福岡県弁護士会 宣言・決議・声明・計画

2018年1月15日

給費を受けられなかった6年間の司法修習生(「谷間世代」)が被っている不公平・不平等の是正措置を求める会長声明

声明

1 昨年4月19日,司法修習生に対して,月額13万5000円,住居が必要となる者にはさらに月額3万5000円を支給する修習給付金制度を創設する裁判所法改正がなされた。司法修習費用給費制(以下「給費制」という)の重要性を訴え,その廃止後は一貫してその復活を求めてきた当会としては,ここに改めて,法務省,最高裁判所,衆参両院はじめ関係各位のご理解とご支援・ご英断に篤く感謝申し上げる。
 司法は,三権の一翼として,法の支配を実現し国民の権利を守るための枢要な社会インフラであり,法曹はこの司法の担い手として公共的使命を負っている。そこで国は,高度な技術と倫理感が備わった法曹を国の責任で養成するために,現行の司法修習制度を,1948年(昭和23年),日本国憲法施行と同時に発足させ運営している。この制度の中で,司法修習生は,修習専念義務(兼職の禁止),守秘義務等の職務上の義務を負いながら,裁判官・検察官・弁護士になる法律家の卵として,将来の進路にかかわらず,全ての分野の法曹実務を現場で実習し,法曹三者全ての倫理と技術を習得してきた。
司法修習制度が,修習専念義務を課したうえで国の責任で法曹を養成する制度である以上,修習に専念できるに足る生活保障を行うのは当然であり,戦後60余年にわたり維持されてきた給費制を2011年(平成23年)に廃止したことを見直して,今回の裁判所法改正によって修習給付金制度を創設したことは,司法修習生に対してあるべき経済的支援策の回復に向けての大きな前進として評価できる。


2 ただ,修習給付金は,その金額が安心して修習に専念できる十分な金額かどうかの問題があり,これについては継続的な調査・検討が必要であるが,これに加えて,上記裁判所法改正法の遡及適用が見送られたため,給費制が廃止されていた2011年(平成23年)度から2016(平成28年)度までの6カ年間に,無給のもと,同じ修習専念義務を負って同じ内容の修習を遂行した新65期から70期の司法修習修了者(以下「谷間世代」という)の経済的負担が旧65期以前及び71期以降の修習修了者に比して著しく重くなるという不公平・不平等な事態が発生している。しかも,谷間世代の法曹は約1万1000人に達し,全法曹(約4万3000人)の約4分の1を占め,看過できない事態となっている。
 国の責任で司法修習という制度を設置・運営している以上,このような不公平・不平等な事態を放置することは不合理かつ不条理というべきである。


3 当会では昨年8月,谷間世代の声を聴く会を開き,また同年11月には「修習給付金の創設に感謝し,谷間世代1万人の置き去りについて考える福岡集会」を開催するなど,谷間世代の会員の声に耳を傾けてきたところ,「もっと社会公益的な活動をしたくて弁護士になったが,貸与金返済が控えていて経済的余裕がないために、公益活動や積極的な業務への取り組みを自制しがちとなっており残念だ」,「貸与金の返済が始まるとコストパフォーマンスの良い仕事を優先してしまうのではないかと不安である」,「多額の貸与金や奨学金の返済債務のために、妊娠・出産を躊躇してしまう」等の切実な声が多数寄せられた。
法曹人口が急増し,弁護士の経営・収入状況の悪化という事態が生じている昨今,谷間世代の者が負わされた経済的負担を放置することは,彼らの法曹としての自由闊達な活動の制約要因となり,「法曹人材確保の充実・強化」が目指す司法の充実・強化という目的に反することとなる。
  また,今回の法改正の趣旨は,「法曹人材確保の充実・強化」という点にあるところ,制度の設置・運営責任者である国が上記のような事態を放置していることは,法曹を目指す者に対して,給付金制度の存続について不安を生じさせ,上記改正法の趣旨を減殺させる結果を招きかねない。
さらに,そもそもわが国の司法修習制度は,法曹一元の理念を背景に統一修習制度として設置・運用され,これがわが国法曹の一体感と公共的使命感の醸成に寄与してきた点で貴重なものであるところ,谷間世代のかかる不公平・不平等を放置することは谷間世代とその前後の世代との間での分断を生じることとなる点でも看過できない深刻な問題である。
これらの弊害を是正することで、谷間世代を含んだ法曹全体に一体感が生まれ、そのことにより特に若手の法曹がこれまで以上に幅広い分野で国民の権利擁護のために活躍することが可能となるなど、ひいて国民の利益に叶うことは明らかである。


4 以上の次第であるので,当会は,法務省,最高裁判所,国会に対して,谷間世代の経済的負担が旧65期以前及び71期以降の修習修了者に比して著しく重くなったままであるという不公平・不平等な事態が発生していることについて,一律給付などの方法によりこれを是正する措置を講じることを求める。なお,これとあわせて,本年7月25日(新65期司法修習修了者の貸与金返還開始時期)までに上記の措置が講じられない場合,上記是正措置が講じられるまでの間,貸与金の返還期限を一律猶予する措置を講ずることを求める。

                    2019年(平成30年) 1月11日
                      福岡県弁護士会  
                      会長 作 間  功

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2017年10月27日

接見室内での写真撮影に関する国家賠償請求訴訟控訴審判決についての会長声明

声明

 2017年(平成29年)10月13日,福岡高等裁判所第4民事部は,拘置所の接見室内で弁護人がした写真撮影に関する国家賠償請求事件につき,極めて不当な判決を言い渡した。弁護団は,本日,同判決に対して上告及び上告受理の申立てを行った。
 本件は,当時弁護人であった控訴人(1審原告)が,小倉拘置支所の接見室内で被告人と面会した際,被告人から,「拘置支所職員から暴行を受け,顔面を負傷したので,怪我を証拠に残してほしい」との訴えを受け,負傷状況を証拠化する目的で,携帯電話のカメラ機能を用いて写真撮影したところ,撮影した写真データを消去することを拘置支所職員らに強制された事案である。
 本判決には多くの問題が存する。一つは,面会室内への撮影機器の持込みを禁止する刑事施設の長の措置を,「庁舎管理権」というきわめて広汎かつあいまいな根拠により正当化していること,もう一つは,弁護人が有する接見交通権の重要性を看過していることである。これらの点は,日本弁護士連合会(日弁連)会長が本年10月13日付けで発した「面会室内での写真撮影に関する国家賠償請求訴訟の福岡高裁判決についての会長談話」においても指摘されている。
 上記談話が指摘するとおり,身体を拘束された被疑者・被告人(以下「被疑者等」という。)が十分な防御権を行使するための大前提となるのが,憲法・刑訴法上認められた接見交通権である。そして,接見の際に得られた情報を記録化することは接見そのものであり,かつ,弁護活動の一環であることは明らかであって,有効な防御権行使のためにいかなる方法で記録化するかについても,原則として弁護人の裁量にゆだねられるべきものである。
 上記の日弁連会長談話に加え,以下の2点を指摘する。
 本判決は,「庁舎管理権」について,国が,庁舎に対して有する所有権を根拠として,「特に法令によって制限されていない限り,明文の規定がなくても,その庁舎に対して包括的な管理支配権を持ち,その事務の遂行に支障となる行為を禁止することができる」とし,刑事収容施設法(刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律)に明文の規定がなくとも,弁護人の面会室への撮影機器の持込みを制限できるなどというのである。
 ある行為を禁止し,またはいかに制限するかについては,明文の法律により規定されなければならないという考え方(法治主義)は,近代国家における大原則である。本件では,その禁止・制限となる対象が,先述のとおり憲法・刑訴法に基礎を置く重要な権利であるはずの接見交通権・弁護権なのであるから,尚更,その制約根拠は明確なものでなければならない。その根拠も内容も法文上明確とはいえない「庁舎管理権」なる権限により,接見の際の撮影機器持込みや撮影行為を容易に制約できるというのであれば,接見交通権・弁護権の保障は大きく後退するというほかない。
 次に,本判決は,「刑事施設における面会は,被収容者に対する処遇という事務の一内容であり,面会室で弁護人を含む一般国民が面会できるのは,刑事施設の長が当該面会室を面会の場所として指定したことの反射的効果にすぎない」などと述べる。かかる指摘は,弁護人には面会室という施設を使用する権利などないというに等しい。この点からも,本判決は,接見交通権の保障を不当に軽んじる態度が顕著であり,到底承服できないものである。
 当会は,引き続き,実質的な接見交通権・弁護権の保障を実現するため,写真撮影が接見交通権に含まれるものであるとともに,これを法令の根拠なく制限することはできないはずであることを改めて表明するものである。
                                          2017年(平成29年)10月27日
                福岡県弁護士会  会 長  作 間  功

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2017年10月 2日

福岡県地域司法計画(第1次,第2次)

計画


福岡県弁護士会では,政府により司法制度改革のための法整備が進められていた2002年(平成14年),福岡県地域司法計画(第1次)(PDF)を策定しました。
この第1次計画は司法改革のスタートに際し,日本社会に法の支配を貫徹し,社会的弱者の人権を擁護するとともに,広範な市民や企業の法的ニーズを満たして,弁護士の使命である「基本的人権の擁護と社会正義の実現」を具現するには,「利用しやすい司法制度の実現」が必要不可欠であることを確認し,「利用しやすい司法制度の実現」のための地域における具体的な司法の充実に向けて,当会としてどのように取り組んでいくかを提起したものです。

さらに,2009年(平成21年)に,福岡県地域司法計画(第2次)(PDF)を策定しました。第2次計画は,第1次計画当時,制度設計が議論されていた司法改革の制度がほぼ確立し,実行段階にあったなか,福岡という地域において,これらの制度を実際に担う当会に与えられた課題は何か,これらを克服する方策をどう考えるべきかを提示したものです。この第2次計画については,策定後毎年,各事項の目標達成状況の検証を行っています。

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2017年7月19日

最低賃金額の大幅な引き上げを求める会長声明

声明

 まもなく福岡地方最低賃金審議会は,福岡労働局長に対し,本年度地域別最低賃金額改定についての答申を行う予定である。
 昨年,同審議会は,福岡県最低賃金の改正決定について,前年度比22円増額の765円とする答申を行った。しかし,あまりに低い増額幅で不当と言わざるを得ないものであった。すなわち,時給765円という水準は,1日8時間,月22日間働いたとしても,月収13万4640円,年収約162万円に止まるものである。この金額では,労働者がその賃金だけで自らの生活を維持していくことは容易ではなく,ましてや家計の主たる担い手となるのは困難である。また,いわゆるワーキングプアを解消して労働者の生活を安定させ,労働力の質的向上を図るためにも,最低賃金の引き上げは重要であるところ,かかる観点からも全く不十分な水準であった。
 福岡県の最低賃金は,昨年度の全国加重平均823円を下回り,最も高額な東京都の932円を167円も下回っていることは重大である。福岡県に限らず,都心部と地方の地域間格差は拡大傾向にあるところであり,地方の活性化のためにも,地方の最低賃金の大幅な引き上げによる格差の解消は喫緊の課題と位置付けられるべきである。
 加えて,政府が,2010年6月18日に閣議決定された「新成長戦略」において,2020年までに「全国平均1000円」にするという目標を明記していたことに照らせば,福岡県において,2020年までに1000円という目標を達成するためには,1年当たり少なくとも60円程度の引上げが必要であるのは明らかである。
 なお,最低賃金の引き上げに際して,地域の中小企業の経営に特別の不利益を与えないよう配慮することが必要なことは当然である。最低賃金の引き上げを誘導するための補助金制度等や中小企業の生産性向上のための施策ないし減税措置等,中小企業を対象とした制度も併せ検討されるべきである。
 また,福岡地方最低賃金審議会の審議内容は,現在,要旨の公表しかなされていないが,議事の透明性と公正の確保の点から,詳細な議事録,配布資料の公開を実現すべきことも指摘したい。例えば,鳥取地方最低賃金審議会においては,審議等の全面公開が実現しているがこれによる問題は生じておらず,その気になれば,その実現は可能なのである。
 以上,当会は,福岡地方最低賃金審議会に対し,今年度の答申に当たっては,最低賃金を大幅に引き上げるよう決定することを求めるとともに,同審議会の詳細な議事録等の公開を求めるものである。

2017年(平成29年)7月19日
福岡県弁護士会会長  作 間 功

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2017年7月13日

死刑執行に関する会長声明

声明

 本日,2017年(平成29年)7月13日,大阪拘置所と広島拘置所において各1名の死刑が執行された。


 一人は再審請求を行っている中での死刑執行であり,また,一人は裁判員裁判において被害者1名で死刑判決が下され,弁護人が控訴したにもかかわら ず自ら控訴を取り下げ死刑が確定した者に対する死刑執行である。
 前者は,現行法の再審制度の問題(死刑判決に対する再審請求に執行停止効がないこと)を提起するものであり,後者は一審のみの判断で究極の刑罰である死刑を科すことの是非や自動上訴制度の導入の是非という問題を提起する ものであり,いずれも,生命剥奪という究極の刑罰権である死刑の正当性について,手続保障の観点から大きな疑義を持たざるを得ないものである。


 我が国において,死刑事件について,すでに4件もの再審無罪判決が確定しており(免田・財田川・松山・島田各事件),えん罪によって死刑が執行される可能性が現実のものであることが明らかにされた。また,2014年(平成26年)3月27日には,死刑判決を受けた袴田巖氏の再審開始が決定され,同時に「拘置をこれ以上継続することは,耐え難いほど正義に反する」として,死刑および拘置の執行停止も決定されて,現在でもなお死刑えん罪が存在することが改めて明らかとされたところである。

 そもそも,死刑は人間の尊厳を侵害する非人道的行為であること,誤判・冤罪により死刑を執行した場合には取り返しがつかないことなどの様々な問題 を内包しており,2014年(平成26年)の内閣府世論調査では,代替刑の創設により死刑廃止を容認する国民的世論が形成されうる可能性が示唆され ている。
 また,EUを中心とする世界の約3分の2の国々が死刑を廃止又は停止し, 死刑存置国とされているアメリカ合衆国においても2017年6月の時点で 19州が死刑廃止を宣言するなど,死刑廃止は国際的な潮流となっており,未だに死刑制度を存置させ死刑を執行しているわが国は,国連人権(自由権)規約委員会から何度なく死刑廃止に向けた行動を取ることの勧告を受け続けている。

 このような中,日本弁護士連合会は,再審無罪となった事件や袴田事件再審決定に代表される誤判・冤罪の現実的危険性を踏まえ,また,いかなる者であろうとも変わり得ることを前提に社会内包摂を目指すべきことを主な理由として,2016年(平成28年)10月7日の第59回人権擁護大会において「死刑廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言」を採択し,日本において国連犯罪防止刑事司法会議が開催される2020年までに死刑制度の廃止を目指すべきこと,また,代替刑として,刑の言渡し時に「仮釈放の可能性がない終身刑制度」,あるいは,現行の無期刑が仮釈放の開始時期を10年としている要件を加重し,仮釈放の開始期間を20年,25年等に延ばす「重無期刑制度」の導入の検討等を政府に求めたばかりである。
 
 当会は,本件死刑執行について強く抗議の意思を表明するとともに,死刑制度についての全社会的議論を求め,この議論が尽くされるまでの間,すべての死刑の執行を停止することを強く要請するものである。

2017年(平成29年)7月13日
福岡県弁護士会会長  作 間 功

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