少年付添人日誌弁護士会月報「付添人日誌」より転載したものです。

付添人日誌(29・7月号)

1 受任の経緯と事件の概要

当職が行った付添人活動について報告させていただきます。この事件は、私にとって初めての付添人活動であり、指導担当の尾崎大先生とともに付添人活動を行いました。

事件の概要は、15歳の少年が、深夜徘徊の途中で、マンションのごみ置き場に火をつけるというものでした。建造物等以外放火(刑法110条)でもおかしくはない事案でしたが、罪名は軽犯罪法違反でした。

2 少年のとの面会

早速少年に面会に行きました。

家族構成や学校、友人のこと、そして事件のことなどを聞きました。すると、少年の家族が離婚し母子家庭であること、小学校から不登校になり、中学の3年間学校に行っていないこと、友人と呼べる人間がいないこと等が判明しました。

少年の印象は、「とてもおとなしい子」というものでした。少年事件ということで、勝手に元気の有り余る不良を想像していたのですが、私の想像とは違う少年像でした。

事件の動機は、高校進学にあたって、イライラしていて、ストレスを解消したかったというものでした。

3 母親との面会

少年との面会後、まずは、母親と連絡を取りました。事件のことや、少年との今後についてどのように考えているのかということを率直に尋ねました。

少年の母親は、「自分は足が悪く、生活をするのに少年の助けが必要だ。これからも一緒に暮らしていきたい。」と述べました。もっとも、少年は、事件のことについてあまり母親に相談をしていないらしく、今後再犯をしないかが気になりました。

4 少年との再面会

少年とは、全部で3回から4回面会したと思います。面会を重ねるにつれて、口下手だった少年も少しずつ話をしてくれるようになりました。

もっとも、劇的に変化するといったものではなく、少しずつ、少しずつの変化です。自分から積極的にしゃべるわけではなく、こちらの質問に答えるだけですが、最初は2言、3言だった返答が、面会を重ねるごとに7言、10言になっていきました。恐らく注意深く観察してなければ、見逃してしまうような変化でしたが、少年が確実に変化していったと感じました。

ある程度少年と意思疎通ができるようになったら、事件に至った経緯を振り返らせるとともに、再犯をしないこと、生活態度を改め、深夜徘徊をしないことを約束させました。

5 審判

裁判官からは、少年と母親に対し、きつい質問が飛びました。なぜ事件が起こったのか、自分の軽はずみな行為で、多数の人命が失われる可能性があったことなど、論理的に詰めていた印象です。最後にマンションのオーナーに対して謝罪をすることを約束させたことが印象的でした。

審判の結果は、保護観察処分でした。

6 最後に

少年事件を初めて担当し、一番驚いたのは、鑑別所の立地の悪さでした。施設や予算の関係上、全ての施設を駅の近くに作ることはできないとしても、あれほどまで、立地が悪いと、業務に支障が出るため、少年事件を受任したくても、業務量の関係から敬遠せざるを得ない若手が出てくるのではないかと率直に思いました。報酬の上下で事件を選ぶべきではないですが、弁護士も対価を得て生活をしている以上、少年事件を受任することに非常に厳しいものを感じました。

篠原 優太

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