少年付添人日誌弁護士会月報「付添人日誌」より転載したものです。

付添人日誌(20・2月号)

恐喝の自白事件

当番弁護士で出動し、恐喝で勾留されている少年の弁護人になりました。

少年は17歳。中学卒業後、瓦職人として働いていました。約半年前から実家を出て、16歳の内妻と暮らしており、内妻は妊娠4ヶ月になっていました。

事案は、後輩が内妻の妊娠につき祝い金をやると約束したことに乗じ、暴行を加えるなどして金銭を持ってこさせたというものでした。

あまりに若い二人の暮らしは、経済基盤が脆弱で、生活費に事欠く状態でした。少年の身柄拘束により、収入は途絶え、内妻の暮らしも立ち行かなくなりました。産科で定期検診を受けることもできず、食べることにも事欠く状態になりました。打合せにやってきたあどけない内妻の財布には小銭しか入っておらず、バス代もないため家から歩いて来たと言いました。

要保護性の解消

少年の身柄解放と、内妻の生活支援が課題となりました。前者については2号観護措置をとるべきでないとの意見書を提出し裁判官に面談しましたが、観護措置決定がなされてしまいました。後者については児童相談所や区役所に当たりましたが、幸い福祉的対応の前に少年が戻るまで少年と内妻双方の親に援助してもらえることになりました。

審判までの間に、少年が謝罪の手紙を書き、親の協力を得て被害弁償をすませました。少年らの生活を立て直すべく実家に戻るとともに、試験観察でその過程を支えつつ更生の途を確実に歩めるようにすべきとの付添人意見を提出しました。

否認事件の追送致

しかし、少年らの員面調書は、犯行時刻・場所や犯行態様まで詳細に一致し、実況見分に立会して現場指示さえしていました。

少年が、このような調書ができた経緯を話してくれました。共犯少年は少年院を退院して間がなく、再非行が発覚すると厳しい結果が予想されることから、少年に対し、非行が発覚したときは一緒にやったことにして欲しいと依頼していました。一人で捕まるより二人で捕まる方が心強いからというのが理由です。少年は当初否認していましたが、壁の薄い隣の調室で共犯少年が怒鳴られたり机を叩かれたりしているのが聞こえたため、早く調べを終わらせようと思い、警察官の言うとおり二人でやったことにしました。犯行場所は、何度も行ったことのある共犯少年の隣家と聞いていたので、地図も難なく書け、引きあたりもできました。少年には配線を直結してバイクを窃取する技術はないので、過去にやったことがあり想像の及ぶハンドルロック外しや携帯電話で手元を照らすなどの役割を分担した旨供述し、共犯少年は、配線直結など実際にしたことを供述し、すりあわせにより共犯ストーリーができあがっていったものでした。

真実を語った共犯少年

第2回期日、共犯少年は、単独での非行を率直に認め、一緒にやったことにして欲しいと事前に依頼していた事実や警察官が取調室を出たり入ったりして摺り合わせていたことなどを真摯に証言しました。清々しい笑顔の供述でした。

おわりに

本件を通じて、身代わりではなく、共犯になってやることが、身柄拘束の心細さを和らげるという少年らの心情に初めて触れました。

また、事案の軽重にかかわらず、密室における取調べは不適正を招く危険を常に孕んでいることを実感させられました。取調べの可視化を早期に広く実現し、とくに少年については取調べへの弁護人立会を原則とするなどして、取調べを監視し、構造的に冤罪を防止する制度を構築する必要を感じました。

今後は、夫・父親として、成長していく少年の姿を見つめ続けたいと思います。

会員 迫田 学(50期)

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