少年付添人日誌弁護士会月報「付添人日誌」より転載したものです。

付添人日誌(29・12月号)

1 はじめに

私が初めて担当した少年事件について、ご報告させていただきます。本件は、付添人サポート研修として、井口夏貴先生のご指導の下、付添人としての活動を行いました。

2 事案の概要

少年の非行事件は、配点時には、知り合いと共謀のうえ、バイクで蛇行運転や赤信号無視等の集団暴走を行ったというものでした。

この集団暴走とは別の日に、バイクを運転中、車道を逆送してきた自転車と出会い頭に衝突し、自転車に乗っていた人を怪我させたという非行事実についても併せて審判の対象となりました。

3 活動内容

(1) 少年との面会

出動要請のあった日に、井口先生とともに接見に行きました。

少年の第一印象は、おとなしそうで、集団暴走をするようには見えませんでした。

初めての接見から、少年が鑑別所に入所するまで、少なくとも2日に1回は接見に行きました。

当初はあまり話してくれませんでしたが、接見を重ねるにつれて少しずつですが会話が続くようになりました。

集団暴走について聞くと、蛇行運転はしていない、暴走するとは思わなかったと述べ、一緒に集団暴走をしていた知り合いとの関係を聞くと、地元の友人や学校の友人ではなく、自身がバイクを買ったことを聞きつけた彼らがSNSで接触してきて、一緒に走るようになったと述べていました。

また、高校の校則でバイトが禁止されていたにもかかわらずバイトをしていたこと、同様にバイクの免許の取得も禁止されていたにもかかわらず取得したことも聞き取りました。

鑑別所に入所してからは、1週間に2回ほどのペースで面会に行きました。

高校から、今回の件や校則違反を理由に退学を求められていたこともあり、少年には、復学したいのか、退学したいのか、自分が今後どうしていきたいのかを考えてもらいました。

(2) 母親との面会

母親との面会では、少年との日頃の接し方について話してもらいました。

少年は末っ子で、両親が基本的に少年の希望するようにさせていたことや、校則違反であることを知りつつ、少年にバイクの免許を取らせ、バイクを購入したことなどを聞き取りました。また、バイトが校則で禁止されていることも知りつつ、バイトを止めるように言わなかったということも聞きました。

両親のそのような少年への接し方が、結果として本件非行の原因の一つになっていると思われること、今後の少年との関わりについて考えてほしいということを伝えました。

4 審判

審判において、少年は、これくらいならいいと思った、今は非常に甘い考えだったと反省していると述べていました。そして、今後については、これからは、ルールには意味があるのだから小さなルールも守っていきたい、まずは生活について自分でルールを作り、それを守ることから始めていきたいと述べていました。

審判の結果は保護観察処分でした。

5 終わりに

今回の集団暴走では、幸い誰も怪我をしませんでしたが、もしも本件が事件にならず、今後も本件の共犯者と交流を続けていれば、いつか人に怪我をさせることになる可能性は低くなかったと思いますし、少年の非行の度合いも進んでいったと思います。そうなる前に、本件の共犯者と接触を断つ機会になったのですから、少年にとって審判は今後の人生の転機となるのではないかと感じました。

今回学んだことを糧として、今後も、少年付添人の活動に取り組んでいきたいと思います。

池田 翔一

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