福岡県弁護士会 宣言・決議・声明・計画

2017年10月27日

接見室内での写真撮影に関する国家賠償請求訴訟控訴審判決についての会長声明

声明

 2017年(平成29年)10月13日,福岡高等裁判所第4民事部は,拘置所の接見室内で弁護人がした写真撮影に関する国家賠償請求事件につき,極めて不当な判決を言い渡した。弁護団は,本日,同判決に対して上告及び上告受理の申立てを行った。
 本件は,当時弁護人であった控訴人(1審原告)が,小倉拘置支所の接見室内で被告人と面会した際,被告人から,「拘置支所職員から暴行を受け,顔面を負傷したので,怪我を証拠に残してほしい」との訴えを受け,負傷状況を証拠化する目的で,携帯電話のカメラ機能を用いて写真撮影したところ,撮影した写真データを消去することを拘置支所職員らに強制された事案である。
 本判決には多くの問題が存する。一つは,面会室内への撮影機器の持込みを禁止する刑事施設の長の措置を,「庁舎管理権」というきわめて広汎かつあいまいな根拠により正当化していること,もう一つは,弁護人が有する接見交通権の重要性を看過していることである。これらの点は,日本弁護士連合会(日弁連)会長が本年10月13日付けで発した「面会室内での写真撮影に関する国家賠償請求訴訟の福岡高裁判決についての会長談話」においても指摘されている。
 上記談話が指摘するとおり,身体を拘束された被疑者・被告人(以下「被疑者等」という。)が十分な防御権を行使するための大前提となるのが,憲法・刑訴法上認められた接見交通権である。そして,接見の際に得られた情報を記録化することは接見そのものであり,かつ,弁護活動の一環であることは明らかであって,有効な防御権行使のためにいかなる方法で記録化するかについても,原則として弁護人の裁量にゆだねられるべきものである。
 上記の日弁連会長談話に加え,以下の2点を指摘する。
 本判決は,「庁舎管理権」について,国が,庁舎に対して有する所有権を根拠として,「特に法令によって制限されていない限り,明文の規定がなくても,その庁舎に対して包括的な管理支配権を持ち,その事務の遂行に支障となる行為を禁止することができる」とし,刑事収容施設法(刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律)に明文の規定がなくとも,弁護人の面会室への撮影機器の持込みを制限できるなどというのである。
 ある行為を禁止し,またはいかに制限するかについては,明文の法律により規定されなければならないという考え方(法治主義)は,近代国家における大原則である。本件では,その禁止・制限となる対象が,先述のとおり憲法・刑訴法に基礎を置く重要な権利であるはずの接見交通権・弁護権なのであるから,尚更,その制約根拠は明確なものでなければならない。その根拠も内容も法文上明確とはいえない「庁舎管理権」なる権限により,接見の際の撮影機器持込みや撮影行為を容易に制約できるというのであれば,接見交通権・弁護権の保障は大きく後退するというほかない。
 次に,本判決は,「刑事施設における面会は,被収容者に対する処遇という事務の一内容であり,面会室で弁護人を含む一般国民が面会できるのは,刑事施設の長が当該面会室を面会の場所として指定したことの反射的効果にすぎない」などと述べる。かかる指摘は,弁護人には面会室という施設を使用する権利などないというに等しい。この点からも,本判決は,接見交通権の保障を不当に軽んじる態度が顕著であり,到底承服できないものである。
 当会は,引き続き,実質的な接見交通権・弁護権の保障を実現するため,写真撮影が接見交通権に含まれるものであるとともに,これを法令の根拠なく制限することはできないはずであることを改めて表明するものである。
                                          2017年(平成29年)10月27日
                福岡県弁護士会  会 長  作 間  功

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2017年10月 2日

福岡県地域司法計画(第1次,第2次)

計画


福岡県弁護士会では,政府により司法制度改革のための法整備が進められていた2002年(平成14年),福岡県地域司法計画(第1次)(PDF)を策定しました。
この第1次計画は司法改革のスタートに際し,日本社会に法の支配を貫徹し,社会的弱者の人権を擁護するとともに,広範な市民や企業の法的ニーズを満たして,弁護士の使命である「基本的人権の擁護と社会正義の実現」を具現するには,「利用しやすい司法制度の実現」が必要不可欠であることを確認し,「利用しやすい司法制度の実現」のための地域における具体的な司法の充実に向けて,当会としてどのように取り組んでいくかを提起したものです。

さらに,2009年(平成21年)に,福岡県地域司法計画(第2次)(PDF)を策定しました。第2次計画は,第1次計画当時,制度設計が議論されていた司法改革の制度がほぼ確立し,実行段階にあったなか,福岡という地域において,これらの制度を実際に担う当会に与えられた課題は何か,これらを克服する方策をどう考えるべきかを提示したものです。この第2次計画については,策定後毎年,各事項の目標達成状況の検証を行っています。

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2017年7月19日

最低賃金額の大幅な引き上げを求める会長声明

声明

 まもなく福岡地方最低賃金審議会は,福岡労働局長に対し,本年度地域別最低賃金額改定についての答申を行う予定である。
 昨年,同審議会は,福岡県最低賃金の改正決定について,前年度比22円増額の765円とする答申を行った。しかし,あまりに低い増額幅で不当と言わざるを得ないものであった。すなわち,時給765円という水準は,1日8時間,月22日間働いたとしても,月収13万4640円,年収約162万円に止まるものである。この金額では,労働者がその賃金だけで自らの生活を維持していくことは容易ではなく,ましてや家計の主たる担い手となるのは困難である。また,いわゆるワーキングプアを解消して労働者の生活を安定させ,労働力の質的向上を図るためにも,最低賃金の引き上げは重要であるところ,かかる観点からも全く不十分な水準であった。
 福岡県の最低賃金は,昨年度の全国加重平均823円を下回り,最も高額な東京都の932円を167円も下回っていることは重大である。福岡県に限らず,都心部と地方の地域間格差は拡大傾向にあるところであり,地方の活性化のためにも,地方の最低賃金の大幅な引き上げによる格差の解消は喫緊の課題と位置付けられるべきである。
 加えて,政府が,2010年6月18日に閣議決定された「新成長戦略」において,2020年までに「全国平均1000円」にするという目標を明記していたことに照らせば,福岡県において,2020年までに1000円という目標を達成するためには,1年当たり少なくとも60円程度の引上げが必要であるのは明らかである。
 なお,最低賃金の引き上げに際して,地域の中小企業の経営に特別の不利益を与えないよう配慮することが必要なことは当然である。最低賃金の引き上げを誘導するための補助金制度等や中小企業の生産性向上のための施策ないし減税措置等,中小企業を対象とした制度も併せ検討されるべきである。
 また,福岡地方最低賃金審議会の審議内容は,現在,要旨の公表しかなされていないが,議事の透明性と公正の確保の点から,詳細な議事録,配布資料の公開を実現すべきことも指摘したい。例えば,鳥取地方最低賃金審議会においては,審議等の全面公開が実現しているがこれによる問題は生じておらず,その気になれば,その実現は可能なのである。
 以上,当会は,福岡地方最低賃金審議会に対し,今年度の答申に当たっては,最低賃金を大幅に引き上げるよう決定することを求めるとともに,同審議会の詳細な議事録等の公開を求めるものである。

2017年(平成29年)7月19日
福岡県弁護士会会長  作 間 功

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2017年7月13日

死刑執行に関する会長声明

声明

 本日,2017年(平成29年)7月13日,大阪拘置所と広島拘置所において各1名の死刑が執行された。


 一人は再審請求を行っている中での死刑執行であり,また,一人は裁判員裁判において被害者1名で死刑判決が下され,弁護人が控訴したにもかかわら ず自ら控訴を取り下げ死刑が確定した者に対する死刑執行である。
 前者は,現行法の再審制度の問題(死刑判決に対する再審請求に執行停止効がないこと)を提起するものであり,後者は一審のみの判断で究極の刑罰である死刑を科すことの是非や自動上訴制度の導入の是非という問題を提起する ものであり,いずれも,生命剥奪という究極の刑罰権である死刑の正当性について,手続保障の観点から大きな疑義を持たざるを得ないものである。


 我が国において,死刑事件について,すでに4件もの再審無罪判決が確定しており(免田・財田川・松山・島田各事件),えん罪によって死刑が執行される可能性が現実のものであることが明らかにされた。また,2014年(平成26年)3月27日には,死刑判決を受けた袴田巖氏の再審開始が決定され,同時に「拘置をこれ以上継続することは,耐え難いほど正義に反する」として,死刑および拘置の執行停止も決定されて,現在でもなお死刑えん罪が存在することが改めて明らかとされたところである。

 そもそも,死刑は人間の尊厳を侵害する非人道的行為であること,誤判・冤罪により死刑を執行した場合には取り返しがつかないことなどの様々な問題 を内包しており,2014年(平成26年)の内閣府世論調査では,代替刑の創設により死刑廃止を容認する国民的世論が形成されうる可能性が示唆され ている。
 また,EUを中心とする世界の約3分の2の国々が死刑を廃止又は停止し, 死刑存置国とされているアメリカ合衆国においても2017年6月の時点で 19州が死刑廃止を宣言するなど,死刑廃止は国際的な潮流となっており,未だに死刑制度を存置させ死刑を執行しているわが国は,国連人権(自由権)規約委員会から何度なく死刑廃止に向けた行動を取ることの勧告を受け続けている。

 このような中,日本弁護士連合会は,再審無罪となった事件や袴田事件再審決定に代表される誤判・冤罪の現実的危険性を踏まえ,また,いかなる者であろうとも変わり得ることを前提に社会内包摂を目指すべきことを主な理由として,2016年(平成28年)10月7日の第59回人権擁護大会において「死刑廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言」を採択し,日本において国連犯罪防止刑事司法会議が開催される2020年までに死刑制度の廃止を目指すべきこと,また,代替刑として,刑の言渡し時に「仮釈放の可能性がない終身刑制度」,あるいは,現行の無期刑が仮釈放の開始時期を10年としている要件を加重し,仮釈放の開始期間を20年,25年等に延ばす「重無期刑制度」の導入の検討等を政府に求めたばかりである。
 
 当会は,本件死刑執行について強く抗議の意思を表明するとともに,死刑制度についての全社会的議論を求め,この議論が尽くされるまでの間,すべての死刑の執行を停止することを強く要請するものである。

2017年(平成29年)7月13日
福岡県弁護士会会長  作 間 功

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2017年6月15日

共謀罪法成立に対する抗議の会長声明

声明

1 本年3月21日に国会に提出されたテロ等準備罪,すなわち,共謀罪を含む組織犯罪処罰法の改正法(以下「共謀罪法」という。)は,6月15日,真摯な議論が全く尽くされないまま強行採決され成立するに至った。

当会では,共謀罪法に関し,2005年(平成17年)8月31日,2015年(平成27年)12月5日及び本年2月17日付会長声明を出し,直近では本年5月24日付「共謀罪法案の廃案を求める決議」において,修正前の共謀罪法における多数の重大な問題点を指摘し,共謀罪の新設に強く反対してきたところである。

2 5月12日になされた,自民,公明両党及び日本維新の合意に基づく共謀罪法の主な修正点は,捜査の適正確保の配慮を求めることを明文化したことにとどまる。適用対象主体及び適用対象犯罪が過度に広範であること,構成要件が不明確であることといった共謀罪法の根本的問題はなんら解決されていない。これら根本的問題を残したままでは捜査機関による恣意的な捜査による人権侵害や,捜査を懸念することによる表現活動等の萎縮が生じると言わざるを得ない。

3 上記修正案が提出された後,5月16日に開かれた衆院法務委員会に招致された5人の参考人のうち,法案に賛成した日本維新の会が招致した参考人も含め,3人もの参考人が法案に反対した。5月18日には,国連人権理事会からプライバシー権に関する特別報告者として任命されたジョセフ・ケナタッチ氏も,安倍首相宛ての書簡にて「プライバシーに関する権利と表現の自由への過度の制限につながる可能性がある。」との懸念を示した。5月22日現在,全国57自治体の議会において,共謀罪法案について反対または慎重な審議を求める意見書が可決・採択されており,国民の多くが共謀罪法に反対またはその必要性に疑念を抱いている状況であった。

4 そうであるのに,6月15日,自民公明両党は「中間報告」によって参院法務委員会での採決を省略するという異例の手段をとり,十分な議論がなされないまま共謀罪法は同日夜に参院本会議で採決され成立するに至った。多くの国民が反対もしくは必要性に疑念を抱く中,民主主義の根幹である表現の自由の萎縮をもたらす重要法案について実質的な審議を回避し共謀罪法を成立させたことは立憲民主主義の蹂躙というほかない。当会は,今後も国民と手をたずさえ,民主主義の根幹をゆるがしかねない共謀罪法の廃止を求め続けるとともに,共謀罪法により国民の権利が不当に侵害されることのないよう全力を尽くす所存である。

2017年(平成29年)6月15日
福岡県弁護士会 会長 作間 功

        
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