福岡県弁護士会 宣言・決議・声明・計画

2013年12月12日

死刑執行に関する会長声明

声明


1 本日、東京拘置所及び大阪拘置所において、それぞれ1名の死刑確定者に対して死刑が執行された。
  2013年(平成25年)9月12日の1名の死刑執行後、わずか3ヶ月での死刑執行であり、本年においては2月21日、4月26日、9月12日に次ぎ4回、8人の死刑執行となる。
2 いわゆる免田事件、財田川事件、松山事件、島田事件という4つの死刑確定事件における再審無罪、いわゆる足利事件、布川事件における無期懲役刑確定事件の再審無罪判決が示すとおり、死刑判決を含む重大事件において誤判の可能性が存在することは客観的な事実である。
のみならず、日本弁護士連合会の2011年(平成23年)10月7日のシンポジウムの宣言でも述べたとおり、死刑はかけがえのない生命を奪う非人道的な刑罰であることに加え、更生と社会復帰の観点から見たとき、罪を犯したと認定された人が更生し社会復帰する可能性を完全に奪うという根本的問題を内包している。さらに、我が国では、死刑に直面している者に対し、被疑者・被告人段階あるいは再審請求の段階に至るまで十分な弁護権、防御権が保障されておらず、執行の段階でも死刑確定者の人権保障の面で多くの問題を抱えている。そして、死刑は人の生命を確実に奪い生命に対する権利を侵害するもので、いかなる執行方法であっても、その残虐性は否定できない。であるからこそ、死刑の廃止は国際的な揺るぎない潮流となっているのである。
3 今回死刑執行された死刑確定者のうち大阪拘置所において執行された死刑確定者は一審から上告審まで殺意を争っていたもので、2012年(平成24年)6月の死刑確定からわずか1年半での死刑執行である。また東京拘置所において執行された死刑確定者も幼少期の虐待が事件の背景事情として存在することから死刑という量刑に争いがあり、再審請求を繰り返していたものである。先に述べた宣言で指摘した問題点が如実に表れている事案であって、正に死刑の是非が問われるべきものである。
4 日本弁護士連合会は、2013年(平成25年)2月12日、谷垣法務大臣に対し、「死刑制度の廃止について全社会的議論を開始し、死刑の執行を停止するとともに、死刑えん罪事件を未然に防ぐ措置を直ちに講じることを求める要望書」を提出して、死刑制度に関する当面の検討課題について国民的議論を行うための有識者会議を設置し、死刑制度とその運用に関する情報を広く公開し、死刑制度に関する世界の情勢について調査のうえ、調査結果と議論に基づき、今後の死刑制度の在り方について結論を出すこと、そのような議論が尽くされるまでの間、死刑の執行を停止することを求めた。2013年(平成25年)2月21日の死刑執行はこの直後に行われたものであった。
今回も、日本弁護士連合会が、死刑制度に関する政府の世論調査の結果について、政府の評価は死刑支持者の割合を過大に表示しており、死刑制度の関する国民の意識について誤解を与える物であるとする「死刑制度に関する政府の世論調査に対する意見書」を2013年(平成25年)12月4日に安倍晋三内閣総理大臣に同月11日に谷垣禎一法務大事に提出した直後に死刑の執行が行われている。
日弁連及び当会は、死刑執行に強く抗議するとともに、一切の死刑執行を停止するよう求めていたのであり、この要請を再度無視した今回の執行は到底容認できない。
5 当会としては改めて政府に対し強く抗議の意思を表明するとともに、今後、死刑制度の存廃を含む抜本的な検討がなされ、それに基づいた施策が実施されるまで、一切の死刑執行を停止することを強く要請するものである。

                    2013年(平成25年)12月12日
                    福岡県弁護士会会長 橋 本 千 尋

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