少年付添人日誌弁護士会月報「付添人日誌」より転載したものです。

付添人日誌(30・7月号)

1 はじめに

私が担当した初めての少年事件についてご報告させていただきます。サポート担当の森俊輔先生と共に付添人活動を行いました。

2 事案の概要

本件は、少年(当時16歳・男性)が、ある日の深夜、友人と共にバイクで蛇行運転等の共同危険行為を行ったという事案でした。また、無免許運転も非行事実に含まれていました。なお、少年は本件非行の約7か月前に同種の非行のため少年院を仮退院したばかりでした。

3 付添人活動の内容

(1) 初回の面会

私は、少年に対する観護措置決定がなされた日に道路交通法違反事件として出動要請を受け、翌日に森先生と共に少年に会いに行きました。少年は面会室に「こんにちは!」という元気な挨拶とともに入ってきたこともあり、とても明るく楽しそうに話をする子だなというのが第一印象でした。その日は非行内容や少年の家族構成・交友関係等基本的な事項について尋ねてみたものの、非行の背景事情についてはいま一つ掴むことができませんでした。

(2) 父親との面談を通じた非行原因の探求

その後、少年の非行の背景事情を探ることを目的のひとつとして、少年の自宅にて父親との面談を行いました。面談を通じて、少年が幼少期に経済的に厳しい家庭で育ち周囲に対し劣等感を抱いていたこと、少年は幼少期に兄や姉と比べ両親から世話をしてもらう機会が少なかったこと等の事情を知りました。そのような背景を知り、私達は少年の非行の原因が幼少期から抱いていた劣等感や両親からの愛情不足から生じる過度の承認欲求等にあるのではないかと考えるに至りました。例えば、少年は「非行により周囲の友人らが盛り上がる」=「少年が認められている」と考え、周囲に認められるために非行を行うといった具合です。

(3) 審判へ向けての諸活動

家庭訪問後も少年との面会を重ねました。少年にも頑張れるものがあれば劣等感や承認欲求は解消されるのではないかと考え、将来の夢を尋ねました。すると少年は介護職に就きたいと答えてくれました。そこで、私は、面会時に介護職に関する本を差し入れ、具体的なプランを少年と一緒に考える等の活動を行いました。次第に少年の夢は具体的なものになりつつありました。

他方、少年は友人の伝手を使い他県で土木の仕事をすることで生活リズムを整える必要があると述べていました。少年なりに考えた非行原因を解消するプランでした。私は少年の考えに一理あるとは思ったのですが、審判まで時間がない中、行先すら不明確というプランでしたので、実現可能性は乏しいと判断しました。もっとも、少年なりに考えたものであることもあり、明確に否定することはできず、可能な限り具体化する方向で準備を進めました。

調査官と情報の交換も行いました。調査官は上記少年のプランについては否定的な様子でした。

その他、少年と交友関係の改善方法について具体的に議論を行う等しました。

(4) 意見書の提出

意見書では少年の非行の原因をまとめ、それが解消されつつあるため、試験観察に付すべきであるとの意見を述べました。なお、その他の機関の意見は第一種少年院送致でした。

(5) 審判当日

普段明るく饒舌な少年が、ガチガチに緊張しているのに気づきました。もっとも、裁判官からの厳しい質問に対しても頑張って答えており、自分で考えてきたことを少年なりに伝えようと努力している姿が印象的でした。

審判の結果は第一種少年院送致でした。その理由としては、少年が反省し目標を持つなど改善傾向であることは評価できるが、本件非行の原因には不良交友や生活の乱れ等前回の非行と共通する点があり、自分の問題点についての把握・理解がまだまだ足りないため特性に応じた個別処遇(両親等では足りない)を行う必要があるというものでした。

4 活動の振り返り

今回の活動では、少年の非行の原因を把握し、その解消に努めたという意味では方針に従った活動を行うことができました。もっとも、環境の改善という観点から見れば、将来の夢へのルートを具体化してあげることが出来なかったことや周囲の監督体制を整えてあげることができなかったことなど反省すべき点は多々あります。今回の活動の反省を活かして、今後の付添人活動に向けて精進してまいろうと思います。

最後に今回の付添人活動を無事終えることができたのは森俊輔先生の的確なご指導によるものであると考えています。この場をお借りして御礼申し上げます。

惠﨑 優成

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