少年付添人日誌弁護士会月報「付添人日誌」より転載したものです。
付添人日誌(8・1月号)帰ってきた付添人
序幕
ちょっとした事務処理上の手違いで、1年半ほど少年事件から遠ざかっていたところに、ある日、当番弁護士の出動要請があった。曰く、共犯事件で複数の少年が同時に逮捕されており、派遣する弁護士がおらず苦労しているとのことで、割当日でない筆者のところに連絡してきたとのことであった。
久しぶりの少年事件に心躍らせ(?)つつ、筆者は警察署に向かった。
事案の概要
事案は、主犯格の女(成人)及び少年3名と共謀の上、知人である被害者に暴行を加えて金品を要求し、その際に怪我をさせたこと、及び、自動車の荷台に監禁したというもので、罪名は強盗傷人・監禁となっていた。成人であれば裁判員裁判対象事件であり、また新聞報道もされているなど、重大事案であった。
被疑者段階の弁護活動
逮捕直後ということで、まずは少年に接見した。少年の言い分を丁寧に聴取したところ、(1)被害者とは知り合いで、些末なトラブルで腹を立てており、何発か殴ったのは間違いない、(2)但し、金を取るという話は主犯格の女が勝手に言っていただけで、自分としてはもらえたら儲けものというくらいの認識だった。(3)自分は途中から参加しており、自分が参加した時点で被害者は既に顔面が腫れ上がった状態で自動車に押し込められていた、(4)母親から早く帰ってくるようにLINEが来ていたので、自分は途中で抜けたので、その後に他の者が被害者に何をしたのかは知らないということであった。
筆者としては、少年の弁解を踏まえ、(1)から何らかの犯罪に該当することは間違いないものの、(2)強盗の共謀が成立していると言えるか疑問であり、(3)いわゆる承継的共犯の問題が生じるほか、監禁の共謀が成立していると言えるかどうかも疑問であり、(4)共犯からの離脱についても検討する必要があると考えた(まるで司法試験の論文式試験のような事案である)。
ともあれ、少年は県立高校生で、部活動でとあるスポーツを行っており、その大会も控えているということであった。このため、まずは保護者である母親に連絡を取り、勾留を回避する方向で活動することとした。速やかに身元引受書を準備してもらい、勾留請求を却下するよう求める意見書を作成した。なお予備的に、勾留ではなく勾留に代わる観護措置が妥当であるとの意見を追加した。
残念ながらいずれの主張も容れられず、さらに接見禁止になってしまった。余談であるが父親と死別している少年について、接見禁止決定に「父母を除く」と記載した裁判官には憤懣やるかたない。
勾留、接見禁止のいずれも準抗告まで行ったものの認められず、兄弟や学校の教員(部活動の顧問や学年主任等、少年の学業継続に鍵を握る人物)についての一部解除に向けて奔走した。また、罪体に関しては、共犯者の弁護人と連絡を取り、他の共犯者の弁解内容を確認するとともに、示談交渉の方向性についてすりあわせを行った。
最終的に、強盗の共謀は成立せず、少年が加担する前の暴行により傷害結果が生じていた、監禁の共謀も成立しないという意見書を提出したところ、その意見が一部容れられ、傷害と監禁で家裁送致された。傷害については、同時傷害の特例が適用された形での家裁送致であり、当初の送致事実よりも相当程度縮小した内容で送致された。
審判段階の付添人活動
筆者としては、身元引受も手堅く、送致事実が相当程度縮小したこともあって、観護措置を執らずに在宅で審判手続が進行しないか、一抹の期待を寄せていたものの、残念ながらそうはならなかった。このため約1年半ぶりに少年鑑別所に足繁く通うことになった。炎天下に大橋駅から鑑別所まで移動するのは辛いものである。
事件記録を検討し、方針としては、少年の関与は部分的であり、怪我の程度もそこまで重くなく、犯情がそれほど重大とまでは言えないこと、少年はスポーツを通じた規範意識の涵養に期待することができ、学業の継続により社会内での更生を図ることが必要かつ有用であることを強調し、保護観察処分が相当であると主張することとした。調査官とは活発に意見交換を行い、調査官の感触的には、そこまで重い処分を考えているという程でもないように思われた。実際のところ、調査官の意見は保護観察であった。
意見書では、上記の点を特に強調し、審判においても、例えば「心技体」という言葉を部活動で習わなかったかと問いかけ、集団で1人を暴行することが卑劣な行為であることを、身近な話題から少年が自覚できるように工夫した。また少年は当該スポーツで名を挙げて母親に楽をさせてあげたいとの決意を口にしたため、某高校野球部の事例などを念頭に、インターネット社会において不祥事が拡散するリスク等も問いかけ、少年の内省を促すよう努力した。
付添人が質問内容のブラッシュアップに腐心する一方で、裁判官は少年に対し終始、糺問的な姿勢であり、また少年が耳で聞いて理解できるのか疑問に感じるような発問が散見された。全体的に、「懇切を旨として、和やかに行」っているとは到底言い難いものであった。
審判には、少年の母のみならず、少年の兄、姉も出席した。最終的には、保護観察処分となり、少年は無事に自宅に帰ることができた。
後日譚
ここからは完全に業務外なのであるが、少年についてはスポーツや学業に復帰することが更生のために重要であると主張していたこともあり、少年の母から頼まれたこともあって、審判からしばらくして、少年及び母とともに、少年の通学先の高校に経緯の説明と謝罪に赴く際に、筆者は成り行き上同行することとなった。筆者としては、少年には従前通りスポーツで活躍してほしいという思いもあったため、筆者が同行することで復学が順調に進めばよいとの期待を抱いていた。しかしながら、学校の対応はひどいもので、保護観察処分となったので退学処分にするだけの根拠はないと表面上は言いつつも、種々、口上を並べて、やんわりと自主退学を促すような態度に終始していた。それは少年自身にすら伝わるような露骨なものであり、少年が憤激するのを母が必死に押しとどめるような場面が見られた。
筆者としては、謝り倒してでも復学できた方が少年のためにはよいだろうと思っていたものの、学校のあまりに事なかれ主義の態度、自己保身の姿勢には閉口してしまった。このまま復学したとしても、少年には居心地の悪い、針のむしろのような環境が待っているのではないかと思うと、通信制高校に転校するなど、早い段階から軌道修正を図った方がよいのではないかと考えを改めざるを得なかった。彼らには教育者としての矜恃はないのだろうか。学校教育の劣化を憂慮せざるを得ない。
まとめ
少年事件は、通常の刑事事件同様に、刑事実体法・手続法を駆使して少年の防御に徹するという側面と、少年の将来設計を見据えて適切な環境設定を行うという側面があり、いずれも少年の将来にとって極めて重要な意義を有する。
もっとも、熱心に付添人活動を行えば行うほど、世の中の理不尽に心を折られるというのもまた否定できない現実である。新人・若手の先生には、積極的に少年事件に取り組んでもらいたいという思いもある一方で、ご自身の精神衛生やモチベーションを大事に、必要に応じて経験豊富な弁護士に相談する等、1人で抱え込まないことを心がけていただきたい。
*意見に渡る部分は筆者の私見であり、所属団体の見解を表すものではない。
*事案の特定を避けるため、趣旨を損なわない程度に改変を行っている。
水野 遼


