福岡県弁護士会 宣言・決議・声明・計画

2021年3月24日

特定商取引に関する法律等の書面の電子化に反対する意見書

意見

消費者庁は,消費者委員会2021年1月14日会議において,特定商取引に関する法律が定める通信販売を除くすべての取引と特定商品等の預託等取引契約に関する法律が定める取引について,オンライン契約か対面契約であるかを問わず,消費者が承諾すれば,電磁的方法により契約書面や概要書面を交付することを容認する内容への改正を検討する旨の方針を示し,同年3月5日,同方針を踏まえ,「消費者被害の防止及びその回復の促進を図るための特定商取引に関する法律等の一部を改正する法律案」が閣議決定され,国会に提出された。しかしながら,同改正法案は,特定商取引に関する法律及び特定商品等の預託等取引契約に関する法律がこれまで担ってきた消費者保護機能を損なう危険のあるものであるため,以下のとおり意見を述べる。


1 意見の趣旨
 電磁的方法により契約書面や概要書面を交付することを容認することは,消費者保護の根幹たる特定商取引に関する法律及び特定商品等の預託等取引契約に関する法律上の書面交付義務を軽視し,各法の果たしてきた消費者保護を大きく後退させるものであり,今後オンライン取引が拡大していくことを踏まえても,拙速というべきであって,反対である。


2 意見の理由
(1) 法定書面の機能及び重要性
 特定商取引に関する法律(以下「特商法」という。)及び特定商品等の預託等取引契約に関する法律(以下「商品預託法」という。)は,訪問販売等の方法により消費者と契約をする事業者に対して契約書面及び概要書面の交付義務を課しており(特商法4条等,商品預託法3条,以下「法定書面」という。),法定書面の記載事項について特定商取引に関する法律施行規則等において極めて厳格に定められている。これは,消費者に対して,自らの行った契約の内容を明確に認識させる機会を保障するとともに,クーリング・オフ等の手続により,契約関係からの離脱をする機会を保障するためであって,事業者の法定書面交付義務は,特商法及び商品預託法における消費者保護の柱ともいうべき極めて重要なものとして位置付けられてきた。
 実際の相談現場においても,消費者自身が,誰と,いつ,どのような内容の契約を締結したのかを明確に認識していない事例は枚挙に暇がなく(そしてその原因については,消費者の注意不足に起因するというよりも,契約内容自体が複雑であることに起因する事例が多数見受けられる。),消費者の手元に残された契約書面等から上記の情報を確認していくという手法がとられている。また,クーリング・オフは一定の期間内に行わなければならないところ,契約書面等がそもそも交付されていない場合や,記載事項が法定の要件を満たさない場合には,この期間が進行しないため,相談現場においては,法定書面交付の有無,交付の時期及び記載の不備の有無などから,クーリング・オフの可能性を検討しており,紙面として残された契約書面等は事案解決のための重要な資料となっている。
 さらに,当該消費者自身が消費者被害にあっている認識を持てないような場合(若年者や高齢者であって判断能力が充分でない場合や,言葉巧みに勧誘されてその認識を阻害されているような事案など)でも,家族や知人,福祉関係者や地域の方など周囲の者が,当該消費者が保有している契約書面等をきっかけとして被害に気付くという事例もあり,被害発覚の端緒としても機能している。
(2) 法定書面の電磁的方法による交付を認めた場合に生じる弊害
ア 電磁的方法で交付することに対する同意承諾の問題
 ここで,まず,消費者の同意を前提に法定書面を電磁的方法によって交付することができるとした場合に,その同意が真意に基づいていることをいかに確保するかという点が重要な問題となる。クーリング・オフ自体,不意打ち的要素を有する勧誘方法が行われる場合に認められているものであるから,法定書面の交付方法についても,仮に消費者が同意したとしても真意に基づかない場合の救済措置が必要である。
 次に,この同意についての保存義務及び立証義務を事業者に負わせるとしても,当該資料が改ざんないし偽造されることをいかにして防止するのかも問題となる。
 この点について,消費者委員会は,2021年2月4日付け特定商取引法及び預託法における契約書面等の電磁的方法による提供についての建議において,消費者の承諾の取得を実質化することが求められているが,具体的な方法には及んでおらず,未だ十分に検討されているとはいえない。
イ 契約条項の見落とし
 電磁的方法で契約書面等を確認する際,消費者は,スマートフォン等の端末で契約条項を確認することになるが,端末の小さな画面では一覧性に劣るうえ,高速に画面をスクロールしてしまうと必要な条項を見落としてしまったり,理解できない条項を読み飛ばしてしまうおそれがあるため,契約内容を十分に認識できない可能性が高まる。
 また,端末上でしか契約条項が確認できない場合に,目を惹く広告表示に気を取られ,契約条項がほとんど読まれないということは,相談が急増し高止まりしているネット通販の定期購入トラブルにおいて,一応は表示されている解約制限が認識されていないという相談内容が多いことからも明らかである。
ウ 契約書類の保存と改ざんないし偽造の危険性
 さらに,消費者側における電磁的方法で交付された書面の保存,閲覧をどのように確保するのかという点も問題となる。
 考え方としては,事業者のサイト上に自らのアカウントを作成して契約内容を確認する方法をとる方法や,メール等で送信する方法が考えられるが,前者の場合にはサイトの閉鎖,退会(事業者が強制的に行う場合を含む)のみならず,IDやパスワードの失念等により,後者の場合には当該データの消去(端末の故障等により意図せず消えてしまう場合も含む)や端末の紛失等によって,契約書等の電磁的記録を確認できなくなるという事態が生じることも十分に想定される。
 また,事業者側においては技術的には消費者が契約時に確認した契約内容とは異なる内容が契約書として保存したり,メール等で送信することは充分に可能である反面,消費者側でそのことを確認するのは著しく困難となる。
エ 家族や見守りの方が消費者トラブルを発見できなくなること
 さらには,スマートフォン等の端末については,第三者がその端末内のデータを見ることは基本的に想定されていないため,前述のような当該消費者自身が消費者被害にあっている認識を持てない場合,第三者が消費者の保有している法定書面を発見してその契約の問題点に気付くといったことも起きなくなってしまう。
オ 従前の関係省庁の見解
 さらに,官邸の高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT戦略本部)第5回情報通信技術利活用のための規制・制度改革に関する専門調査会(2011年1月20日開催)の参考資料1「各省庁に対する書面調査結果」の通し番号41番において,当時,消費者庁及び経済産業省は,「消費者側が自ら主体的に電磁的交付に係る明示的な意思表示を行い得るものか疑義がある。」,「特に,昨今,訪問販売や電話勧誘販売においては,高齢者の判断力・交渉力不足に付け入る悪質な手口も多く,事業者側に有利なかたちで消費者の意思形成が誘導され,消費者被害が生じている実態を踏まえると,不意打ち的に勧誘を受ける高齢者を含む消費者が,電磁的交付について積極的な承諾の意思表示を行う取引形態になっているとは考えにくい。...したがって,高齢者を含む消費者が,電磁的交付について積極的な承諾の意思表示を行い得る環境であるとは言い難いと考えられる。」ということや,クーリング・オフ制度について「その起算日(書面交付日)は,手交,書留や配達証明等を利用することで客観的な立証が行われ,書面受領の時期についての消費者及び事業者の無用な争いが生じることが避けられているが,電磁的交付においては,送受信時期を偽ることや,受信機器の故障などにより。書面受領の時期をめぐる消費者トラブルを惹起する危険性もあると考える。」として極めて慎重な意見が示されてきた。
 現状,上記の問題点を覆すような状況の変化は見受けられないばかりか,事業者と消費者の間の技術力等の格差は拡がるばかりである。
(3) 立法事実の不存在
 訪問販売等の対面で勧誘及び契約が行われる取引について,契約書面等を電磁的方法で交付する必要は乏しい。
 実際に,2021年1月20日の消費者委員会本会議において,質問を受けた訪問販売に関する事業者団体の説明者は,電磁的方法で契約書面等を交付することについて質問を受けた際,「青天のへきれきみたいなものがあって...そういった議論はしてきた経緯はございません」と回答している。
 このように,以上の法定書面の機能及び重要性と電磁的方法による交付を認めた場合に生じる弊害にもかかわらず,なお電磁的方法による法定書面交付を広範に容認する必要性を裏付ける立法事実の存在は明らかでない。
(4) 結論
 取引の態様によっては,契約書面等を電子化していくことは消費者にとっても便宜になる場面もあり,いずれは契約書面等が電子化されていくこともありうる。
 しかし,デジタル社会の進展とともに,現時点では,消費者と事業者の間の情報の質及び量並びに交渉力の格差は縮まるどころか,むしろ拡大しており,事実関係の確認および把握という点で,事業者から交付された法定書面は依然として消費者にとって極めて重要な意義を有している。
 したがって,少なくとも現段階においては,電磁的方法により契約書面等を交付することについての同意の真意性の確認,契約書面等の改ざんないし偽造のおそれ,契約書面等の保存,閲覧の確保の点で具体的な検討がなされておらず,拙速であり,消費者庁の示した改正方針には反対である。

以上

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2021年2月18日

中学校校則の見直しを求める意見書

意見

文部科学省 御中
福岡県教育委員会 御中
福岡市教育委員会 御中
北九州市教育委員会 御中

2021(令和3)年2月17日
福岡県弁護士会    
会 長 多 川 一 成

【意見の趣旨】

1 合理的理由が説明できない校則や生徒指導、子どもの人権を侵害する校則や生徒指導は、直ちに廃止し、もしくは見直すべきです。
2 不必要な男女分けをする校則や生徒指導は、直ちにやめるべきです。
3 校則の制定、見直しにおいては、生徒も参加する校則検討委員会で検討するなど、生徒の意見を反映すべきです。

【意見の理由】

第1 はじめに
当会では、これまで、様々な子どもに関する問題に取り組んできた。学校における子どもの人権の問題についてみると、1993(平成5)年に福岡県内の中学校で丸刈りが強制されていた実態を調査し、その廃止に向けて取り組んできた。また、2010(平成22)年には体罰について考えるシンポジウムを開催し、教育委員会と一緒に体罰をなくす取り組みについて検討した。そして、最近では、2017(平成29)年にシンポジウム「LGBTと制服」を開催した。これは自分の性自認にそぐわない制服を無理やり着用させられる子どもたちの苦しみ、それによる不登校やトラウマといった悲劇をなくして、「男子は学ラン」「女子はセーラー服」といった性別に縛られない生き方を尊重できるようにすることはもちろん、「生徒が自分の意見で着たい服を選ぶことができる」という自由を守る活動として行われたものであった。こうした活動が実り、新標準服が誕生し、2020(令和2)年4月1日より福岡市内の市立中学校69校の9割で新標準服が採用された。
このように、当会では学校における子どもの人権の問題について取り組んできましたが、残された問題として「校則」がある。
文部科学省は、校則について「学校が教育目的を実現していく過程において、児童生徒が遵守すべき学習上、生活上の規律として定められており、児童生徒が健全な学校生活を営み、よりよく成長していくための行動の指針」としており、「学校を取り巻く社会環境や児童生徒の状況は変化するため、校則の内容は、児童生徒の実情、保護者の考え方、地域の状況、社会の常識、時代の進展などを踏まえたものになっているか、絶えず積極的に見直さなければなりません。」としている。しかし、校則については、様々な問題点が指摘されており、男女で異なる髪型の制限があったり、下着の色が特定の色に指定されていたり、靴下の色や柄についても細かな規定がされている等規制の内容に合理性がなく、生徒の学校生活を必要以上に制限するものが多数存在している。そこで、当会は、校則の実態を調査するため、福岡市の市立中学校69校の校則について調査検討した。調査検討の結果は、以下のとおりである。

第2 調査検討の視点
1 子どもの人権及び子どもの権利
子どもは人格的に自律した存在であり、基本的人権を享有する主体である。したがって、子どもであるからとして、基本的人権の享有を妨げられる理由はない。日本国憲法は、13条で、すべて国民は、個人として尊重されると規定し、同14条は、すべて国民は、法の下に平等であって差別されないと規定する。したがって、子どもも、個人として尊重され、平等に取り扱われる。
この点、子どもは、自ら選びながら自分をつくり成長していくために、探求し学習することが必要であるが、そのためには教育を受ける権利(学習権)が十分に保障されることが必須の前提となる。そのため、子どもとの関係では憲法26条の教育を受ける権利が特に重要となる。したがって、学校教育の過程にあるということは、子どもに対して、より十分な人権保障を要求する根拠にこそなれ、子どもの人権を制限する根拠にはなり得ないものである。
1989(平成元)年、子どもの権利条約が国連総会で採択され、1994(平成6)年に日本もこれを批准した。同条約は、子どもは「保護の対象」であるだけでなく、何よりもまず「権利の主体」であり、さらには「権利行使の主体」と捉えている。同条約12条は、「自己の意見を形成する能力のある児童は、自己に影響を及ぼすすべての事項について自由に自己の意見を表現する権利」があることを認め、子どもの意見表明権を保障する。そして、同条約はこれに引き続いて、子どもの表現の自由(13条)、思想・良心・信教の自由(14条)、集会・結社の自由(15条)、プライバシーの権利(16条)を保障する。
同条約は、子どもに関するすべての措置をとるに当たっては、公的なものであれ、私的なものであれ、子どもの最善の利益が考慮されなければならないと規定する(3条)。したがって、子どもの保護と教育の観点から大人とは異なる特別な制限がなされる場合は、子どもの最善の利益を図るためのものでなくてはならない。
2 校則の定義及び法的根拠
「校則」は法令用語ではなく、一般には、「学則」「生徒心得」「義務規定」「学習の心得」などの校内規則の総称として使われている。ここでは、校則は学校によって全生徒に対して画一的に示され、生徒の生活・行動を直接かつ継続的に規制している生徒指導に関する規範としての性格をもち、その違反に対しては最終的に懲戒処分等の学校による何らかの強制力が予定されているものと捉える。
校則制定権の根拠について法の明文はない。もっとも、学校教育法5条は、「学校の設置者は、その設置する学校を管理し、法令に特別の定のある場合を除いては、その学校の経費を負担する。」とされており、学校の設置者は学校の物的管理(校舎をはじめとした施設の管理を含む。)や運営管理(児童生徒の管理を含む。)などに必要な行為をなし得ると解されており、同法37条4項、49条により、校長は校務をつかさどることから、校則制定権をこの「校務」に含めて理解することもあり、裁判例においては学校長に校則制定権を認めている。
もっとも、学校長に校則制定権が認められるとしても、校則は生徒の自己決定権に関わるものであることからすれば、少なくとも当事者である生徒の意見を尊重しなければならず、校則を制定・改変するにあたっては、生徒も手続きに参加する必要があるといえる。この点、国際連合子どもの権利委員会は、日本に対し、日本の子どもの意見表明が家庭・学校その他のあらゆる場所で軽視されている旨の勧告を度重ねてしている。例えば、2010(平成22)年6月の最終見解において、「学校が児童の意見を尊重する分野を制限していること、政策立案過程において児童が有するあらゆる側面及び児童の意見が配慮されることがないことに対し、引き続き懸念を有する。委員会は、児童を、権利を有する人間として尊重しない伝統的な価値観により、児童の意見の尊重が著しく制限されていることを引き続き懸念する。」としていることに留意すべきである。
3 校則による規制の正当化要件・規制の限界
前述のとおり、子どもは、一人の人間としてその尊厳を尊重され、人格及び能力を最大限に発達させ開花させるために教育を受ける権利(学習権)が保障されている。そして、学校は子どもの学習権を実現する場所の一つであり、子どもは学校生活を通じて多くのことを学び成長発達していく。そのため、学校は、子どもに対し、学習権を十分に保障できるような環境を提供することが求められる。
他方で、学校は、家庭教育などと異なり、家族等を超えた社会集団によって営まれる。そのため、学校がその教育目的を達成するために、生徒の教育に適した環境を整備・維持するため生徒に一定の規制をすることが認められる。
この点、公立中学校で丸刈りが強制されていたことについての裁判例は、学校長に校則を定める権限を認めつつも、これは無制限なものではなく、中学校における教育に関連し、かつ、その内容が社会通念に照らして合理的と認められる範囲においてのみ是認されるものであると判断しており、校則が教育を目的として定められたものである場合、その内容が著しく不合理である場合には学校長の裁量権を逸脱し、違法となるとしている。
しかし、上記裁判例の基準は学校長の裁量権をあまりに広く認めている。上述のとおり、子どもには自己決定権があり、どのような服を着るのか、どのような髪型にするのか等は本来子どもが自由に決めることができるものである。このことは、学校内においても、変わることはない。そのため、校則によって子どもの自己決定権を制限するにあたってはその規制が教育目的を達成するために必要・不可欠であり、かつ憲法・子どもの権利条約から見て正当なものであり、その手段や手続きも教育的配慮のもとに適正な手続きを踏まえて行われなければならない。しかも、校則は、生徒に対し一律に適用されるものであることから、一律に規制するだけの教育目的が必要である。

したがって、校則を検討するにあたっては、①規制に真に必要かつ重要な学校教育上の目的が認められること ②規制目的と規制手段(態様・程度)が実質的に合理的関連性を有することの2つの要件を満たしていることが必要であり、いずれかの要件を満たさない場合には当該校則については廃止や見直しが必要となる。

第3 福岡市立中学校の校則の問題点
1 校則の規定内容の問題点
検討した校則には、服装、頭髪、持ち物、学校外での行動に至るまで事細かな規制が設けられていた。なお、詳細については、別紙調査報告書を参照されたい。
しかし、今回検討した資料からはこのような規制にどのような教育目的があるのか明らかではない。
以下、項目ごとに検討する。
(1) 標準服の規制について
校則においては、標準服の着方について事細かな規制がなされている。そもそも生徒が登校にあたりどのような服装をするかは生徒の自由な意思により決せられるべきことからすれば、標準服の存在自体、憲法13条の観点からとはその必要性を別途議論する必要はあろう。ただ仮に、標準服が必要であったとして、憲法13条を根拠とする生徒たちの個人の尊重という点においても、また標準服が「学校において着用することが望ましい」とされている服装であることからしても、校則において標準服の着方、すなわちスカート丈やシャツ、ベルト等について細かな規制をするのであれば、そのような規制について教育目的が認められることが必要である。しかし、シャツの色や形、スカートの丈等を規制することにどのような教育目的があるのか明らかではない。授業等の活動において支障がないようにスカート丈やスラックスの幅等の規制を設けているとも思えるが、生徒の体型や活動のスタイルは個々で異なるのであるから、個別の事情に応じて対応すれば足り、画一的に長さや幅を規制する必要性はない。
また、衣替えの時期について一律に規制する校則もあったが、気候に応じてどの標準服を着るかは、体質の問題も相まって、生徒の判断に本来委ねられるべきものである。また、生徒によっては、怪我や生まれつきの痣、リストカット痕等、他の生徒に肌を露出したくない理由があるなどして、年中長袖を着用したいという希望もある。このような各生徒の事情に応じず、画一的に時期によって、標準服の切り替えを生徒に強いる校則は、必要性・合理性がないばかりか、生徒がかかえる個人的事情を暴露させる結果となってプライバシーを害したり、ひいてはいじめを助長したりするなど弊害が考えられる。
(2) 頭髪の規制について
頭髪の長さや髪型について様々な規制が設けられているところ、頭髪の長さや髪型について細かく決めなければならない合理性や必要性は全く認められない。
この点、禁止される髪型としてツーブロックがあるところ、東京都では都立高校の校則でツーブロックが禁止されていることに関して、東京都教育委員会委員長が「外見等を理由に事故や事件に遭うケースがあるため、生徒を守る趣旨から定めている」と述べたと報道されているが、髪型を規制することと事故・事件の防止との間に因果関係があるのか極めて疑問である。学校側は、重要な教育目的を達成するために髪型を規制する必要があるのかとともに、規制目的と規制手段との間に実質的合理的関連性があるのか納得できる説明を行う必要がある。
また、校則では髪ゴムの色やヘアピンの数等についても規制しているが、これらについて規制するだけの教育目的は認められない。
さらに、染色や脱色、パーマを禁止する校則も多く認められるが、その背後には学校が一方的に想定する中学生像があり、そこでは頭髪は直毛で黒色であることが前提となっている。
しかし、そもそも髪の色や形状は人によって異なっており、生徒がどのような髪の色や髪型にするかは自由に決定できるものであることから、制約を受ける理由はない。仮に、何らかの制約を課す理由があったとしても、頭髪が直毛や黒色ではない生徒に対し、地毛証明書の提出を求める等の指導を行うことは、生徒の生まれながらの髪色や髪質を否定し、個人の尊厳を踏みにじるもので過度な指導であり、直ちに見直しが必要である。
(3) 眉毛の規制について
眉毛に手を加えることを禁止する旨の規制が確認できた学校は56校であり、うち2校が眉の間を含み、3校が額を含んで一切手を加えることを禁止していた。
しかし、眉毛に手を加えることを禁止することにどのような教育目的があるのか不明である。仮に何らかの教育目的があったとしても、眉毛の形状にコンプレックスのある生徒もいることも容易に想像できることから、眉毛に手を加えることを一律に禁止することは過度な制限であると言わざるを得ない。
(4) 下着、靴下、靴の規制について
下着に関する規制は83%の中学校で認められた。しかし、下着の色や柄に関してこのような規制を設ける教育目的が明らかでなく、規制する必要性・合理性も全く見当たらない。このような規制は、教職員が生徒の下着を目視するなどの違反調査がなされることにもつながり、生徒に羞恥心を抱かせるなど新たな人権侵害を生み出すことにもなりかねない。
靴や靴紐、靴下の色、靴下の長さについても、細かく指定する校則が認められるが、これらについて規制することに何らかの教育目的を見出すことは出来ず、仮に何らかの教育目的があったとしても、一律に色や種類を指定するという規制手段には合理性や必要性がない。
(5) 防寒着・防寒具に関する規制について
コート類等に関する規制を設けている中学校は全体の70%となっていた。多くの中学校がコート類の種類・色を指定していたが、これらの規制にどのような教育目的があるのか明らかではない。仮に何らかの教育目的があったとしても、寒暖の感じ方には個人差がある以上、どの防寒着を着るかは本来生徒の判断に委ねられるべきものであり、一律に規制する必要性や合理性はない。また、コート類の色については、暗色系の色を指定する中学校が多く見受けられたが、暗色系は、夜道などではかえって目立たず、交通事故に巻き込まれやすくなることを考え合わせると、暗色系に限定する必要性や合理性もない。なお、フード禁止に関し、「防犯のため」と規定する中学校もあったが、フード禁止と防犯がどう関係するのかなど不明な点が多く、規制する目的になり得るのか極めて疑問である。
セーター、トレーナーに関する規制を確認できた中学校は全体の83%であり、カーディガンに関する規制を確認できた中学校は全体の65%となっていた。種類や色、柄、デザインなどを規制する中学校が多かったが、これらを規制することにどのような教育目的があるのか明らかではない。仮に何らかの教育目的があったとしても、一律に種類や色、柄、デザインなどを事細かく指定するという規制手段には合理性や必要性がない。
マフラー、ネックウォーマー、手袋等の防寒具に関する規制を設けている中学校は全体の70%であり、細かい指定はあまり見受けられなかったが、そもそも規制する目的が明らかではない。仮に何らかの教育目的が認められるとしても、規制を設ける必要性や合理性について納得できる説明が求められる。
校舎内における防寒着・防寒具の着用禁止についても、その目的が判然としない。授業等の活動において支障がないようにこのような規制を設けているとも考えられるが、そうであれば昇降口で着脱を強制する必要性・合理性は乏しい。また、コロナウイルスの影響により室内の定期的な換気が必要となり、校舎内での防寒対策も必要な昨今の情勢も考え合わせると、教室内であっても画一的に着用を禁止する必要性は乏しい。
(6) 持ち物について
鞄の種別について規制を定めている学校は、69校中15校あり、その全てが学校指定のスクールバッグしか使用してはいけないとの内容を定めていた。しかし、通学に使用する鞄が学校指定でなければならない必然性はなく、生徒の選択の自由を過度に制限するものである。校則の中には「必ず両肩でからうこと」と鞄の持ち方についてまで規制するものもあるが、障害がある生徒に対する配慮が欠けており、規制の合理性を欠く。また、鞄に付けるキーホルダーの個数や大きさについて規制を設けることについても、教育目的は明らかではなく、規制の合理性がない。
携帯電話を持ち込み禁止とする学校があった。携帯電話については、授業時間中に操作することで学業が疎かになる懸念もある一方、保護者との連絡用や防犯用品として必要である側面もある。そのため、学業への影響から携帯電話の持ち込みを制約することに教育目的は認められるとしても、携帯電話を使用する場所や時間を限定する方法によっても教育目的を達成することは可能であり、持ち込みを一律禁止とすることは教育目的達成との間に合理的関連性が認めらない。なお、令和2年(2020年)8月、文部科学省は中学校への携帯電話の持ち込みを一定条件のもとで認める旨の通知を出しており、今後、中学校において携帯電話持ち込みに関しての議論が始まるものと思われる。
(7) 学校外行動の規制について
校則の中には、生徒の学校外の行動について規制するものがあった。しかし、学校が子どもの行動を制約できるのは基本的に学校内に限られる。子どもの権利条約5条においては、子どもの権利行使にあたり、親が指示・指導を与える責任、権利、義務を尊重しなければならないと定めており、子どもに対する一次的養育責任は親であると明確に定めている。したがって、学校外行動については、保護者が許可した場合まで学校が一方的に制約できるものではなく、校則で規制する必要性もない。
学校は保護者及び生徒への指導にとどめ、保護者も学校に子どもの全ての行動の責任を求めるのではなく、学校外行動について子どもとしっかりと協議することが必要である。
(8) 男女区別を基準とする規制について
標準服に関する規制において、男女で規制内容が異なっていた中学校が全体の72%にも上っていた。また頭髪についても男女で異なる規制を設けている中学校は全体の84%となっていた。防寒具のカーディガンの着用について、女子生徒、あるいはセーラー服着用時の女子生徒のみ認める中学校は13校あった。
しかし、性自認や性表現には多様性があり、「男」「女」以外の性を自認する者、生まれた際に割り当てられた性と性自認や性表現が異なる者等がいるにもかかわらず、生まれた際に割り当てる「男」「女」という二元的な性別基準によって生徒の服装や髪型を区分する正当な目的はない。特に標準服については福岡市立中学校の多くが、2020年度からスカートやスラックスを自由に選択できる新標準服を導入しているが、上記のように男女で標準服の規制内容を分けることは、選択型標準服を導入した趣旨にも反する。
2 校則運用上の問題点
(1) 明文なき校則による制限
 当事者ヒアリングの結果からは、生徒手帳等に記載されていないにもかかわらず、生徒の自由を制限するような明文なき校則が存在しており、これに基づき生徒指導がなされている実態が明らかになった。
前述のとおり、生徒は自己決定権を有しているところ、校則はこれを制限するものであることから、事前に生徒のどのような行動を制限するかについては生徒がわかるように明らかにしておく必要がある。生徒自身にどのような規制が存在するのか明確に分からない状態のまま、校則違反として指導することは、生徒に不意打ちをもたらし、妥当ではない。校則による制限は、教育目的を達成するために合理的な範囲内に限られるべきことからすれば、生徒手帳等によって事前に決められている以上の制限を生徒に課して指導することは非常に問題である。
また、校則に規定がないにもかかわらず、おでこの産毛剃りをしたことについて指導を受けたという事実が認められた。これは教職員に生徒が頭髪等について何らかの加工をすることに否定的な認識があることから、おでこの産毛剃りという校則に規定のないものについてまで拡大解釈して校則違反であると指導しているものと思われる。頭髪等を制限する目的である「中学生らしさ」が人や場所や時代によって変遷し得る曖昧なものであるにもかかわらず、生徒指導の基準となっていることから、上記のような拡大解釈を招いているものと考える。
(2) 教職員による恣意的な運用
校則に関する指導において、同じ教職員であっても生徒によって指導内容が異なっていたり、教職員の機嫌によって指導内容が異なったりする等、教職員による恣意的な運用が認められた。
校則は生徒の自由を制限するものであるから、校則に関する指導も規制内容に従って行われる必要がある。それにもかかわらず、教職員による恣意的な運用がなされていることには、制限する基準が曖昧であることに加えて、教職員自身が校則で制限する理由や目的を理解しないまま生徒指導にあたっていること(そもそも制限する理由や目的がない校則が多いことにも注意が必要である。)に原因があると思われる。
(3) 生徒の人権を侵害する生徒指導
校則の中には下着の色の指定のように規制する内容そのものが理不尽なものがあり、これに違反した場合の指導方法として「脱がせるよう指示する。」「脱がせた後に保護者に連絡する。」等生徒に羞恥心を抱かせるおそれの高い指導内容を規定するものもあり、生徒のプライバシーを侵害する恐れが非常に高い内容となっていた。また、生徒が眉毛に手を加えた場合には教室に入れなかったり、教職員が太く大きく眉毛を書いたりするものや休み時間はトイレ以外に教室から出ることを禁止するといった合理性のない過度な制裁を規定するものもあった。
実際の生徒指導においても、校則に違反したということで長時間指導を受けたり、地毛が明るいだけなのに毎回指導を受けたりする等明らかに行き過ぎたものも認められた。また、校則違反の指導の中で、何かと「連帯責任」を取らせる指導もあった。
このような指導は生徒の人権を侵害するものであり、直ちに見直しが必要である。 
(4) 校則についての議論に対する不当な抑圧
校則の内容については、生徒の実情や時代の進展などを踏まえて見直していくことが不可欠であり、見直しにあたっては当事者である生徒の意見が反映される必要がある。しかし、実際には、生徒会で校則について議論していたところ、先生から校則の議論を禁止されたり、校則について意見をすると「内申に響くぞ」と言われたり、理不尽な指導に不満気でいると先生から「そんな態度なら内申やらんぜ」と言われ、生徒が自ら口をつぐんでしまうという状況にあることがわかった。
校則は教育目的を達成するために生徒の自由を制限するものであることから、本来であれば当事者である生徒も校則の制定に関与することが求められるべきである。そして、子どもの自由を制限する場合にはその制限は子どもの最善の利益を図るためのものでなくてはならないことからすれば、少なくとも何が子どもの最善の利益であるかを判断するためには子どもの意見表明を尊重する必要がある。しかし、実際には、学校現場では生徒に校則についての意見表明が認められておらず、そればかりか生徒が校則による規制に疑問を持つような様子を見せたならば「内申書」を盾に取って、生徒を威圧する不適切な指導が行われている。生徒は、校則の意義について疑問を感じながらも、そのことについて意見を出すことができず、ただ「校則で決められているから」ということだけで自由を制限されており、それが強いストレスとなっている実態も明らかになっている。
学校は、このような指導方法を早急に見直す必要がある。

第4 特別支援学校の校則の問題点
1 校則の規定内容の問題点
開示された2校の校則には標準服の着用についての規定があり、「ボタンをきちんと留め、シャツの裾を出したりしない。ズボンやスカートは腰の高さの位置ではく。」との定めが置かれているが、一般的な着用の仕方を示しているにとどまっていた。「実態に応じて準備してください。」と併記されていることからも分かるように、実際には標準服を着用している生徒はほとんどおらず、指導も行われてないようである。
他方、頭髪や眉については、比較的詳細な定めが置かれていた。特に「パーマや髪染めはしない。」、「整髪料等は使用しない。」、「眉を剃ったり、細くしたりするなどの加工をしない。」といった定めは、そもそも目的が不明で、学校教育に必要な範囲を超えていることが明らかであり、合理性も認められない。
以上のように、開示された特別支援学校の校則には一部合理性のないものも認められたが、全体としては厳しい校則とはなっておらず、先に検討した福岡市内の中学校において厳しい校則が例外なく存在したことと対照的である。
2 特別支援学校の校則との比較から見える問題点
今回、特別支援学校の校則については文書の公開請求を行ったにとどまり、生徒や保護者、教職員からのヒアリングは実施できていない。そのため、(厳しい)校則を定めていない理由も正確には把握できていないが、特別支援学校の性質に照らすと、その要因として、次のようなものがあると推察される。
①知的障害のある生徒については、校則を示すだけで望ましい行動を促したり望ましくない行動を制限したりすることが難しい。
②発達特性として服装や持ち物へのこだわりが強い生徒がいるため、校則にルールを定めても守ってもらうことが期待できない。
③学級編制の標準や教職員配置が中学校に比べて充実しているため、ルールを一律に適用しなくても、個別対応がある程度可能である。
こうした理由の当否について、更に調査を行う必要があると思われるが、仮に的を射たものだとすると、次のような考察が可能である。
すなわち、こうした校則の定め方からは、学校長が、ルールを伝えても理解してもらうことが難しい生徒に対しては個別に、柔軟に対応する一方、「言えば分かる」中学校の生徒については、厳しいルールをもって一律に、硬直的に対応するという発想を持っていることが窺える。
しかし、子どもの権利は、障害の有無や理解力の高低にかかわらず、すべての子どもに等しく保障されており、また身体面・学習面で能力の高い生徒が権利侵害を受けにくいとも決して言えない。校則の定め方について中学校と特別支援学校との間に格別の差異をもうけている背景には、やはり子どもの権利を蔑ろにする価値観があると言わざるを得ない。

第5 結論
今回検討した福岡市立中学校の校則には、服装、頭髪、持ち物、学校外での行動に至るまで事細かな規制が設けられていた。しかし、そのいずれにも真に必要かつ重要な学校教育目的上の目的を認めることができず、規制するだけの合理的理由を見出すことができなかった。特に、下着の規制については、校則に規定があることにより教員が生徒の下着を目視して違反調査がなされることにもつながり、生徒の自尊心やプライバシー権の侵害を伴うものである以上、直ちに廃止すべきである。
また、生徒指導の現場では、明文なき校則により生徒の自由を制限したり、校則が教職員によって恣意的に運用されている実態が明らかなとなった。また、校則の指導の中には、生徒の人権を侵害するような指導方法も認められた。このような指導方法についても、直ちに見直しが必要である。
性自認や性表現の多様性が認められるようになり、福岡市立中学校において選択型の新標準服が採用されるに至ったにもかかわらず、現在においてもなお標準服や髪型について男女で異なる規制内容を定める校則が認められた。かかる事実は、学校が新標準服が採用された意義を理解していないことを如実に示している。学校は新標準服が採用された意義を再度確認し、不必要な男女分けをする校則や生徒指導を改善すべきである。
市立中学校は義務教育の場であるため、地域から多くの生徒が通学してくる。その中には複雑な家庭の事情を抱えて家庭に居場所がない生徒もいれば、発達障害のある生徒もいるし、不登校となっている生徒もいる。生徒は一人一人個性や抱える問題が異なっており、そのような生徒たちが共に学ぶことに学校教育の意義がある。そのため、学校はすべての生徒にとって安心して過ごせる場所であることが重要であり、それには多様性の受容と尊重が不可欠である。
校則は学校におけるルールであるが、本来、ルールは「人を縛るもの」ではなく、「人(特に弱者)を守る」役割を担うものである。したがって、本来校則は、生徒が教育を受ける権利を保障するとともに、学校という集団の中で個々の生徒の人権を保障する役割を担うべきもののはずである。
しかし、現在の校則は、単に上(教職員側)から生徒を縛るものになってしまっており、生徒の権利や人権を守るという役割がほとんど果たされていないものとなってしまっている。このような校則は、生徒一人一人の個性を尊重できるように、生徒の人権を守るものに見直していく必要がある。そして、見直しにあたっては、生徒の意見を反映させることが不可欠であり、そのためにも学校は生徒に対し校則についての自由な議論を保障すべきである。
よって、当会は、中学校の校則について早急に見直すことを求める次第である。

以上

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校則に関する調査報告書

意見

2021(令和3)年2月17日

福岡県弁護士会

第1 調査方法・対象について
当会は、2020(令和2)年7月30日、福岡市(実施機関は福岡市教育委員会)に対し、福岡市内の各中学校における、校則、生徒心得、生活心得、生活のきまり等の名目の如何を問わず学校内外における生徒の言動、生徒が身につけるもの、生徒の外見、持ち物に関する決まり事を定めたものや当該定められた決まり事が分かる文書一切の公開を求める公文書公開請求を行った。その結果、福岡市は、同年8月30日付けで福岡市内の市立中学校全69校が作成した文書を開示した。
また、同年11月25日、福岡市(実施機関は福岡市教育委員会)に対し、福岡市内の各特別支援学校中等部(他の学部と共通で定められているものを含む。)における、校則、生徒心得、生活心得、生活のきまり等の名目の如何を問わず学校内外における生徒の言動、生徒が身につけるもの、生徒の外見、持ち物に関する決まり事を定めたものや当該定められた決まり事が分かる文書一切の公開を求める公文書公開請求を行った。その結果、福岡市は、同年12月10日付けで2校(福岡中央特別支援学校と若久特別支援学校)が作成した文書を開示した。
さらに、当会は、福岡市内の生徒、保護者、教職員から直接聴き取り調査(当事者ヒアリング)を行った。当事者ヒアリングでは、①学校内での校則の運用状況、②校則等に規定がないにもかかわらず行動を制限されることの有無、③校則についての考え、④校則がなくなると学校はどうなると思うかの概ね4点を中心に聞き取りを行った。
当会は、上記情報公開請求によって開示された文書及び当事者ヒアリングにより聞き取った内容について、調査検討した。
なお、情報公開請求によって開示された文書は、中学校ごとに様々であり、標準服について規制する文書のみ開示した中学校も含まれていた。そのため、本調査は、あくまで情報公開請求によって開示された文書のみを調査検討するものであり、福岡市内の市立中学校の校則を網羅的に調査検討したものでない。

第2 校則調査の結果
1 標準服
(1) 男女区別規制
福岡市で導入された新標準服はジェンダーレスを目指したものであるが、校則上、標準服に男女区別が設けられている学校は24校、明確な男女分けではないものの、男子生徒のように見えるイラストにはスラックス・女子生徒のように見えるイラストにはスカート(キュロット)を描くなどして事実上男女分けをしている学校は26校と、69校中50校(72%)の学校で男女分けをしている校則を設けていた。また、新標準服に対応しない校則のみを継続していると見受けられる学校が3校あり、これらの中学校ではすべて男女分けがなされていた。
(2) シャツの規制
標準服のブレザー下に着用するシャツについて、学校指定カッターシャツ又はポロシャツと定める校則がある学校は69校中17校、それ以外の52校中、学校指定シャツはないもののシャツの色(白・水色・青色・ピンク等)を指定する学校は69校中49校(全体の71%)、デザイン(ボタンダウンは不可、丸襟など)を指定する学校は23校であった。
また、シャツについてこれらの校則の定めに違反した場合の対応として3校では「きちんと直せる範囲については、その場で指導して直させる。直せないものについては、その場で脱がせる。(違反の格好のままでは、教室にあげない)」「脱がせた後に保護者連絡」「再登校」といった規定が設けられていた。
(3) スカートの長さ規制
「ひざの皿が見えない」「背筋を伸ばして膝立ちをしてすそが床につく長さ 長すぎないようにすること。目安5cm」「ひざ立ちし両腕を肩の位置まであげた状態ですそが床に十分につく(うつむかず背筋を伸ばす)。立った状態でひざが見えない」といったスカート丈を定める校則を設けている学校は69校中59校(85%)であった。
(4) スラックスの規制
スラックスについても、「すそが地面につかない程度」といった長さ規制があるものが69校中20校、「幅は、ももを両手でつかんだとき、やや余裕があるくらい」といった幅の規制について設ける学校は69校中3校あった。
(5) その他標準服に関する規制
上記の(1)~(4)に含まれないものとして、「昼休みに外で遊ぶときなど、上着を脱いで活動することはよいが、違反の防寒着で行っていた場合は指導」「タートルネックやフード付きのように、極端に首回りから出たり、袖から出たりしないようにさせる」「ブレザーを脱いで、ベストを着た状態で活動することは、禁止」「袖のボタンはきちんと留めさせる。(制服袖まくりは不可)」といった校則を設けている学校、「上着の折り曲げや、腰パン等については直させる」「袖を折る場合は、2回以上ひじが見えるまで折る」と定める学校など、標準服の着用の仕方について指定を設けている学校があった。
2 ベルト
スラックスに着用するベルトについても、その色について69校中62校(90%)が「黒のみ」「黒・茶・こげ茶のみ」といった規制を設けていた。また69校中48校(70%)は「柄入り、メッシュ型、華美なものは不可」「無地」「縫い糸が白等は可」「編み込みのものは不可」「皮または合皮」「布製」といったベルトの形・素材に関する規制を設け、24校は「極端に穴の数が多いもの、2色以上は不可」「1つ穴」「ベルトの穴はシングル」「二重穴あきは禁止」「ベルト穴に金属がついたものは不可」といったベルト穴に関する規制を設け、18校では「極端に細かったり太かったりするものは不可」「幅3cm以上」といった太さの規制を設けていた。
3 標準服を着る時期(衣替えの時期指定)
また、標準服のいわゆる冬服・夏服・中間服といった着用の時期を具体的に校則で定めていたり、あるいは校則で別途学校から着用時期を指定するなどの記載をしていたりして、生徒に着用時期を規制する校則がある学校は69校中12校であった。
4 頭髪
(1) 男女区別規制
頭髪に関し、男女という性別で区別した規制を設けていた中学校は、69校中58校(約84%)であった。
(2) 髪の長さ
髪の長さに関する規制を設けていた中学校は、69校中62校(約90%)であった。
具体的な規制内容としては、前髪は眉や目にかからない(69校中59校(約86%))、横髪は耳にかからない(69校中59校(約86%))、後ろ髪は襟や肩につかない、肩にかかる場合は耳より下でゴムで結ぶ(69校中61校(約88%))というものであった。
(3) 髪型
髪型に関する規制を設けていた中学校は、69校中60校(約87%)であった。
具体的な規制内容としては、ツーブロックの禁止(69校中45校(約65%))、ソフトモヒカンの禁止(69校中27校(約39%))、剃り込み禁止(69校中16校(約23%))というものであった。
(4) 髪の結び方・髪留め(ゴムやヘアピン等)
髪の結び方・髪留め(ゴムやヘアピン等)に関する規制を設けていた中学校は69校中61校(約88%)であった。
髪の結び方についての具体的な規制内容としては、耳より下で結ぶ(69校中51校(約74%))、2つもしくは1つで結ぶ(69校中18校(約26%))、お団子・ポニーテール・編み込み禁止(69校中7校(約10%))というものであった。
また、髪留め(ゴムやヘアピン等)についての具体的な規制内容としては、ゴムの色を黒や紺や茶に指定(69校中58校(約84%))、ヘアピンの色を黒や紺や茶に指定(69校中44校(約64%))、カッチン留め、バレッタ、カチューシャ、リボン、シュシュや飾りがついたものや髪飾りは禁止(69校中14校(約20%))、ヘアピンやゴムなどを不必要にたくさん使わない(69校中10校(約14%))というものであった。
(5) 髪の加工(脱色、染色、パーマ、整髪料)
脱色を禁止していた中学校は、69校中49校(約71%)であった。
染色を禁止していた中学校は、69校中54校(約78%)であった。
パーマ(ストレートパーマ、縮毛矯正を含む。)を禁止していた中学校は、69校中55校(約80%)であった。
整髪料の使用を禁止していた中学校は、69校中52校(約75%)であった。
5 眉毛
眉毛に手を加えることを禁止する旨の規制が確認できた学校は69校中56校(81%)であり、そのうち2校が眉の間を含み、3校が額を含んで一切手を加えることを禁止していた。
 6 下着
下着(肌着、アンダーシャツ等シャツの下に着るものを含む)に関する規制を確認できた中学校は69校中57校(約83%)であった。具体的には、下着の色に関する規制を設けていた中学校が57校(約83%)あり、下着の柄(無地・ワンポイント)に関する規制を設けていた中学校が54校(約78%)あった。
これらの規制について違反した場合の指導内容を規定している中学校が3校あった。その内容は、「脱がせるよう指示する。」「脱がせた後に保護者に連絡する。」などというものであった。
7 靴下、靴、靴紐
靴の色に関する規制が確認できた学校は69校中63校(91%)であった(複数の色から選択が可能な学校は3校)。また、靴の色に関する規制を設けている学校の多くは、靴を紐靴に限定しており、紐の色まで指定していた学校が69校中54校(78%)確認できた(複数の色から選択が可能な学校は2校)。
靴下についても、色に関する規制が確認できた学校が69校中56校(81%)、長さに関する規制が確認できた学校は51校(73%)、ワンポイントすら許容しないと明示している学校が12校存在した。
8 防寒着
(1) コート類に関する規制
ア コート等の種類・色に関する規制
コート類(コート、ジャンパー、ウィンドブレーカー、ブルゾンな ども含む。以下「コート等」という。)に関する規制を確認できた中学校は69校中48校(約70%)であった。このうち、コート等の種類に関する規制を確認できた中学校は46校あり、Pコート、スクールコートに限定する中学校が多数見受けられた。また、コート等の色に関する規制を確認できた中学校は44校であった。このうち、特定の色を指定する中学校が43校、華美でないものとする中学校が2校あった。
  イ その他コート類に関する規制
コートの柄(無地、ワンポイント等)を規制する中学校が9校、フードを禁止する中学校が11校、コート等の長さを規制する中学校が2校、ボタンの色を指定する中学校が3校、ベルトや肩章などコート等の装飾に関する規制が確認できた中学校が5校あった。

(2) セーター、トレーナー、カーディガンに関する規制
セーター、トレーナーに関する規制を確認できた中学校は69校中57校(約83%)あった。具体的には、Vネックのみ、パーカー・ハイネック・タートルネック禁止などその種類に関する規制が確認できた中学校が26校、色に関する規制が確認できた中学校が56校(約81%)、柄(無地、ワンポイント等)に関する規制が確認できた中学校が42校あった。
カーディガンに関する規制を確認できた中学校は69校中45校あった。このうち、色に関する規制が確認できた中学校が43校、柄やデザイン(網目の模様、編み方、ボタンの色等)に関する規制が確認できた中学校が27校、学校指定やこれに準じるものとしてカーディガンの種類を限定する中学校が6校あった。このなかには、「学校に展示された見本のカーディガンと同色、同デザインのカーディガン」や「細糸のメリアス編みのカーディガン」など細かく規制している中学校もあった。
また、カーディガンに名札をつける旨を明記する中学校が25校あり、左胸等への縫付けを明記する中学校が16校あった。
さらに、カーディガンの着用について、女子生徒、あるいはセーラー服着用時の女子生徒のみ認める中学校は13校あった。
(3) マフラー、ネックウォーマー、手袋等の防寒具に関する規制
マフラー、ネックウォーマーに関する規制を確認できた中学校は69校中48校(約70%)あった。具体的には、「華美でないもの」「派手でないもの」と規定する中学校が22校あり、マフラーの長さに関して規定する中学校は6校あった。このうち、「長さは150センチメートル」と具体的な長さを指定する中学校も見受けられた。
手袋に関する規制を確認できた中学校は69校中47校であった。「華美でないもの」「派手でないもの」と規定する中学校が20校あり、飾りがついたものを禁止する中学校が2校あった。
(4) 防寒着・防寒具の校舎内での着脱に関する規制
校舎内でコート等の着用を禁止する中学校は35校あった。このうち 昇降口で着脱させることを明記する中学校は6校あった。マフラー、ネックウォーマー、手袋について、校舎内での着用を禁止するものが43校(約70%)、学校の昇降口で着脱させる旨を明記する中学校が8校あった。
9 持ち物
(1) 鞄に関する規制
鞄の種別について規制を定めている学校は、69校中15校あり、その全てが学校指定のスクールバッグしか使用してはいけないとの内容を定めていた。鞄に付ける装飾品に関する校則を定めている学校は、69校中23校あった。
具体的には、装飾品については、大きさの指定があるもの(例えば生徒手帳に隠れる大きさとするもの)が13校、個数の指定があるもの(例えばキーホルダーは1個までとするもの)が15校であった。
(2) 携帯電話に関する規制
携帯電話を持ち込み禁止とする学校は、69校中7校であった。
(3) その他持ち物に関する規制
ア 制汗剤、汗拭きシート、日焼け止め等
制汗剤や汗拭きシート、日焼け止め、リップクリーム、ハンドクリームに関する校則を設けている学校は、69校中12校であった。そのうち、制汗剤、汗拭きシートについては10校が規制を設けているが、許可制は1校、無臭なら可とするものが2校であった。また、日焼け止めについて校則を設ける学校は6校であり、そのうちスプレータイプはNGとするものが2校、「家で塗っていく、塗り直しは更衣室で行う」等の場所の規制があるものが2校であった。さらに、リップクリームとハンドクリームについて規制を設けているのは6校であり、その全てにおいて無色無臭のもののみ可となっている。
イ 使い捨てカイロ、金銭、飲食物
使い捨てカイロに関する校則を定める学校は69校中3校であった。その内容は、使い捨てカイロは使用して良いが見えるように使用しない、使い捨てカイロは許可するが使用後は必ず家に持ち帰って処分するというものである。金銭の所持を禁止とする学校は69校中5校あり、そのうち教師に預けるものとするのは2校であった。飲食物に関する校則を定める学校は69校中8校あった。そのうち飲料の種類を指定するもの(お茶か水なら可)は6校であり、ペットボトル飲料の持ち込みを不可とするのは1校であった。
10 学校外行動
遊戯施設(ゲームセンターやカラオケボックス、映画等)への立ち入り制限に関する校則を定める学校は69校中7校あり、そのうち保護者の許可又は同伴を必要とするものは5校あった。また、アルバイトを禁止する学校は69校中2校あった。さらに、通学に関する校則を定める学校は10校あり、登下校中の買い食いを禁止する学校が7校あった。通学については、自転車通学を禁止するものが9校、通学路の制限をするもの(例えば登下校は学校で決められている通学路を通るとするもの)が2校であった。加えて、生徒の外出や外泊に関する定めをおく学校は5校であった。そのうち外泊を禁止とするものが4校、外出の制限をおくもの(例えば、外出するときは、行先、用件、帰宅予定時刻を保護者に伝え、日没前に帰宅することとするもの)が4校であった。

第3 特別支援学校における校則調査の結果
1 開示された校則の概要
開示された文書の一つは、タイトルが「5.生活について」とされている6項目のものである。その体裁を見る限り、入学時などに保護者に配布される資料の一部ではないかと思われる。少なくとも、生徒向けに作成・配布されたルールではない。また、性別により異なる定めも見当たらない。
もう一つの文書は「学校生活のきまり」とのタイトルが付けられ、「学校での一日の生活のしかた」、「見だしなみについて」、「その他」の3項目で構成されている。すべての漢字にふりがなが振られており、生徒に示すことが想定されていることが分かる。
いずれも学校生活を送るうえで必然的に生じる決まりごとが定められていた。
 2 標準服
特別支援学校の校則においても、標準服についての規定があり、「原則は福岡市の標準服または、それに近いもの」といった定めがあった。また、1校については、これに加え、「ボタンをきちんと留め、シャツの裾を出したりしない。ズボンやスカートは腰の高さの位置ではく。」との定めが置かれている。
もっとも、「実態に応じて準備してください。」と併記されており、実際、福岡市立の特別支援学校では、中等部の生徒が標準服で通学していることはほとんどないようである。
3 頭髪・眉
開示された校則の一つには、頭髪や眉について、「パーマや髪染めはしない。」、「整髪料等は使用しない。」、「眉を剃ったり、細くしたりするなどの加工をしない。」といった定めがあり、比較的詳細な定めが置かれている。

第4 当事者ヒアリングの結果
当会では、福岡市内の中学生、保護者、教職員の合計十数名から聞き取り調査を実施した。以下、当事者ヒアリングの結果について詳述する。
1 校則で制限する理由についての説明
【聞き取った中学生が実際に体験した事実】
・髪型やゴムの色を決める理由について先生から「統一感を出すため」と言われた。
・後髪を縛る時は耳よりも下の位置でなければならないが、その理由を尋ねると先生から「男子がうなじを見て欲情するから」と言われた。
・髪を結ぶ位置が耳よりも下なのはなぜかと尋ねると、先生から「政府がそう言っている」と言われた。
・ツーブロックがいけないのも「政府がそう言っている」と言われた。
・先生は「同じ服装をするからこそ出る個性」と言うが、それは間違っていると思う。髪型など自由にした方が個性が出ると思う。
2 書かれていない校則による制約
【聞き取った中学生が実際に体験した事実】
・生徒手帳に載っていない校則が多い。
・校則では前髪は眉毛を超えないとあるのに、眉上でなければならないと指導された。
・校則では髪を結ぶゴムが黒・紺・茶と指定されているが、茶色のゴムをしていても「明るすぎ」と指導され買い直さなければならなかった。
・校則では靴下の色は「白」としか規定されていないのに、実際には織り目が縦に入っている靴下でなければ校則違反として指導される。
・事前の連絡なく靴下のワンポイントが禁止され、校則違反の指導を受けた。それまで使っていた靴下がダメになった。
(聞き取った中学生が目撃した事実)
・友人が、おでこの産毛を剃ったところ、生徒手帳にはおでこの産毛を剃ってはいけないという規則はないのに、教師から職員室前で1時間半、立ったまま指導された。泣いていても指導は終わらなかった。
3 制限の目的が不明な校則
【聞き取った中学生が実際に体験した事実】
・無言清掃
・無言給食
・職員室前無言通行
・他の階には行ってはならない。
・他の教室に行ってはならない。
・多目的トイレは使ってはならない。
・暑くても袖をまくってはいけない。
4 校則に関する指導の状況
【聞き取った中学生が実際に体験した事実】
・スカート丈の検査は全員体育館に集められ、両手を前に水平に出して、膝立ちをさせられる。体育館には男子もいる。
・体操服に着替えているときに教師が入ってきて(下着について)指導をされたことがある。
・ある教科では「校則ひとつで高校落ちるぞ」と毎回20分ほど同じ話をされる。授業をして欲しい。
・何かと「連帯責任」を取らされる。
・「連帯責任」って教師によるイジメだと思う。
・男子女子が一緒に区切りもなく体育館で一斉に生活点検をされる。その際、女の先生から下着の色をチェックされるが、男子もいるから恥ずかしい。
・生徒のことを呼び捨てにする先生が多い。下の名前を呼び捨てにする先生もいる。
・体育の後、靴下が下がっていると先生から「わざとやろう」と文句を言われる。
・靴下違反と指摘されると靴下を脱いで裸足で上靴を履かなければならない。
・名札を忘れると、名前を書いたガムテープを胸に貼られる。
・眉毛を整えたら、生えるまで毎朝職員室でチェックを受けなければならない。
・校則違反と指導を受けたら、掃除や草抜きをさせられる。
・横髪が少しでも耳にかかっていると「部活やめろ」と言われる。
・先生に気に入られている生徒はあまり指導されない。
・先生の機嫌に左右される。
・学年全員が集められて服装指導を受けるが、その間全員黙想しなければならない。
をする。
・「今自分がしている格好でいつでも高校入試に行けるようにしろ」と言われる。
【聞き取った中学生が目撃した事実】
・コロナで学校に行けず5月下旬にやっと入学できたのに、入学してすぐに、中1の女子生徒が男の先生から下着の色を指摘され、それ以来学校に行くことができなくなった。
・寝癖がついたまま登校した生徒を先生は他の生徒がいる前で大爆笑して笑い者にし、校則違反と指導した。髪の長さや色は違反していなかった。整髪料や縮毛矯正も許されていないので癖毛の生徒は大変だと思う。
・もともと髪の色が明るい生徒に対し、毎回「気をつけなさい」と指導していた。
・地毛なのに2か月以上毎日職員室に髪の色を見せにいかされた。保護者が抗議しても「親ぐるみのことがあるから」と言って続けさせられた。
・靴下が短いからと没収され、別の靴下を渡された。自分の靴下は返してもらえなかった。
【保護者から聞き取った事実】
・不登校の生徒がせっかく登校しても服装違反ということで学校に入れてもらえなかった。
・校則通り15cmと表示がある靴下を買って履いていったのに、教師から右足は合格、左足は不合格と言われ買い換えるよう指導された。たまたま左足がずり落ちていただけなのに、教師からはずり下がっても15cmになるものを買えと言われた。
・母親から教師に「靴下15cmルールやめませんか」と言うと教師から「なぜ守ろうとしないんですか」と言い返された。
・忘れ物をしても友人に借りたり、教科書を見せてもらったりしてはならず、教師から犯罪者のように扱われる。
・地毛証明書を提出させられる。
・廊下に一列に並ばされ、シャツの胸をはだけ、先生が生徒一人一人の下着をチェックする。
・靴下の長さで呼び出されて昼休みが終わるまで叱られ、帰りの会でも立たされ、他の生徒の前で説教をされた。
【教職員から聞き取った事実】
・先生が自作した靴下の長さを測る器具を使って生徒の間を歩いて検査している。
・眉毛に手を入れている生徒は、生えるまで毎日職員室で検査する。
5 校則についての生徒の意見表明の状況
【聞き取った中学生が体験した事実】
・生徒会で校則について議論をしていたところ、先生から校則の議論はしてはならないと止められた。
・校則がおかしいと声に上げることはない。言っても無理だから諦めている。
・先生から生徒総会は校則について話し合う場じゃないと釘を刺された。
・生徒総会で校則に関する質問が出たらそれを止めるように先生から言われた。
・生徒会は校則について触れてはいけないと先生に言われた。
・廊下で男子はツーブロック禁止でかわいそうねと話をしていると、それを聞いていた先生が「ツーブロックで高校受験に行ってみろ。後輩たちのために自分の人生賭けてみるか」と怒鳴られた。
・校則ついて意見をすると「内申に響くぞ」と言われる。そのため口をつぐんでしまう。
・生徒が集団になって訴えても、大人が間に入ってくれないと先生に丸め込まれる。
・理不尽な指導に不満気でいると先生から「そんな態度なら内申やらんぜ」と言われる。
・生徒が正論を言っても先生は納得しない。それどころか逆に説教される。
【聞き取った中学生が目撃した事実】
・社会の教科書の人権のページを示して先生に抗議した生徒もいる。
・生徒会に立候補する生徒がスピーチ原稿に校則のことを書いていたところ、他の生徒がいる前で、先生はその生徒が泣くまで長時間説教をした。そのため校則に関するスピーチはできなかった。
【教職員から聞き通った事実】
・生徒たちが校則について話題にできる制度はない。生徒総会でも校則について話題にしようとしても、「校則は先生たちが決めるもの」と言って話題にさせないと思う。
6 校則がなかったらどうなるか
【中学生の声】
・校則がなければ、意見も出しやすく明るい学校になると思う。
・校則がなかったら良いのにといつも思っている。
・校則がなくなっても生徒たちがグレることはないだろう。むしろストレスがなくなりちょっと元気になると思う。
・校則がなくなったら、他の子がどんな子かもっとよく知る機会になると思う。
・校則がなくなったら、学校が楽しくなると思う。
・校則がなくなったら、先生に怒られることもかなり減ると思う。
【保護者の声】
・先生は「服装の乱れは心の乱れ。心の乱れはヤンキーの第一歩」と言うが、校則がなくてもヤンキーにはならないと思う。
【教職員の声】
・校則がなくなったら、最初は少し派手になる生徒が出てくるかもしれないが、そのうち落ち着いてめちゃくちゃにはならないと思う。
・校則がなくなったら、教師と生徒の人間関係も良くなるのではないか。
7 その他
【中学生の声】
・小学校までは細かく言われることがなかったのに、中学校に入学した途端、細かな校則で規制される。本当にそんなことをする必要があるのか疑問に思う。
・一人一人個性があるのに統一する必要はないんじゃないか。
・生徒には厳しいくせに、先生は水色のピアスにピンクの口紅、髪も染めてウルフカットにしている。
・先生の言葉遣いが悪い。怒鳴り散らし、高圧的。
・部活を辞めさせてもらえない。退部届をもらわないといけないが、先生がくれない。
・学校で感じるストレスの7割が校則。
・校則のせいで学校に行くことがストレスになる。
・変な校則について、先生の方が間違っていると思うが、大人とケンカしなければいけないことにストレスを感じる。
・生徒会で校則について変えられるようにして欲しい。
・今ある校則で残した方が良いと思うものはない。

以上

(別紙)校則調査結果一覧(PDF)

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2021年2月17日

東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会会長の女性差別発言に抗議し,すべての個人が尊重される社会の実現を目指す会長声明

声明

1 2021(令和3)年2月3日,公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会(以下「組織委員会」という。)会長である森喜朗氏は,報道陣に公開されたオンラインの公益財団法人日本オリンピック委員会の臨時評議員会において,「女性理事を4割というのは,文科省がうるさく言うんです。」「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる。」「女性は競争意識が強い。」「数で増やす場合は時間も規制しないとなかなか終わらないと困る。」「私どもの組織委にも女性は何人いますか?(中略)みんなわきまえておられる。」などと発言した(以下「森氏発言」という。)。
かかる森氏発言は,「女性」を一括りにした上で,女性の人数が増えることを問題視し,また女性の発言時間を規制すべきというもので,女性を意思決定から排除したいとの偏見および差別意識を表明したものといえる。
2 この点,日本国憲法は個人を尊重し(第13条),性別による差別を禁じ(第14条),国際人権規約(自由権規約第3条,第26条等)でも,性別による差別を禁じ,男女に同等の権利を確保することを求めている。
そして,組織委員会が拠り所とするオリンピック憲章においても,オリンピズムの根本原則第6項で,「このオリンピック憲章の定める権利および自由は人種,肌の色,性別,性的指向,言語,宗教,政治的またはその他の意見,国あるいは社会的な出身,財産,出自やその他の身分などによる,いかなる種類の差別もうけることなく,確実に享受されなければならない。」と規定し,性別による差別を禁止している。
また,日本国内では,男女共同参画社会の実現に向け,2003(平成15)年に内閣府男女共同参画局が「社会のあらゆる分野において,2020年までに,指導的地位に女性が占める割合が30%程度になるよう期待する」という目標を決定し,関係機関への働きかけ・連携が行われてきた。
国連が2030年までに達成をめざす「持続可能な開発目標(SDGs)」(2015年9月の国連サミットで採択)でも,目標5として「ジェンダー平等」が掲げられている。
以上のように,意思決定手続に多様な意見を反映させ,十分な議論を経て結論を得るために女性を含め多様な人々が積極的に関与すべきことは,国際社会における普遍的な価値というべきである。
森氏発言は,日本国憲法や国際人権規約の理念に反し,国際社会における普遍的な価値にも反するものであり,個人の尊重に基づく社会の在り方自体を否定するものである。
3 世界経済フォーラム(WEF)が毎年発表しているジェンダー・ギャップ指数(各国における男女格差を測る指標。経済活動や政治への参画度,教育水準,出生率や健康寿命などから算出。)の2020年版で,日本は153か国中121位である。日本社会が男女共同参画社会にはほど遠い現状である中,森氏発言は,差別の解消に努力しないという誤ったメッセージを世界に発信するものにほかならず,国際社会の中での日本の信用を損なわせるものである。
4 さらに,森氏発言とその後の謝罪会見,森氏発言を事実上黙認していたと取られかねない組織委員会の対応については,国内のみならず海外メディアや市民からの批判,多くのボランティアの辞退,スポンサー企業の抗議などの世論の強い反発があった。これを受けて森氏は会長辞任を表明するに至ったが,その経過を見れば,森氏のみならず組織委員会自体において問題の理解が不十分であるとの疑いを持たざるを得ない。
森氏発言や組織委員会の対応は,単に偶発的なものではなく,日本社会にいまだ性別による差別が根強く蔓延していることの表れである。組織委員会は,森氏の辞任によってこの問題の幕引きをすることなく,ジェンダー平等,男女共同参画及び多様性の尊重に向けた抜本的な改善策を示すべきである。
5 以上の次第で,当会は,森氏発言及び組織委員会の対応につき強く抗議するとともに,組織委員会に対し,再発防止の徹底と,ジェンダー平等、男女共同参画及び多様性の尊重のための抜本的な改善策の提示を求める。
また,国においては,ジェンダー平等,男女共同参画及び多様性の尊重の理念に反する行為を決して放置,容認せず,これらが尊重される社会を主体的に実現する姿勢を示すことを求める。
当会は,2016(平成28)年5月に「男女平等及び性の多様性の尊重を実現する宣言」を行い,2017(平成29)年3月に「福岡県弁護士会男女共同参画基本計画~誰もが活躍できる開かれた弁護士会であるために」を策定している。当会としても,あらゆる差別的発言を放置・容認せず,全力をあげて,すべての個人が尊重される社会の実現のために取り組む決意である。


2021(令和3)年2月17日
福岡県弁護士会   
会長 多 川 一 成

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2020年12月11日

発信者情報開示請求において請求者の住所地での裁判管轄を求める会長声明

声明

発信者情報開示請求において請求者の住所地での裁判管轄を求める会長声明

2020(令和2)年12月11日
福岡県弁護士会 会長 多川 一成


 現行法上、インターネット上で匿名の発信者により名誉権等の人格権を傷つけられた被害者及びその遺族などの関係者(以下「被害者等」という。)は、被害回復のため、プロバイダ責任制限法(特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律)における発信者情報開示請求によって発信者を特定したうえで、改めて特定した相手に損害賠償請求をするなど、二段階、三段階の手続による必要がある。現行の制度には、被害者救済の上で様々な課題があり、このため、政府は、被害者等救済を促進するための法改正を検討する「発信者情報開示の在り方に関する研究会」を発足させ、同会は、「最終とりまとめ(案)」を公表し、その中で現行制度の検討のほか、非訟手続による新たな制度の方向性を示した。
 ここで、同「最終とりまとめ(案)」では言及されていないものの、以下の理由から、現行制度を維持する場合でも、非訟手続を導入する場合でも、発信者情報開示のための手続において、同手続の請求を行う被害者等(以下「請求者」という。)の住所地に裁判管轄を認めるべきである。
 まず、現行制度下における発信者情報開示請求仮処分申立、同訴訟において、その管轄は、原則として被告の住所地となるところ(民事訴訟法3条の2第1項)、コンテンツプロバイダ(サイト運営者)、アクセスプロバイダ(インターネット接続業者)の多くが東京都に存在することから、東京地裁においてその多くが取り扱われるに至っている。また、海外事業者の場合で国内に営業所がない場合、東京都千代田区を管轄する東京地裁が管轄権を有することから(民事訴訟規則10条の2及び民事訴訟規則6条の2)、結局、現状では、仮処分、訴訟のほとんどが東京地方裁判所に申し立てられている。
 発信者情報開示仮処分・訴訟では、専門性が求められるため、請求者本人による対応は難しく、弁護士を依頼することが多いが、仮処分の場合、審尋(多くの場合2回)と供託手続のために、2、3往復分の交通費と日当の支出を余儀なくされる。請求者が地方在住者の場合、これらは、大きな負担となるため、請求を断念し泣き寝入りせざるを得ない場合も多い。
 ところが、「最終とりまとめ(案)」でも、発信者情報開示制度における地方在住の請求者の負担が一切考慮されていない。また、新たな裁判手続として非訟事件手続の創設も検討されているが、その手続でも、地方在住の請求者の負担が一切考慮されていない。これは実質的には、被害者等の裁判を受ける権利の実現を困難ならしめる結果となりかねない。
 従って、現行の発信者情報開示請求仮処分、同訴訟において、請求者の住所地においても裁判管轄を認めるべきであり、仮に新しい裁判手続を導入した場合でも、請求者の住所地に裁判管轄を認めるなど、被害者等の権利保護、司法アクセスの確保を徹底し、裁判を受ける権利を十分に尊重した制度設計を行うべきである。


以上

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