福岡県弁護士会 宣言・決議・声明・計画

2007年12月 3日

違法な国民監視の根絶を求める声明

声明

本年6月6日、陸上自衛隊情報保全隊が、自衛隊のイラク派兵に反対する市民等の動向を監視し、その情報を体系的に収集・分析していた資料の存在が明らかとなった。
その中には、メディアの取材活動や、弁護士会の活動、市民から選ばれた議員の活動までもが監視の対象とされ、「反自衛隊活動」などと評されている。
 また、本年6月8日、公安調査庁の職員3名が、新潟県佐渡市の佐渡グランドホテルを訪れ、同ホテルに対し、同年6月23日、24日に開催される青年法律家協会の定時総会に参加するために同ホテルに宿泊する予定者の名簿を提供するよう求めた。
 これらの監視行為には、法的根拠が全く存在しない。
 陸上自衛隊情報保全隊は、自衛隊の保有する内部情報の流出や漏洩を防止するための組織であり、この目的に必要な情報収集活動しか許されていない。市民の行動を監視することは全く権限を逸脱した行為であり、違法である。
 また、公安調査庁は、破壊活動防止法の定める「破壊的団体」や、無差別大量殺人を行った団体の規制に関する法律の定める「無差別大量殺人を行った団体」の調査・処分の請求・規制措置以外の権限は認められていない。
 青年法律家協会は、憲法を擁護するために設立された弁護士、研究者の団体であって、このような団体でないことは明らかであるから、その行動を監視することは全く権限を逸脱した行為であり、違法である。
このように、陸上自衛隊や、公安調査庁が、組織的、系統的、日常的に、市民の行動を監視してその情報を収集・分析・利用することは、単にこれらの市民のプライバシー権を侵害するばかりでなく、民主主義をささえる表現の自由に対し強い萎縮効果をもたらすものであるから、憲法13条、21条に反し違憲である。
そもそも、日本国憲法は、国民の権利自由を最大限に保障するため、主権者たる国民が、公権力を十分監視し、コントロールするという民主主義という手段を採用している。しかるに、本来国民に奉仕すべき公権力が、何らの法的根拠なしに主権者たる国民を監視し、公権力の意に添わない国民の行動を萎縮させることは、日本国憲法の採用している民主主義原理に反するのであって、とうてい許容され得ない。
 当会は、政府に対し、?直ちにこのような行為を中止すること、?本件に関する原因調査を十分に行うこと、?二度と違憲・違法な監視行為が繰り返されないよう、実効的な再発防止策を策定し、実行することを強く求める。
2007年11月28日
                   福岡県弁護士会会長 福島 康夫

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2007年12月10日

生活保護基準の引き下げに反対する声明

声明

厚生労働省は、本年11月30日、同省が設置した「生活扶助基準に関する検討会」(以下「検討会」という)が報告書をまとめたのを受け、厚生労働大臣の記者会見において、来年度予算から生活保護基準の引き下げを行う予定である旨を発表した。しかし、当会は、生活保護基準の引き下げに強く反対すると共に、その拙速な断行を中止するよう要求するものである。
 生活保護基準は、憲法25条が規定する国民の生存権保障の水準を決する重大な基準であり、その引き下げは、生活保護利用者の生活を直撃し、破壊しかねないものであるばかりでなく、最低賃金、地方税の非課税基準、公立高校の授業料免除基準などの労働、医療、福祉、教育、税制などの多様な施策に連動しており、低所得者全般の生活に多大な影響を及ぼす重大問題である。当会は、本年10月29日付当会会長声明において、その点を指摘し、厚生労働省及び「検討会」に対して、拙速な検討を慎み、慎重な審議を行うよう要請してきた。
 にもかかわらず、生活保護利用者や幅広い国民の意見を聴取することもなく、わずか1ヶ月半足らずの期間の検討によって、引き下げの詰論を出していることは、拙速以外の何ものでもなく、”初めに結論ありきの検討”と言わざるを得ず、手続的にも極めて問題である。
 今回「検討会」報告書は、わが国の全世帯のうち、最も収入が低い一割の低所得世帯の消費支出水準と生活保護基準とを比較した上で、保護基準の方が高いとして、その引き下げに根拠を与える内容となっている。しかし、日本弁護士連合会が、第49回人権擁護大会決議で指摘したように、わが国では違法な窓口規制が広汎に行われていることから生活保護の補足率が極めて低いために、本来であれば生活保護を受け得るのに受けられず、生活保護基準以下の収入で生活することを余儀なくされている世帯が多数存在している。にもかかわらず生活保護世帯や低所得世帯の生活実態を十分考慮することなく、単純な比較検討を行うという今回のような手法は、著しく妥当性を欠くものと言わざるを得ない。そのような世帯の消費水準との均衝を理由として生活保護基準を引き下げることは国民の生存権保障の水準を際限なく引き下げていくことになりかねない。
 当会は、厚生労働省に対し、現在行なわれようとしている生活保護基準の引き下げを中止するよう強く要求するものである。


   2007(平成19)年12月5日
                     福岡県弁護士会
                        会 長   福  島  康  夫

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「改正」入管法施行停止を要請するとともに個人情報の集積管理体制構築の動きに対し反対する声明

声明

1 2007年11月20日、先に改正された出入国管理及び難民認定法(以下、「入管法」という。)の施行により、テロリストの出入国を水際で防止するためとして、日本に入国する全ての外国人(在日韓国・朝鮮人ら日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者及びその子孫などの特別永住者や16歳未満の外国人等を除く)の顔情報、指紋情報を国が取得して保管する手続が開始された。日本では、年間600万人から700万人の外国人の入出国がある。前記改正入管法の施行により、特別永住者や16歳に満たない者などが除かれるにしても、中短期滞在の外国人のみならず日本を生活の本拠とする永住者や日本人の配偶者である外国人までもが対象とされ、毎年膨大な数の外国人について生体情報が集積されることになる。
まず、「テロの未然防止」という名目で、このような膨大な数の、また広範な範囲の外国人について生体情報を取得し保存するような必要性があるか疑問である。かつて外国人登録法における指紋押捺義務が2000年に完全撤廃された経緯に照らしても、指紋情報の取得を出入国管理の一環として復活させ、更に指紋以外の生体情報も取得することは、プライバシー権の侵害はもちろん国際人権自由権規約7条で禁止する品位を傷つける取り扱いに該当する疑いが極めて強く、同規約26条で禁止された外国人差別にも該当する疑いもある。
そこで、当会は、日本に入国するすべての外国人に対し顔情報、指紋情報の提供を義務付ける制度は外国人のプライバシー権を著しく侵害し、品位を傷つける取り扱いの禁止及び外国人差別に抵触するものであるから、前記改正入管法の施行を直ちに一時停止してその制度廃止を含めた見直しをするよう要請する。
2 今回の改正入管法施行により取得された外国人の生体情報の利用に関しては、犯罪現場などで取得した顔情報や遺留指紋などと照合することが可能となり、既に新設された入管法61条の9により法務大臣は外国の入国管理当局との間で相互にその保有する個人情報を交換することも可能となっている。また、本年10月1日より施行された改正雇用対策法により外国人(特別永住者を除く)の就労状況に関する情報を厚生労働大臣が雇用主から刑罰を背景に強制的に届出させ(同法28条1項、38条二号)、これらの情報提供を法務大臣が受けることができるようになった(同法29条)。同様の制度導入が外国人の就学状況に関する情報についても検討されている。
このように外国人の入出国をはじめ日本における生活状況全般を監視する制度の構築は着実に進展している現状にあり、これを放置すれば、監視社会化の動きは、日本人を含む市民生活全般にまで波及することは必至である。
この点、日本弁護士連合会は、本年11月2日に「人権保障を通じて自由で安全な社会の実現を求める宣言」を採択し、個人情報の統合、利用を厳格に規制し、特に警察などが市民の生活や思想を監視するために情報を利用することを防止することなどを提言した。当会も、九州弁護士会連合会とともに、本年7月21日、「監視社会を招かないためのルール確立を求める宣言」において、「警察や行政機関が、適正な手続に基づかず個人情報の収集・利用をしないための措置をとる必要がある」との立場を明らかにしてきたところである。
改めて当会は、国が日本人であると外国人であるとを問わず個人識別情報を取得したり、異なる目的を持つ国家機関の間で個人情報を共有したり、外国の国家機関との間で相互に情報を交換したりするなどして、個人ごとの生活上の情報を集積管理する仕組みを構築する監視社会化への動きがあることを注視し、その動きに対して人権保障の観点から反対していく所存である。
2007年(平成19年)12月10日
福岡県弁護士会
会  長   福  島  康  夫

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死刑執行に関する会長声明

声明

1 本年12月7日、東京拘置所において2名、大阪拘置所において1名の死刑が執行された。今回の死刑執行は、昨年12月の4名、本年4月の3名、本年8月の3名に続くものである。
  当会は、これまで死刑制度の存廃について国民的な議論が尽くされるまで死刑の執行を停止するよう法務大臣に求め続けてきたが、今回また死刑が執行され、この1年間だけで13名もの死刑確定者に対し死刑が執行されたことは誠に遺憾である。
2 我が国では、過去において、4つの死刑確定事件(いわゆる免田事件、財田川事件、松山事件、島田事件)について再審無罪が確定している。また、本年4月にも、佐賀県内で3名の女性が殺害されたとされる事件(いわゆる北方事件)で死刑求刑された被告人に対する無罪判決が確定した。このような実例は、死刑事件についても誤判や誤った訴追があることを明確に示している。
  1993年(平成5年)9月21日の最高裁判決中の大野正男裁判官の補足意見でも、死刑の廃止に向かいつつある国際的動向とその存続を支持するわが国民の意識の整合を図るための立法施策が考えられるべきであるとの指摘がなされている。
  また、死刑と無期刑の選択についても、裁判所の判断が分かれる事例が相次いで出されておりその明確な基準が存在しない。
  我が国の死刑確定者は、国際人権(自由権)規約、国連決議に違反した状態におかれ、特に過酷な面会・通信の制限は、死刑確定者の再審請求、恩赦出願などの権利行使にとって大きな妨げとなって来た。今般、刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律が施行されたが、未だに死刑確定者と再審弁護人との接見に施設職員の立ち会いが付されるなど、死刑確定者の権利行使が十分に保障されているとは言い難く、このような状況で直ちに死刑が執行されることには問題がある。
3 国際的にも、1989年(平成元年)に国連総会で採択された死刑廃止条約が1991年(平成3年)7月に発効して以来、死刑廃止が国際的な潮流となっている。すなわち、すでに死刑制度を全面的に廃止した欧州地域をはじめとし死刑廃止国が133か国であるのに対し、死刑存置国は64か国(本年10月2日現在)である。そのような潮流の中で、国連規約人権委員会は、1993年(平成5年)11月4日及び1998年(平成10年)11月5日の2回にわたり、日本政府に対し、死刑廃止に向けた措置をとるよう勧告している。
4 このような国際的な潮流と国内的な状況を踏まえて、日本弁護士連合会も、死刑制度の存廃につき国民的議論を尽くし、また死刑制度に関する改善を行うまでの一定期間、死刑確定者に対する死刑執行を停止する旨の時限立法(死刑執行停止法)の制定を提唱している。
  当会も、これまで、死刑確定者からの処遇改善や再審援助要請といった人権救済申立事件処理を通じて、死刑制度の存廃を含めた問題に積極的に取組み、死刑が執行されるたびに、会長声明において、死刑執行は極めて遺憾であるとの意を表明し、法務大臣に対し、死刑の執行を差し控えるべきであることの要望も重ねてきた。
5 2007年(平成19年)5月18日に示された、国連の拷問禁止委員会による日本政府報告書に対する最終見解・勧告においては、我が国の死刑制度の問題が端的に示された。すなわち、死刑確定者の拘禁状態はもとより、その法的保障措置の不十分さについて、弁護人との秘密交通に関して課せられた制限をはじめとして深刻な懸念が示された上で、死刑の執行を速やかに停止すること、死刑を減刑するための措置を考慮すべきこと、恩赦を含む手続的改革を行うべきこと、すべての死刑事件において上訴が必要的とされるべきこと、死刑の実施が遅延した場合には減刑をなし得ることを確実に法律で規定すべきこと、すべての死刑確定者が条約に規定された保護を与えられるようにすべきことが勧告されたのである。我が国の死刑確定者が、同条約上の保護を与えられていないことが明確に指摘され、それゆえ、勧告の筆頭に死刑執行の速やかな停止が掲げられているのであって、その意義は極めて重い。
  さらに、本年11月15日には、国連総会第三委員会において、すべての死刑存置国に対して死刑執行の停止を求める決議案が採択され、近日中に本会議で採択されようとしている。
6 このように国内的にも国際的にも、日本の死刑制度に対する非難が高まった状況下において断行された今回の死刑執行は、我が国が批准した条約を尊重せず国際社会の要請に応えないことを宣言するに等しい。
7 当会は、今回の死刑執行に関して、法務大臣に対し、極めて遺憾であるとの抗議の意を表明するとともに、更なる死刑の執行を停止するよう強く要請する。

2007年(平成19年)12月10日
福岡県弁護士会 会 長 福 島 康 夫

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2007年12月21日

福岡県弁護士会会長日記

会長日記

                   会 長  福 島 康 夫(30期)

国選付添人シンポジウム (9月15日・11月1日)
9月15日に日弁連人権擁護大会プレシンポジウムが天神ビルで多数の市民の参加を得て開催された。テーマは「すべての非行少年に弁護士付添人を!非行少年の実態をふまえて〜国選付添人の全面的実現をめざして〜」。当日は現役の中学校の先生、児童相談所の所長、家裁の現役調査官といった多士済々の皆さんがパネリストとなっていただき新鮮な話を聞かせていただいた。
本年11月1日から死刑、無期、短期2年以上の懲役・禁錮にあたる事件等一部の重罪事件についてであるが、少年国選付添人制度が実施されることになった。
大人には国選弁護人制度があるが、子どもの場合には無資力だから国費で弁護士を付けてくれと請求できる制度が作られていなかった。しかし、大人に弁護人がついて、子どもが放置されてよいはずがない。
今回の対象事件は極めて限定的であり、福岡県でせいぜい40乃至50件ということである。しかし、何はともあれ6年余りで国選付添人制度が実施されることになったという点で、先ずは全国で初めて実施した会として喜びたい。
そして、これまでガムシャラにやってきた子どもの権利委員会の活動と委員各位の精力的な活動に最大限の敬意を表する。
今年11月1日・2日の浜松での人権シンポジウムでは当番付添人制度の全国実施と全面的な国選付添人制度の実現に向けてをテーマにしたシンポジウムが開催される。
当会は2001(平成13)年2月、全国で初めて少年に対する当番付添人制度を実施し、少年鑑別所に収容された少年事件の全件について付添人になる全件付添人制度を創設した。日弁連のシンポジウムとして全国規模で福岡の全件付添人制度が大きく飛躍しようとしている。今、スタートラインに立つことができた。当番付添人制度を実施している単位会は32会とのことである。全国展開までもうすぐである。
当会の全件付添人制度は来年高校の現代社会の教科書に掲載されることになっている。


自主事業の法テラス委託 (10月1日)
10月1日から被疑者弁護人援助制度等9つの事業が法テラスに委託されることになった。
基本的に3月まで福岡で行ってきた方式が継続されることになるので、大きな問題はないと思うが、混乱のないことを期待したい。
被疑者弁護人援助制度、少年付添人援助制度、精神保健当番制度等事件は件数の面でも福岡が全国を引張っていることが明確に見える。例えば、被疑者弁護人援助制度は全国8000件中1000件が福岡、少年付添人制度は全国3600件中800件が福岡である。
今後皆さんの協力のもとこれらの事業が更に発展することを祈っている。


法テラスとの契約
法テラスとの間の国選弁護の契約、民事扶助の契約率が相変わらず低迷している。
特に、福岡部会の国選弁護の契約率が50%を切っており、現状は憂慮すべき状況である。そのため会員一人当たりの国選弁護の受任が早く回ってきて大変だとの声を聞く。契約者が少なければ多く担当しなければならなくなり、負担感が増す。
国選弁護も、民事の扶助事件も弁護士としての義務であるという考えが当会の伝統だった。2009(平成21)年の被疑者国選弁護事件が10倍に拡大するが、これをやりとげるためには契約が増大しなければならない。執行部として後半の最大の課題の一つである。会員の協力なしでは成り立たない制度である。ご協力を是非ともお願いしたい。


日弁連副会長選挙の規定 (9月28日)
次年度の日弁連副会長選挙が9月28日に実施された。立候補者として会員の皆さんに対してお礼と共に、この選挙でお騒がせをしたことに陳謝したい。
私自身は選挙期間中のわずかな時間ではあったが、会員の皆さんと話す機会を得て本当に参考になった。今後の糧とすることをお約束したい。
この最も忙しい時期に?とか、選挙制度についてもう少し工夫というものはなかったかとか、様々な意見を聞いた。実際に選挙をして選挙の規定についての疑問もあるし、実際の運用についても問題が明らかになった。皆さんの意見を聞いて選挙制度、選挙規定の抜本的見直しを含めて検討する必要がある。年度内に何とかメドを立てたい。


秋からの日程
私の秋からの日程は1ヵ月余りで6ヵ所、目まぐるしい出張であるが、反面楽しみでもある。
10月4日乃至6日
札幌(業革シンポ・中規模サミット)
10月23・24日 東京(日弁連理事会)
10月25乃至27日 宮崎(九弁連大会)
11月2・3日 浜松(人権大会)
11月7乃至9日 徳島(四国弁連大会)
11月17日
大阪(大阪、広島弁護士会との三会交流)
ここまで書いたら忘年会の日程が手帳に見えてきた。今年は福岡部会は12月5日に稚加栄に決まった。100名以上収容の料亭は余りない。茶話会幹事がようやく捜した料亭である(灯台もと暗し!)。各部会の忘年会も盛大に行われることを期待したい。なにしろ「顔の見える弁護士会」のための最大の大事な行事である。各部会の幹事さん大変だけどよろしくお願いしたい。


後半もよろしく
ようやく暑い暑い夏が終わり、秋になった。私達執行部の任期も残すところ半年になった。後半も精一杯頑張る所存である。
会員の皆さんの弁護士会への結集をお願いしたい。
残り半年のご協力をよろしくお願いしたい。

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福岡県弁護士会会長日記

会長日記

                     会 長  福 島 康 夫(30期)


臨時総会(10月2日)
10月2日の臨時総会の主たる議題は被疑者弁護人援助制度、少年保護事件付添人制度等9つの自主事業を法テラスに委託するにあたっての規程の整備であった。9つの自主事業を活発に行っており、当会がトップの利用件数である。少年保護付添人援助事件や精神保健当番弁護士等今後とも活発に活用し、国の制度にする必要がある。


新入会員歓迎会(10月2日)
臨時総会終了後、9月に当会に登録した39名の新入会員(現60期)に対する歓迎会を開催した。さすがに39名という人数は学校の1クラス分であり壮観である。これで現在の当会の会員数は741名となった。福岡部会549名(内女性会員77名)、北九州部会116名(内女性会員12名)、筑後部会59名(内女性会員8名)、飯塚部会17名(内女性会員0)。ちなみに九弁連は総数は1525名となり、佐賀57名、長崎94名、熊本158名、大分92名、宮崎74名、鹿児島97名、沖縄212名となっている。九弁連の他の会も新入会員の増加は著しいようである。この他にも委員会の主催で当番弁護士・当番付添人研修会、精神保健当番弁護士等研修会を催し、その後で懇親会をすることにしている。会の予算は全く使わず先輩が後輩におごるという伝統が受け継がれてきた。新入会員は急激に増加しているため新入会員に対して一部費用負担をお願いする話しもあったようであるが、これまでどおりとなったとのことである。互いに顔のわかる弁護士会であるためにもこの良き伝統だけは続けていければと思う。12月20日には新60期が当会に登録する。現段階で18名程度のようである。新入会員の皆さんは懇親会には特に全員参加して頂きたい。互いの顔のわかる弁護士会であるためにはやはり懇親会に出席することが一番である。紙面を借りてお願いする次第である。
当会の会員数が1000名に届くのは時間の問題である。大単位会には派閥があるが、福岡には派閥がない。それは素晴らしいことであるが、それだけに、今、互いの顔のわかる弁護士会であるための工夫がこれまで以上に必要となる。これまで以上に全部会の茶話会幹事の皆さんにも大いに奮闘をお願いしたい。


弁護士大量増員問題
本年度弁護士登録は2200人に達するとのことである。全国では現60期は1200名、12月に新60期が1000名近くが登録することになるようである。当初、就職できない修習生が現60期で100名程度になるのではないかと心配されたが、最終的には10名程度になるのではないかといわれている。しかし、それでも就職浪人が出るという事態は深刻なものになっている。
ところで、急激な弁護士増員は偏在問題の解消にはつながらないし、現につながっていない。偏在問題を解消することが急務となっている。1年半後の2009年被疑者国選弁護事件の対象事件が10倍に拡大するが、そのためにも偏在問題の解消が急務である。偏在問題解消のための弁護士を養成し、弁護士が帰っていける拠点事務所が必要となる。東北弁連は拠点事務所を設置することが正式に決定されている。聞くところによるとやまびこ基金法律事務所という名称だそうである。九弁連でも拠点事務所を設置すること、特に福岡で拠点事務所を作ることを早急に検討しなければならない。
魅力的なネーミングも必要である。北海道は「すずらん」、東北は「やまびこ」、九州は…?。
昨年、政府の規制改革・民間開放推進会議では合格者を1万2000人程度にすべしという意見が出たそうである。単に弁護士を安上がりに使おうという論に他ならないが、際限のない法曹人口増員論に歯止めをかけるためにも偏在問題の解消は急務である。
2010年には3000名体制になるとのことであるが、今後、本当に就職先があるのか、法曹の質が急激に低下しないか心配である。司法制度改革審議会は2020年に法曹人口を5万人にする計画を立てたが、改革審議会の意見書当時とは状況が一変した。現在の弁護士数は2万4000人を超えており、そればかりか140万円までの訴額の簡裁事件ができる認定司法書士は1万人を超えたということである。合計すれば現在既に3万4000人以上に達している。今後、弁護士と認定司法書士の数だけでも加速度的に増加していくことは確実であり、認定司法書士を加えると5万人に達するのも予想外に早いであろう。法曹の数の急激な増加によって質の急激な低下が心配である。もしそうなれば、利用者である市民が被害を被ることになる。
この問題はあくまでも市民のための司法の実現という観点からの検証であることを忘れてはならないと思う。偏在問題に一定程度のメドをつけて、本当に3000人体制がどうなのか、検証しなければならない。
鳩山法務大臣は週刊誌のインタビューで、合格者が3000人というのは多すぎる、1500人で十分だと話したということである。法曹の質の観点からの発言が出てきたということであろう。歓迎すべき重要な発言である。司法界にとって重大な問題である。


釜山地方弁護士会との交流会(10月19日)
当会は6月22日から24日まで釜山弁護士会を訪問して大歓迎を受けたが今度は釜山地方弁護士会からの訪問である。釜山地方弁護士会から金泰佑会長をはじめとして総勢36名の訪問団をお迎えした。金会長は私よりも若く(確か53歳だったと思う)、物腰が柔らかく紳士である。前回の訪問の際にいっぺんに親しくなった。訪問団は法テラスを見学した後、会館の3階で意見交換をした。今回のテーマはロースクール問題である。韓国では2009年3月からロースクールが開設されることになっており、既に47校の申請があり、その内の15乃至20校が認可される予定であり、初年度は1500名が法曹になることを予定しているとのことである。しかし、韓国の人口は4500万人程度で、日本の3分の1であり、1500人の合格というのは急激な増加という感がある。釜山地方弁護士会からは張俊棟副会長が説明をし、当会の牟田会員が日本のロースクールの現状と課題を説明した。釜山地方弁護士会の先生方は日本の制度にも詳しく、意見交換は予定時間がなければいつまでも続くかのように真剣味を帯びていた。時間が不足したのが残念である。韓国も日本と軌を一にして司法制度改革が進んでいる。相互に情報を交換し意見を交換することの重要性はますます高まっている。実務的な面でも今後の密接な交流の必要性を痛感した。
会議終了後は場所を「稚加栄」に移して懇親会を開催した。今年は当会が6月に訪問したが、その際の懇親会では韓国の伝統芸能である「パンソリ」で歓迎を受けた。当会としては今度は福岡に縁の深い日本の伝統芸能ということで日本舞踊の「黒田武士」に決め、日本舞踊の名手の山田敦生会員にお願いした。当日は乾杯の前に山田会員には花柳流の舞踊をご披露頂き大成功であった。山田会員には会を代表して大いに感謝申し上げたい。その後、当会の木梨吉茂会員と釜山弁護士会の黄会員の楽しい乾杯の挨拶の後、時間を忘れて親しく歓談をした。
来年は釜山弁護士会創立60周年ということである。来年はお祝いのために大挙して訪問する必要があろう。


国会議員要請行動(10月24日)
8月の理事会で国選弁護報酬の大幅アップを要求する件が承認された。ところが、法務省は来年度の国選弁護報酬を昨年100億円だったのを5億円減額して概算要求をしたことが判明した。最近わかったことは国選弁護報酬の法テラスの半年分の予算が30億円だったのが現実に支出した金員が20億円であったため、10億円予算が余ったということである。予算が余った原因は何なのか徹底的に調査をする必要がある。
ところで、国選弁護報酬は法テラスの事業になったことを契機に報酬基準が改定され、その結果基礎的な簡単な事件の報酬が大幅に値下げになってしまった。最大18%値下げになったということである。私も昨年簡裁の国選弁護事件で結構熱心に活動した結果手取り6万円程度でしかなく、余りの安さに腹立たしかった。全国の弁護士が不満を持っている。このままでは国選弁護のモチベーションが下がるばかりである。
10月24日には日弁連の執行部と理事の全員が手分けして各県選出の国会議員に対して国選弁護報酬の大幅増額の要請行動をした。国選弁護はボランテイアではやっていけないこと等現状を説明し、理解を求めた。反応は良かったと思う。何としてでも2009年の被疑者国選実施までに国選弁護報酬の大幅増額が必要である。
この国選弁護報酬問題を始めとして政治家に対して理解を求め、賛同を求めることが年々多くなっている。昨年はゲートキーパー問題や、貸金業者の上限金利引き下げ問題であった、現段階では国選弁護報酬問題、取調べの全過程の可視化問題が代表的であろう。司法書士会、行政書士会等他の会は政治連盟が活発に活動している。日本弁護士政治連盟(弁政連)は超党派で弁護士会の活動を支える組織である。国選弁護報酬問題、取調べの可視化問題その他多くの司法改革問題で特に政治連盟の活動が必要になっている。全国単位では弁政連があるが、これまで九州には支部がなかった。そこで、1月に弁政連の九州支部の創立総会をすることが計画中である。追って会員の皆さんに入会の勧誘がなされる予定ということだが、多数の参加をお願いしたい。

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