福岡県弁護士会 宣言・決議・声明・計画
2025年5月 3日
憲法記念日にあたっての会長談話
会長談話
今年は、第2次世界大戦が終わって80年の節目を迎えます。本日、施行から78年を迎える日本国憲法は、人権侵害の最たる戦争による悲惨な歴史を二度と繰り返してはならないという誓いのもとに生まれました。日本国憲法前文は、「全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有する」ことを確認しています。
しかしながら、ロシア連邦によるウクライナへの軍事侵攻や、イスラエルによるパレスチナへの一方的攻撃など、世界の情勢は、日本国憲法が理想とする平和の実現には程遠い状況と言わざるを得ません。
国内でも、憲法9条のもとでGDP比1%の5兆円余に抑えられてきた防衛関係費予算が、今年度予算では8.7兆円にまで激増しています。安保法制や解釈改憲による集団的自衛権により、防衛関係費の増大は軍備拡大に結び付く危険が高いといえ、日本国憲法の理念を無視して進められる軍備拡大は、私たちの市民生活に多大な影響を及ぼします。
そうしたなか、裁判所では、日本国憲法の力が改めて見直されています。
生活保護基準引き下げが生存権を保障した憲法25条に違反するとして基準額の減額処分取り消しを求めた訴訟において、本年1月29日、福岡高裁は、憲法25条の趣旨、目的を踏まえ、厚生労働大臣による基準額の引き下げを違法と判断しました。
また、同性間での婚姻を認めない現在の法制度が憲法に違反するとして、国を訴えた「結婚の自由をすべての人に」訴訟は、全国5か所の高等裁判所で「憲法違反」の判断が示されました。昨年12月13日には、福岡高裁においても、法の下の平等を定めた憲法14条、婚姻や家族に関する法律の制定について個人の尊厳と両性の平等を基本とすることを定めた憲法24条2項のみならず、幸福追求権を定めた憲法13条にも反し違憲と判断されました。
当会は、今後も、個人の尊重を最高価値とする日本国憲法の理念に則り、基本的人権を擁護し、社会正義を実現しつつ、法的助力の必要な市民の皆様に寄り添う法律家団体として、全力をあげて活動してまいります。
2025年(令和7年)5月3日
福岡県弁護士会
会長 上田英友