福岡県弁護士会 宣言・決議・声明・計画

2013年10月16日

婚外子の法定相続分についての最高裁判所違憲決定を受け、民法(家族法)改正の早期実現を求める会長声明

声明

婚外子の法定相続分についての最高裁判所違憲決定を受け、民法(家族法)改正の早期実現を求める会長声明

本年9月4日、最高裁大法廷は、婚外子の相続分を婚内子の相続分の2分の1とする民法第900条4号但書前段について、遅くとも相続が開始した平成13年7月(もう1件は11月)当時において、法の下の平等を定めた憲法14条1項に違反していたとする2件の決定を行った。
これまでも、婚外子の法定相続分を平等なものにするべきとの問題は早くから指摘されていた。また、国連の関連委員会は、本件規定を含む家族法における差別的規定について懸念を表明し、法改正の勧告等を繰り返してきた。しかし、最高裁は、1995年(平成7年)7月5日の決定やその後の小法廷での判決、決定の多数意見において、同規定を合憲としつつ、立法的な解決に委ねてきた。
当会は、2010年(平成22年)4月22日の会長声明において、非嫡出子の相続分差別は、非嫡出子自身の意思や努力によってはいかんともしがたい事由により不利益な取り扱いを行うものであり、憲法13条、14条および24条2項に反するものであるとして、早急に改正することを求めた。しかし、国会では、数次に亘り、両者の法定相続分を平等化する法改正の準備が進められてきたものの、未だ改正には至っていない。
 今回の大法廷の決定は、本件規定の合憲性判断につき、「個人の尊厳と法の下の平等を定める憲法に照らし、嫡出でない子の権利が不当に侵害されているか否かという観点から判断されるべき法的問題であ」るとした上で、法律婚という「制度の下で父母が婚姻関係になかったという、子にとっては自ら選択ないし修正の余地のない事柄を理由としてその子に不利益を及ぼすことは許されず、子を個人として尊重し、その権利を保障すべきであるという考えが確立されてきている」とし、立法府の裁量権を考慮しても、両者の法定相続分を区別する合理的な根拠は失われているとして、1995年(平成7年)7月5日の大法廷の決定を変更した。かかる判断は、個人の尊厳と法の下の平等を定めた憲法に照らし、人権保障の砦としての最高裁の役割からすれば、当然の帰結である。
 我が国は、自由権規約、女性差別撤廃条約、子どもの権利条約及び社会権規約の批准国である。これまでも国連自由権規約委員会の本件婚外子に対する差別規定の削除勧告、女性差別撤廃委員会の家族法における差別的規定の改正に対する懸念表明、および子どもの権利委員会による「嫡出でない子(非嫡出子)」という用語が差別的であるとして廃止を勧告されてきた。そのうえで、今回、我が国の最高裁判所大法廷で憲法違反との結論が出されたことは、もはや決定的な判断が下ったと理解すべきである。
 また、これにとどまらず、我が国の家族法については、女性差別撤廃委員会から婚外子の相続分差別の撤廃、選択的夫婦別姓制度導入、再婚禁止期間の禁止ないし短縮、婚姻年齢の男女差についても懸念が表明されていることを厳粛かつ真摯に受け止めるべきである。
当会は、政府に対し、あらためて、憲法13条、14条および24条2項の規定に照らし、民法第900条4号但書前段を直ちに改正することを求めると共に、上述の条約批准国として可及的速やかに他の諸問題についての民法(家族法)の改正を行うことを強く求める。
                2013年(平成25年)10月16日
                    福岡県弁護士会 会長 橋 本 千 尋

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