきました。そのため、事件処理にあたりさまざまなノウハウを吸収することができ、とても貴重な経験を積むことができました。さらに、あさかぜの事務所会議を通じて、事務所経営のあり方も考えることができ、事務所の経営者としての経験も積むことが出来ました。人吉市でもこれらの経験を活かしていきたいと思います。

人吉市での独立開業について

私の出身地は、熊本県球磨郡水上村という人口2400人ほどの小さな村で、人吉市から車で1時間のところにあります。また、私は、大学を卒業したあと、平成16年4月から平成20年3月まで人吉市役所で勤務していました。人吉市役所時代には、地元消防団にも所属し、地域づくり活動にも参加するなど、地元住民とふれあう機会が数多くありました。そのような縁もあり、将来的には人吉・球磨地域に戻ろうと考えていました。

私は、あさかぜでの養成を終えたら、ひまわり基金法律事務所への赴任を考えていましたが、養成が終わるタイミングでのひまわり基金法律事務所の後任所長の空きがありませんでした。そこで、養成終了後すぐに人吉市での独立を検討しましたが、開業資金や子どもの教育面など、いろいろ不安がありました。しかし、開業資金については日弁連による偏在対応弁護士等経済的支援、子どもの教育面をはじめとする生活全般については妻のバックアップにより、それらの不安を解消することができ、人吉市での独立開業を決心しました。

私の事務所が入居するテナントは、国宝に指定されている青井阿蘇神社の蓮池のすぐそばにあり、蓮池を眺めるには絶好のロケーションとなっています。蓮池の周囲には桜も植えてあり、桜と蓮の花が心を和ませてくれます。さらに、昼過ぎにはSLの汽笛が鳴り響き、静かな空間に心地よいアクセントとなっています。人吉市に来られたときには、ぜひ、事務所にお立ち寄り下さい。

人吉市の魅力について

福岡市内から人吉市までの交通アクセスは格段に良くなっており、JR九州のB&S(高速バスと新幹線のセット)を利用すれば、2時間もかかりません。

人吉市といえば球磨焼酎と温泉が有名です。また、日本三大急流の一つである球磨川では、球磨川下りやラフティングを楽しむことができます。さらに、鰻をはじめとする美味しい食べ物もたくさんあります。

ラフティングを目一杯楽しみ、温泉でその疲れを癒やし、鰻と球磨焼酎を堪能するという日帰りツアーを企画してはいかがでしょうか。もちろん、現地の案内役を務めさせていただきます。

おわりに

私はあさかぜを卒業しますが、あさかぜでの経験は一生の宝となりました。今後は、人吉・球磨地域において、司法サービスを必要としている住民のために全力を尽くしていきます。

また、あさかぜには新たに68期の弁護士が2名加入します。あさかぜの弁護士一同、弁護士過疎問題解消への熱い思いを胸に抱きながら日々研鑽を積み、赴任の準備を着々と行っております。引き続き、ご支援ご協力をいただきますよう、よろしくお願いします。
最後に、あさかぜ委員会をはじめとする皆様には大変お世話になりました。本当にありがとうございました。

2015年11月 1日

「転ばぬ先の杖」(第20回) 暴力団等反社会的勢力との関係遮断の方策について

民事介入暴力対策委員会委員 藏 健一郎(55期)

暴力団等の反社会的勢力に対する規制強化の一環として、各都道府県で続々と暴力団排除条例が制定されたことは周知のとおりです。条例の内容は各都道府県により様々ですが、多くの条例では、暴力団側だけでなく、一般事業者側の行為も規制の対象となっている点に注意が必要です。

例えば、福岡県暴力団排除条例では、一般事業者に対して、暴力団員等への利益供与を禁止する規定が設けられています。具体的には、同条例第15条において、一般事業者が暴力団員等に対し、(1)暴力団の威力を利用する目的で金品等の利益を供与すること、(2)行う事業に関し、暴力団の活動または運営に協力する目的で、相当の対償のない(取引の対価に見合わない)利益を供与すること、(3)行う事業に関し、暴力団等に対し、情を知って、暴力団の活動を助長し、または運営に資することとなる利益の供与をすること、等が禁止されており、(1)に違反した場合には1年以下の懲役または50万円以下の罰金という罰則が設けられ、(2)に違反した場合も、罰則規定はないものの、公安委員会の是正勧告の対象となるうえ、正当な理由なくこれに従わない場合には公表できることとされています。

暴力団側だけでなく、一般事業者側も規制、処罰の対象とされた理由は、暴力団側のみの取り締まりでは限界があり、活動資金のもとである事業者からの資金供給を絶つことが効果的という観点によるものです。しかしながら、裏返していうと、一般事業者が暴力団側の威力に屈して利益の供与(例えば、不当に高額な商品の購入)に及んだケースでも、単純に被害者として同情されるとは限らず、場合によっては勧告・公表の対象になるわけですので、一般事業者にとって非常に怖い一面もあります。

このように、現状では、暴力団等反社会的勢力と関係をもつこと自体が、事業存続にとって大きなリスク要因となってきているといえます。事業者の皆様方におかれては、このことを念頭におかれたうえ、(1)暴力団等反社会的勢力との関係を予め遮断するよう今まで以上に注意を払うとともに、(2)仮に取引先が暴力団等反社会的勢力であることが後日判明した場合は、速やかに取引を解消できる措置を予めとっておくことが必要と考えられます。

暴力団等との関係を事前に遮断するための方策としては、事業所内部における社員教育の徹底、不当要求責任者講習の受講の他、顧問弁護士制度等を活用し、日常的に外部の専門家と連携しておくことも有効です。また、何か問題が生じた場合は、早期に関係各機関(警察、暴力追放運動推進センター、弁護士等)に相談することが重要です。

一方、事後的に取引先が暴力団等であることが判明した場合の方策としては、取引契約書にいわゆる暴力団排除条項を予め設けておくことが効果的です。取引契約書の中に、(1)暴力団等反社会的勢力との取引を予め拒絶する旨の規定や、(2)取引が開始された後に相手方が暴力団等反社会的勢力であることを知った場合は、契約を解除してその相手方を取引から排除できる旨の規定(これらの規定が暴力団排除条項と呼ばれます)を設けておけば、速やかな取引解消のための大きな武器となります(前述した福岡県暴力団排除条例でも、当該条項を導入することが事業者の努力義務として規定されています)。

具体的な暴力団排除条項の作成にあたっては、各業界団体で作成されているひな型を参考にされてもよいですし、弁護士に個別に相談頂ければ、事業内容や実情に応じた適切なアドバイスが可能ですので、気軽にご利用頂けたらと存じます。

あさかぜ基金だより ~諸先生方より学んだこと~

弁護士法人あさかぜ基金法律事務所
弁護士 西 村 幸太郎(66期)

事務所経営に関する勉強会について

当事務所は、弁護士過疎偏在問題に取り組む事務所です。その一環として、来年1月には、当事務所の中嶽修平弁護士が、熊本県人吉市で独立する予定です。弁護士過疎偏在を解消する一助になると確信しています。

中嶽弁護士は、開業準備に奔走中ですが、その姿を目の当たりにしている私たち所員も、この機に、弁護士過疎地域に赴任後、あるいは独立後を見すえ、一緒に、広い意味での事務所経営の勉強をしていこうと思い、さまざまな勉強会を行ってきました。

事務所経営については、各事務所で、創意工夫を凝らして、取り組んでいるところであると思います。先輩弁護士のお話もうかがいながら、自分なりに、事務所経営について、深めているところです。以下では、思いつくままですが、とくに印象に残っている学んだことについて、記載してみます。

事務所経営を学ぶ意義について

なぜ、事務所経営について、学ぶ必要があるのでしょうか。

ある先輩弁護士はこう言います。弁護士は、社会正義の実現のため、成し遂げたい本懐があるはずだ。これを全うするための手段としても、経営をしっかり行うことは、重要なのだと。

またある先輩弁護士はこう言います。経営者の悩みが分からない者には、依頼は来ないと。特に、中小企業のオーナーが依頼者である場合などは、自分の事務所の経営もできていないような弁護士に、依頼したいと思うだろうかと。

そもそもの、経営を学ぶ意義についても、さまざまなとらえ方があることが分かりました。自分も、しっかりと考えていきたいと思いました。

具体的な人に向けた働きかけの重要性について

抽象的・理念的なことから、個別具体的な広報活動まで、さまざまなことを学びましたが、広報の在り方として、共通していると感じたのは、抽象的な誰かではなく、ある特定の具体的な人をイメージしながら、営業活動・広報活動をすべきだということです。

目の前の依頼者に対しては、当然、その人に対して全力でぶつかっていくべきです。これは、広報活動でも同じです。たとえば、現在、ホームページは、情報発信のための、1つの媒体として、浸透しています。このホームページの在り方1つをとっても、とにかく全般に向けたホームページより、法人なら法人、個人なら個人、経営者なら経営者、従業員であれば従業員、男性であれば男性、女性であれば女性といったように、メッセージを届けたい相手を具体的にイメージし、その人に向けた、その人に語りかけるような内容を目指すことにより、感銘力が異なってきます。もちろん、営業活動においても同様で、目の前にいる人に応じ、相手が何を求めているのか、どのような人に、どのようなことを依頼したいと思っているのかをイメージした、個別具体的なやり取りによって、目の前の人の心を掴んでいき、関係を築いていけるのだと思います。

あるべき弁護士像、事件との向き合い方について

私たち弁護士は、ゼネラリストでありスペシャリストであるべきだ。

私が、今後、胸に留めて活動していきたいと思った言葉です。つまり、弁護士として、どんな依頼にでも、一定程度は対応する能力が必要であるとともに、(少なくとも)実際に受任した事件については、高度の専門性をもって対応できるよう、研鑽を積まなければならないということです。それが、1つ1つの事件に、真摯に取り組むということでもあると思い、大変胸に響きました。そして、結局は、そうした積み重ねこそが、次の依頼を引き寄せていくのだということです。

思いつくままに、これまで学んできたことを述べてきましたが、これを実践できるかということこそが、問われていると思います。これらの教えを大切にし、自分でもしっかり考えながら、1日1日を大切に、今後も、精進していく決意です。

引き続き、よろしくお願いします。

「国際仲裁セミナー」開催のご報告

国際委員会・中小企業海外展開法的支援プロジェクトチーム委員
浜 田  宏(57期)

1 はじめに

月報8月号でご案内致しました、日本弁護士連合会主催・福岡県弁護士会共催の「国際仲裁セミナー」を、去る平成27年9月25日(金)に開催いたしましたので、ご報告申し上げます。

本セミナーは、弁護士、企業法務担当者等を対象として開催された無料セミナーであり、約100名程度のご参加を予定しておりましたが、後援機関による広報活動へのご協力を頂くことができ、事前に108名もの参加申込を頂き、当日も91名(弁護士53名、企業関係者27名、その他11名、実行委員会関係者を除く)もの方にご参加頂くことができました。

2 講演「国際商事仲裁の基礎知識と活用戦略~新興国取引・投資を視野に入れて~」

本セミナーは二部構成で開催され、第一部は、日弁連法律サービス展開本部国際業務推進センター・国際商事投資仲裁ADR部会委員である早川吉尚弁護士(立教大学教授)による講演「国際商事仲裁の基礎知識と活用戦略~新興国取引・投資を視野に入れて~」が行われました。

講演は、早川先生の豊富な学識と実務経験に基づく大変中身の充実した濃い内容でした。まず、新興国投資におけるリスクと法務戦略の必要性という観点から、新興国においては法的インフラ(法制度、裁判制度等)が未整備であったり、信頼性を欠くものであることも少なくなく、法的リスクヘッジ手段として国際仲裁法制を戦略的に利用することが有意義であることを強調された上で、国際仲裁法制についてわかりやすくご説明頂きました。国際商事仲裁の利点として、「国際的中立性」「専門性」「手続の柔軟性・迅速性(控訴審がない)」「秘密性(紛争の存在自体を秘密にできる)」「国境を越えた執行可能性(ニューヨーク条約の存在)」が挙げられ、具体的にご説明頂きました。問題点として、裁判では必要とされない仲裁人の報酬が負担となるのではという懸念については、国際商事紛争の解決におけるコストの大部分は弁護士報酬であり、仲裁手続の迅速性を考慮すれば、早期解決出来る場合には裁判手続よりも低いコストで解決できる場合もあるとご説明を頂きました。また、仲裁手続を利用するには当然ながら仲裁合意が必要ですが、その仲裁地の選択についても事前に十分な検討が必要であること、例えば、新興国を仲裁地とした場合、仲裁判断を現地裁判所により取り消されるリスク(仲裁合意の不存在、公序良俗違反等を理由とする)があること等についても詳しくご解説頂きました。

そして、前述したリスクに鑑みれば、新興国投資においては、投資対象国以外の仲裁機関、とりわけ主要仲裁機関(ICC、AAA、SIAC、JCAA、CIETAC)、及びインド、ベトナム、インドネシア、ロシアといった、幅広い新興国の仲裁機関の実情等についてご説明頂きました。

さらに、国家による事後規制によって海外投資主体が損害を蒙ることがないよう、国家間で投資保護協定が締結されることがあり、同協定に基づく投資協定仲裁の戦略的活用についてもご解説頂きました。

講演時間は約70分と非常に限られた時間でしたが、上記の通り非常に高いレベルのお話しをわかりやすくお話し頂くことができ、参加者にご記入頂いたアンケートでも「基本的な部分も含め、仲裁の方法、メリットをご教示いただき、非常にわかりやすかったです。」「国際商事仲裁に関する実務的知見が得られて有益だった。」「内容満足です。やはり、きちんと研究している方の話はレベルが高いです。」といった高い評価を頂きました。

3 パネルディスカッション

第二部は、早川先生に加え、国際仲裁のご経験が豊富なジェイコブソン・クリス弁護士(福岡県弁護士会)、既に海外展開をされている企業パネリストとして、鶴田直氏(環境テクノス株式会社代表取締役社長)、重光悦枝氏(重光産業株式会社代表取締役副社長)の4名パネリスト、及び紫牟田洋志弁護士(福岡県弁護士会国際委員会委員)をコーディネーターとして、パネルディスカッションを行いました。

パネルディスカッションでは、早川先生の講演を踏まえて、会場からのご質問や、企業パネリストの方からのご質問に、早川先生やジェイコブソン先生から的確な回答を頂くことができました。また、ジェイコブソン先生からは、仲裁のご経験に基づく事例のご紹介を頂き、アンケートでも「ジェイコブソン弁護士の事例の紹介はとても参考になった。」とのご意見を頂くことができました。

4 おわりに

本セミナーは、日弁連国際業務推進センターから開催のご提案を頂き、他の地域に先駆けて福岡で開催されたものです。今回のセミナーでは、前述の通り、参加者の方から大変ご好評を頂くことができました。特に企業参加者の方からは、「元々、福岡ではこのレベルのプロ(弁護士、企業実務家)向けのセミナーが全くないので、各種テーマで定期的に開催を強く望みます。(特に法務関係・国際法務関係が全くない。)よくあるのが『地方だから入門レベルで良いだろう』というセミナーですが、そのようなものは一切求めていません。実務者は、東京だろうが地方だろうが、高いレベルのセミナーを求めています。」とのご意見も頂いております。企業法務、とりわけ国際法務分野では、弁護士のアウトリーチ拡大の一環としても、地方におけるセミナー等を通じた高いレベルの情報提供・啓発活動の必要性を痛感致しました。また、高いレベルの司法サービスを提供するためには、地方の弁護士も渉外分野における最新の知見について深く学習することが不可欠であり、そのための機会を多く設ける必要性が高いことを強く感じました。

弁護士による行政ホットライン秋の大相談会(9月12日)

行政問題委員会委員 弁護士 岩 田 篤 典(66期)

1 はじめに

行政問題委員会では、定期的に「弁護士による行政ホットライン」を実施しており、年に2回春と秋には大相談会として午前11時から午後3時までの4時間の枠を設けています。私は、今年の4月から行政問題委員会の委員となり、今回初めて行政ホットラインに参加させていただきましたので、「弁護士による行政ホットライン秋の大相談会」を中心に、行政問題委員会の取組みをご報告いたします。

2 行政問題委員会の活動

平成17年の改正行政事件訴訟法の施行や原告適格や処分性を広く解する裁判例の集積等により、行政に対する不服申立ての利用が活性化しつつあります。行政問題委員会では、行政事件訴訟法、行政不服審査法等の活用を通じて、国民の権利利益の実効的な救済及び適法な行政の確保を実現すべく、行政事件に取り組むマンパワーの強化、「行政法制度」全般の更なる改革を目指して活動しています。

そのような活動の一環として、行政問題委員会は今回ご報告する「弁護士による行政ホットライン」の実施や、行政法制度改革に関する検討、行政実務研究会の開催等を行っています。

3 「弁護士による行政ホットライン」

前述のとおり、行政問題委員会では定期的に「弁護士による行政ホットライン」を実施しています。行政ホットラインとは、市民の皆様からの行政に対する疑問や不服に関する相談を弁護士が無料で受け付けるというものです。相談の方法は電話相談と面談相談の2つがあり、行政問題委員会の委員が交代で対応しています。

行政ホットラインの実施時間は通常は午後3時から午後5時までの2時間ですが、春と秋の大相談会は午前11時から午後3時までの4時間となっています。

4 行政ホットラインでの相談内容

行政ホットラインには手続などに関する行政の窓口対応に対する一般的な疑問をはじめとして、行政処分等に対して不服申立て等の対応を要するものまで、様々な相談が寄せられます。それらに関連して、行政の保有している情報の開示手続等に関する相談もあります。

行政ホットラインでは、これらの相談に対して、相談を受けた時点での今後の見通しや当面行うべき対応について、まず相談を担当した委員がアドバイスを行います。その後、相談を対応した委員が行政問題委員会で相談内容を報告し、行政問題委員会においてアドバイスが適切だったか等の再検討を行います。後日、相談を担当した委員からアドバイスを補充する連絡をすることや、行政問題委員会の委員が事件を受任することもあります。

5 平成27年度弁護士による行政ホットライン秋の大相談会について

平成27年9月12日に、行政ホットライン秋の大相談会が開催され、委員7名で対応しました。同日は、「近隣住民が反対しているのに施設の設置認可がされようとしている」、「行政の不作為に対して訴訟提起をしたい」等多岐にわたる相談が寄せられました。
行政ホットラインでは、行政に対する強い憤りの感情を抱えた相談者の方が多く来られます。行政問題委員の先生方はそういった相談者の方に対しても冷静かつ的確なアドバイスをされ、時には「その主張を通すことは法律的には難しい」といったアドバイスを相談者の感情に配慮しつつ伝えておられました。今回初めて行政ホットラインに参加したのですが、普段見ることのできない他の事務所の先生方の法律相談の様子を見ることができ、大変勉強になりました。

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