福岡県弁護士会コラム(会内広報誌「月報」より)

2025年5月号 月報

ローエイシア人権大会(ネパール)に参加して

月報記事

会員 稲森 幸一(56期)

2023年に福岡県弁護士会で行われたローエイシア人権大会が、今年は2月15日から17日の日程で、ネパールのカドマンズで開催され、私も参加してきました。

ローエイシア(LAWASIA)とは文字通りアジアの弁護士の任意団体です。毎年一度年次大会と人権大会が行われ、その他にも家族法の会議や環境法の会議なども随時行われています。

日本からは10名程度参加し、15日の午前中にみんなで観光をすることができました。ネパールは初めてでしたが、法整備支援でネパールに長期滞在していた経験のある日本人がいたので、車のレンタルから各地のガイドまでしていただき、一人では回ることができないほど多くの観光地や美味しい食事を堪能することができました。ただ、エベレストを見ようと、ロープウェイで上の方まで登って行ったのですが、曇っていてエベレストを見ることができなかったことだけはとても残念でした。

15日の夕方にレセプションが行われ、ネパール弁護士会の会長やローエイシアの代表などの挨拶のあと、ネパールの民族のダンスが披露されました。ネパールには200以上の民族が存在しているらしく、ダンスも次々とメンバーが変わり、それぞれ個性のあるダンスが披露されました。ダンスを見ることで、多様な民族が共存しているということが単なる知識としてではなく実感することができてよかったです。日本人弁護士が一人舞台に引っ張り上げられ一緒に踊らされていたのが一番盛り上がった場面でした笑。

16日の開会式にはなんとネパールの大統領が登壇し、ネパールの本大会への力の入れ方、またローエイシアの存在の大きさを実感しました。

その後まず全員が参加する全体会が行われ、最近の世界情勢、ローエイシアの存在意義など大きな問題について俯瞰的に議論され、個別の問題についての議論への橋渡しが行われました。

その後、2部屋に分かれて2つの分科会が同時進行し、私は気候変動やビジネスと人権などのセッションを傍聴しました。

日本人は全体会で1人、分科会で3人がスピーカーとして登壇しました。

ビジネスと人権のセッションでは、日本人スピーカーが登壇し、2020年のビジネスと人権に関する行動計画の内容や、今年予定されている5年後見直しの予測などについて報告がなされました。台湾も全く同じスケジュールで2020年に行動計画が発表され今年改訂が予定されているという報告があったので、個人的にそのスピーカーに接触し、将来的に情報交換する会議を開きましょうと約束することができました。

そして、17日の最初のセッションの「Global Concern of Migrants and Refugees」(移民と難民に関する世界的懸念)に登壇させていただきました。私からは2023年の難民法改正(改悪)についてその概要を報告した上で、日本において収容は減っているが、就労させない、健康保険も利用できない、生活保護も受けさせない中で審査を引き延ばすなどして、一見自発的に帰国させ、ノンルフールマン原則に違反しないように見える、Constructive Refoulment(構造的送還)が広がっていることについて問題提起しました。同セッションではインドやネパールなどから5人が報告し、終了後登壇者で意見交換をして親交を深めることができたことが何よりの思い出です。

ローエイシアの会議には2年に1度くらい参加しており、セッションそのものも勉強になりますが、その前後に各国の弁護士と交流を深めることができることが何よりも魅力です。人権活動が日本ほど自由にできない国の弁護士が勇気を持って人権活動をしていることを知ると、とても勇気づけられますし、自分はまだまだ努力が足りない、と教えられます。

他国に比べれば日本からの参加者はまだまだ少ないです。ぜひ多くの人に参加していただき、日本の実情を報告し、アジア中の弁護士と交流していただければと思います。

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