福岡県弁護士会 宣言・決議・声明・計画

2017年3月24日

長時間労働に関する適正な規制を求める会長声明

声明

 過労死等防止対策推進法の施行(2014年11月1日)後も相次ぐ過労死・過労自死事件の発生などから,長時間労働の是正に向けた動きが強まり,現在,政府は,罰則つきの時間外労働の上限規制を検討している。政府が,長時間労働の是正に向けた実効的な措置を取ろうとすることは,積極的に評価できる。
 もっとも,報道によれば,政府は上限規制の具体的水準として,原則として月45時間,年間360時間,例外として繁忙期には「月100時間未満」,「2か月ないし6か月平均80時間」までの時間外労働を認める方針であるとされている。しかし,繁忙期には「月100時間未満」,「2か月ないし6か月平均80時間」まで時間外労働を認めるという水準は,過労死基準とも呼ばれる厚生労働省が定めた「脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準」(2001年12月12日基発1063号)と同程度のものであり,労働者の命と健康の確保のためには,時間外労働の上限規制として不適当である。
 我が国の労働現場では,依然として長時間労働が常態化しており,その是正は,仕事と生活の調和(ワークライフバランス)の維持の観点のみならず,労働者の命と健康の確保の観点からも喫緊の重要課題である。
 以上より,当会は,長時間労働の是正に向けて,以下の規制を求める。
① 時間外労働の上限規制の水準を少なくとも過労死基準を大幅に下回るものとすべきであること(例えば,日本弁護士連合会の2016年11月24日付「『あるべき労働時間法制』に関する意見書」は,労働時間の限度基準として,「将来的には,1日2時間(1日の最大労働時間10時間),1週8時間(1週の最大労働時間48時間),年間180時間程度を目指すべきである」としている。)
② 労働者の疲労回復,健康確保,生活時間確保のため,労働者の勤務終了から勤務開始までの時間を相当時間確保することを使用者に義務づける勤務間インターバル規制を導入すること
③ 労働者のメンタルヘルス対策の観点から,雇用主に対して課される労働時間の把握義務を強化すること
④ 労働基準監督官による監督の実施数を増加させ,監督行政の実効性を確保するため,労働基準監督官の増員と監督体制を強化すること

                     2017年(平成29年)3月23日
                           福岡県弁護士会
                           会 長 原 田 直 子

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