少年付添人日誌弁護士会月報「付添人日誌」より転載したものです。

付添人日誌(29・2月号)

1 はじめに

先日、指導担当の先生にご指導を頂きながら、初めての少年事件を経験しましたので、その付添人活動についてご報告致します。

2 事案の概要

少年の非行事実は2件ありました。非行事実(1)は原動機付自転車(以下「原付」といいます)を無免許で運転し、かつ、二人乗りしたという事案、非行事実(2)は原付を無免許で運転し、かつ、信号無視(二段階右折)をしたという事案です。非行事実(1)と(2)は約1カ月の間に繰り返し行われていました。

なお、非行事実当時、少年は保護観察中でした。

3 少年に対する活動内容

(1) 少年との面談

少年は、観護措置決定の際、裁判官に対して、反抗的態度を示し、大声で威圧したとのことで、注意して面会して欲しいと事前に連絡がありましたので、初めての少年事件ということもあり、少し緊張していました。

初回の面会では、少年は、観護措置が決まったことに不貞腐れているのか、早く鑑別所から出たいという希望を述べる程度で、少年から事件のことについてはあまり聴けませんでした。

しかし、その後、2回目の面会に行った際、少年は、1回目の面会と様子が打って変わり、普通に話すことができました。少年から話を聴くと、無免許運転等をしたことを反省していること、裁判官に対して、観護措置決定の際に反抗的態度を示したことを謝罪したいこと、その他に学校や仕事のこと、将来の夢のことなど、少年が現在考えていることを色々と話してくれました。

少年は、事件のことについて反省しているような態度でしたが、交通法規に対する規範意識が低いように感じましたので、面会を通じ、少年の内省を深めていくことにしました。

(2) 調査官面談

調査官としては、少年が短期間で無免許運転等を繰り返し行っていたことから、少年の規範意識の低さ、また、少年が今後も原付を所持していくのかという点に関心があるようでした。

そのため、付添人としては、少年に無免許運転等の違法性を考えてもらうとともに、原付の処分意思を確認することにしました。

(3) 審判に向けて

その後は、少年と面会を繰り返し行い、無免許運転等の違法性について、一緒になって考えていきました。そして、徐々にではありますが、少年は、自らの言葉で、無免許運転の違法性について述べることができるようになってきました。また、原付を処分することについて、少年は、当初は消極的でしたが、審判が近づくにつれて、内省が深まったのか、原付を処分することを決意しました。

4 審判

審判では、少年は、裁判官、調査官からの質問に対して、自身の言葉で、事件を起こしてしまった経緯、無免許運転の違法性、原付を処分することなどについて、ひとつひとつ語ってくれました。審判で語る少年の姿は、これまでの面会からでは想像もつかないほど立派で堂々としていました。また、審判の場で、少年は、裁判官に対して、観護措置決定の際の自らの行動のことについて、きちんと謝罪もできました。

そして、審判結果は、保護観察処分でした。

5 最後に

今回、私は、初めて付添人活動をしましたが、短期間で見違えるほどの受け答えができるようになった少年を見て、少年の可能性というのは無限に広がっているということが実感できました。今後の少年事件でも、少年の可能性を信じ、少年の更生の一助になれるよう励んでいきたいと思います。

最後になりましたが、ご指導をして頂きました吉野隆二郎先生には、この場を借りて御礼申し上げます。

牟田 遼介

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