少年付添人日誌弁護士会月報「付添人日誌」より転載したものです。

付添人日誌(29・6月号)

1 はじめに

私が担当した少年事件について、ご報告させていただきます。本件は、付添人サポート研修として、知名健太郎定信先生のご指導を仰ぎながら、付添人としての活動を行いました。

2 事件の概要

少年は、約3か月の間に、自転車窃盗(以下「(1)事件」といいます。)、スーツ窃盗(以下「(2)事件」といいます。)及び原動機付自転車窃盗(以下「(3)事件」といいます。)の3つの窃盗事件を連続して行っていました。当番付添人として出動した際、少年は(3)事件で逮捕され、その後、観護措置決定を受け、少年鑑別所に入所した翌日でした。

少年は、各非行事実について、全て認めており、(1)と(3)については、被害者に被害品を還付済み、(2)については、被害店舗に謝罪の上、被害品を買い取っており、いずれの非行事実についても、実質的に被害は回復済みでした。

3 付添人としての活動

少年は、少年鑑別所に入所した当初、付添人の面会において、自身が周りに流されやすい性格であり、周囲の悪い友達に誘われ、断れなかったことなどが非行の原因であると述べていました。そのうえで、今後は、友人として付き合う相手を選び、自分の行動に責任を持ち、先のことを考えて行動するようにしたいなどと話しており、一見して反省しているように見えました。しかし、話題が審判のことに及ぶと、どのようにしたら軽い処分となるのか、保護観察処分になる可能性はどれくらいか、などと審判の結果ばかりを気にするような態度も見せていたため、付添人としては、少年が表面的な反省の言葉を述べるに留まらず、自らの問題点を直視させ、自分自身と向き合ってもらえるよう努めることにしました。

少年は、少年鑑別所での生活を通じて、自らの性格や悪い癖(短絡的な行動や、嘘を吐くことなど)について、自分なりに考えるようになりました。また、仕事を休んでまで面会に来てくれる両親に接する中で、これまで自分が両親からしてもらっていたことへの感謝の気持ちを強めていきました。さらに、少年は、今の気持ちを忘れないようにしたいとの思いから、自発的に、出所後の「自分」に宛てた手紙を書いていました。この手紙には、少年鑑別所での生活に後悔せず、むしろ一歩立ち止まって自分自身と向き合えたことで、感謝の気持ちや思いやりの気持ちなど、自分に必要なものを身に付けることができたと記されており、このことからも、少年の考えに大きな変化があったことを実感できました。

4 審判

審判の結果は、調査官意見と同様、保護観察処分でした。

少年が、約4週間という短い時間の中で、自らの問題点を理解し、行動を変える決意をし、さらには、進学という新たな目標を見つけるまでに成長する姿を目の当たりにし、少年の可塑性を思い知ることができました。今回学んだことを糧として、今後とも、少年付添人としての活動に取り組んでまいりたいと思います。

堀向 良介

目次