福岡県弁護士会 宣言・決議・声明・計画

2013年9月17日

新たな検討体制の発足に際して給費制の復活を求める会長声明

声明


1 本日、政府は内閣府に法曹養成制度の関係閣僚で構成する「法曹養成制度改革推進会議」を設置し、その下に置いた「法曹養成制度改革顧問会議」および「法曹養成制度改革推進室」ともども、先に公表した「法曹養成制度改革の推進について」(2013年(平成25年)7月16日付、法曹養成制度関係閣僚会議決定。以下「本決定」という。)による改革方針、改革課題についての検討を始めることとした。
2 これら課題のうち、本決定が、司法修習生に対する経済的支援策の在り方について、第67期の司法修習生(本年11月修習開始)から旅費法に準じて実務修習地への移転料の支給をすべきこと、集合修習期間中に司法研修所内の寮への入寮を保障すべきことを最高裁判所に求めたことは、法改正を必要としない範囲でさしあたり可能な一定の経済的配慮を示したものとして、その限りでは評価できる。しかし、これらの経済的支援は、あくまで現行法下での運用改善による応急措置的な、極めて限定的な方策に過ぎず、根本的には法改正による給費制の復活が不可欠である。
3 その理由として、現在の司法修習における貸与制は、実質的には司法修習生を何らの生活保障もないままに、1年間の実務修習に拘束するものとなっている。この多額の経済的負担は、法科大学院制度下での多大な時間的・経済的負担や、法曹人口の急激な増加による就職難がもたらす問題等と併せて、法曹志願者の激減をもたらす大きな要因となっている。そして、法曹志願者の激減は、プロセスとしての法曹養成を企図した新しい法曹養成制度の危機的状況を招いている。そのため、給費制の復活を含め、司法修習生に対する十分な経済的支援策を講じることは、質・量ともに豊かな法曹を養成するための絶対条件である。この点、本決定は兼業許可基準の緩和も述べるが、これは経済的支援策とは無関係であり、これを経済的支援策として位置づけるのは本末転倒である。また、この考え方は、フルタイムで修習に従事する司法修習生に対して安息の時間に労働を強いるものとなりかねず、極めて不合理である。さらに、司法修習の充実を目指すこの度の法曹養成制度改革の方向性にも逆行するものである。
4 そもそも、司法修習制度は、わが国の三権分立を支える司法を担い、基本的人権の擁護を使命とする法曹を育成するために不可欠、枢要なものであり、法曹の養成は国の責務であることを忘れてはならない。
法曹養成制度検討会議(以下「検討会議」という。)は、本決定のもととなった検討会議の取りまとめ(以下「取りまとめ」という。)に先立ち、本年4月から5月にかけて「中間的取りまとめ」に対するパブリック・コメントを募集した。その結果、全3119通の意見のうち、法曹養成課程における経済的支援に関する意見が2421通にものぼり、そのほとんどが給費制を復活させるべきという内容であった。これにより、この問題が法曹志願者を含む国民にとって重要な関心事であり、給費制が広く支持されていることが改めて明らかとなった。
 そこで、検討会議では、この点に加え、かねて委員からも給費制を支持する意見や貸与制がもたらしている問題状況を懸念する意見が少なくなかったこと等を踏まえ、取りまとめでの経済的支援策はとりあえずの最低限のものにとどまり、法改正を伴う更なる経済的支援策は今後の検討体制において引き続き検討されるべきとの共通認識に到達していたものである。
5 よって、当会は、政府の新たな「法曹養成制度改革推進会議」では、以上の点を十分に踏まえ、司法修習の充実方策の一環として、給費制の復活を含む司法修習生に対する更なる経済的支援策を充実させるべく、所要の措置を早急に講ずるよう強く要望する。


                 2013年(平成25年) 9月 17日
                 福岡県弁護士会 会長 橋 本 千 尋

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