福岡県弁護士会コラム(会内広報誌「月報」より)

2023年1月号 月報

法律相談センターだより 福岡県法律相談連絡協議会総会、及び、法律相談合同研修会の報告

月報記事

法律相談センター運営委員会委員 小山 明輝(60期)
法律相談センター運営委員会委員 塗木 麻美(62期)
法律相談センター運営委員会委員 吉田 星一(63期)
北九州部会法律相談センター運営委員会委員 後藤 啓太(71期)

第1「福岡県法律相談連絡協議会」とは

「福岡県法律相談連絡協議会」は、1997年(平成9年)、福岡県弁護士会、福岡県、福岡市、各自治体、社会福祉協議会が呼びかけ人となり、設立されました。設立趣旨には、「各相談機関が連携を取りながら、より早く、より適切に助言し、問題の解決まで住民を導くことができるトータルなシステムづくりを行い、相談機関同士の相互協力によって一層充実した相談サービスを提供すること」とあります。その目的を達成するための重要な活動として、毎年、県内4地区において、毎年研修会を開催しています。

また、協議会は3年に1度総会を開くこと、その際に役員を選任することとされています。今年度は総会開催年度であり、福岡県弁護士会館大ホールにて総会が開催されました。

以下、福岡での総会の報告をしたうえで、北九州、筑後、筑豊の各研修会について、開催された日時の順に報告します。

第2 福岡会場(塗木)
1 はじめに

11月10日(木)、に福岡県弁護士会館(2階大ホール)で、福岡県法律相談連絡協議会の総会が3年ぶりに開催されました。総会には福岡県庁、福岡県下の各市役所・区役所、法律相談を共催している各団体など約30名の参加申込がありました(当日参加者23名)。

当日、参加されたのは23名でしたが、開催された福岡県法律相談合同研修会(福岡地区)に参加させていただきました(司会進行:田中広樹業務事務局長)。

総会は田中業務事務局長の進行により弁護士会の野田部会長の挨拶で開会し、協議会会長の選任手続において、上田英友現会長が再任されました(2期目)。上田会長は、昨今の法律相談を巡る状況としてコロナ禍への対応があり、各自治体の工夫の共有などが検討課題であると挨拶されました。

福岡県弁護士会 法律相談センターだより 福岡県法律相談連絡協議会総会、及び、法律相談合同研修会の報告
2 講演の内容

続いて、弓幸子弁護士による「遺言・相続法に関する相談業務のポイント」についての講演がありました。相続や遺言の基礎知識から、改正法の説明など、パターン別にコンパクトにまとめていただきました。参加者はほぼ全員が「役に立った」と回答するなど大好評でした。

次に、司法書士・行政書士による相談と弁護士による法律相談について、非弁活動監視等委員会の向原栄太朗弁護士から解説、報告がありました。具体例を挙げての内容で、参加者からは「初めて知りました」「参考になりました」という声がありました。また、相談主催側としてどう対応すればいいかを知りたいという意見もありました。

福岡県弁護士会 法律相談センターだより 福岡県法律相談連絡協議会総会、及び、法律相談合同研修会の報告
3 意見交換

3年ぶりの総会ということで、相談主催者としての悩みなどを共有する機会をもうけました。意見が出ないかと心配していましたが、具体的な相談への対応や、他の自治体の工夫を知りたいなど活発な議論となり、充実したものとなりました。

4 おわりに

リアルでの総会が3年ぶりに開催されたことは喜ばしいことでした。3年後も無事に開催できることを祈っています。ご協力を頂いた皆様ありがとうございました。

第3 北九州会場(後藤)
1 はじめに

令和4年10月6日、ウェル戸畑において、法律相談合同研修会が開催されましたのでご報告致します。

本年度はコロナ禍ということもあってか、例年よりも少ない6名の参加にとどまりました。

2 第1部 相続関係について

小倉知子部会長による開会挨拶の後、見越あけみ会員による講演「相続関係について」が始まりました。

同講演では、相続が起きた際に一般的に生じる問題について述べた後、見越会員が実際に体験した事例を基に、どのような対応を行ったかについて解説がされました。

北九州市では少子高齢化が著しく、相続問題は今後増加すると予想されていることから、参加者の皆様は熱心に見越会員の話を聞いていました。

3 第2部 債務整理について

見越会員の講演終了後、佐藤哲也会員による講演「債務整理について」が開始されました。

同講演では、佐藤会員が経験した事例に基づいて、この事例の場合にはどのような対応方法があるかという視点で解説がされました。

新型コロナウイルスの特例など、細かな点についても触れられており、充実した内容の解説となっておりました。

福岡県弁護士会 法律相談センターだより 福岡県法律相談連絡協議会総会、及び、法律相談合同研修会の報告
4 来年度に向けて

参加者のアンケートも好評であり、来年度も是非受講したいとの声が多かったです。役所の方々は、市民の方々の最初窓口となる可能性が高く、彼らのニーズに応えた講演をこれからも行っていこうと思います。

福岡県弁護士会 法律相談センターだより 福岡県法律相談連絡協議会総会、及び、法律相談合同研修会の報告
第4 筑後会場(吉田)
1 はじめに

令和4年10月25日、久留米シティプラザ(久留米市)において、福岡県法律相談合同研修会(筑後地区)が開催されました。

第1部では、竹田寛会員(筑後部会)に「相続・遺言の基礎知識」というテーマでご講演をいただき、第2部では参加者の皆様と当会の弁護士で意見交換会を実施致しました。

当日は、筑後地域の各自治体・社会福祉協議会から、約30名の方にご参加いただき、筑後部会からも弁護士11名が参加しました。

2 講演について

相続・遺言関連については、参加者への事前アンケートでも多くの相談が寄せられており、日ごろ、市民の相談を受けられている相談員の皆さんとって、非常に関心の高い分野であることが伺えました。

講演においては、相続財産の範囲(借金や生命保険金は相続財産に入るのか)や、相続人の範囲・順位・相続割合、遺言に関する方式の違い等、相続・遺言に関する基本的な知識を中心に、お話をしていただきました。

弁護士にとっては基本中の基本である知識でしたが、相談員の皆さんにとっては体系的に勉強する機会はなかなかないと思われ、事後のアンケートにおいても、「相続、遺言の基礎的知識はとても具体的に講演いただき勉強になりました」とか、「分かり易くて大変参考になりました」など、大変好評でした。

福岡県弁護士会 法律相談センターだより 福岡県法律相談連絡協議会総会、及び、法律相談合同研修会の報告
3 意見交換会について

意見交換会では、会場の前方に弁護士がずらりと並び、会場の参加者から質問や意見を受け、弁護士がこれに回答・コメントするという形式で実施されました。

会場からは、前半の講演に関連する質問だけでなく、日常の業務の中で生じている問題点や疑問点に関する質問等も出されました。例年、様々な内容の質問が出されますが、本年度は、身寄りがない高齢者や障害者に関する質問が多いなという印象でした。

当会会員からは、質問に対する回答のほか、参照可能な資料、その他実際の取り扱い事例の紹介がなされ、有意義な意見交換となりました。

4 最後に

余談ですが、この意見交換会は私自身にとっても非常に勉強になっています。会場からは、相談員の皆さんが処理に困るような困難な事例に関する質問がいくつも出されます。私一人の考えではなかなかいいアイデアが浮かばないような質問でも、他の弁護士から経験に裏打ちされたアドバイスが出されると、私も(「そういう回答が当然だよね」という顔をしつつ)内心では「なるほど~」とメモを取っています。

意見交換会は、そのとき出された質問にアドリブで回答するので、弁護士側にも一定の緊張感がありますが、これがメインイベントでもありますので、これからも継続していけたらと思います。

第5 筑豊会場(小山)
1 概要・参加者など

令和4年10月31日、飯塚市役所の多目的ホールをお借りして、福岡県法律相談合同研修(筑豊地区)を開催しました。

本年度は、近年の相続に関する法改正をテーマとして、当部会の古賀健矢部会員(70期)に「相続関連相談のポイント」というテーマで講演頂きました。

当日は、筑豊地域内の自治体職員さん及び社会福祉協議会各支所の職員さん計15名にご参加いただきました。

2 講演内容

以下、古賀健矢部会員によるご説明のポイントです。

  1. 自筆証書遺言について
    1. 方式が緩和され、財産目録については自筆不要となったことと、その留意点(全ページに署名・押印を要するなど)など。
    2. 法務局における自筆証書遺言保管制度の紹介。
  2. 遺留分制度の見直し
    前提知識として遺留分制度の概要説明と、金銭債権化(遺留分減殺請求→遺留分侵害額請求)や支払猶予制度の新設など。
  3. 配偶者居住権の概要、短期居住権との異同、及びそれぞれの成立要件など。
  4. その他相続関連の問題として
    • 相続財産管理義務の明確化
    • 所有者不明土地問題を解消・予防するための法改正について
    1. 相続登記の申請が義務化され、令和6年4月1日から施行されること。
    2. 来年4月1日から施行される所有者不明土地・建物の管理制度の紹介(「人単位」から「物(不動産)単位」の管理)。
    3. 続等により取得した土地の国庫帰属制度の紹介と課題ないし問題点について(建物がある土地や抵当権設定土地が対象とならない、土地が共有の場合、共有者全員での申請を要するなど)。
3 まとめに代えて:参加者の反応・アンケート結果など

質疑応答では、言葉の定義や土地の国庫帰属制度に関する自治体の役割など一般的な質問をお受けするに留まりましたが、研修会終了後、参加者の方々がその場に居合わせた部会員を呼び止め、個々に質問されていました。アンケート結果も、多くの参加者から「役に立った」とのご回答を頂き、好評だったと受け止めています。

他方、もう少し具体例を挙げてほしい、ホワイトボードや図示など視覚化してほしいという趣旨のご要望もお受けしましたので、次年度以降の課題として引き継ぎたいと考えています。

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