福岡県弁護士会コラム(会内広報誌「月報」より)

月報記事

平成29年6月22日付 「弁護士による行政ホットライン」実施のご報告

行政問題協議会 委員 稲場 悠介(62期)

第1 はじめに

私個人の話で恐縮ですが、私は特に行政事件に詳しい訳ではありません。

また、事務所事件も行政事件が多いということもありません。

そんな私が、なぜこの委員会に所属しているのかというと、ある行政絡みの集団訴訟事件を手伝ってほしいと事務所の兄弁に言われたからです。それを了承したところ、「じゃあ委員会に委嘱しとくね~。」と言われて、いつのまにか委員になっていたのです。

しかし、冷静に考えると、行政事件について素人同然の私が「行政問題委員会」という堅そうな委員会でやっていけるのか、当初は不安もありました。

「その程度の知識でよく入ってきたね」なんて思われたらイヤだなぁ、とか考えていました。

ただ、結論から言うと、それは杞憂に終わりました。

一応、司法試験で行政法の勉強はしていたので、全く分からないということはありません。むしろ、その知識があれば委員会内の議論は十分に理解できます。

また、委員会の雰囲気も全然堅くなかったです。

誤解を恐れずに言えば、学生時代の部活の部室のような雰囲気といった感じでしょうか。

第2 弁護士による行政ホットラインについて

さて、当委員会の活動の一つに「弁護士による行政ホットライン」という活動があります。

これは、市民の行政に対する苦情や悩みを電話や面談で相談を受ける、というものです。

社会生活の中に行政活動は様々な形で入り込んでいますので、相談内容の守備範囲はかなり広いです。また、相談内容もタフなことが結構あります。

しかし、相談者の話をよく聞いて、しっかりと紐解いていくと、回答の道筋が見つかるものです。よくあるのが、行政に対しては不満だけで、実質は私人間の民事問題の相談であったりすることです。

また、面談相談の場合は、基本的に二人一組で対応するため不安はありません。

電話相談の場合は、性質上、一人で応対しなければなりませんが、他の委員が待機している場所に電話を設置しているので、分からなければ保留にしていつでも相談できます。

新人研修以降、諸先輩方の法律相談に同席する機会は少なくなりますが、このホットラインではその機会が数多く提供されます。

ですから、このホットラインでの相談を受けると、自分の法律相談スキルが凄く上がっていくことが実感できます。

平成29年6月22日は、電話相談が3件、面談相談が1件入りました。

このうち、私は電話相談を2件担当しました。

簡単に内容を説明しますと、自宅敷地外の隣地に勝手に土が捨てられてコバエが出てきて困っているという相談と生活保護に関する相談でした。

いずれも諸先輩方のお知恵を借りながら、上手く対応できたと思います。

第3 行政ホットライン後の対応

この日の相談は事件に結び付くものはありませんでしたが、相談内容によっては事件として受任することもあります。

ホットライン終了後には定例委員会が開催され、その中で本日の相談内容の報告があります。そして、事件として対応すべき案件の場合、有志で継続相談を行ったり、場合によっては事件として受任します。

このときは、事務所を超えた先生方と一緒に事件をすることができるので、普段とは違った経験をすることもできます。何より、一緒に事件に取り組むということは、単なる委員会活動を超えた連帯感を醸成する機会になると思います。

第4 おわりに

当委員会ではホットラインを始めとした行政問題に関する様々な取り組みを行っています。行政法の関連法規は近時改正が相次いでいますので、その簡単な勉強会や各委員が実際に担当した事例報告会等をしています。

行政事件は、行政機関は勿論、国会議員・地方議員またはマスコミなどと協議することもあり、通常の事件とは違ったスケールの大きな展開を感じることもあります。

でも、それは、ホットラインを通じた市民の一本の電話から始まるということもあるのです。

もし、本記事をお読みになって、当委員会の活動に興味を持たれる方がいらっしゃれば、是非当委員会の扉を叩いてみてください。

「部室」でお待ちしています。

「女性の権利110番」のご報告

両性の平等に関する委員会 糸瀬 真理(65期)

1 はじめに

日弁連が男女共同参画週間に毎年開催している「女性の権利110番」を、当会においても本年6月23日から6月30日に開催しました。「女性の権利110番」とは、離婚や職場における差別など女性の権利一般についての無料電話相談で、福岡県及び福岡市に後援していただいています。また、以前は、各部会の弁護士会館でのみ実施していましたが、平成26年以降は、県内の男女共同参画センターにも共催いただき、各男女共同参画センターでは弁護士と相談員の方が一緒に電話相談に応じています。なお、昨年からは、女性の権利に関する相談に加え、LGBTの方々からの相談も受け付けています。

2 準備

福岡県及び福岡市に後援の依頼をするとともに、昨年共催をお願いした男女共同参画センターに今年も共催を依頼しました。後援及び共催の決定をいただいた後、関係各所や報道機関にチラシを配布しました。例年は、日弁連から送付されるひな形を利用してチラシを作成していたのですが、今年は少しでも多くの方に手に取っていただけるようにと当会独自のチラシを作成しました。その後、6月12日に福岡地方裁判所の新聞記者室で記者レクを行いました。

3 実施

例年、福岡県弁護士会館(以下、「会館」といいます。)では初日に相談を実施しており、午前中に報道機関が取材に来てくださいます。今年も23日午前中にテレビ局3社が取材に来てくださり、相談風景をお昼や夕方のニュースで放映してくださいました。また、26日の午前中には飯塚法律相談センターでラジオカー中継をしていただきました。

私は23日午後の会館担当だったのですが、報道効果もあったのか12件の相談がありました。会館は2回線で実施しているのですが、電話はほぼ鳴りっぱなしで、終了15分ぐらい前からやっと少し落ち着いた感じでした。他の相談箇所もほぼ同じような状況だったと聞いています。

4 おわりに

近年の相談件数は、平成25年43件、平成26年81件、平成27年118件、平成28年81件と推移してきており、今年は120件でした。昨年と比べると、福岡部会内9件、北九州部会内9件、筑後部会内9件、筑豊部会内12件の増加です。件数増加の明確な要因は分からないのですが、電話をかけてきた相談者に、どのような媒体で「女性の権利110番」のことを知ったのかアンケートを実施したところ、テレビや新聞という回答が比較的多く見受けられました。相談件数が多ければ良いというわけではありませんが、せっかく実施するのであれば、やはり多くの方に知ってもらい、相談していただきたいので、来年以降も積極的に広報活動に取り組んでいきたいと思います。

連続シンポジウム「地域で防ごう消費者被害in福岡」が開催されました

消費者委員会委員 桑原 義浩(58期)

1 連続シンポジウム企画

6月17日土曜日、インペリアルパレスシティホテル福岡で、日本弁護士連合会と福岡県弁護士会の主催による連続シンポジウム「地域で防ごう消費者被害in福岡」が開催されました。この連続シンポジウムは、高齢者に対する消費者被害が増加している中で、被害の予防と救済のためには地域での連携が不可欠であることから、全国各地での開催を目指し、日弁連と各弁護士会とで主催して開催してきているものです。当職も日弁連消費者問題対策委員会副委員長ですが、某N弁護士から参加するかの確認の電話が入るほど、開催前には参加人数を気にしていたようです。結構早めに会場に行ったつもりでしたが、既に満席、椅子を持ち込んでも立ち見が出るほどの盛況ぶりでした。140名ほどの参加があったようです。

2 基調講演

まず、独立行政法人国民生活センターの松本恒雄理事長から、「地域で防ごう消費者被害−『弱い消費者』をめぐって」と題する基調講演がありました。一言に「消費者」と言っても色々な人々が含まれますが、消費者の中でも特に弱く、傷つきやすい消費者として、高齢者や若年消費者がある、その被害の防止には消費者教育では限界があり、見守りネットワークなどの組織的対応が必要といった内容でした。

3 基調報告

次に、国府泰道弁護士(大阪弁護士会)から、「被害防止の手法と取組について」と題して、訪問勧誘、電話勧誘の被害状況と、その防止のための色々な工夫が紹介されました。シンポへの参加を呼び掛ける電話勧誘はいいとしても、高齢者に電話で勧誘して被害を生むことは、止めさせなければいけません。最近は迷惑電話対策装置も色々と出ています。大阪府警では、受話器を取ると「ちょっとまった!!」との手形POPが立体的に起き上がってくるなどというのもあるそうです。さすが大阪。さらには、訪問販売お断りステッカーを作成し、そのステッカーのある家に訪問勧誘すると条例違反にするような活動もされています(大阪弁護士会のステッカー参照)。これらの活動は、福岡でも取り組んでいきたいところです。

大阪弁護士会のステッカー
4 取組報告

その後は、色々な団体からの取組報告です。列挙していきますと(1)福岡県消費生活センターからの活動報告、(2)最近も投資詐欺事案の摘発を行った福岡県警察の取組、(3)福岡県生活協同組合連合会の篠田専務理事から、見守りネットふくおかの活動について、(4)NPO法人I'サポート新宮の井上理事長から、「あっというまに年をとる、他人事でない後見の話」、(5)苅田町の見守りネットワークと消費者の安全確保についてのご紹介、(6)佐賀大学経済学部経済法学科3年生の皆さんによる消費者教育の取組、そして(7)セブンイレブンジャパンから、「コンビニエンスストア セイフティステーション活動」について。

それぞれに大変興味深い報告でした。佐賀大学の活動は、「Consumer's Why みんな消費者」というテキストになっていて、これは消費者庁のホームページにも掲載されるほどになっています。食の安全について学んでもらうために人工イクラを作ってみよう、という市民向けの啓発企画も行われています。本物そっくりの人工イクラを知ることで、見た目だけでだまされないことを学ぶものです。実際に受けてみたいなと思いました。

5 福岡で防ごう消費者被害!

このように、各種の団体がそれぞれに、高齢者など「弱い消費者」を守り、救済しようという活動をされていることが分かりました。今後は、その団体同士が横のつながりを持って、連携をしていけば、より大きな活動になっていくものと思います。そして、その運動の盛り上がりから、これを全国規模の活動につなげて、悪質な訪問勧誘、電話勧誘を防止できるような法改正につなげていくことができれば、と思っています。そのスタートの1つとなるシンポジウムでした。

日弁連では、今後も、九州の他県でも開催していくことを考えています。参加確認の電話勧誘を受けることなく、是非、参加してみてください。

共謀罪法の問題を考える緊急シンポジウムのご報告

情報問題対策委員会委員 一坊寺 麻希(66期)

1 はじめに

平成29年6月15日、「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ改正組織犯罪処罰法(以下「共謀罪法」と略称します。)が成立し、同年7月11日に施行されました。当委員会では、成立した共謀罪法に多くの重大な問題が残ったままであることを広く市民に伝達し、今後、共謀罪法の無限定な運用により国民の権利が不当に侵害されることを防ぐため、共謀罪法成立後間もない同年6月25日に緊急シンポジウムを開催しました。以下、その内容をご報告いたします。

2 共謀罪法とは?

(1) 今一度、共謀罪の内容を振り返ると、共謀罪は(1)「組織的犯罪集団」が、(2)長期4年以上の刑を定める277の犯罪(例えば、窃盗、傷害等)について、(3)犯罪を計画し、(4)犯罪準備行為が行われたときに成立します。

(2) 共謀罪の問題点として、法益侵害の現実的危険性が生じる随分前の段階で処罰対象とするため我が国の刑法の基本原則と相容れないこと、テロ対策と言いながら「組織的犯罪集団」に一般人も含まれうること、対象犯罪が広範である一方で政治家が問擬されうる罪は除外されていること、犯罪準備行為にはATMで預金を引き出すなどの日常的行為も含まれるため処罰範囲を制限できていないこと、「共謀罪」の捜査により監視社会となり国民の表現が萎縮する可能性があることなどが指摘されてきました。

3 内田博文九州大学名誉教授(以下「内田名誉教授」といいます。)の基調講演

(1) シンポジウムでは、まず、内田名誉教授(刑事法学)に「治安維持法と共謀罪」と題して基調講演をいただきました。講演では、治安維持法と「共謀罪」の共通点が示され、治安維持法施行下で生じた問題事例が共謀罪法施行下でも生じうる可能性について指摘がありました。

(2) たとえば、治安維持法制定当時の帝国議会では司法大臣が「思想を圧迫するとか研究に干渉するとかは有り得ない」「善良な国民、普通の学者であり研究者というものに何ら刺激を与えるものでない」(1925年3月11日貴族院本会議)などと答弁していましたが、周知のとおり、治安維持法は一般国民に広く適用され国民の自由を制約してきました。共謀罪法においても、法務大臣は「共謀罪法は一般人に適用されない」と答弁していますが、それと矛盾する答弁がなされるなどしており、一般人に共謀罪が適用される可能性があることが示されました。

また、拡張適用の事例についても具体的にご説明いただきました。治安維持法施行当時、妻が夫のために家事を行うこと、あるいは金銭を用意することは極々自然の行為でしたが、夫が日本共産党中央委員長である場合には「日本共産党の目的遂行の為にする行為」と問擬され懲役2年の実刑判決(昭和8年7月6日題一刑事部判決)が下されることとなり、治安維持法はまさに思想を弾圧する道具として利用されたのでした。

(3) 内田名誉教授は、共謀罪法を監視社会や国民の表現を萎縮させる道具として利用させないためには、第三者機関を設置し、共謀罪法の運用が適正になされているかを常に監視する必要があると仰っていらっしゃいました。

4 パネルディスカッション

(1) その後、内田名誉教授、田淵浩二九州大学教授(専門:刑事訴訟法、以下「田淵教授」といいます。)、当会の情報問題対策委員会の武藤糾明委員長によるパネルディスカッションが行われました。ディスカッションの要旨は以下のとおりです。

(2)共謀罪の問題点は?

田淵:これまでの犯罪は実行しなければ基本的に成立しなかったため犯罪を思いとどまる自由が与えられていた。しかし、共謀罪によりその自由が奪われる。

内田:国民の権利主張活動を妨害するために利用される。

武藤:国民の表現活動が萎縮する。人権侵害を制限する仕組みが存在しない。

(3) 共謀罪の立法過程の問題点は?

内田:中間報告によるのであれば、法務委員会で決議できなかった理由を説明しなければならないがこれをしていない。国会法違反にあたる。

田淵:政府の説明にごまかしがある。パレルモ条約批准のために「共謀罪」が必要と説明されているが「共謀罪」がなくてもパレルモ条約は批准できる。条約はテロ対策のためのものでないのに「共謀罪」はテロ対策と説明されている。

武藤:法案の内容を国民がよく理解できないまま「テロ対策であれば必要」という短絡的な考えのまま進んでしまった。

(4) 今回共謀罪法が成立してしまった原因は?

田淵:研究者声明を出したが、あまり報道されなかった。

内田:以前は与党からも廃案にすべきとの声があったが今回はなかった。メディアも以前は反対したが今回は必要かもしれないという報道が目立った。

武藤:弁護士会は反対運動を継続的にやっていたが、反対運動がメディアで報道されるのは国会に法案が提出されるなど重要な機会に限られた。もっと多くの報道の機会を設けてほしい。

(5) 「共謀罪」の具体的危険性は?

内田:「共謀罪」の摘発には徹底した個人情報の収集が必要。徹底的に個人情報、意思伝達情報が収集されることになる。

武藤:監視社会となり徹底的に個人の行動が分析され個人の持つ思想などが丸裸にされる。

田淵:逮捕が今までよりも前倒し、通信傍受の強化、司法取引により密告が生じる可能性がある。

(6) 捜査機関の権限拡大に対する対抗策は?

内田:第三者機関によって「共謀罪」の運用を監視することが必要。民間の相談窓口が必要。弁護士会に期待。

田淵:任意捜査の限界を制限的に解釈していく必要がある。

武藤:弁護士会として相談窓口を作る必要がある。

(7) 「共謀罪」廃止に向けた取り組みは?

武藤:「共謀罪」の運用の歯止めとなる法制度を作る必要がある。ドイツでは、過去の犯罪を取り締まる警察と未来の犯罪を防止する情報機関が分かれている。また、情報取得について事後通知が必要である。ドイツの制度を参考にすべき。

5 おわりに

共謀罪法は極めて問題の多い法律です。これまで、共謀罪法の成立に反対してきましたが、同法が施行された現在、弁護士会としてやるべきことを考える必要があります。今回、内田名誉教授、田淵教授のお話をお伺いし、反対運動の継続に加えて、不必要な監視、表現の萎縮が生じないように第三者機関や相談窓口の設置に向けての活動を行うべきであると感じました。

当委員会として、今後も継続的に活動を行っていきたいと思いますので、会員の皆様にも是非ともお力添えいただきたくお願い申し上げます。

2017年7月 1日

あさかぜ基金だより

会員 島内 崇行(65期)

1 はじめに

65期の島内崇行と申します。平成29年5月1日より、長崎県弁護士会から福岡県弁護士会へ登録換えしました。

私は、平成24年12月に弁護士登録し、あさかぜ基金法律事務所において、2年間執務しました。そして、平成27年2月より壱岐ひまわり基金法律事務所所長として赴任し、2年間の任期を終えました。

私が司法過疎地での任期を満了することが出来たことは、一重に、あさかぜ時代に福岡県弁護士会の諸先輩方より賜ったご指導ご鞭撻のおかげ、さらには九州弁護士会連合会のご支援のおかげだと思います。

まずは、この場をお借りして御礼申し上げます。

2 壱岐の島民性ついて

(1) 私は、壱岐に赴任した直後、「壱岐島民は、農耕民族で争いを好まない」という話を、壱岐のある方から伺いました。

私は、赴任したてのころは半信半疑でしたが、任期を終えた今では、十分納得できる言葉です。

(2) まず、2年間の任期のうち、後半1年間は、刑事事件がほぼありませんでした。数えてみたところ、2件です。壱岐では、当番担当日を一月単位で区切り、壱岐ひまわり所長と法テラス壱岐スタッフの2人が、一月毎に当番担当日を交代していました。つまり、2人とも、1年の半分が当番担当日ということになります。それでもなお、受任した件数は2件でした。1年目は、少年事件含めて10件弱ありましたので、驚きの数字です。

そして、事件類型も、ほぼ窃盗(強盗ではない)でした。

(3) また、民事事件も、最初に相談に来る時、相談後に依頼する時、それぞれにハードルがありました。そこには弁護士に相談したことや弁護士に依頼したことを知られたくないという思いがあるようでした。

壱岐は狭い社会で島民間の距離が非常に近い印象です。それ自体は素晴らしく、街を歩くと小中高生が元気よく挨拶してくれたことは、今でも強い印象として残っています。ただ、そういう島ですので、島の皆さんは弁護士に相談したことや弁護士に依頼したことが周りに知られ、わざわざ争いを大きくしていると思われることを、心配しているようでした。

3 弁護士に対するイメージについて

(1) そもそも、なぜこういった不安が生まれるのでしょうか。

(2) それは、やはり弁護士に対するイメージに原因があるのでしょう。相談に来られた方が、「弁護士を間に入れて争いが大きくなることが不安である」というニュアンスの言葉を、口にされていました。

私は、弁護士に依頼することは、争いが大きくなる前に紛争を解決する、紛争を早期に解決するためのものであって、そのイメージとは逆だという説明をしたものです。

(3) 壱岐は、そもそも法律事務所の歴史自体が浅いですから、まだまだ弁護士そのもののプレゼンが必要な土地であって、それは、今後の課題として後任に引き継ぐことになりました。

4 おわりに

弁護士に対するイメージを変えるということは、壱岐のような土地だけでの課題ではなく、私は、福岡での今後の活動においても、そのことを意識しつつ職務に励むつもりです。

改めて、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

「転ばぬ先の杖」(第32回) みなさま、弁護士会の法律相談をご利用ください!!

法律相談センター運営委員会 委員長 池田 耕一郎(50期)

【1】はじめに

福岡県弁護士会では、全国で最多の県内17箇所に法律相談センターを開設しています。地図にありますように、福岡、北九州、筑後、筑豊の各地区にまんべんなく配置されています。当会は、「地元の弁護士」が地域密着で市民にきめ細やかな法的サービスを提供することを理念として掲げていますが、法律相談センターの運営は、その最たるものといえます。

【2】相談予約申込方法

弁護士会の法律相談の特色は、【1】の相談場所の多さとともに、相談枠の多さ、それに伴う相談予約のとりやすさ(枠が空いていれば、当日や翌日の相談も可能)ではないかと思います。そのことが、後で述べる相談実績につながっています。

法律相談センターは17箇所ありますが、相談申込みの利便性の観点から、電話番号は、ナビダイヤル0570−783−552(なやみ ここに)に統一しています。こちらの番号にかけて、ガイダンスに従ってボタンを操作していただくと、各地域の基幹センターにつながり、最寄りのセンターで法律相談を受けることができる仕組みになっています。

電話だけでなくインターネットを通じてのWEB予約も承っています。

詳しくは、「福岡県弁護士会」のホームページをご覧ください。

【3】無料相談

法律相談センターでの一般相談は、相談料30分あたり5000円(及び消費税)を頂戴しています。

しかし、相談者の置かれた立場や相談内容によって、無料相談を実施しています。これも、ぜひホームページでご確認いただければと思います。

【4】チケット制

当会は、自治体、各機関・団体の皆様と連携した市民サービスを提供すべく活動していますが、その一環として、自治体から委託を受けて弁護士を派遣する制度のほか、自治体から地元住民に法律相談の無料チケットを配布し、そのチケットを法律相談センターにお持ちいただいた方については無料相談を実施する「チケット制」を実施しています。

法的課題を抱えているのに何から始めてよいかわからないという方は多くいらっしゃいます。チケット制は、自治体にとって、悩みを抱える住民への支援として位置付けられるものです。チケット制を導入している自治体は次のとおり24箇所あり、関係者から、住民サービス向上につながっていると高く評価していただいています。まだ導入されていない自治体におかれては、ぜひチケット制の導入をご検討いただければと思います。

○福岡地区(5箇所)

・福岡市 ・古賀市 ・福津市 ・筑紫野市 ・糸島市

○北九州地区(4箇所)

・豊前市 ・築上町 ・上毛町 ・吉富町

○筑後地区(2箇所)

・久留米市 ・広川町

○筑豊地区(13箇所)

・飯塚市 ・嘉麻市 ・桂川町 ・田川市 ・添田町 ・糸田町 ・香春町 ・川崎町 ・大任町 ・福智町 ・赤村 ・直方市 ・宮若市

【5】相談件数

関係各位のご理解・お力添えをいただき、当会の各法律相談センターで昨年度(2016年度)実施された相談件数は8726件でした。

当会は、各委員会が活動内容に応じたバラエティに富む相談活動に取り組んでおります。それら件数を合わせますと、当会が実施している相談件数は1万件を優に超えます。

【6】最後に

当会は、「市民と共に」を目標に掲げ、市民のみなさんが日頃抱える不安を安心に変えてほしいという思いから、「不安を、安心に。」というキャッチフレーズで相談事業に取り組んでいます。

これからも、会員一同切磋琢磨して、相談事業に取り組んでまいります。 ぜひ、当会の法律相談をご利用ください。

「転ばぬ先の杖」(第32回) みなさま、弁護士会の法律相談をご利用ください!!.jpg

専門職によるくらし・事業なんでも 相談会(6/3)

会員 吉原 俊太郎(65期)

平成29年6月3日(土)、午前10時から午後4時まで、福岡市健康づくりサポートセンター(あいれふ)の10階講堂にて、「専門職によるくらし・事業何でも相談会」が開催されました。

本相談会の主催は、福岡専門職団体連絡協議会(さむらいネットワーク福岡)であり、構成団体は、日本公認会計士協会北部九州会、九州北部税理士会、福岡県司法書士会、福岡県土地家屋調査士会、福岡県不動産鑑定士協会、福岡県行政書士会、福岡県社会保険労務士会、日本弁理士会九州支部、福岡県弁護士会の各士業団体です。

福岡専門職団体連絡協議会(専団連)とは、各士業の専門職が、相互に知識や情報を交換し、共同研究や共同相談を実施して社会的ニーズに応えるとともに、専門職同士の交流を図ることを目的とする団体です。

専団連では、福岡市地区では毎年6月、9月、12月に、北九州地区、筑後地区、筑豊地区では毎年6月に、「くらし・事業なんでも相談会」を開催し、前記9士業が、無料で相談に対応しています。

本相談会の特徴は、複数の専門家が相談に応じるという点にあります。

例えば、相続の相談であれば税理士と司法書士、土地の境界に関する相談であれば土地家屋調査士と弁護士など、1回で複数の専門家に相談できるのです。

そのような特徴に加えて、無料で相談できることから、本相談会には、毎回たくさんの方々にお越しいただいております。

なお、今回の相談会は、福岡会場(あいれふ)のほかに、北九州会場(北九州市立商工貿易会館2階)、筑後会場(久留米市役所3階会議室)、筑豊会場(イイヅカコミュニティセンター2階)の各会場でも相談会が開催されましたが、私は相談会の運営委員として参加させていただきました。

以下では、福岡会場についてご報告させていただきます。

当日は、晴天に恵まれ、朝早い時間帯からたくさんの方々にお越しいただきました。

特に午前中は、相談待ちの方が常におられる状態で、9つ設けたブースは常に埋まっており、相談員の先生方には、1つの相談が終わると、息をつく暇もなく、次の相談に入っていただきました。

結果として、福岡会場の当日の相談件数は60件でした。とても多くの方々にご相談に来ていただき、また、相談員の先生方の丁寧なご対応に、ご満足いただくことができたと思います。

相談会後は、49名もの先生方に参加していただき、懇親会が盛大に開催されました。懇親会の場では、他士業の先生方との交流を深めていただけたと思います。なお、相談会終了後、懇親会までの間に、0次会を開催される先生や、懇親会後、さらに、二次会、三次会と楽しまれる先生方もたくさんおられます。

他士業の先生方と相談を行うという機会はそれほど多くはないと思いますし、懇親会も非常に盛り上がりますので、まだ参加をされたことのない先生方は、是非ともご参加ください。

子どもの日記念電話相談について

会員 山室 卓也(69期)

1 はじめに

5月13日に子どもの日記念電話相談がありました。私は、午前中を担当しましたが、午前中に電話がかかってきたのは2回で、そのうちの1回を私が担当しました。1件だけの相談でしたが、私にとっては大変貴重な経験となりました。以下この電話の内容、私の感想等について書かせていただきます。

2 子どもからの相談

電話をかけてきてくれたのは小学生の女の子でした。相談内容は、同級生からからかわれたりするのが辛いので、保健室登校したいが、どうやったら保健室登校できるかというものでした。その子は、保健室登校を考えるに至った経緯を「1点目は~をされたこと、2点目は~をされたこと、3点目は~をされたことで、学校に行くのが嫌になったけど、学校には行かないといけないと思うので、保健室登校したいと思いました」とその子なりに整理して一生懸命話してくれました。また、話そうと決めたことを全部話そうと、早口になっていたことも印象に残りました。

私は、小学生の相談を受けたことは初めてだったので、どういう言葉遣いで対応するのか、どういう言葉をかけたらよいのか等色々と考えました。私としては、できるだけ優しく、平易な言葉で、その女の子の気持ちに寄り添えたらよいと考え、「それは辛かったね」「嫌だったね」といった言葉をかけました。

幸いその子は、同級生から、からかわれたりしていることは、親や先生に相談できており、親には、保健室登校したいことも伝えてあり、親もその方向で考えているとのことでした。

このような状況でしたので、私からは、小学生の女の子に対し、アドバイスとして「学校の先生に保健室登校したいことを伝えてみるといいよ」と言いました。

通話したのは、5分にも満たない時間でした。今顧みると、もう少し長い時間をかけて色々な事情を聴いて、その女の子の辛い気持ちを受け止めてあげればよかったと思います。

今回のケースでは具体的な法的なアドバイスをすることよりも、女の子の気持ちを受け止めてあげることが期待されていた役割ではないかと思います。

3 柏餅

午前中、電話は合計2回しかかかってこなかったので、待機時間が長かったです。その間、サポートで来てくださった小坂先生に差し入れいただいた柏餅(モチモチしていて、とても美味しかったです。)を食べながら、子どもの権利に関する書籍を読んだり、小坂先生や私と同じく午前中の担当であった石川先生と子どもの権利に関する熱い(?)話をしたりしていました。電話がたくさんかかってきたほうがもちろんよかったですが、待機時間も有意義に活用することができました。

4 子どもの日記念電話相談の今後について

午前中にかかってきたもう1本の電話も子ども(中学生)からでした。この子達がどういう経緯で、この電話相談を知ったのか分かりませんが(電話で確認すればよかったのですが、失念しておりました。)、今後さらに子どもからの相談が増えて、子ども自身の問題解決、悩み解消にこの電話相談が少しでも役に立てばよいのではないかと考えております。そのためには、どういった経緯で、相談が来ているのかを認識し、分析し、よりたくさんの子どもから相談が受けられるようになるとよいと思っております。

5 おわりに

電話相談に対する私の回答がその女の子にとって、どれだけ役に立ったかは正直分かりませんが、私にとっては、この電話相談が良い勉強の機会になりました。私としては、子どもの悩みの解決のためだけでなく、新人弁護士にとっての貴重な機会としても今後も子どもの日記念電話相談が継続、発展していけばよいと考えております。

2017年6月 1日

あさかぜ基金だより

弁護士法人あさかぜ基金法律事務所 社員弁護士 田中 秀憲(69期)

自己紹介

平成29年5月にあさかぜ基金法律事務所に入所しました、田中秀憲と申します。

私は大阪出身であり、司法修習も大阪で行いました。これまで大阪を出たことがなく、このたび弁護士として初めて福岡の地にやってきました。

ロースクール入学前は大阪で警察官として3年ほど、交番と機動隊に勤務しました。警察官として最も印象に残っているのは交番勤務です。私が勤務していた警察署は大阪府内では忙しい警察署で、日々、多くの市民が困りごとの相談のため交番を訪れていました。市民の相談には難しい問題もありましたが困りごとが解決に向かったときに見せる府民の安心した顔を見られることは警察官としてのやりがいにつながっていました。

しかし、同時に私は警察官として職務に従事するなかで社会において法律が占める重要性を実感しました。たとえば、拾得物の権利関係については、遺失物法や規則に詳しく規定されていますし、道交法違反があったときには刑事事件や行政事件が問題になることがあります。

私は警察官の職務を通じて法律の奥深さに思い至り、より専門的に勉強したいと考えるようになりました。そこでロースクール進学を決意したのです。

あさかぜに出会ったきっかけ

司法修習中に就職活動をしているときに、弁護士過疎地という地域があることを初めて知りました。私の出身地である大阪には多くの弁護士がいるため、日本に弁護士過疎という実態が存在することに、とても驚きました。どのような弁護士が弁護士過疎地で活動しているのかを調べていたところ、弁護士過疎地に赴任するための弁護士を養成しているあさかぜ基金法律事務所があることを知りました。

あさかぜに入所しようと決心

警察を利用する方の多くは、本当に困っていて、どうすればよいのか分からないと助けを求めてきていました。警察官時代には困っている人の役に立てることに、とてもやりがいを感じていました。

弁護士として活動するときにも困っている人のために役立つことでやりがいを感じたいと考えています。弁護士過疎地で法律的問題に直面している人たちは、困っているけれど、どうしたらいいか分からないという状況にあるように思います。司法試験に合格し、司法修習を終えた今、弁護士過疎地で生活する人たちのために役立てることをやりがいとして活動する弁護士になりたいと考えています。そのために弁護士過疎地に赴任する弁護士を養成しているあさかぜ基金法律事務所に入所したいと決心しました。

私の決意

このたび、縁あって福岡のあさかぜ基金法律事務所で弁護士として活動させてもらうことになりました。あさかぜ基金法律事務所は多くの人たちの支援により成り立っている事務所です。支援を受けながらも、これに甘えることなく、来たる弁護士過疎地への赴任に向けて日々努力を重ねる所存です。これからのご指導、ご鞭撻、何卒よろしくお願いします。

2017年5月 1日

ITコラム

会員 柏 真人(63期)

今年の4月1日、

「将棋電王戦 佐藤名人が人工知能に敗れる」
というニュースをネット記事で見かけました。これまでも、プロ棋士がコンピューター将棋ソフトに敗れたことはありましたが、現役のタイトルホルダーでありしかも「名人」位にあるプロ棋士が将棋ソフトに敗れたことは、私にとって衝撃的な出来事でした。人工知能恐るべしです。

恐るべしなのは、なにもプロ棋士に勝利したからだけではありません、将来、人工知能いわゆるAIは、われわれ弁護士にとって代わる可能性を秘めているのです。今回は、弁護士業務は人工知能にとって代わられるのか、について考えてみたいと思います。

ネットの記事などを見ると、アメリカの大手法律事務所などでは、すでに人工知能の導入が始まっており、破産のアドバイスなどを弁護士が人工知能から受けていたりするらしいです。この波はやがて日本にもやってくるでしょう。

弁護士の思考過程を具体化すると、いろいろなご意見があると思いますが、概ね(1)事実の把握、(2)法律構成を考える、(3)あてはめ、(4)実際の解決の合理性の判断、といったところに集約されるのではないでしょうか。人工知能の得意分野は、(1)や(3)といった思考過程の分野でしょうか。事実を整理したりするのは得意そうですね。複雑な時系列を瞬く間に整理してくれそうです。また、判例検索なども得意そうです。そうなってくると、ある程度の定型的処理の可能な、過払い案件などの債務整理や知財分野では、人工知能は強力なライバルになりかねません。

ですが、上述の思考過程で、多くの弁護士が一番苦労しているところは、依頼者にとって一見不利に見える事実や不自然に見える事実を何とか依頼者に有利な(もしくはそれほど不利でない)事実に見せていくのか、といったところではないかと思います(少なくとも私はそうですが・・)。人間には、合理的に説明できない何かがあり、なにかをきっかけに不合理な行動をとってしまう時がある。それを弁護士になっていやというほど経験しました。そのような人間の「人間臭さ」を人工知能が理解し弁護していくのはまだまだ至難の業なはずです。そうなってくると、合理的な行動が求められる企業間取引・契約などの分野においては人工知能が優位な気がしないでもありません。他方、あくの強い依頼者をなだめすかし、辛抱強く打ち合わせを重ねる作業が必要な、いわゆる「町弁」は人工知能がライバルとなる日はまだまだ先の話のはずです。

と、電王戦第2局で佐藤名人が将棋ソフトを鮮やかに打ち破ることを期待しつつ、しがない「町弁」にすぎない私の先入観と希望が多分に入った今回のコラムを終了したいと思います。

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