福岡県弁護士会 宣言・決議・声明・計画

2009年5月15日

福岡県弁護士会会長日記

会長日記

福岡県弁護士会会長日記
平成20年度 会長 田 邉 宜 克(31期)

【はじめに】  本年度1年間、何とか大過なく執行部としての責務を果たすことができました。  退任のご挨拶は次号で申し述べますが、若手会員からベテラン会員まで、広くしっかりと当会の活動を支えていただいていることを改めて実感した1年でした。皆さん本当に有難うございました。 【法曹人口と隣接士業】  今年初めの司法書士議員連盟総会では、司法書士業務の法律相談権の確立を目指すことが確認されたとのことです。司法書士は140万円を超える法律相談はできませんが、市民の紛争予防の為には法律相談が重要であり、裁判を前提とした金額制限をなくすべきだという主張です。司法書士は全国の市町村にいる市民に身近な存在であるが、弁護士は、全国の市町村にいるわけではない、市民の司法アクセスを確保する観点から、弁護士に法律業務を独占させることは問題だとの司法書士会の意見に賛同する有力な国会議員も少なくないと聞いています。  この関係で、法曹人口、特に弁護士人口の増加に反対する意見の中には、弁護士は従来通りの弁護士業務をやっていれば良く、現実の司法ニーズとの隙間は、既に十数万人いる隣接士業の取扱い業務・権限の拡大によって埋めて行けば良いとする考えがあることに注意を払う必要があります。この論に乗るならば、その流れは、やがて弁護士の法律業務独占の廃止に行き着く危険性をも秘めています。  弁護士人口、法曹人口を考える場合に、司法書士等の隣接士業をどう考えるかは悩ましいところですが、法曹とは、公益性、専門性を兼ね備えたプロフェッションであると意義づけて隣接士業数は法曹にカウントしないとの立場に立ち、この法曹が十分な数存在して、司法ニーズを満たすことが司法改革の目的であると考えれば、プロフェッションたる弁護士こそが法律業務を担当することに理があります。司法改革が目指すのは、この意味での法曹の増加であり、隣接士業の権限拡大は法曹が十分な数に達するまでの過渡的な措置と解し、将来的にはその見直しを求めることにも繋がります。  法曹人口5万人は到達点か通過点か、どこまで行くべきか、議論が分かれるところですが、少なくとも隣接士業の権限拡大の主張、強力に展開される運動に説得力をもって対処するには、「法曹の質を維持しつつ、市民が必要とする法曹の数を確保する」ことを目指す司法改革の旗を堅持し、弁護士過疎偏在の解消に一層積極的に対応し、弁護士が社会の社会の隅々まで司法サービスを及ぼしているという「立法事実」を実際に積み上げる必要があることだけは間違いがないと思います。 【セクシャルハラスメントの防止に関する規則施行】  4月1日以降、当会会員から当会の活動または会員の職務に関連してセクシュアルハラスメントを受けた者(事務所職員・修習生・依頼者等)は、当会のセクハラ相談員に相談または苦情の申立ができることになります。この相談を受けて必要な場合には、調査委員会を設置し、事情聴取などの調査を行ったうえで、会長から当該会員に対して、助言・指導・勧告などの適切な措置をすることができるとされています。  この規定に基づき具体的な防止に関する指針も定められています。詳細は、この指針をお読みいただく必要がありますが、例えば、セクハラになり得る言動で職場外で起きやすい例として「カラオケでデュエットを強要すること」が上げられています。あのとき、銀恋(古い!)を一緒に歌ってもらったけど、内心は嫌なのに仕方ないと思われていたら、セクハラ相談の対象になったかもと思うとドキッとしてしまいます。 男女共同参画社会の実現が求められ、弁護士会もその取り組みを強め、私達も依頼者のセクハラの相談に乗り、顧問会社で講演したりしていますが、いざ、自分達の言動となるとその認識の甘さ、自覚不足に忸怩たる思いを抱く方も少なくないと思います。この規則施行は、会員の皆さんが、普段の生活レベルからこの問題を見直してみる良い機会です。まずは隗から始めよです。

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2009年5月21日

声明(裁判員制度実施・被疑者国選拡大について)

声明

                       
                会 長 声 明

1 はじめに
  本日、裁判員裁判制度が施行されるとともに、被疑者国選弁護人制度の対象事件枠が大幅に拡大されました。このような刑事司法制度改革の節目にあたって、当会は次のとおり決意を表明します。
2 裁判員裁判の実施にあたって
  主権者である国民が参加する裁判員裁判の審理は、従前、「調書裁判」と批判されてきた事態を脱却して、直接主義・口頭主義・当事者主義に基づく公判中心の裁判を実現する、刑事司法制度改革の契機となるものです。
裁判員裁判が実施されるまでの間に、公判前整理手続における検察官手持証拠開示が拡大されるなどの変化も生じていますが、取調全過程の録画による可視化が実現していないことや集中審理に対応しうるように保釈を原則とする制度的確立がなされていないことなど多くの重大な課題が残っていますので、引き続き被告人の権利擁護のため最大限の努力をしていく必要があります。
  当会は、日本弁護士連合会と連携して、裁判員裁判に対応できる弁護技術を研究し、会員に対する研修にも取り組んできましたが、今後も裁判員裁判における弁護人としての経験交流を行うなど会員の研修を強化し、被告人の権利擁護のためにより一層努力する所存です。
また、裁判員裁判の運用状況について一般市民と当会会員によるモニター制度を実施するなどして情報収集をすすめながら、実際に進められている裁判員裁判の検証を行うとともに、裁判員制度の改革及び運用改善に向けた提言を行う所存です。
3 被疑者国選弁護拡大について
  被疑者国選弁護の抜本的拡大は、刑事手続における被疑者の権利を充分に保障する基本的条件を整えるものであり、捜査の改革を推進する役割をも有するものです。
この制度は、当会が1990年12月に全国に先駆けて当番弁護士制度をスタートさせ、その後、全国の弁護士会が法律扶助協会(現・日本司法支援センター)と連携して弁護士費用がなくても弁護士に依頼できる被疑者弁護援助制度を実施し推進してきた到達点を示すものです。
  当会は、当番弁護士制度をスタートさせて以来どのような地域においても全ての被疑者が弁護人選任の機会を得られるよう、弁護士が少ない筑豊地区へ福岡や北九州地区から弁護士を派遣したり、国選弁護人登録者の拡大などに取り組んできましたが、この制度が被疑者の権利を保障するとともに充実した刑事裁判を実現する前提となることから、当会会員がより一層充実した弁護活動を行えるよう環境整備に力を尽くす所存です。

               2009年5月21日

                    福岡県弁護士会
                       会  長  池   永    満

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