少年付添人日誌弁護士会月報「付添人日誌」より転載したものです。

付添人日誌(27・5月号)

1 はじめに

私は弁護士登録1年目のとき、2件の少年事件に関わりました。いずれも、事件の内容、少年の性格や環境が全く異なっていたことから、とても印象に残っています。

2 1件目の事件

1件目は登録研修で、指導担当の先生にご指導をいただきました。窃盗や傷害などの事件を想定していたのですが、強制わいせつの事案だったので少し戸惑ったことを覚えています。

被害者との連絡の取り方など多くのアドバイスをいただきながら進めていく一方で、非行事実の内容のせいか、少年に事件のときの心情や状況などについて聞こうとしてもなかなか話をしてくれず、コミュニケーションの難しさを感じました。

また、少年の家庭環境には全く問題はなく(少なくとも、私にはそのように思えました)、両親はどちらも積極的に、しかし適切な距離をもって少年に関わっているように見え、少年自身も、これまで特に問題行動などがあったわけでもないごく普通の少年だったことから、何が少年にこのような行動を起こさせてしまったのか見当もつきませんでした。そのため、少年がどのように内省を深めていけばいいのか、付添人としてどのように環境を整えていけばいいのか、とても悩みました。今でも、自分に何ができたのか、何かできることがあったのかがわからないままでいます。

このようなケースで、調査官はどのような働きかけをするのかとても関心があったのですが、試験観察期間中、少年に、気になった新聞記事とそれに関する感想を書かせるという課題を出し、自分の行為についても客観的に振り返り、考えていく力をつけさせようとしていたようで、そのようなやり方もあるのかと勉強になりました。

この少年は、試験観察を経て保護観察処分となりました。

3 2件目の事件

次の少年事件は、無銭飲食の事案でした。まもなく20歳になる年齢切迫少年で、これまでも窃盗や同様の事件を繰り返しており、少年院送致の経験もありました。

少年の両親は離婚しており、父親と共に父方の祖母の家で暮らしていましたが、家出をしては祖母にお金をもらいに戻ってきて、お金を渡さなければ祖母や父親に暴力を振るうといったことをしていたようです。

父親は、これまでも少年の自立のための援助をしていたようですが、度重なる非行に疲弊しきっていたようで、審判に来てはくれたものの、その後は、大人になったのだから自分で生きていけばいい、もうこれ以上面倒は見られないと突き放してしまいました。

20歳になるのをきっかけに立ち直りたいという少年の言葉を聞き、職場などの環境の調整をはかり、審判では保護処分を求めましたが、逆送となってしまいました。

釈放された少年はお金を1円も持っておらず、父親がこれを最後にといって言付けてくれた1万円を渡しました。必ず返すとの約束を私の名刺の裏に書いてもらいましたが、その後約束は果たされないまま、名刺は今も私の手元にあります。

4 まとめ

同じ少年事件といっても、様々なケースがあることを知りました。また少年の更生のために付添人としてどんなことができるのかについて、わかりやすい答えなどはないことも身をもって知りました。あれから少しでも成長していることを祈りつつ、これからも少年事件に関わっていきながら、少年のために何ができるのか、考え続けていきたいと思います。

渡 邉   陽

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