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令和8年熊本地震に関する会長談話

カテゴリー:会長談話

2026年(令和8年)7月28日、熊本県において最大震度7を観測する大地震が発生しました。福岡県においても最大震度5弱を観測し、八女市内での人的被害、柳川市内での家屋被害が報じられています。
熊本県内では、多数の死者を含む甚大な被害が次第に判明しております。
この度の地震により尊い命を落とされた方々に深く哀悼の意を表しますとともに、被災された皆様に、福岡県弁護士会を代表して心よりお見舞いを申し上げます。
現在も断続的な余震が続き、熊本県内の皆様には不安の中で過ごされていることと思います。
平成28年熊本地震や令和2年7月豪雨災害からの力強い復興の途上において、再びこのような大規模な災害に見舞われたことは、まさに痛恨の極みであり、言葉を失う思いです。
同じ九州の地にあり、日頃より深い絆で結ばれている当会として、熊本県の皆様が直面されているお気持ちや苦難を重く受け止めております。
福岡県弁護士会は、被災された方々の不安を少しでも軽減し、権利と生活を守るため、熊本県弁護士会をはじめ、九州弁護士会連合会、日本弁護士連合会、関係機関と緊密に連携していく決意です。
隣県の弁護士会として、何かできることからという思いで、7月29日から福岡県弁護士会が開設する15箇所の法律相談センターにおいて令和8年熊本地震に関するご相談を無料とすることといたしました(当面10月31日まで)。
今後も、福岡県弁護士会としてなし得る最大限の支援に会員一丸となって全力で取り組む所存です。
被災地の一日も早い復旧・復興と、皆様の安全、そして安心した生活を取り戻せる日が一日も早く訪れることを、心より祈念申し上げます。

2026年(令和8年)7月30日
福岡県弁護士会 会長 池田 耕一郎

刑事再審手続に関する改正刑事訴訟法の成立にあたっての会長声明

カテゴリー:声明

2026年(令和8年)7月17日、刑事再審手続に関する「刑事訴訟法の一部を改正する法律」(以下「本改正法」という。)が参議院本会議で可決され、成立するに至った。

えん罪被害者とそのご家族、支援団体、市民の方々とともに、長年にわたり求め続けてきた再審制度の改革がようやくその一歩を踏み出したという点において本改正法の成立は大きな意義がある。その一方、「えん罪被害者の適正かつ迅速な救済」という再審法改正の目的の根幹を成す部分について、検察官の裁量に委ねる部分を多く残しているなど不十分な点も多い。

まず、証拠開示制度に関する定めが未だ不十分である。本改正法では、捜査機関が保管する証拠について、再審請求理由に関連し、裁判所が再審請求の判断のために必要かつ相当と判断した証拠の提出を命じる証拠提出命令制度が設けられたものの、我々が強く求めていた再審請求人や弁護人が主張立証を準備するために必要な証拠(以下「主張立証関連証拠」という。)の提出や開示を要請する権限が明記されることはなかった。主張立証関連証拠については、従来から、裁判所が職権で検察官に対して提出や開示を要請・勧告することがあったが、あくまで、「要請」、「勧告」にすぎないため検察官がこれに応じる法的義務はないとされ、問題とされてきた。

当事者である再審請求人や弁護人が主張立証のために必要と考える証拠にこそえん罪を晴らすための新証拠が含まれている可能性が高いことはいうまでもなく、主張立証関連証拠の開示こそ本改正法にて明記される必要があった。

しかし、本改正法で、主張立証関連証拠の提出命令が明記されなかったことにより、検察官が、本改正法に基づく証拠提出命令でないことを理由に、無罪につながる証拠の提出や開示の要請に応じないという対応をとることが強く懸念される。

次に、検察官の手持ち証拠を明らかにするための一覧表(以下「証拠一覧表」という。)の作成・提出を検察官に命じる制度が設けられなかった点にも大きな問題がある。証拠一覧表は、再審請求人や弁護人にとっては証拠開示を請求するための足がかりとなるものであり、検察官にとっても、証拠の保管状況を適切に把握できるという意味において極めて重要である。

過去のえん罪事件においては、検察官が「不見当」、「不存在」と回答し、開示されなかった証拠が、後になって開示された例も複数ある。

福岡における再審請求事件においても、2022年(令和4年)、検察官が、裁判所からの証拠開示勧告に対して「不存在」と回答して開示されなかった証拠が、1年半以上経過した後に開示され、大きく報道されたこともあった。

そのような検察官による杜撰な証拠の保管・管理を改善し、適切な証拠開示を実施させるためにも、証拠一覧表は必要不可欠である。それにもかかわらず、本改正法に証拠一覧表の作成・提出制度が明記されなかったことにより、従前と変わらず、検察官による証拠の提出・開示に向けた手続が円滑に進まなかったり、漏れが生じたりすることが強く懸念される。

さらに、本改正法では、検察官から裁判所に提出された証拠の複製を再審請求及びそのための準備以外の目的で使用することを一律に禁止し、その違反に対して罰則が設けられることとなった。目的外使用の禁止については、その弊害等を考慮し、必要に応じて個別に対応すれば足りるにもかかわらず、全ての証拠について一律に目的外使用を禁ずるのは過度の制約というほかない。この制約は、再審請求人や弁護人が、証拠の内容を必要な関係者に提供することを躊躇させ、さらなる新証拠の獲得に向けて行う活動に対しても萎縮効果を生じさせるものである。

また、本改正法において、再審開始決定に対する検察官の不服申立てが原則として禁止されることとなった。これまで、えん罪被害者の迅速な救済の最大の足枷となっていた検察官の不服申立てが原則として禁止されることとなった点は評価できる。しかし、一方で、本改正法は、再審開始決定が「取り消されるべきものと認めるに足りる十分な根拠」がある場合には、例外的に不服申立てを行うことを許容することとなった。しかも、本改正法には、検察官が「十分な根拠」なく不服申立てを行った場合の対応が明記されていないため、検察官が同規定に基づいて十分な根拠がないにもかかわらず不服申立てを行う可能性も否定できず、これまで同様、えん罪被害者の救済に長期間を要してしまうことが強く懸念される。

以上のとおり、本改正法の成立には大きな意義がある一方、その内容については、えん罪被害者の適正かつ迅速な救済を阻害する多くの問題が残されたままとなっている。そのため、再審制度の最大の目的であるえん罪被害者の適正かつ迅速な救済という観点から、本改正法が適切に運用されることこそが何よりも重要である。

本改正法の附則では、政府は5年ごとに本改正法の施行状況等を勘案し、証拠の目的外使用の禁止に関する制度や検察官が保管する証拠の一覧表に関する制度を含む再審制度の在り方について検討を加え、必要があると認めるときは所要の措置を講ずることが定められている。

本改正法の成立は、5年後見直しの始まりでもある。当会としても、本改正法の施行状況を徹底的に検証し、適切な再審手続、ひいては、えん罪被害者の適正かつ迅速な救済が実現されるよう引き続き尽力していく所存である。

2026年(令和8年)7月22日

                   福岡県弁護士会

                   会長  池  田  耕 一 郎


「国旗の損壊等の処罰に関する法律案」に反対する会長声明

カテゴリー:声明

1 事実経過
  2026年6月16日、自由民主党、日本維新の会、国民民主党、参政党は、「国旗の損壊等の処罰に関する法律案」(以下同法を「国旗損壊罪」、同法案を「本法案」という。)を共同で衆議院に提出し、本年6月30日に衆議院本会議にて可決された。今後、本法案の審議の場は参議院に移ることになる。

2 思想及び良心の自由、表現の自由の侵害
 国旗損壊罪の保護法益は、国旗を大切に思う国民感情であると説明されている。
 しかし、国旗に対する評価や感情は国民の間で一様ではなく、国旗を尊重する国民の感情の保護を理由として国旗損壊罪を創設することは、そのような価値観を有しない国民にとっては、憲法第19条が保障する思想及び良心の自由を侵害するとの批判を免れない。
 また、国の現状や政策に対して異論を述べるための象徴的表現として国旗の損壊を伴う表現行為が、政治的少数派の国民によって用いられることがある。しかし、本法案は、政治的少数派が多数派に対して異議を唱え、現状の変革を訴えるための政治的表現を委縮させてしまうもので、憲法第21条第1項が保障する表現の自由を侵害し、民主主義の健全な機能を歪めるおそれがある。
 なお、本法案には、3年を目途に、国旗を大切に思う国民感情を保護するのに必要かつ十分なものとなっているかなどを検討するという附則が規定されているが、これは国家による監視の宣言であるとも受け取れるものであり、自由な意見表明が妨げられる社会に繋がるおそれがある。

3 罪刑法定主義違反
 憲法第31条は、市民にとって自らの行為が処罰の対象となるかどうかを予測できるよう、犯罪とされる行為の要件が明確に規定されていることを要求しており、これにより、処罰対象となる行為以外の行為が自由であることが保障される。
 しかしながら、国旗損壊罪は、客体や行為態様が不明確であり、憲法第31条が定める罪刑法定主義に違反するおそれがある。
 損壊等の客体となる「国旗」は、国旗及び国歌に関する法律(以下「国旗国歌法」という。)が定める国旗として社会通念上用いられていると認められる有体物と定義されている。しかし、この「国旗として用いられている」という要件は、判断基準が「社会通念」という抽象的概念に委ねられており、適用範囲が不明確である。例えば、国旗国歌法が規定する日章旗をどの程度デフォルメした場合に国旗性が失われるのか判然としない。結果として、「国旗」として扱われる範囲に実質的な限定がなく、定義としての機能を果たしていない。
 また、本法案は「損壊」、「除去」、「汚損」という行為態様を規制しているが、その外延が不明確であり、これらの行為に風刺やパロディ等が該当するかの判断は非常に困難である。規制対象となる「損壊」等の行為は、「人を著しく不快又は嫌悪の情を催させる」ものとされているが、「不快である」、「嫌悪感を覚える」といった抽象的かつ感情的な要件の該当性判断は、一義的には定めがたく、難解な評価を伴う。処罰の対象とするかどうかも、「行為の外形、周囲の状況やその他の客観的事情を総合的に勘案」して判断されることから、予測可能性を欠く。
 このように、国旗損壊罪は、その客体や行為態様が不明確であり、処罰の対象となるか否かが一義的に定まらないことから、憲法第31条が定める罪刑法定主義に違反するおそれがある。

4 結語
 以上のとおり、本法案は、憲法第19条が保障する思想及び良心の自由、憲法第21条第1項が保障する表現の自由を侵害するおそれがあり、憲法第31条が定める罪刑法定主義に違反するおそれがあるので、当会は、国旗損壊罪の制定に強く反対する。

2026年(令和8年)7月3日
福岡県弁護士会        
会  長   池田 耕一郎

刑事法廷内の入退廷時に被疑者・被告人に対して手錠・腰縄を使用しないことを求める会長声明

カテゴリー:声明

日本の刑事法廷では、勾留された被疑者・被告人(以下「被告人等」という。)は、手錠・腰縄をされた状態で刑事法廷内を入退廷させられることが法廷慣行であり、それにより、裁判官や傍聴人などに手錠腰縄姿が晒されてきた。

 しかし、このような状況は、被告人等の個人の尊厳・人格権、無罪推定の権利、防御権等を保障する憲法及び国際人権法等に違反するとして、当会は、2025年5月29日、「刑事法廷内の入退廷時に被疑者・被告人に対して手錠・腰縄を使用しないことを求める決議」を採択し、刑事法廷内で手錠・腰縄を使用しないように裁判所に求め、各会員においても、個別事件で、裁判官に対し、被告人等の入退廷時に手錠腰縄を使用しないことを求める申入れ活動をしていた。

 その後、2026年1月26日、最高裁判所事務総局刑事局は、「刑事裁判の法廷における被告人の戒護について(事務連絡)」を下級裁判所に発出し、同日、法務省矯正局も「刑事裁判の法廷における被告人の戒護及び手錠等の使用について(通達)」(法務省矯成第126号)を刑事施設等に発出し、これにより、各裁判所は刑事法廷内に被告人出入口付近に衝立を設置し、当該衝立内で被告人の手錠及び腰縄を解錠・施錠することを原則的な取扱いにすることとなった。これを受けて、福岡高裁・地裁管内でも、同年4月以降、刑事法廷の出入口付近に衝立を設置して、当該衝立内で手錠腰縄を解錠・施錠する運用が開始されている。

 これにより、被告人等が手錠腰縄姿を傍聴人には晒されなくなったことから、被告人等の人権侵害状況が一定程度改善した点は評価できる。

 しかし、裁判官には被告人等の手錠腰縄姿が見える位置に衝立が設置されることが予定されているため、裁判官はじめ訴訟関係人にも手錠腰縄姿を晒される状態は依然として残っており、被告人等が対等な当事者として扱われているとはいえず、いまだ被告人等の人権侵害状態が続いている。 

よって、当会は、被告人等の個人の尊厳・人格権、無罪推定の権利、防御権等の基本的人権を十分に保障するために、裁判官、裁判所及び国に対し、改めて、以下の措置を早急に講じることを求める。

1 裁判官は、刑事訴訟法287条1項但書が規定する事由があり、必要やむを得ない場合以外は、刑事法廷内で手錠・腰縄を使用しないこと。

2 国は、刑事訴訟法287条1項本文が規定する刑事法廷内における身体不拘束原則を入退廷時の被告人等に対しても確実に保障するため、同法に287条の2を新たに設ける等して、入退廷時の被告人等に対しても身体不拘束原則が及ぶことを明記すること。

3 国及び裁判所は、被告人等の入退廷時に手錠・腰縄を使用しないための施設整備(例えば、手錠・腰縄の着脱が可能な待機室あるいはスペース等の設置)を講じること。また、たとえ上記最高裁事務連絡・法務省通達を前提にする場合であっても、裁判官はじめ訴訟関係人が被告人等の手錠腰縄姿を見えないような位置に衝立を設置すること。

を求める。

2026年(令和8年)7月1日

 福岡県弁護士会        

                 会 長  池田 耕一郎

最低賃金額の大幅な引上げ及び地域間格差の解消を求める会長声明

カテゴリー:声明

福岡県においては、2025年11月、福岡県最低賃金を前年比65円増額の1時間1,057円とする改定が行われた。しかし、時給1,057円は、正社員を含むフルタイムの労働者(一般労働者)の1か月の所定内労働時間である147.3時間(「毎月勤労統計調査 令和7年分結果確報」)で計算すると月額15万5696円程度と、未だいわゆるワーキングプアと呼ばれる水準にとどまっている。

総務省の消費者物価指数は、2020年を100とすると、2025年12月には113.0と13.0%も上昇しており、この数年のインフレ基調は収まる気配がないのに対し、厚生労働省の「毎月勤労統計調査令和7年分結果確報」によると、現金給与総額(事業所規模5人以上)での実質賃金指数は前年比1.3%減となり、4年連続での前年比マイナスとなった。このように、この数年のインフレ基調に労働者の賃金上昇が追いついていない状況を踏まえるならば、更なる大幅な最低賃金額の引上げは必要不可欠である。

また、2025年の最低賃金額は、最も高い東京都で1,226円であるのに対し、最も低い高知県、宮崎県、沖縄県では1,023円と、依然として203円という大きな格差が生じている。地域の最低賃金の高低と人口の増減には相関関係があるとされており、地方と都市部との間で最低賃金額の大幅な地域間格差が生じていることは、地方から都市部へ若者が流出する要因の一つでもあり、最低賃金が低い地域の人口減を生じさせる地方の地域経済のマイナス要因となっている。そのため、最低賃金額を大幅に引き上げると同時に、最低賃金法第9条以下の地域別最低賃金制度を抜本的に見直し、地域間格差の解消に向けて全国一律最低賃金制度の導入についても検討されるべきである。

一方で、最低賃金額の大幅な引上げは、特に経営基盤が決して盤石とはいえない地方における中小企業の経営に影響を与える可能性が大きいことから、抜本的な中小企業支援策を併せて実行することが必要である。今後、中小企業も含めた更なる最低賃金額の引き上げを実現するに当たっては、独占禁止法や中小受託取引適正化法をこれまで以上に積極的に運用し、中小企業とその取引先企業との取引の公正が確保されることにより、人件費等の経費の増加が適正に取引価格に転嫁されるようにすべきであるとともに、従来の業務改善助成金に加え、社会保険料の事業主負担分の減免などの支援策も実施すべきである。

政府は、2025年6月に閣議決定した経済財政運営と改革の基本方針(いわゆる「骨太の方針」)において「2020年代に全国平均1,500円という高い目標に向かってたゆまぬ努力を続ける」という目標を掲げたが、新たに発足した内閣では、この目標を継承することに慎重な姿勢を示している。しかしながら、上述のとおり大幅な最低賃金額の引上げは不可欠であり、抜本的な中小企業支援策を実行すれば実現可能であるのだから、政府はこの目標を堅持すべきである。

なお、2025年度改定最低賃金の発効日には、都道府県によって差異があり、最も遅い秋田県では、約半年間も最低賃金の引上げが先延ばしにされている。このような事態は望ましいものではなく、発効日に関する一定の規制を施すべきである。

当会は、引き続き、本年度、中央最低賃金審議会が、厚生労働大臣に対し、地域間格差を縮小しながら全国すべての地域において最低賃金の引上げを答申すべきこと、また、福岡地方最低賃金審議会が、福岡労働局長に対し福岡県最低賃金の大幅な引上げを答申すべきことを強く求めるとともに、国に対し、中小企業への十分な支援策を求める。

2026年(令和8年) 6月10日

福岡県弁護士会        

会長 池田 耕一郎       

福岡県弁護士会 〒810-0044 福岡市中央区六本松4丁目2番5号 TEL:092-741-6416

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