福岡県弁護士会 宣言・決議・声明・計画

2012年1月13日

会長日記

会長日記

平成23年度福岡県弁護士会 会 長 吉 村 敏 幸(27期)

1.新年あけましておめでとうございます。
昨年の私たち執行部活動の中心課題は、何といっても、給費制実現の運動と、発足直前に発生した3.11東日本大震災と原発事故の復興支援対策です。この二つが一番大きく心にのしかかっていました。震災問題は、被災者復興支援対策本部において何度も法律問題の研修を繰り返し、相談と応援の体制づくりを行ない、また義捐金を募集しました。金額は早い期間で1,000万円を超えました。このうち東北三県(岩手、宮城、福島)の各単位会に各200万円ずつ送金し、残422万円余を震災で父親や母親を亡くした高校生140名の学資として一人当たり毎月15,000円を送ることにしました。これは、東京弁護士会が当初40名程度を考えて高校生の選定にあたったものの140名もの応募があったため、全員を救済することとし、改めて会員に追加の募金をお願いしていたものです。当会は東弁の企画に共催の形で支援することになりました。これにより、高校1年生、2年生の学資金の支給期間が当初予定されていた平成24年8月から大幅に延長可能となったとのことでした。子ども達のお礼の言葉を次に記します。
☆(ご本人からの手紙)
私は今回の特別義援金支給決定をうけ本当に感謝しています。これから高校生活を始めるにあたり一生懸命に勉強、部活に打ち込み、高校生活を有意義なものにしていきたいと思っています。今回の義援金支給の決定ありがとうございました。
☆(ご本人からの手紙)
この度は義援金を支給していただくことになり、誠にありがとうございます。今はとても大変な時ですが、日々勉強に励んでいきたいと思います。本当にありがとうございます。
☆(ご本人からの手紙)
特別義援金の支給、ありがとうございます。今回の震災で家族4人が津波に流され亡くなりました。父、姉、祖父、祖母です。家族が一度にいなくなり、悲しい、寂しい毎日ですが、母と妹と3人で仲よく暮らしています。将来、看護師を目指して勉強中です。家計の不安もあり、少しでも母の助けになればとアルバイトを始めました。今回、義援金を給付いただけることになり、うれしく思っています。本当にありがとうございました。
☆(ご本人からの手紙)
この度は義援金を支給いただきまして、ありがとうございました。私は母親と二人暮らしで生活していました。この震災で母親が亡くなり、一人になってしまいました。でも今は、祖父母の家で叔母と一緒に暮らしています。叔母は会社から解雇になってしまい、生活面で困っていました。このような支援をして頂きまして、すごく助かり感謝しています。本当にありがとうございました。
☆(ご本人の叔母様からの手紙)
このたびは色々とご配慮いただき、大変ありがとうございました。○○(本人・姪)になり代わりまして、お礼申し上げます。震災後は体調を崩すこともありましたが、現在は毎日、部活動の吹奏楽にいっしょけんめい取り組んでおります。家庭環境も変わり心理的にも困難な状況の中でも、前向きに努力する姿に、私どもも微力ながら協力していこうと考えております。
東弁でも引き続き募金を継続して、できるだけ期間の延長をはかろうとしています。福岡県弁としてもこれを機会に改めて募金のお願いをし、親を亡くした東北の子ども達を支援していきたいと考えています。皆様の募金をよろしくお願いします。
被災者を中心とする法律相談については、会内の相談センターでの体制づくりをしてきましたが、平成23年4月以降、12月18日の集中相談研修までに22件となっています。他方、被災地への応援については現地からの要請はありませんが、東京三会が中心となって行なっている原発問題支援機構が福島県等における訪問相談チームを編成して被災地に出向いています。しかしながら到底弁護士の人手が足りないことから、西日本地区からの応援を求めているとのことでした。現在、対策本部に検討をお願いしているところです。

2.残り3か月の課題
私たちに残された課題はたくさんありますが、とりあえず次の諸事項を掲げます。人権、司法制度、会内問題、業務問題です。
①給費制実現へ向けた運動の拡大
②法曹人口問題についての当会の方針の策定
③少年身柄事件全件国選化へ向けた運動の展開
④被疑者国選拡大(全件化)の運動
⑤原発賠償問題へのバックアップ出張体制の実現
⑥自死問題についてのネットワークの構築
⑦共済制度の具体化
⑧リーガルサービス基金の期間延長
⑨県弁会計システムの変更
⑩消費者事件のアクセスルート構築
⑪国際取引PTの今年度のまとめ
⑫福岡・釜山フォーラムの日韓海峡圏における取引障害事例の研究着手
⑬福岡市医師会とのパートナーシップ活動の具体化
⑭法律相談センターの充実のために(チケット制等の一層の拡大へ向けて)
もちろん、上記以外にもたくさんの課題があることは承知していますが、各委員会の皆様とともに網羅的に取り組みたいと思っています。

3.矛盾のなかの合意
日弁連の法曹人口政策会議は先鋭な意見の対立する場です。私たち各単位会の会長は当然委員になっており、各単位会の意見を反映できるような建付けになっています。現状は約2000人の司法試験合格者のところ、裁判官、検事の任官者採用者数は全く伸びておらず、当初の司法制度改革審議会意見書は前提事項(司法基盤の整備、法的需要など)が達成されないまま、弁護士数のみが増加する最悪の事態となっています。そのような中で、司法試験受験者の質の低下、弁護士登録しても就職できない新人の激増、法科大学院を目指す若者の激減などから、新人弁護士の逼迫感も高まっています。ここで、日弁連の法曹人口政策会議では、司法試験合格者の数を1500人や1000人へと減少させるべきとする意見が表明され、また、これまでに各単位会や日弁連の決議・声明が相次いで出されました。私は、現状の2000人合格者を段階的に1500人減員とする案を「已む無し」論として、個人的に意見表明しました。しかし、合格者1000人説の人たちの強い反発もあり、今後の行方は予断を許しません。私としては、現状2000人合格者を1000人あるいは1500人のいずれかとして打ち出すのは、数の面において両立し得ない質的相違であると考えます。しかし、減少する方向は一致しているのですから、このような矛盾的見解においてこれを許容する論理を承認したうえで、まずは1500人説を採用して、ここからの運動を創造することが大事だと思いました。しかし、1000人説の方々の舌鋒は鋭く、困難を極める状況です。それでも、3月末までにはきちんと日弁連の意見集約、すなわち矛盾のなかの合意をはかることができるように努力したいと思います。

4.大いなる夢と希望を抱いて
今年一年、辰歳がスタートしました。
弁護士の将来には魅力を感じないとする声もあります。しかし、弁護士とは本来、職人的なものであると思います。労を惜しまず、現場に出て活動すると、必ず何かが見つかります。そして、自分を必要とする人たちの力になることができますし、引いてはその活動の延長で制度や法律を変えることができます。弁護士の公益性・公共性です。
これらの信念を固く信じ、大いなる夢と希望を抱いて、この一年も努力していきたいと思います。

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