福岡県弁護士会 宣言・決議・声明・計画

2003年12月 4日

自衛隊のイラク派遣に反対する会長声明

声明

福岡県弁護士会 会長  前田 豊

 平成15年(2003年)12月4日

 11月29日、イラクでわが国の外交官2名の尊い命が奪われた。極めて遺憾な事態であり、当会は心から哀悼の意を表する。\n
 3月20日の米英軍によるイラク侵攻後、5月1日の主要な戦闘の終結宣言を経てもなお米軍に対する攻撃や自爆テロが発生し、戦闘による米軍の死者は11月だけでも69人に及んでいる(29日現在)。米軍以外にも、イタリア軍が南部ナシーリヤで攻撃を受けたほか、国連現地事務所、赤十字国際委員会、スペイン情報機関員なども攻撃を受けて多数の死傷者を出した。国連、赤十\字国際委員会、スペイン等は関係者や外交官等をイラクから退去させ、トルコやインドは派兵を見合わせている。一方イラクの側もおびただしい数の兵士や市民が犠牲となり、英米の研究者・平和活動家の調査グループによれば民間人の死者は7000人にのぼるとされている。11月30日には米軍がサマラで大規模攻撃をしたことによって数十人の死傷者が出るなど、イラクはいまだ戦闘状態にあり、その全土が戦闘地域であるといわなければならない。\n この戦争に対し、3月17日国連事務総長は「国連決議なしの武力行使は国連憲章違反である」とコメントし、9月8日国際原子力機関(IAEA)は「イラクに核計画はなかった」との報告書をまとめた。米英軍のイラクに対する武力攻撃は国連憲章に違反するものであり、査察対象となった大量破壊兵器の存在は今もって確認されていない。

 こうした状況下にあって、政府は、来週にもイラク特措法に基づき自衛隊のイラク派遣「基本計画」を閣議決定しようとしている。
 しかし、イラク特措法は非戦闘地域において人道復興支援及び安全確保支援を実施するものであり、武力による威嚇または武力行使にあたるものであってはならないとされている。したがって、今なお戦闘状態が続いている中に自衛隊を派遣することは、論理上も無理があり、同法の基本原則にも反する。
 加えて、イラクに派遣された自衛隊は、イラク国民に対する人道・復興支援とともに、米軍等の行う治安維持活動の支援として、米軍等のために医療、輸送、保管、通信、建設、修理若しくは整備、補給又は消毒などを実施するのであるから、現地においては米軍等の協力者とみられ、自衛隊員ばかりでなく広く外交官等も攻撃の対象とされかねない。その場合、攻撃を受けた自衛隊がこれに反撃して新たに戦闘行為に突入するという事態にもなりかねず、自ら携帯・装備する武器によって事実上の武力行使に突入する危険が大きいといわなければならない。
 第二次世界大戦後、国際社会は戦争を違法とし、国連憲章が容認しない武力行使は承認しないという原則を確立した。この原則の侵害を許せば、むき出しの力によって支配される社会が出現し、世界中で暴力の応酬、憎悪の連鎖が生じるおそれがある。日本国憲法は、この国際社会の原則をふまえて、国際紛争の解決手段としての武力行使を放棄したのである。わが国によるイラク復興支援は、国連憲章の原則と憲法の平和原則に従ってなされなければならないが、自衛隊のイラク派遣はその原則に違反する疑いが極めて大きい。\n
 当会は、自衛隊のイラク派遣に強く反対し、政府に対し「基本計画」を閣議決定しないよう求めるものである。

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2003年12月22日

裁判員制度に関する声明

声明

福岡県弁護士会 会長  前田 豊

 平成15年(2003年)12月22日

  裁判員制度は、国民の司法参加の理念の下に民主的裁判の実現を目指して導入されるものである。
 よって、当会は、2004年通常国会に同制度にかかる法案が上程されるにあたり、以下のとおり要望する。

 裁判官は1人または2人、裁判員の数は9人以上とするなどできるだけ多くして、国民が主体的・実質的に関与できる制度にすべきである。
 裁判員にわかりやすい制度とすべきである。捜査機関の取調べで作成された供述調書の信用性等を判断しやすいよう、取調べ状況の可視化(録画・録音)の実現は不可欠である。
 健全な批判がないところに健全な発展はない。裁判員が任務を終えた後は、職務上知り得た秘密および自己以外の発言者と発言内容が特定できる事項を除いては、その経験を自由に述べることを容認すべきである。これを制限したり、守秘義務違反であるとして刑罰を科したりすべきではない。
 裁判員制度に関する取材及び報道内容の在り方については、報道機関による自主的・自律的な判断に委ねるべきであり、法律で規制すべきではない

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