福岡県弁護士会 宣言・決議・声明・計画

2019年12月18日

中村哲医師を追悼する会長声明

声明

長年にわたり,アフガニスタンやパキスタンで人道支援活動に従事された中村哲医師が今月4日,現地で護衛者らとともに銃撃を受け,逝去されました。
中村医師は,戦争で荒廃したアフガニスタンやパキスタンにおいて,多くの現地住民,難民の医療救援活動に従事されたばかりか,病気の根本的解決を図るには農業振興が不可欠であるとの考えのもと,農業用水確保のために,土木工学を独学され,日本の伝統工法を取り入れて,井戸の掘削事業や,大規模なかんがい・水利事業に,自ら現地で重機を操り従事されました。まさに,日本の技術を現地で活かすことで,多くの命を救われたのです。
中村医師は,2008年及び2015年に,当会主催の憲法市民集会で講演をして下さいました。その際,こうした活動の紹介とともに,日本が憲法9条を持ち,問題解決に武力を使わないという信頼があったからこそ,日本人である自分が,紛争地である現地で,命の危険にさらされることなく活動できたのだと語って下さいました。
70歳を超えてなお,現地活動の継続・発展,そして継承に意欲を燃やされていたというご本人の無念さを思うとき,当会にとっても痛恨の極みであり,謹んで哀悼の意を表します。
また,突然の銃撃・殺害という卑劣な暴挙に対して,断固として抗議するものです。
中村医師が体現し続けられたのは,人々が欠乏に苦しむことなく生活できる社会を実現するという理念の具体化でした。まさに,欠乏からの自由が平和的生存権を実現するという,日本国憲法前文と9条の価値・理念を自らの行動で体現されたのです。それはまた,日本がもつ技術・知識を提供することで他国からの信頼を得るという,真の意味での国際貢献の実践活動でもありました。さらに,そうした活動の地道な継続によって,武力に頼ることなく,自国の防衛とともに国際社会の平和を実現するという,恒久平和主義の理念を具体化する実践活動であったというべきです。
当会は,活動場所や方法は違っても,中村医師の功績・理念を心にとどめ,それを生かし,実現するための活動に,今後とも全力を挙げて取り組んでいく所存です。


2019年(令和元年)12月18日
福岡県弁護士会
会長 山 口 雅 司

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2019年12月26日

死刑執行に抗議する会長声明

声明

本日,福岡拘置所において1名の死刑確定者に対して死刑が執行された。
我が国での死刑執行は,今世紀に入ってからも,2011年を除いて毎年行われており,2001年以降これまで合計91人もの死刑確定者が,国家刑罰権の発動としての死刑執行により生命を奪われていることになる。


当会は,最近では,今年8月2日の死刑執行に対し,抗議する声明を発表し,すべての死刑の執行を停止することを強く要請した。それにもかかわらず,今回の死刑が執行されたことは,まことに遺憾であり,当会は,今回の死刑執行に対し,強く抗議するものである。


たしかに,突然に不条理な犯罪の被害にあい,大切な人を奪われた状況において,被害者の遺族が厳罰を望むことはごく自然な心情である。しかも,わが国においては,犯罪被害者及び被害者遺族に対する精神的・経済的・社会的支援がまだまだ不十分であり,十分な支援を行うことは社会全体の責務である。


しかし,そもそも,死刑は,生命を剥奪するという重大かつ深刻な人権侵害行為であること,誤判・えん罪により死刑を執行した場合には取り返しがつかないことなど様々な問題を内包している。


人権意識の国際的高まりとともに,世界で死刑を廃止または停止する国はこの数十年の間に飛躍的に増加し,法律上及び事実上の死刑廃止国は,2018年12月31日現在世界の7割を超えた。同年8月2日にはローマ・カトリック教会が,今後死刑制度に全面的に反対する方針を明らかにし,同年12月17日には,国連総会本会議において,史上最多の支持(121か国)を得て死刑廃止を視野に入れた死刑執行の停止を求める決議案が可決された。また,死刑制度を残し,現実に死刑を執行している国は,過去10年で18~25か国にすぎず(2018年度は20か国),死刑廃止は世界的な潮流という状況にある。


当会は,本件死刑執行について強く抗議の意思を表明するとともに,死刑制度についての全社会的議論を求め,この議論が尽くされるまでの間,すべての死刑の執行を停止することを強く要請するものである。


2019年(令和元年)12月26日
福岡県弁護士会会長  山 口 雅 司


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