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刑事法廷内の入退廷時に被疑者・被告人に対して手錠・腰縄を使用しないことを求める会長声明

日本の刑事法廷では、勾留された被疑者・被告人(以下「被告人等」という。)は、手錠・腰縄をされた状態で刑事法廷内を入退廷させられることが法廷慣行であり、それにより、裁判官や傍聴人などに手錠腰縄姿が晒されてきた。

 しかし、このような状況は、被告人等の個人の尊厳・人格権、無罪推定の権利、防御権等を保障する憲法及び国際人権法等に違反するとして、当会は、2025年5月29日、「刑事法廷内の入退廷時に被疑者・被告人に対して手錠・腰縄を使用しないことを求める決議」を採択し、刑事法廷内で手錠・腰縄を使用しないように裁判所に求め、各会員においても、個別事件で、裁判官に対し、被告人等の入退廷時に手錠腰縄を使用しないことを求める申入れ活動をしていた。

 その後、2026年1月26日、最高裁判所事務総局刑事局は、「刑事裁判の法廷における被告人の戒護について(事務連絡)」を下級裁判所に発出し、同日、法務省矯正局も「刑事裁判の法廷における被告人の戒護及び手錠等の使用について(通達)」(法務省矯成第126号)を刑事施設等に発出し、これにより、各裁判所は刑事法廷内に被告人出入口付近に衝立を設置し、当該衝立内で被告人の手錠及び腰縄を解錠・施錠することを原則的な取扱いにすることとなった。これを受けて、福岡高裁・地裁管内でも、同年4月以降、刑事法廷の出入口付近に衝立を設置して、当該衝立内で手錠腰縄を解錠・施錠する運用が開始されている。

 これにより、被告人等が手錠腰縄姿を傍聴人には晒されなくなったことから、被告人等の人権侵害状況が一定程度改善した点は評価できる。

 しかし、裁判官には被告人等の手錠腰縄姿が見える位置に衝立が設置されることが予定されているため、裁判官はじめ訴訟関係人にも手錠腰縄姿を晒される状態は依然として残っており、被告人等が対等な当事者として扱われているとはいえず、いまだ被告人等の人権侵害状態が続いている。 

よって、当会は、被告人等の個人の尊厳・人格権、無罪推定の権利、防御権等の基本的人権を十分に保障するために、裁判官、裁判所及び国に対し、改めて、以下の措置を早急に講じることを求める。

1 裁判官は、刑事訴訟法287条1項但書が規定する事由があり、必要やむを得ない場合以外は、刑事法廷内で手錠・腰縄を使用しないこと。

2 国は、刑事訴訟法287条1項本文が規定する刑事法廷内における身体不拘束原則を入退廷時の被告人等に対しても確実に保障するため、同法に287条の2を新たに設ける等して、入退廷時の被告人等に対しても身体不拘束原則が及ぶことを明記すること。

3 国及び裁判所は、被告人等の入退廷時に手錠・腰縄を使用しないための施設整備(例えば、手錠・腰縄の着脱が可能な待機室あるいはスペース等の設置)を講じること。また、たとえ上記最高裁事務連絡・法務省通達を前提にする場合であっても、裁判官はじめ訴訟関係人が被告人等の手錠腰縄姿を見えないような位置に衝立を設置すること。

を求める。

2026年(令和8年)7月1日

 福岡県弁護士会        

                 会 長  池田 耕一郎

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