福岡県弁護士会 宣言・決議・声明・計画

2002年6月10日

いわゆるメディア規制3法案の廃案等を求める声明

声明

福岡県弁護士会 会長  藤井克已 

 平成14年(2002年)6月10日

  現在国会で審議中の人権擁護法案、個人情報保護法案、並びに国会上程予定の青少年社会環境対策基本法案はいわゆるメディア規制3法案と呼ばれているように、報道の自由、市民の知る権利を侵害する恐れの強いものである。\n
  人権擁護法案は、本年3月15日付日本弁護士連合会理事会決議で指摘されているように、
 1:法案の人権委員会は法務省の外局とされ、必要十分な専任職員をおかず、しかもその事務を地方法務局に委任する等政府から独立した実効性のある人権救済機関とは到底言えない。\n 2:労働分野での人権侵害を切り離して厚生労働省の機関に委ねたことは労働分野の人権侵害救済の実効性が果たされない。
 3:かかる独立性の保障のない人権委員会がメディアの調査を行い、取材行為停止等の勧告権限を有することは、市民の知る権利を侵害する恐れが強い。
という問題点があり、その名称とは異質の法律案となっている。

  個人情報保護法案は、「基本原則」で個人情報を「適切かつ適正な方法で取得」し「本人が適正に関与し得るように配慮」を求めているが、この法律が施行されれば、政治家個人に対する政治的道義的責任追求を行うについての個人情報の収集や公表が個人情報保護法違反に問われる危険性もあり、日本新聞協会の意見書が指摘するような「取材を受ける側の情報提供が萎縮したり」「基本原則を口実に取材を拒否するケースが増加」することも予\想され、規制法の色彩が強くなっている。また、「報道機関」以外のものが行う表現行為(著作物など)に対する罰則(主務大臣の改善・中止命令違反に対し両罰規定を伴う)の適用があり、これらの表\現の自由に対して大きな侵害となる。その一方で、個人情報に関する自己決定権が保障されず、プライバシー権の明記もない。市民が自らの個人情報の開示を事業者に求めても、事業者の業務の都合で開示請求を拒否できるなど、個人情報を保護する法律としても極めて問題の多いものである。

  青少年社会環境対策基本法案は、2001年2月21日付日本弁護士連合会会長声明で指摘されているように、2000年に設立された第三者機関「放送と青少年に関する委員会」などによる自主的努力を一層強めることが本筋であり、同法案にある行政機関のメディアへの勧告権限、氏名公表、指導権限など、メディアへの直接介入、検閲の危険がある内容となっている。\nさらに、規制対象とされる有害な社会環境の内容も曖昧であり、表現の自由を侵害する法案と断ぜざるを得ない。\n
  これらメディア規制3法案は、報道の自由、国民の知る権利を侵害する危険性が著しく高いものであるので、この3法案に反対し、国会審議中の2法案については今国会で直ちに廃案にするとともに、全ての法案について、国民の意見を求めた上、根本的な見直を行うべきである。

  • URL

カテゴリー

Backnumber

最近のエントリー