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「消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律の施行に伴う政令(案)、内閣府令(案)、ガイドライン(案)等に関する意見募集」に対する意見

カテゴリー:意見

消費者庁消費者制度課 御中

福岡県弁護士会 会長  斉 藤 芳 朗

福岡県弁護士会は、標記に関して、消費者委員会での協議を経て、以下のような意見をまとめました。

よって、福岡県弁護士会として、本意見書を提出いたします。

【はじめに】

1 現在、貴庁におかれては、平成25年12月の「消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律」(平成25年法律第96号)の公布に伴い、同法の施行に向けた準備を進めておられるところ、集団的消費者被害回復に係る訴訟制度においては、消費者と事業者との間の情報の質及び量並びに交渉力に格差があることで消費者が自らその回復を図ることには困難を伴う場合があることを前提に、特定適格消費者団体が被害回復裁判手続を追行せしめ、消費者の利益の擁護を図り、もって国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与することが目的とされている(消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律(以下「消費者裁判特例法」という。)1条参照)。

すなわち、消費者と事業者との間の情報の質及び量並びに交渉力の格差を背景として、日々、消費者被害は生じているのであり、消費者被害を可及的速やかに回復されるために、本訴訟制度においては、消費者の財産的被害が円滑に回復されることが求められているというべきである。

2 そしてそのためには、本訴訟制度に関する手続きの担い手である特定適格消費者団体の継続的かつ機動的活動が担保される仕組みになっており、かつ、本訴訟制度自体も、違法収益の返還のために効率的なものとなっていなければならない。制度設計にあっては、本訴訟制度が上記の目的のために定められたものであることを常に念頭に置き、釈根灌枝になることのないよう、慎重に考える必要がある。

(1) 現在の適格消費者団体の多くは、わずかな財政基盤の中で、有志の無償の協力の下にその活動を維持していると聞いているところ、特定適格消費者団体においても、その状況に変わるところはないと思料する。

特定適格消費者団体の継続的かつ機動的活動を担保する仕組みを構築するという視点が疎かになれば、それは、特定適格消費者団体の活動を阻害し、眼前の消費者被害を放置して、悪徳業者の違法収益を助長するという結果をもたらすのであり、そのような制度は改められなければならない。

(2) また、本訴訟制度は、本来であれば個別の民事訴訟に馴染みにくい少額案件について、同様の被害を受けた消費者が多数参加することを促すことで、その回復を図る制度である。

そのためには、本訴訟制度が、消費者から見て参加しやすい制度であることはもちろん、特定適格消費者団体から見ても取り組みやすいものとなっていなければならない。

この点についての視点が疎かになれば、上記(1)と同じく、それは、特定適格消費者団体の活動を阻害し、眼前の消費者被害を放置して、悪徳業者の違法収益を助長するという結果をもたらすのであり、そのような制度は改められなければならない。

3 以上の視点から見るに、「特定適格消費者団体の認定、監督等に関するガイドライン」(以下「本ガイドライン」という。)には、以下の問題点があり、速やかに見直されるべきである。

【本ガイドライン 2(2)イ「情報提供義務の実施の方法」について】

[意見]

被害回復裁判手続に関する業務に付随する対象消費者に対する情報の提供に係る業務を適正に遂行するための体制の整備について、消費者裁判特例法82条の規定に基づく情報の提供に当たり、考慮すべき事柄から、「被害を受けたと考えられる消費者の範囲」、「被害金額の多寡」、「今後の被害拡大のおそれ」、「当該事業者の対応状況」、「公表されることにより事業者に与える影響」は、削除されるべきである。

[理由]

特定適格消費者団体は、被害回復裁判手続に関する業務に付随して対象消費者に対する情報の提供に係る業務を担うものとされており(消費者裁判特例法65条)、また、対象消費者の財産的被害の回復に資するため、対象消費者に対し、共通義務確認の訴えを提起したこと、共通義務確認訴訟の確定判決の内容その他必要な情報を提供するよう努めなければならないとされている(消費者裁判特例法82条)。

ここで、消費者裁判特例法の目的規定(同法1条)からも、情報の質及び量の格差をできる限り解消することが求められているというべきであり、情報提供に当たっては、できる限り広く、消費者において、消費者被害が生じている事実に触れる機会が得られることが肝要であるというべきである。

したがって、消費者被害が生じていることは、原則として消費者に知らしめられるべきである。しかるに、「被害を受けたと考えられる消費者の範囲」、「被害金額の多寡」、「今後の被害拡大のおそれ」、「当該事業者の対応状況」、「公表されることにより事業者に与える影響」等を考慮して、情報提供について抑制的であらしめることは、上記目的に悖るものであり、許容されない。少なくとも、特定適格消費者団体の組織作りにあたって敢えて考慮すべき事柄であるとは考えられないものである。

よって、上記のとおり、修正を求めるものである。

【本ガイドライン 2(2)エ「金銭その他の財産の管理の方法」について】

[意見]

1 被害回復裁判手続に関する業務を適正に遂行するための体制の整備について、対象消費者宛ての金銭を受領した場合の対象消費者への通知については、対象消費者と特定適格消費者団体との合意に任されるべきことであり、同(エ)の定めについては削除されるべきである。

2 被害回復裁判手続に関する業務を適正に遂行するための体制の整備について、同(カ)金銭管理責任者の設置については、第二文の定めは削除されるべきである。

[理由]

1 【はじめに】の項でも触れたとおり、本訴訟制度を適切に運営するためには、特定適格消費者団体の継続的かつ機動的活動が担保される仕組みになっていなければならない。

そして、対象消費者宛ての金銭については、少額の金銭が回収される場合や、複数回に分けて回収される場合がありうるのであり、これは、事件ごとに種々ありうる。

少額の金銭が回収される場合や、複数回に分けて回収されるような場合にまで、すべて対象消費者への遅滞ない通知を予め義務付けてしまえば、通知のために過分の費用を費消する結果となってしまいかねず、特定適格消費者団体の活動の継続性を損なうことにもなりかねないと危惧する。

したがって、対象消費者宛ての金銭を受領した場合の対象消費者への通知については、個別に、事件の規模等を考慮しながら、対象消費者と特定適格消費者団体との間における合意に任せるのが合理的であり、本ガイドライン等により、拘束すべき事柄ではないというべきである。

2 また、金銭管理責任者についても同様の問題がある。

すなわち、本ガイドラインにおいては、「公認会計士、税理士、破産管財人等の実務に精通した弁護士、企業会計に従事した経歴がある者など金銭管理を適切にすることができる者が任命される必要がある」と規定されているが、金銭管理を適切にすることができる者は、必ずしも、「公認会計士、税理士、破産管財人等の実務に精通した弁護士」に限られるものではない。

本ガイドラインが、「企業会計に従事した経歴がある者など」をその後に併記しているのもその趣旨であると考えられる。

しかし、上記の有資格者を例示として挙げることにより、「企業会計に従事した経歴がある者など」についても、上記の有資格者と同等の知識経験を有する者を任命する必要があると理解される可能性がある。

そうすると、特定適格団体において、これらの者を任命するために過分の費用を費消する結果となってしまいかねず、特定適格消費者団体の活動の継続性を損なうことにもなりかねないと危惧する。

3 よって、上記のとおり、修正を求めるものである。

【本ガイドライン 2(6)イ「簡易確定手続きに関する報酬及び費用の基準の考え方」について】

[意見]

同(イ)の少なくとも回収額の50%超を消費者の取戻分とする必要があるとの部分については、削除されるべきである。

[理由]

本ガイドラインにおいては、「特定適格消費者団体が少額事件に対して積極的に取り組む必要がある」(本ガイドライン 2(6)ア)とされている。本ガイドラインにおいては、これは特定適格団体が「業務を効率化させる」(同)ことで実現できると考えられているようであるが、本来的には、特定適格消費者団体が、少額事件に対しても積極的に、安心して取り組めるような制度設計がなされることが前提となっていなければならない。

しかしながら、本ガイドラインにおいては、本意見で述べてきた点を見ても明らかなとおり、むしろ特定適格消費者団体においては、その体制を維持し、本訴訟制度を担うために過分の費用を支出しなければならない制度となっており、その活動を継続的に行い、また、本訴訟制度の追行に要する費用を削減する余地は限りなく狭められてしまっている。

そのうえ、本ガイドラインの上記の定めは、回収額の50%超を消費者の取戻分とする必要があるとしている。しかも、債権届出より後の手続きに要する費用については、実費であっても、消費者に負担を求めることはできないと読める。そうすると、たとえば、本ガイドラインによれば、30人の被害者が見込まれる事件について一人当たり5000円の回収を目指すような場合において、首尾よく回収されれば各消費者に2500円以上を交付することになる。

この場合、各消費者に2500円以上を返金するためには、共通義務確認訴訟を追行する中での費用(弁護士費用を含む。)を7万5000円以下に抑えられなければ、特定適格消費者団体の資産を取り崩すことになる。少額事件に積極的に取り組む特定適格消費者団体ほど、業務を効率化できない中で、乏しい財政基盤をさらに危うくしていくことになりかねず、延いては本訴訟制度が機能不全に陥ってしまうことが強く危惧されるのである。

これまで、多数の消費者被害が救済されてきた背景には、多数の弁護士等が無償で尽力をしてきたという経過がある。しかしこれは、消費者被害の救済に努める弁護士においては、一方で多数の日常業務をこなしているからこそ、特定の事件に限って無償(あるいは限りなく無償に近い僅少な対価)で行うことができたに過ぎない。特定適格消費者団体は、専ら消費者被害の救済を目的とする団体であり、継続性が求められるのであって、そもそも弁護士が個別に消費者被害に関わるのとは大きく様相を異にするのであるから、特定適格消費者団体の無償活動をもって制度を運用しようとするのは、前提を誤っていると言わざるを得ない。

よって、上記のとおり、修正を求めるものである。

【本ガイドライン 4(5)「授権契約の拒絶及び解除」について】

[意見]

授権をする者あるいは授権をした者が、特定適格消費者団体からの問い合わせに適切に回答しない場合、及び、授権をする者あるいは授権をした者の判断能力が十分でない場合も、消費者裁判特例法33条1項、2項の「やむを得ない理由」に含めるべきである。

[理由]

1 消費者裁判特例法33条1項、2項においては、「やむを得ない理由」がある場合に限って、簡易確定手続授権契約の締結を拒絶でき、又は解除できるとしているところ、授権をする者が、特定適格消費者団体からの問い合わせに適切に回答しない場合においても、特定適格消費者団体としては、手続きの追行に支障を来すのであるから、上記の授権契約の締結を拒絶できる「やむを得ない理由」に含まれるとするべきである。

また、授権をした者が、特定適格消費者団体からの問い合わせに適切に回答しない場合においても、特定適格消費者団体において、手続きの追行に支障を来すのであるから、上記の授権契約を解除できる「やむを得ない理由」に含まれるとするべきである。

2 加えて、授権をする者、あるいは授権をした者の判断能力が危ぶまれる場合には、特定適格消費者団体において、手続きの追行に支障を来すことが考えられるのであるから、上記1と同様に考えるべきである。

3 よって、上記のとおり、修正を求めるものである。

【本ガイドライン 5(4)「報酬及び費用等についての監督」について】

[意見]

事件の選定状況については監督対象から除外されるべきである。仮に,事件の選定状況について監督をするのであれば,事後的な監督ではなく,事前に特定消費者団体からの問い合わせに対して,貴庁が,事件の選定が適切か否かを回答することとされるべきである。

[理由]

そもそも、本訴訟制度において、特定適格消費者団体は、まず、被害者からの相談等を契機に、消費者被害が生じていることを把握し、次に、その事件について必要な資料を収集し、当該事業者の用いる約款等にどのような法的問題があるのかを検討し、そして、その事業者が、違法収益の任意の返還等に応じなかった場合に、訴訟を提起して解決を図るというのが一般的な手続きの進行になると考えられる。しかも、特定適格消費者団体が消費者から報酬を得ることができるのは、共通義務確認訴訟で勝訴した(あるいは勝訴的な解決を得た)場合のみである。

このような一連の手続きを前提として、特定適格消費者団体が「過剰な報酬を目的として恣意的な事件の選定」をする余地は、限りなく少ないというべきである。

すなわち、仮に特定適格消費者団体が「過剰な報酬を目的として恣意的な事件の選定」をしようと試みたとしても、事件の把握から訴訟の提起に至るまで、そもそも勝訴に至るだけの資料を集められるかも不確定であり、また、事業者が任意に被害回復措置を講じる可能性もある。この場合には、特定適格消費者団体が報酬を得る機会はない。事件の把握から共通義務確認訴訟の終結までに、事業者が支払い能力を失う可能性もある。この場合にも特定適格消費者団体が報酬を得る術はない。

このように、仮に特定適格消費者団体が「過剰な報酬を目的として恣意的な事件の選定」をしようと試みたとしても、それが奏功する保証はないのである。

他方で、事件の選定状況について消費者庁から監督されるとした場合、特定適格消費者団体において、過度に萎縮的な効果をもたらし、結果として、被害回復をためらうことになってしまうおそれがある。

たとえば、偶さか、当該特定適格消費者団体において、良好な解決を得た事件が続いた場合に、新たに把握した事件についても回収の見込みがありそうだと判断したときに、当該事業者に対して被害の回復を求めることが、「過剰な報酬を目的として恣意的な事件の選定」を行っているとの誹りを受けることになると危惧して、その消費者被害を見過ごすことは、本訴訟制度の目的との関係で背理以外の何物でもない。

【はじめに】の項においても指摘したとおり、本訴訟制度は、特定適格消費者団体が、積極的に、かつ、安心して取り組めるような制度になっていなければならないところ、事件の選定状況について消費者庁が監督をすることは、特定適格消費者団体において、過度に萎縮的な効果をもたらすものであるから、見直されなければならない。

よって、上記のとおり、修正を求めるものである。

【最後に】

繰り返し述べてきたとおり、特定適格消費者団体が、積極的に、かつ、安心して取り組めるような制度が策定されることが求められるところ、特定適格消費者団体が被害回復業務に専念できるよう、その団体を維持し、その活動を充実したものにすることについては、財政支援をすることが必要不可欠である。

したがって、これまで述べてきたことに加えて、特定適格消費者団体の必要性を踏まえ、具体的な財政支援が行われることを求める。

商品先物取引法における不招請勧誘禁止緩和に抗議する会長声明

カテゴリー:声明

経済産業省及び農林水産省は、2015年(平成27年)1月23日、商品先物取引法施行規則の一部を改正する省令(以下「本省令」という。)を定め、商品先物取引について不招請勧誘の禁止規定を緩和することを公表した。

本省令は、当初の公表案を若干修正し、同規則第102条の2を改正して、ハイリスク取引の経験者に対する勧誘以外に、顧客が65歳未満で、年収800万円以上又は金融資産2000万円以上を有する者について、顧客の理解度を確認し、投資上限額を設定するなどの要件を満たした場合に、訪問や電話勧誘を許容する例外規定を盛り込んでいる。

この内容は、一定の年齢や一定の年収又は金融資産を要件としているものの、その要件を満たすかどうかの確認が電話または訪問によって行われることから、結果として、電話や訪問による勧誘を無制約に許容することになる。これでは法律が禁止した不招請勧誘を解禁するに等しく、このような内容を省令で定めることは法律の委任の範囲を超えて違法なものといわざるを得ない。

また、本省令は、要件確認の方法として、顧客に対し、年収や金融資産の申告書面を差し入れさせたり、書面による問題に回答させて理解度確認を行う等の手法を示しているが、いずれも業者が顧客を誘導して事実と異なる申告をさせたり、答えを誘導するなどの行為が蔓延してきたところであって、これらの手法が委託者保護のために十分機能するとは到底いえない。

当会は、2013年(平成25年)11月20日付けで、消費者保護の観点から商品先物取引における不招請勧誘禁止の撤廃には強く反対するとの会長声明を出していた。その後、全国のすべての単位会が不招請勧誘禁止の撤廃に反対する会長声明などを表明した。このような異例ともいえる事態のなかで、本省令は、法律を改正しないままに、不招請勧誘の禁止規定の原則と例外を逆転させるものであって、消費者保護の観点から許容することができず、また、法律の委任の範囲を超えて違法であるから、直ちに改廃し、このまま施行することのないよう強く求めるものである。

2015年(平成27年)3月26日
福岡県弁護士会 会長 三浦邦俊

司法予算の拡大を求める会長声明

カテゴリー:声明

1 我が国の司法予算(裁判所関係予算)は、長年にわたって低い水準にあり、国の一般会計予算比でわずか0.3%台で推移している。諸外国と比較しても、国家予算に占める割合が著しく低いと言わざるを得ない。平成26年度の司法予算額は約3111億円(うち人件費2599億円、物件費512億円)、平成27年度のそれは約3131億円(うち人件費2628億円、物件費503億円)である。
裁判所は国の三権の一翼を担い、様々な紛争を公平かつ適正に解決する機能とともに、正義を実現し、少数者・弱者の権利擁護の最後の砦としての役割を果たす大切な組織である。紛争を解決する、権利の侵害から救済する、違法な行為から身体や財産を守るという司法の役割を十分に発揮するためには司法予算の拡大が不可欠である。
今後、刑事・少年、民事のいずれの分野でも法的扶助の抜本的拡充が必要であり、裁判官の大幅増員や裁判所支部の充実などの司法基盤整備を進めるには、司法予算を現状よりも大幅に拡大する必要がある。

2 この点は、2001年(平成13年)6月の司法制度改革審議会最終意見書においても、「本改革の実現には、これに必要とされる人員・予算の確保が不可欠であり、厳しい財政事情の中にあって相当程度の負担を伴うものであるが、政府におかれては、・・・・・・大胆かつ積極的な措置を講じられるよう、強く要望」するとされており、さらに衆議院や参議院法務委員会も同年11月、「政府は、司法制度改革を実効あるものとするために、……特段(ないし万全)の予算措置を行うように努めること」との附帯決議をしているが、これが実行されているとは、到底、評価出来ない状態にある。

3 福岡県においては、福岡高等・地方・簡易裁判所(福岡市中央区城内)や福岡家庭裁判所(同区大手門)、福岡簡裁石城町分室(同市博多区石城町)を統合し、福岡市中央区六本松に移転集約化しようとしているところ、当会は、家庭裁判所については、高等裁判所及び地方裁判所と家庭裁判所とを同一の庁舎内に併設することには重大な問題があると指摘してきた。
つまり、基本的に公開を原則とする高等裁判所及び地方裁判所で取り扱われる民事事件や成人の刑事事件と、プライバシー保護の観点からの配慮が強く必要とされる少年事件や家事事件、なかんずくプライバシー保護に加えて少年の更生の観点が必要な少年事件は、別の施設であるのが原則であり、実際、これまで家庭裁判所は、高等裁判所及び地方裁判所とは別施設とされてきたのであり、裁判所自らがそのような原則を放擲されることは問題だと指摘してきた。
しかし、裁判所は、家庭裁判所について別の庁舎とすることは困難であるとするのみならず、同一庁舎とした場合の家庭裁判所エリアの独立性の確保ということについてさえ、独立した出入口やエレベーターを設けるなどして構造的に分離独立させることをせず、来訪者のプライバシーの保護や家庭裁判所としての平穏な雰囲気を作り出せる構造を採用しようとしない。このため、本年1月から高等裁判所庁舎で実施されているような来場者に対する手荷物検査が、家庭裁判所の来場者にも一律に実施されることになりかねないとの懸念を払しょくできない。

4 その原因の一つは、総事業費約180億円といわれる裁判所移転関係費につき、現在の大手門の家庭裁判所の敷地を売却することで費用を捻出するという財政上の制約にあると思われるが、仮に財政的な理由から、少年の心理的な安定の要請や家族間の紛争を解決する機関として平穏な雰囲気が求められている家庭裁判所を統合して移転するというのであれば、それは司法の不当な矮小化である。今後、各地において、このような経済的意味での施設の統廃合が進行することを強く懸念する。
そもそも司法の人的、物的基盤の脆弱さは、圧倒的に少ない司法関係予算に問題があると言わざるを得ず、この点が、国民の裁判を受ける権利に少なくない悪影響を及ぼしていることは、明らかである。よって、最高裁判所は、司法制度基盤の人的、物的基盤整備のために、財務省に対し、相応な予算を組むように強く求めるべきであって、政府、財務省は、最高裁判所の要求に応じ必要な予算措置をとるべきである。

5 国民の裁判を受ける権利を実質的に保障するためには、司法の役割を十分に発揮させるための人的、物的基盤の整備が必要であることは明らかである。当会は、家庭裁判所の統合問題に端を発して、国民の目線からは、司法予算の拡大をおこなうことが必要不可欠であることを訴えるために本声明を発するものである。

2015年(平成27年)3月11日
福岡県弁護士会
会  長  三 浦 邦 俊

「消費者安全法改正に伴う関係内閣府令(案)及びガイドライン(案)」に関する意見書

カテゴリー:意見

2015年(平成27年)2月10日
福岡県弁護士会 会長 三浦邦俊

第1 意見の趣旨

1 消費者安全法改正に伴う関係内閣府令案について

(1) 消費者安全法施行規則(以下「施行規則」という。)第7条第1項第1号後段及び同第2項第1号後段において,それぞれ「特定非営利活動促進法第2条第2項に規定する特定非営利活動法人若しくは一般財団法人その他都道府県知事が適当と認める者であること(但し営利団体は除く)」,「特定非営利活動促進法第2条第2項に規定する特定非営利活動法人若しくは一般財団法人その他市町村長が適当と認める者であること(但し営利団体は除く)」とする内閣府令にすべきである。

(2) 施行規則第7条第1項第1号前段及び第2項前段は,「委託を受ける事務を消費者の権利の尊重及びその自立の支援の観点からみて公正かつ中立に実施できるものであって」とする内閣府令にするべきである。

 地方公共団体が消費生活相談事務を委託する場合,内閣府令において,地方公共団体内に受託者に関する苦情窓口を設置することを義務付けるべきである。

 地方公共団体が消費生活相談事務を委託する場合,内閣府令において,都道府県及び市町村に対し,消費者が相談するに先立ち,受託者が相談を受けること及び受託者に関する苦情窓口を委託者である地方自治体が受け付けていることを周知する義務を負わせるべきである。

 地方公共団体による受託者への適切な監督・監視について,消費生活相談事務を委託する場合,内閣府令において,都道府県及び市町村は,消費生活審議会等を設置し,事務の委託について,審議を経ることを義務付けるべきである。

 改正消費者安全法の実施に係る地方消費者行政ガイドライン(案)(以下「ガイドライン案」という。)Ⅱ1.(1)エ「消費者生活相談等の事務の委託」について

(1) 以下の趣旨の記載を加えるべきである。

施行規則第7条第1項第1号及び第2項第1号の基準に適合するか否かの地方自治体の判断に際しては,以下の点に留意し,実施すべきである。

  • ・法人の目的ないし活動方針に鑑み,消費者トラブルに直接的な利害関係を有する者又は有する可能性がある者であるかどうか。
  • ・過去の活動実績が消費者の権利の尊重及びその自立支援に資する者であったかどうか。
  • ・積極的にあっせんの処理を行う意思があり,かつ態勢が整っているかどうか。
  • ・委託先の選定理由を明示すること

(2) 本文中「効果的かつ効率的に事務を実施できるといった効果が期待される一方で」を削除すべきである。

(3) 消費生活相談等の事務の委託により期待される効果と問題点(13ページ)につき「(1)事務の民間委託により期待される効果」を削除すべきである。

(4) 消費生活相談等の事務の民間への委託の際の留意点(14ページ以下)につき,「(1)事務の実施に関して」において,受託団体の責任者を通じた連絡調整しか許されないとの誤解が生じない記述とするべきである。また,受託者の監視につき,利益相反の有無及び自治体との連携等,具体的な監視項目を明示すべきである。

(5) 消費生活相談等の事務の民間への委託の際の留意点につき,「(4)消費生活相談等により得られた情報の活用に関して」において,受託者が,消費生活相談事務により得られた情報を自らの業務のために利用することは,地方公共団体の了解があったとしても認めるべきではない。

第2 意見の理由

1 意見の趣旨1(1)について

施行規則第7条第1項第1号後段及び同第2項第1号後段では,団体の属性に関し,「特定非営利活動促進法第2条第2項に規定する特定非営利活動法人若しくは一般財団法人」という例示をしておきながら,「その他」として,特段何らの制限もなく,地方公共団体の首長が適当と認める者を含めており,このままでは,団体の属性に着目した基準が骨抜きにされるおそれがある。そうならないためには,地方公共団体の首長が適当と認める者の範囲について,例示の趣旨に沿うように制限を設け,これを明記しておくべきである。

そして,その範囲に関してであるが,営利団体を除外すべきと考える。

当弁護士会は,福岡市に対し,2014年(平成26年)3月12日付「消費生活相談業務についての意見書」において,消費生活相談業務の委託先については,消費生活相談業務の趣旨を理解するとともに,十分な専門知識を有し,公正かつ信頼性のある立場において業務を執行することのできる団体に限定すべきであって,少なくとも営利団体への業務委託は不適切であり,改善すべきである旨の意見を述べているところであり,施行規則第7条第1項及び第2項の基準においても,上記意見書の趣旨と同様,営利団体を委託対象から除外すべきと考える。

上記意見書でも述べているが,除外すべき理由は,次のとおりである。

消費生活相談等の事務は,本来的に収益事業として成り立つ性質のものではない。にもかかわらず,営利団体がこれを受託しようとする場合には,営利を目的とする以上,何らかの利益が得られることを前提としているはずであるが,業務の性質上,消費者からの利益は想定できない。そうすると,その利益は事業者に由来するものといわざるをえない。消費者の立場からすれば,このように事業者に由来する利益が背景に存在すると受け止めるだけで,公平性・中立性に疑念を抱かざるをえない。これは,現に業務委託を受けた営利団体がその公平性・中立性の確保にいかに努めようとも避けることができないものである。したがって,その性質上必然的に公平性・中立性の確保が不可能な営利団体は,委託する際の基準において,あらかじめ除外しておくべきである。

また,このような制限を設けることにより,特定非営利活動法人や一般財団法人といった非営利団体を例示列挙した趣旨をより一層明確にし,徹底することにもつながり,その意味でも妥当である。

2 意見の趣旨1(2)について

営利団体を除外した上でなお,施行規則第7条第1項第1号前段及び第2項前段の「公正かつ中立」という要件は,非常に重要であり,これを要件とすること自体には賛成である。ただし,このままでは抽象的すぎるので,より具体的に示すため,「委託を受ける事務を消費者の権利の尊重及びその自立の支援の観点からみて」との文言を加えるべきである。

3 意見の趣旨2について

地方公共団体が安易に消費生活相談事務を外部委託することを防止する必要があり,また委託した場合には,受託者に対する適正な監視が求められるところ,適正な監視を行うには,監視・監督する側が,受託者に関する十分な情報を入手できる仕組みが必要である。そこで,受託者に関する苦情を委託者である地方公共団体が受け付けることとし,地方公共団体自身が必要な監督を行えるようにすべきである。また,地方公共団体が,受託者に関する情報を入手・保管すれば,議会や情報公開,審議会等を通じて,後日の検証が可能になる。

4 意見の趣旨3について

消費生活相談は,類型的にプライバシーに関わる内容が含まれる。そのような通常第三者へ知られたくない情報を消費者が申告する背景には,消費生活相談事務が,中立的・公益的な地方公共団体によって運用されていること,公務員が守秘義務を負うことに対する強い信頼感が前提として存在する。

ところが,消費生活相談事務が委託された場合,一次的に消費生活相談事務を取り扱う者は,地方公共団体及び公務員であるという前提を欠くことになる。そこでこの点を消費者へ予め知らせた上で,どのような個人情報を申告するのか,決定権を与えるべきである。

5 意見の趣旨4について

消費生活相談事務の受託者の監視は,適正な事務の執行に欠かせないものとして必要性が認められるところ,委託者による受託者の監視は,慣れ合いの危険が高い。そこで,客観性を担保するために第三者によるチェックを地方公共団体に義務付けるべきである。この点,新たに第三者機関を設置することは,地方公共団体の負担が大きいことから,既に多くの自治体で設置・運用実績がある消費生活審議会の審議事項にすることで,負担の軽減を図ると同時に,委託者と受託者の慣れ合いを一定程度防止することが可能である。

6 意見の趣旨5について

(1) 施行規則第7条第1項第1号及び同第2項における委託の基準をより具体的に示すため,ガイドライン案により詳細な判断基準を記載する必要がある。

例えば,その目的や活動方針に照らし,消費生活相談の当事者となる可能性があるような法人等については,受託開始時は利益相反のおそれがなかったとしても,受託期間中に利益相反が発生するおそれがある。そして,そのような事態が発生した場合,当該案件の処理が混乱するほか,消費生活相談の中立性・公正性に疑義が生じ,消費者行政全般に大きなマイナス要因となる。したがって,このような法人等が受託することがないよう,消費生活相談業務の受託者の基準を明確に記載する必要がある。

また,業務を受託した者が,真に消費者の権利の尊重及びその自立の支援の観点から業務を行うかどうかは,過去の活動実績も含めて判断することがより適切と考えられるため,当該要素をガイドライン案に加えることが望ましい。

さらに,効率性を重視し,相談業務を形式的に行い,あっせん処理を行わない委託先もありうる。しかし,消費者の権利実現の観点からはむしろあっせん処理を原則として考えるべきであり,あっせん処理を行わない委託先が相談業務に不適当であることは明らかであるため,「積極的にあっせん処理を行う意思があり,かつその態勢が整っているかどうか」という基準をガイドライン案に加えるべきである。

(2) ガイドライン案Ⅱ1.(1)エでは,「(1)事務の民間委託により期待される効果」として「地方公共団体の公務員以外の多様な人材が事務に従事することにより,人材及びサービス内容の多様性が確保される」,「委託期間は原則として1年単位であり,業務の実施状況により受託者が変わる可能性があることから,競争性が確保され,結果として効率的な事務の実施が可能となる」と指摘している(13ページ)。しかし,前者は,消費生活相談員という専門的な資格を有する者を配置すること自体が,一般職公務員以外の専門的かつ多様な人材を確保する目的で導入された人的体制であり,民間委託によって期待される効果ではない。また,後者は,消費生活相談業務は消費者問題に関する専門的な知識と実務経験の積み重ねによって得られる技能が必要であることから,再任回数の一律の制限(いわゆる「雇い止め」)を設けることがないよう,担当大臣及び長官による通知を繰り返し発してきたことと矛盾する。

このように,民間委託については,様々な問題が懸念されているほか,委託期間の限界から消費生活相談員の地位の安定が図られないという本質的な問題も存在する。このため,国は民間委託を推奨しているかの誤解を与えるような記載を控え,地方自治体は住民に説明できる委託先の選定理由を明示するべきである。

(3) ガイドライン案Ⅱ1.(1)エにおいて,「受託者において,地方公共団体の消費者行政担当部局との連絡調整を担当する(中略)責任者から偽装請負の疑いを排除すること」との記述は,消費者行政職員と受託団体の消費生活相談員・職員との連携が受託団体の責任者を通じてのみ行うことが許されるかのように受け止められるおそれがある,したがって,このような誤解が生じないよう表記を工夫する必要がある。

また,民間への事務の委託に関して,「地方自治体による受託者への監視を適切に実施するとともに,適切な監視(モニタリング)を定期的に行うこと。」とされているが,利害相反のおそれや自治体各部署との連携等具体的な監視項目を明示すべきである。

(4) 消費生活相談等により得られた情報の活用に関しては,受託者が,PIO-NETに接続することで,全国で発生するあらゆる消費者取引に関する情報を瞬時に何らの対価を必要とせずに入手できることを十分に考慮すべきである。営利団体の場合,自らの業務とは,営利追求を意味するが,地方公共団体が行う消費生活相談事務で得られた情報を特定の団体が営利目的で利用することについて,国民的なコンセンサスが得られているとは考えられない。税金で運用される消費生活相談事務が特定の受託者の営利に用いられる可能性については,慎重に検討されるべきである。

なお,本意見は,営利団体が自己の営利事業に消費生活相談事務の受託で得られた情報を利用することを制限する趣旨であるから,内閣府令7条に定める受託先の範囲から営利団体が除外された場合には,設ける必要はない。

以 上

「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案」(いわゆる「カジノ解禁推進法案」)に反対する会長声明

カテゴリー:声明

1 国際観光産業振興議員連盟(通称「IR議連」)に所属する国会議員によって、「特定複合観光施設区域の整備に関する法律案」(以下「カジノ解禁推進法案」という。)が国会に提出され、衆議院において継続審議となっている。

カジノ解禁推進法案は、刑法第185条及び第186条で処罰の対象とされている「賭博」に該当するカジノについて、一定の条件の下に設置を認めるために必要な措置を講じるとするものである。

しかしながら、経済効果のみが喧伝され、深刻な社会に対する影響等についての検討がなされていない。また、賭博であるカジノを合法化するような正当な理由は何ら認められないため、到底容認できない。

2 そもそも、カジノが合法化されることにより、「暴力団員その他カジノ施設に対する関与が不適当な者の関与」、「犯罪の発生」、「風俗環境の悪化」、「青少年の健全育成への悪影響」、「入場者がカジノ施設を利用したことに伴い受ける悪影響」(カジノ解禁推進法案10条)等の弊害が生じることが確実に予想される。

ギャンブル依存症の問題も深刻である。ギャンブル依存症は、経済的破綻をもたらすのみならず、自らを死に追いやる危険性もある重篤な疾患である。

ギャンブルをするために借金を繰り返す者が現れることも必至であり、多重債務者問題対策が一定の効果を上げているにもかかわらず、これに逆行して、再び多重債務者が増加する可能性が極めて高く、多重債務問題と共にヤミ金問題の再然も大いに危惧されるところである。

合法的賭博が拡大することによる青少年の健全育成への悪影響も看過できない。カジノができることにより、住環境、教育環境の悪化は避けられず、賭博に対する抵抗感を喪失させることにつながりかねない。

さらに、資金源獲得を目的とする暴力団の関与を完全に排除することは極めて困難であるといわざるを得ない。

仮に、カジノ解禁推進法の成立だけを理由に、日本人のカジノ利用や規制については別の法案で定めるとの修正がなされたとしても、その内容も不明確である上に、以上の問題点が払拭されることは無い。

3 刑法が賭博を禁じている主な趣旨は、「勤労その他正当な原因によらず、単なる偶然の事情により財物を獲得しようと他人と相争うものであり、国民の射幸心を助長し、勤労の美風を害するばかりでなく、副次的な犯罪を誘発し、さらに国民経済の機能に重大な障害を与えるおそれがあることから、これを社会の風俗を害する行為として処罰すること」(第186回国会衆議院内閣委員会における政府参考人の答弁)にあるところ、カジノ推進法案が成立すれば、刑事罰をもって賭博を禁止してきた立法趣旨が損なわれ、様々な弊害が生じることは必至である。

よって、当会は、カジノ解禁推進法案に強く反対の意見を表明し、カジノ解禁推進法案の廃案を求めるものである。

2014年(平成26年)10月15日
福岡県弁護士会
会長 三浦邦俊

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