福岡県弁護士会コラム(会内広報誌「月報」より)

2005年9月号 月報

英国便りNo.4 留学一年目の勉強内容(2003年12月3日記)

月報記事

松井 仁

刑弁委員会の皆様 松井です。

一二月に入り、こちらロンドンでは、寒さこそ日本とあまり変わりませんが、日が極端に短くなり、朝八時ころまで夜は明けず、午後四時ころには日が暮れるという毎日です。

さて、今回は、私の現在の勉強内容についてご報告いたします。

私が通っているのは、ロンドン大学SOAS(School of Oriental and African Studies)で開設されている、Foundation Diploma for Postgraduate Studiesというコースです。つまり、大学院進学のための留学生向け基礎コースです。もともと法学部大学院(いわゆるLLMコース)に願書を出していたのですが、英語力不足のため、最初の一年間は基礎コースで英語力を磨きながら、法律以外の勉強もしてみようと思ったわけです。

授業の内容は、

  1. Academic English: 学術的英語(週二時間)
  2. Research Method: 学術的研究の仕方(週二時間)
  3. IELTS: 大学院進学用英語試験の準備(週三時間)
  4. 選択科目 以下の六科目から二つ選択(週各六時間)
    1. 国際関係学
    2. 国際ビジネス学
    3. 開発学
    4. メディア学
    5. ヨーロッパ社会学
    6. 文化学
  5. 卒業論文 (八〇〇〇語)

となっています。

私は、国際ビジネス学と開発学を選択しています。前者は、将来渉外事件をやることになったら役に立つかもしれないと思っての選択です。後者の開発学というのは、発展途上国の様々な問題を研究する学問で、例えば、貧困、飢、医療、教育といった各論から、国連・企業・NGO等の役割、モダニズムやマルキシズムといった理論までを勉強します。人権問題に深くかかわるので、選択しました。

卒業論文は、何でもいいということだったので、私の興味のまま、「英国の難民認定制度」(日本と違い、毎年何万人も申請があり何千人も認定されている)について書く予\定にしています。

このコースには、約一〇〇人の学生が通っていますが、国籍の割合は、中国人三:日本人三:韓国人二:その他二くらいです。見たところ、平均年齢は二〇代後半くらいで、三六歳の私は最も年寄りの部類に入ります。皆本国の大学の学部を卒業しており、半数以上は何らかの仕事の経験を持っています。中国人の多くは、ビジネス分野の大学院(MBAなど)に進むことを目指し、できれば英国で就職したいと思っているようです。日本人は、文化学や開発学の方面に進もうとしている人が多いようです(お寺のお坊さんもいます)。弁護士出身は、今のところ私だけしか知りません。

授業は、ゼミ中心で、各科目一〇人くらいのグループに分かれて、事前に読んできた資料や講義をもとに、議論をしたり、プレゼンテーションをしたり、小テストが行われたりします。内容のほとんどが新しく勉強することばかりで、弁護士であることは武器にならず、英語が並以下の私は、日々授業や宿題についていくのが精一杯という感じです。

講義の教室に座ってさえいればよかった九大の学生時代よりもはるかに大変で、欧米の大学は「入るのは易しく出るのは難しい」というのを痛感しています。

今の苦労が、来年LLMコースに入ったときにきっと役に立つと信じて頑張っています。

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