福岡県弁護士会 宣言・決議・声明・計画

2008年4月30日

福岡県弁護士会会長日記

会長日記

                     前会長 福 島 康 夫(30期)


1 北九州引野口事件無罪判決確定
ひどい話である。話してもいない代用監獄の同房者が殺人、非現住建造物放火の犯行状況を告白するのを聞いたと供述したばかりに起訴され、求刑は18年だったとの事である。結局、小倉支部で無罪判決が下され確定した。冤罪がまた明らかになった。被告人本人は取調で一貫して否認をしていたが、本人から犯行告白を聞いたという同房者の供述が重視されて起訴されてしまったのである。代用監獄は違法捜査の温床だという言葉が生きている。違法捜査を起こしやすい制度は制度自体を廃止しなければならない。それにしても、1審で無罪が確定した際、元被告人の片岸さんが、うれしいというよりも腹が立つといわれていたことが心に残る。取調べの全過程の録画、代用監獄の廃止、いずれも私たち弁護士が世間に訴えていかなければならないことを再確認した。
田邊弁護団長をはじめとする北九州部会の弁護団のご苦労と重圧はいかばかりであったろう。最大限の敬意を表したい。


2 九弁連のあさかぜ基金法律事務所設置
3月21日の臨時総会で九弁連が設置主体となる「あさかぜ基金法律事務所」を福岡市に設置すること、および当会が技術的支援をすることが決定された。執行部として最後の大きな審議案件となったが、臨時総会でこの「あさかぜ基金法律事務所」が暖かい目で迎えられたことにホッとしている。これで九弁連の過疎偏在問題は解決に向けて大きく動きだした。まさに九弁連は一つになったと思う。何としてでも成功させなければならない。次年度の執行部の大きな課題である。今後暖かい目でこの「あさかぜ基金法律事務所」が成功するよう絶大な支援をお願いしたい。


3 裁判員裁判に向けて
裁判員裁判の実施まで1年と迫ってきた。最近毎日のように無罪判決の新聞報道に接するが、たまたまとは思われない。その理由として最近、裁判官が緊張感をもって審理に臨んでいるということではないだろうか。私たちはこれまで一般の市民にわかってもらうために無罪推定の原則をどう説明したらよいか突き詰めて考えたことがあっただろうか。裁判員裁判は模擬裁判をしている中で裁判官、検察官、弁護士それぞれに刑事裁判の原点に立ち返らせる効果を与えていると思う。


4 研修の充実に向けて
重要な法律の改正が毎年毎年行われている。めまぐるしい速さで世の中が変わっている。改正されるたびに法律書を買うと事務所の本棚は大変である。かといって、古い法律書に頼って執務をして懲戒になればもっと大変である。法曹の質の問題は新人ばかりではない。経験者に対する研修も含んでいる。
ところで、昨年1月から新61期修習生83名が当会で修習中である。今度の修習生の特徴は修習期間が1年。全員法科大学院出身で即実務修習に入り前期修習がない。そのため、研修所の教官の方が巡回して起案講評等を行っている。各実務庁の修習期間は2ヶ月しかなく、これでは刑事弁護を最初から最後まで修習できないことになる。これで1年後に弁護士として刑事弁護を1人でさせることには不安があるのは私だけではないであろう。
2月の理事会で新人弁護士の研修の意味でベテラン弁護士が一緒に刑事弁護ができるようにするため複数選任の制度を作るべきではないかということが問題になった。現在の制度設計では研修のための複数選任制度は認められていないが、早急に検討すべき課題である。修習期間の短縮をカバーするためには修習内容の工夫は勿論新人弁護士時代のOn the job trainingしかない。修習委員会と研修委員会の一層の工夫をお願いしたい。


5 皆さんに感謝 
この日記もいよいよ今回が最後である。前年度から引き継いで、毎月その時々の弁護士会の動きをお知らせしてきたが、最後まで続けて来れてホッとしている。原稿の締め切り日を過ぎてもまだ出せない私を、懲りずに督促していただいた広報委員会の委員各位にお詫びと共に感謝したい。
それにしても、この1年間は本当に目まぐるしかった。多重債務相談の無料化実施、これに伴うテレビ・ラジオの広報から始まり、会員の熱意と団結で様々な活動を行った。司法シンポ、民暴拡大協議会といった全国規模のシンポジウムが2つ、それ以外に7つのシンポを行った(憲法、消費者、人権、可視化、子ども、民暴 中小企業)。常議員会で決議した会長声明、意見書は50近くに達しようとしている。会員1人1人の皆さんの大いなる活動の成果である。当会の活動は衰えるところを知らないようである。
1年間、何とか任務を全うできたのも、会員の皆さんのご支援ご協力のお陰である。本当に感謝したい。
この福岡県弁護士会会長日記も次号から田邊次期会長にバトンタッチをすることになる。次年度もよろしくお願いしたい。
最後にあたって、私の最近の好きな言葉でこの日記を締めくくりたい。
「夢なくして計画なし。
計画なくして実行なし。
実行なくして成果なし。」

  • URL

カテゴリー

Backnumber

最近のエントリー