少年付添人日誌弁護士会月報「付添人日誌」より転載したものです。

付添人日誌(30・9月号)

1 はじめに

私が初めて担当いたしました少年事件についてご報告差し上げます。サポート担当の鐘ヶ江聖一先生にバックアップしていただき、付添人活動を行いました。

2 事案の概要

本件は、少年(19歳)が他の少年ら4人とともに、大型商業施設で衣服等の窃盗を行った事案でした。少年は、非行事実当時、既に保護観察処分に付されており、少年院送致の可能性が高かったこと、他の少年らは即、保護観察処分に付されたにもかかわらず、本件少年のみが観護措置を取られたこと、少年が19歳であり、20歳の誕生日が差し迫っていたこと等が、本件事案の特徴として指摘できると思います。

3 付添人活動の内容

(1) 少年との面会

私は、少年に観護措置決定がなされた当日に出動要請を受け、同日、鐘ヶ江先生とともに鑑別所に面会に向かいました。私にとっては初めての少年事件でしたので、直ちに鐘ヶ江先生と審判までのスケジュールを確認し、研修で配布された「少年事件付添人マニュアル」の必要と思われる部分を急いで読んで、面会に及びました。

初めて少年に会った印象は、極度に喋らない、表情がない、というもので、今後どのようにコミュニケーションを取ろうかと思案しましたが、とにかく面会を重ねることにした結果、少年は徐々に事件や生い立ちについて自ら話すようになりました。私は、「なぜ人の物を盗むことが悪いことなんだろう」と少年に何度も問い、少年が自分の言葉で説明できるようになるまで待ちました。結果、少年は、4回目の面会で「人が一生懸命働いて手に入れたものを、その人の気持ちも考えずに楽して手に入れることが悪い」と自分の言葉で表現しました。少年が、事件に対し、反省を少しずつ深めているのかなとその時私は感じました。

(2) 記録の調査及び母親との面会

少年と面会を重ねるとともに、私は、本件にまつわる記録を裁判所で閲覧し、本件の経緯や少年の生い立ちを調査しました。その中で、少年が当時付されていた保護観察処分において、担当保護司との面会をほとんど反故にしていることが判りました。私は、少年の母親と面談した上、少年と母親に対し、保護観察制度の趣旨を説明し、保護司との面会の重要性を理解してもらうよう努めました。また、少年には保護司との面会を必ず実施すること、母親には少年が面会を実施するようスケジュール管理することを約束させました。

(3) 審判に向けての活動

経験のない私は、とにかく関係各者に連絡し調整と説得を試みました。その中で、少年の勤め先の責任者が少年をいつでも快く迎え入れる準備をしていること、裁判官は少年院送致も検討しているが調査官は少年の処分につき私とほぼ同意見であることが判りました。私は、少年の勤め先で本件非行事実に関与している少年らのうち3人が一緒に働いていることが気になり、少年に対し、「職場をいっそのこと変えてみないか」と提言しましたが、少年は、この時だけはきっぱりと「今のところで一生懸命働いて技術を身に付け、迷惑かけた分を返したい」「他の少年らとは今後一切連絡を取らない」「自分の気持ちに嘘はつけない」と答えました。私は、少年の意思が確固としたものだと感じ、職場は変えず、むしろ少年の就労意欲をアピールするという活動方針を取ることにしました。

(4) 審判

第1回目の審判において、少年は補導委託となり、約1週間、障がい者福祉施設でボランティア活動をすることになりました。担当者に状況を確認したところ、少年は積極的に活動に励み、また施設利用者たちから厚い信頼を得ているとのことでした。そして、少年が社会復帰し約2週間が経過した後、第2回目の審判を迎え、少年は結果として新たな保護観察処分に付されました。

(5) 結び

1か月を超える付添人としての活動を終え、振り返ると、本当に自分の活動が適切なものであったか疑問に思うことも多々あります。また、少年が本当に反省を深めたのか、その程度がどのようなものだったか、正直なところ私には判りません。しかし、少年が言った「自分の気持ちに嘘はつけない」との言葉は本当だったのだろうと思います。そして、根拠はありませんが、少年は二度と非行を繰り返すこともないのだろうと思います。結局、少年が審判までに一生懸命自分で考え、そして審判の日に涙を流した結果が、保護観察処分だったのだと、今では思っています。

大友 圭

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