福岡県弁護士会 宣言・決議・声明・計画

2020年9月18日

死刑制度の廃止を求める決議

決議

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 犯罪により尊い生命が奪われたとき,その犯罪者に死をもって償わせるべきか,国家が死刑制度を存置し死刑を執行することが許されるか,といった問題について,我が国の多くの者は,思い悩み,ともすれば,議論そのものを躊躇してきた。
 他方,目を国外に向ければ,国際社会は,第二次世界大戦後,国際連合憲章(以下「国連憲章」という。)を締結して国際連合(以下「国連」という。)を設立し,人権尊重と国際平和とが不可分の関係にあるとして,基本的人権尊重の国際基準となる世界人権宣言,国際人権自由権規約(以下「自由権規約」という。),自由権規約第二選択議定書(以下「死刑廃止条約」という。)を採択して,すべての国が死刑の廃止に向かうことを求めた。
 その中にあって,日本弁護士連合会(以下「日弁連」という。)は,2016年(平成28年)10月に,人権擁護大会(福井市)において「死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言」を採択した。
また,当会は,1996年(平成8年)以降,死刑執行に対し,これに抗議する会長声明を発出し,国民的議論が尽くされるまで死刑執行を停止することを求めてきただけでなく,2011年(平成23年)から死刑制度を考える市民参加のシンポジウムを継続的に行い,特に2019年(令和元年)には,同様のシンポジウムを4回にわたり開催するなど,死刑制度の是非について,検討及び情報発信に努めてきた。さらに,2016年(平成28年)には死刑制度の存廃等を検討するプロジェクトチームを発足させて,死刑制度の存廃問題に取り組んできた。
 こうした活動の積み重ねの結果を踏まえ,当会は,基本的人権の擁護と社会正義の実現という使命を担う弁護士(弁護士法1条)によって構成される法律家団体の立場において,以下のとおり決議する。

決 議 の 趣 旨

当会は,政府及び国会に対し,
1 死刑制度を廃止すること
2 死刑の代替刑として終身刑を導入すること
3 死刑制度の廃止が実現するまでの間,死刑の執行を停止すること
を求める。

決 議 の 理 由

第1 死刑制度の廃止を求める理由
1 生命に対する権利(生命権)
 生命に対する権利である生命権は,人間の尊厳に由来する固有の権利であり,すべての人権の基盤となる根源的な基本的人権である。そして,生命権の制限とは生命剥奪を意味することから,他の人権と異なり,ひとたび生命権を制限すれば回復することはできない。また,生命権は人間として存在する権利であり,個々の生命に価値の違いがあってはならない。したがって,すべての人の生命権は,等しく,最大限に尊重されなければならず,かつ,不可侵とされなければならないのである。
 このように,生命権は,基本的人権の中でも特別に保護を与えられなければならないものであり,そのため,憲法13条は,最大の尊重を必要とすると定め,国連は世界人権宣言3条,自由権規約6条1項及び死刑廃止条約を通じて生命権の不可侵を明確にしている。
 確かに,凶悪で残忍な殺人事件や無差別の大量殺人事件に直面すると,このような犯罪者の生きる権利を保障する必要があるのかとの悩みや躊躇が生じることは否定できない。しかし,たとえ犯罪者に対する死刑であっても,それは国家が生きる価値がある人間かそうでない人間かの選別を行うことを容認するものである。そして,この生命選別の容認は個々の生命の価値に違いを認めることと等しく,基本的人権の尊重,特に生命権の尊重という普遍的価値観の醸成が阻害されることになる。その結果,国民の中に,厳罰化の名のもと,生命軽視という価値観が醸成される危険性が生まれ,また,第二次世界大戦前のような国家による重大な人権侵害が再来するという危険性が生まれる。
 このような危険があることから,国連は,すべての国民が基本的人権の尊重,特に生命権の不可侵の価値観を共有できる社会の実現を目指すために,死刑廃止条約等を採択したのである。
 当会は,改めて,チェーザレ・ベッカリーア(1738年〜1794年)の著書「犯罪と刑罰」にある,「死刑は,それが人々に残虐性の手本を与えるものだということからして,有用でない。(中略)公共の意志であるところの法律,殺人を嫌いこれを処罰するところの法律が,まさしくその殺人そのものを犯し,しかも市民たちを殺人から遠ざけるためにこれを公然と行うことを命じるとは,私には不条理なことに思われるのである。」という言葉を問い直し,我が国での死刑制度廃止を実現し,基本的人権の尊重,特に生命権の不可侵の価値観を共有できる社会を目指すものである。
2 誤判冤罪の危険性
 第二次世界大戦後に我が国に浸透した適正手続(憲法31条)の下での刑事裁判手続を踏まえた死刑判決に誤りはないのか,この点については,格別の考察が必要である。
 すなわち,死刑は刑事裁判手続を経て科せられるものであるところ,その手続(捜査段階,公判段階,再審等の検証段階)は人間によって運用される。人間が全知全能ではあり得ない以上,それらの諸手続きにおいて,誤りが生じる危険性を完全に排除することはできない。このことは,我が国において,1980年代の4件の死刑確定者に対する再審無罪事件(免田事件,財田川事件,島田事件,松山事件)のほか,死刑求刑事件ではないものの,殺人事件として有罪判決が確定した後に再審で無罪となった東電OL事件,湖東事件,東住吉事件などにおいて示されている。
これらの他にも未だ再審開始決定が確定してはいないものの,一度は再審開始決定がなされた名張毒ぶどう酒事件や袴田事件,また,誤判の疑いが指摘されながらすでに死刑が執行された飯塚事件,福岡事件,菊池事件など看過できない事案も数多くある。
さらに言えば,有罪無罪の判断にとどまらず,量刑選択の判断においても,死刑と無期懲役との境界は不明確であるという問題がある。この点に関する判断基準として,最高裁判決においていわゆる永山基準が示されたものの,それでも不明確さを払拭し得るわけではない。また,量刑の基礎となる事実に対しても誤判の危険性があり,判断主体(裁判官等)が異なることによる量刑判断の不安定性も完全に払拭することができない。
その結果,現実に起こりうる,誤判冤罪及び量刑不当による,刑の執行(生命剥奪)という不正義を放置することは許されない。
そして,私たち弁護士は,いかに刑事訴訟手続が改善されたとしても,刑事弁護活動を通じて,この社会的不正義を完全に排除することができないことを経験し,かつ,その不正義の是正を訴えることができる立場にあることを改めて自覚するものである。
3 国際人権法と国連加盟国の責務
⑴ 国際基準の定立と普及
 第二次世界大戦前,国内の人権保障が各国に任され,一部の国での人権侵害が放置された結果,多くの生命剥奪などの重大な人権侵害と国家の全体主義化を招き,世界大戦へと向かったという惨害を教訓に,国際社会は,国際平和と安全を目的として,国連憲章を締結して国連を設立し,国際人権章典(世界人権宣言,国際人権社会権・自由権規約,第一選択議定書,死刑廃止条約)を採択して,基本的人権の尊重の国際基準を定立した。
 これらの基本的人権の尊重の国際基準のうち,特に生命権については,世界人権宣言が「すべて人は,生命,自由及び身体の安全に対する権利を有する。」(同宣言3条)と規定し,また,自由権規約は「すべての人間は,生命に対する固有の権利を有する。この権利は,法律によって保護される。何人も,恣意的にその生命を奪われない。」(同規約6条1項)と規定して,特別な保護を与えるべきものと位置付けた。
もっとも,自由権規約6条には,死刑制度を廃止していない国に一定限度の死刑制度の存置を認める規定が置かれているが(同条2〜5項),同時に「この条のいかなる規定も,この規約の締約国により死刑の廃止を遅らせ又は妨げるために援用されてはならない。」(同条6項)との規定が加えられて採択された(1966年(昭和41年)12月16日)。そして,国際社会は,死刑廃止が人間の尊厳の向上及び人権の漸進的発達に寄与することを確信して,1989年(平成元年)12月15日,死刑廃止条約を採択して,すべての国が死刑制度の廃止を目指すべきことを明確にした。
これは,基本的人権の尊重の内容と程度が,国によって区々になってはならず,特に生命権については,その一般性・普遍性をすべての国に通用させるため,各国毎の人権解釈に依拠させるのではなく,国連で定立した国際基準に従うことを求めたものである。
そして,国連は,死刑廃止条約採択後,国連総会において「死刑廃止を視野に入れた死刑執行の停止を求める」旨の決議を採択し続け,その決議は2018年(平成30年)12月17日で7回に及んでいる。また,国連人権理事会における普遍的定期的審査(UPR)では,死刑存置国は,審査国から死刑制度の廃止に向けた行動を取るべきとの勧告を受け続けている。さらに,条約機関である自由権規約委員会からは「死刑廃止の検討を求める」との勧告がなされ(2008年(平成20年)10月),同じく拷問禁止委員会からは「死刑廃止の可能性を検討すること」との勧告がなされている(2013年(平成25年)5月)。
このように,国連及び関連機関は,死刑制度の廃止を目指す国際基準を,すべての国に普及させることに努めている。
⑵ 国連加盟国の責務と国際社会の変化
 国連憲章に署名した国連加盟国は,「すべての者のための人権及び基本的自由の普遍的な尊重及び遵守」(国連憲章55条)という国連の目的を実現するため,「この機構(国連)と協力して,共同及び個別の行動をとることを誓約」している(同56条)。そして,上記の国連及び関連機関の死刑廃止に向けた働きかけとこの国連憲章上の責務である国連加盟国の協力により,死刑廃止国(法律上または10年間以上死刑執行をしていない事実上の廃止国)は増加を続け,2019年(令和元年)12月末の時点で,国連加盟国の約7割の142カ国が死刑廃止国となり,死刑廃止条約の批准国も88カ国に達している。
 このような国際社会の変化の中,我が国も,1951年(昭和26年)9月8日,サンフランシスコ平和条約に署名し,国連憲章の原則を遵守することを宣言して国連加盟国の一員となっていることから,人権及び基本的自由の普遍的な尊重と遵守について,国連と協力して行動をとる責務(国連憲章55条及び56条)を負う。また,この責務を果たすことは,憲法上の国際協調主義(憲法前文及び同98条2項)にも適うものである。そして,国連が死刑廃止条約を採択し,その後,死刑廃止を視野に入れた死刑執行停止を求めるとの国連総会決議や国連人権理事会における死刑廃止に向けた勧告などの働きかけを行っていることを斟酌すれば,国連が行う人権及び基本的自由の尊重と遵守の助長促進(国連憲章55条)の中に死刑制度廃止が含まれていることは明白である。
したがって,政府及び国会には,我が国が死刑廃止条約を批准しているか否かに関係なく,国連と協力して死刑制度廃止の実現に向けた行動(国内人権啓発,死刑執行停止,死刑制度廃止を含む刑罰制度に関する法改正など)をすべき責務があり,また,将来的には死刑廃止条約の批准に向けた行動をすべき責務がある。

第2 我が国における死刑制度の廃止実現に向けて
1 憲法と最高裁判決
 最高裁判所は,1948年(昭和23年)と1993年(平成5年)の判決において,憲法31条の文言を理由に死刑制度を合憲であるとし,また,絞首刑は残虐な刑罰ではなく憲法36条に反しないとした。しかし,憲法31条は「何人も,法律の定める手続によらなければ,その生命若しくは自由を奪われ,又はその他の刑罰を科せられない。」と規定するのみであり,死刑制度を積極的に維持すべきであるとしているものではない。また,昭和23年判決の補充意見では,国家の文化の発達により憲法31条の解釈が制限されて,死刑が残虐な刑罰とされて憲法に反するものとして排除され得ることが指摘された。さらに,平成5年判決の補足意見では,立法の問題に属すると留保しつつ,死刑の廃止に向かいつつある国際的動向と国内世論との大きな隔たりを整合させるために,一定期間の死刑執行停止や,現行の無期刑(服役10年を過ぎた場合に仮出獄の対象となり得る)とは別種の無期刑の導入が指摘されている。この別種の無期刑の内容について明記はないものの,死刑廃止議員連盟が提案した重無期刑や仮釈放のない終身刑が想定される。
 このように,死刑制度に対する評価(特にその残虐性についての)は憲法の解釈として不変のものではなく,国際社会の動向やこれとの関わりでの国内の状況変化によって変わり得るものであり,むしろ,死刑制度廃止に向かうことが望ましいことが強く示唆されている。
2 世論(社会感情)と死刑
 政府は,2008年(平成20年)から始まった国連人権理事会の普遍的定期的審査(UPR)における政府への勧告(死刑制度廃止に向けた行動を求めるとの勧告)に対し,「死刑制度に関する議論については,国民世論の趨勢を見ながら対応すべきものと考えている。死刑制度については,国民の多数が極めて悪質,凶悪な犯罪については死刑もやむを得ないと考えており,特別に議論する場所を設けることは現在のところ考えていない。」との理由で拒否し,死刑を存置し執行を続けている。
 ここで政府が主張する「国民世論の趨勢」は,内閣府が実施した世論調査の結果に依拠しているものと思われる。
しかし,2019年(令和元年)11月に実施された内閣府世論調査では,この「死刑もやむを得ない」との選択肢に賛成した者(80.8%:有効回答数1572人のうちの1270人)へ追加質問(将来も死刑を廃止しないほうが良いと思いますか,それとも,状況が変われば将来的には死刑を廃止してもよいと思いますか。)をしたところ,「死刑を廃止しない」と答えた者は691人,「状況が変われば将来的には死刑を廃止してもよい」と答えた者は507人であった。よって,全体の有効回答数1572人のうち,現在も将来も死刑廃止に反対の者の割合は約44%(1572人中691人)である。
これに対し,「死刑を廃止すべき」と答えた者(142人)及び「状況が変われば将来的には死刑を廃止してもよい」と答えた者(507人)の合計の割合は約41%(1572人中649人)である。
したがって,いかなる場合にも死刑存置を選択する者と死刑廃止又はその可能性を選択する者のいずれも過半数に至らず拮抗している。
そうすると,内閣府世論調査によったとしても,死刑存廃議論を不要とするほどに世論が死刑制度を支持しているとの政府の解釈は正しくない。逆に,国民の約4割は死刑制度の廃止について状況次第では積極的,ないし少なくとも存廃について悩んでいると評価する方が正しいと言える。
そもそも,議会制民主主義は,議会における徹底した討議を経て,その内容・過程次第で議員や国民の結論が変わり得ることを真髄とする。にもかかわらず,死刑制度存廃問題については国会での熟議も,もとより国民的な議論も経ていない。そのような段階にありながら,議論自体を不要とする政府の態度には多大な疑問を禁じ得ない。
3 死刑の代替刑
 2014年(平成26年)と2019年(令和元年)に実施された内閣府世論調査において「もし,仮釈放のない「終身刑」が新たに導入されるならば,死刑を廃止する方がよいと思いますか,それとも,終身刑が導入されても,死刑を廃止しない方がよいと思いますか。」との質問がなされ,「死刑を廃止する方がよい」に賛成の割合は,2014年(平成26年)で37.7%,2019年(令和元年)で35.1%との結果が出ている。
 そのため,仮釈放のない終身刑の導入は,1993年(平成5年)の最高裁判決の補足意見にあるとおり,国際基準と国内世論の隔たりを埋める一つの施策となりうる。
 しかし,社会復帰を完全に認めない「仮釈放のない終身刑」は,社会内包摂を基本とする現代刑罰論や国連被拘禁者処遇最低基準規則(マンデラ・ルール)に抵触する危険性がある。
そこで,日弁連は,2019年(令和元年)10月に「死刑制度の廃止並びにこれに伴う代替刑の導入及び減刑手続制度の創設に関する基本方針」において,「仮釈放のない終身刑を最高刑として導入しつつ,例外的に仮釈放の可能性のある無期懲役への減刑を認める手続制度を設ける」と提言している。
当会も,死刑制度廃止に代わる刑罰の導入を求めつつ,国際基準となる死刑制度廃止の実現と国連被拘禁者処遇最低基準規則を整合させるため,基本的に日弁連の提言に同意するものである。ただし,減刑措置のあり方によっては,死刑の代替刑たり得る重罰といえるのか,あるいは社会復帰が有名無実とならないかという問題がある。したがって,減刑措置の手続要件(請求権者,判断権者,服役期間など)は,政府及び国会において十分かつ慎重に審議されなければならない。
4 死刑の犯罪抑止力
 死刑制度を廃止すると,生命侵害を伴う凶悪な犯罪が多発するのではないかとの危惧が表明されることがある。しかし,この点について,国連と欧州評議会は,死刑廃止国と死刑存置国の犯罪動向の比較,死刑廃止国の廃止前後の犯罪動向の比較などの科学的・統計的調査を行った結果,死刑に他の刑罰とは異なる特別な犯罪抑止力があるとの実証はできないとの結果報告を出している。また,政府も,2008年(平成20年)2月12日,質問主意書に対する答弁書で「死刑の犯罪抑止力を科学的・統計的に証明することは困難である」と答弁している。
然るに,政府は,内閣府世論調査において「死刑を廃止すれば凶悪犯罪が増える」に賛成の者が過半数との結果を根拠に,死刑には他の刑罰と異なる特別の犯罪抑止力があるとする。しかし,ここで問題になっている犯罪抑止力は,死刑求刑相当の凶悪犯罪であるところ,このような罪を犯す者に対しては科学的・統計的に死刑の犯罪抑止力は実証できないとされており,被害者になり得る国民の安心感や危惧感をもって科学的・統計的な犯罪抑止力の証明に変えることはできない。また,そもそも,テロや確信犯には刑罰の威嚇力の効果(犯罪抑止力)は期待できない。
したがって,犯罪抑止のためには,現実の犯罪統計をもとに,科学的・合理的な社会政策・刑事政策に取り組むべきであり,実証できない「死刑の威嚇力」は死刑制度存置の根拠たり得ない。
5 被害者遺族への支援
 私たち弁護士は,刑事弁護という弁護人活動を通じ,また,被害者参加制度などの被害者側の代理人活動を通じて,様々な犯罪被害に向き合い続けている。
 そのような中,刑罰制度改革の一環として死刑制度廃止を求めるとき,被害者や遺族の被害をどのように受け止めるべきかという大きな問題がある。
 日弁連は,2002年(平成14年)11月22日付の「死刑制度問題に関する提言」において「死刑相当犯罪などの凶悪犯罪による被害者遺族の受けた被害は,まさしく不条理であり,犯罪の被害者遺族の被害感情は深刻であるが,死刑制度の存続のみで被害者遺族の問題が解決するものではない。」と述べているとおり,被害者遺族の被害感情には,加害者に対する処罰感情のみならず,喪失感・虚無感など刑罰では応えることができない感情も含まれている。
 さらに,犯罪被害には,コミュニティ喪失などの社会的被害や経済的支柱や拠り所を失うなどの経済的被害もある。
そのため,被害者の無念や被害者遺族が受ける不条理な被害に真摯に向き合い,被害者遺族への精神的支援,経済的支援,社会的支援を充実させる制度設計(犯罪被害者庁の設置等の行政対応態勢の拡充,犯罪被害者給付金の支給対象者の範囲拡大や給付金の増額,国と自治体の連携システム構築等による多面的なサポート体制の充実,専門的カウンセラーの育成等)と予算措置をすみやかに実現させ,社会的に被害者遺族を支える必要がある。そして,この必要性は,死刑制度廃止を求めるか否か,また,法制度としてどのような刑罰制度が実現するかに関わりなく,求められるものである。
したがって,当会は,人権擁護と社会正義の実現という使命に基づき,死刑制度の廃止を含む刑罰制度の改革を求めるとともに,被害者遺族に対する支援に取り組んで行く決意を表明する。

第3 結語
 以上の理由により,当会は,政府及び国会に対して,死刑制度を廃止すること,死刑の代替刑として終身刑を導入すること,さらには死刑制度廃止のための関連法案が成立・施行されるまで,死刑執行を停止することを求めるものである。
  

2020年(令和2年)9月18日
福岡県弁護士会

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