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令和8年8月千葉豪雨災害に関する会長談話

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 2026年(令和8年)8月13日、千葉県において、記録的な大雨による災害が発生しました。
 千葉県の発表によれば、今回の豪雨によって、13人もの尊い命が失われ、負傷者46人、行方不明者1人という人的被害が発生しています(千葉県防災ポータルサイト8月27日付け第21報)。住家被害に関しては、全壊4棟、半壊699棟、一部破損151棟、床上浸水1996棟、床下浸水2016棟の甚大な被害が発生しているとのことであり、日常生活に戻ることができない多数の住民がおられます。 
 令和8年8月千葉豪雨により亡くなられた方々とご遺族に深く哀悼の意を表しますとともに、被災された皆様、関係者の皆様に福岡県弁護士会を代表して心よりお見舞い申し上げます。
 このような困難な状況のもと、千葉県弁護士会(牧田謙太郎会長)は、豪雨発生翌日の8月14日、直ちに談話を発表し、被災者に必要となる情報を提供するとともに、無料相談の実施、自治体との連携、各士業や関連団体とのネットワークを通じて、一丸となって被災者支援に取り組む決意を表明し、活動を開始されました。その決断と実行力に深く敬意を表します。
 被災地では、今なお不自由な生活や復旧作業が続いています。住居や事業の被害に伴う法的トラブル、日常生活の再建に向けた対応など、被災された皆様が直面する不安や課題は極めて深刻です。
 地理的距離はあっても、私たち福岡県弁護士会は、千葉県弁護士会と連帯し、被災地の皆様に常に心を寄せ、必要とされる様々な方法により力を尽くすことをここに表明するとともに、被災地の一日も早い復旧・復興と地域の皆様の平穏な生活が取り戻されることを心よりお祈り申し上げます。

2026年(令和8年)8月28日
福岡県弁護士会 会長 池 田 耕 一 郎

死刑執行に抗議する会長声明

カテゴリー:声明

 本日、国内において1名の死刑確定者に対して死刑が執行された。2025年6月27日に死刑が執行されてからわずか1年2か月後の執行となった。

 たしかに、突然に不条理な犯罪の被害に遭い、大切な人を奪われた状況において、被害者の遺族が厳罰を望むことはごく自然な心情である。しかも、日本においては、犯罪被害者及び被害者遺族に対する精神的・経済的・社会的支援がまだまだ不十分であり、十分な支援を行うことは社会全体の責務である。

 しかし、そもそも、死刑は、生命を剥奪するという重大かつ深刻な人権侵害行為であること、誤判・えん罪により死刑を執行した場合には取り返しがつかないことなど様々な問題を内包している。

 人権意識の国際的高まりとともに、世界で死刑を廃止または停止する国はこの数十年の間に飛躍的に増加し、2025年の統計では、法律上及び事実上の死刑廃止国は145か国(死刑存置国は54か国)となっている。経済協力開発機構(OECD)加盟38か国のうち、死刑制度を存置しているのは3か国(韓国、米国、日本)のみであり、韓国では1997年以降、死刑が執行されておらず、米国では50州中23州で死刑が廃止されている。

 このような世界の情勢もあり、日弁連が中心となり「日本の死刑制度について考える懇話会」が設置された。複数の国会議員や学識経験者、警察・検察出身者、弁護士、経済界、労働界、犯罪被害者、報道関係者、宗教家及び文化人など各層の有識者による議論を経て、同会は、2024年11月13日、報告書(以下「本報告書」という。)を公表し、「現行の日本の死刑制度とその現在の運用の在り方は、放置することの許されない数多くの問題を伴っており、現状のまま存続させてはならない」という基本的な認識を示した。

 当会においても、2025年1月29日に、死刑制度の廃止に向けて、本報告書の提言に沿って、早急に、国会及び内閣の下に死刑制度に関する根本的な検討を任務とする公的な会議体を設置すること、その結論が明らかにされるまでは死刑の執行を停止することを強く求める会長声明を発している。また、これまでも1996年以降、死刑執行に対し、都度これに抗議する会長声明を発出してきたほか、2020年9月18日に「死刑制度の廃止を求める決議」を採択し、2021年8月25日には「米国における連邦レベルでの死刑の執行停止を受け、日本における死刑制度の廃止に向けて、死刑執行の停止を求める会長声明」を発出し、さらに前回の死刑執行に抗議する会長声明を発出した。

 当会は、あらためて、日本が、基本的人権の尊重、特に生命権の不可侵性の価値観を共有できる社会を目指そうとしている国際社会と協調し、国連加盟国の責務を果たせるよう、国に対し、今回の死刑執行につき、強く抗議の意思を表明するとともに、死刑制度の廃止に向けて死刑の執行を停止することを強く要請するものである。

                                  2026年(令和8年) 8月21日

                                  福岡県弁護士会会長 池田 耕一郎

刑事再審手続に関する改正刑事訴訟法の成立にあたっての会長声明

カテゴリー:声明

2026年(令和8年)7月17日、刑事再審手続に関する「刑事訴訟法の一部を改正する法律」(以下「本改正法」という。)が参議院本会議で可決され、成立するに至った。

えん罪被害者とそのご家族、支援団体、市民の方々とともに、長年にわたり求め続けてきた再審制度の改革がようやくその一歩を踏み出したという点において本改正法の成立は大きな意義がある。その一方、「えん罪被害者の適正かつ迅速な救済」という再審法改正の目的の根幹を成す部分について、検察官の裁量に委ねる部分を多く残しているなど不十分な点も多い。

まず、証拠開示制度に関する定めが未だ不十分である。本改正法では、捜査機関が保管する証拠について、再審請求理由に関連し、裁判所が再審請求の判断のために必要かつ相当と判断した証拠の提出を命じる証拠提出命令制度が設けられたものの、我々が強く求めていた再審請求人や弁護人が主張立証を準備するために必要な証拠(以下「主張立証関連証拠」という。)の提出や開示を要請する権限が明記されることはなかった。主張立証関連証拠については、従来から、裁判所が職権で検察官に対して提出や開示を要請・勧告することがあったが、あくまで、「要請」、「勧告」にすぎないため検察官がこれに応じる法的義務はないとされ、問題とされてきた。

当事者である再審請求人や弁護人が主張立証のために必要と考える証拠にこそえん罪を晴らすための新証拠が含まれている可能性が高いことはいうまでもなく、主張立証関連証拠の開示こそ本改正法にて明記される必要があった。

しかし、本改正法で、主張立証関連証拠の提出命令が明記されなかったことにより、検察官が、本改正法に基づく証拠提出命令でないことを理由に、無罪につながる証拠の提出や開示の要請に応じないという対応をとることが強く懸念される。

次に、検察官の手持ち証拠を明らかにするための一覧表(以下「証拠一覧表」という。)の作成・提出を検察官に命じる制度が設けられなかった点にも大きな問題がある。証拠一覧表は、再審請求人や弁護人にとっては証拠開示を請求するための足がかりとなるものであり、検察官にとっても、証拠の保管状況を適切に把握できるという意味において極めて重要である。

過去のえん罪事件においては、検察官が「不見当」、「不存在」と回答し、開示されなかった証拠が、後になって開示された例も複数ある。

福岡における再審請求事件においても、2022年(令和4年)、検察官が、裁判所からの証拠開示勧告に対して「不存在」と回答して開示されなかった証拠が、1年半以上経過した後に開示され、大きく報道されたこともあった。

そのような検察官による杜撰な証拠の保管・管理を改善し、適切な証拠開示を実施させるためにも、証拠一覧表は必要不可欠である。それにもかかわらず、本改正法に証拠一覧表の作成・提出制度が明記されなかったことにより、従前と変わらず、検察官による証拠の提出・開示に向けた手続が円滑に進まなかったり、漏れが生じたりすることが強く懸念される。

さらに、本改正法では、検察官から裁判所に提出された証拠の複製を再審請求及びそのための準備以外の目的で使用することを一律に禁止し、その違反に対して罰則が設けられることとなった。目的外使用の禁止については、その弊害等を考慮し、必要に応じて個別に対応すれば足りるにもかかわらず、全ての証拠について一律に目的外使用を禁ずるのは過度の制約というほかない。この制約は、再審請求人や弁護人が、証拠の内容を必要な関係者に提供することを躊躇させ、さらなる新証拠の獲得に向けて行う活動に対しても萎縮効果を生じさせるものである。

また、本改正法において、再審開始決定に対する検察官の不服申立てが原則として禁止されることとなった。これまで、えん罪被害者の迅速な救済の最大の足枷となっていた検察官の不服申立てが原則として禁止されることとなった点は評価できる。しかし、一方で、本改正法は、再審開始決定が「取り消されるべきものと認めるに足りる十分な根拠」がある場合には、例外的に不服申立てを行うことを許容することとなった。しかも、本改正法には、検察官が「十分な根拠」なく不服申立てを行った場合の対応が明記されていないため、検察官が同規定に基づいて十分な根拠がないにもかかわらず不服申立てを行う可能性も否定できず、これまで同様、えん罪被害者の救済に長期間を要してしまうことが強く懸念される。

以上のとおり、本改正法の成立には大きな意義がある一方、その内容については、えん罪被害者の適正かつ迅速な救済を阻害する多くの問題が残されたままとなっている。そのため、再審制度の最大の目的であるえん罪被害者の適正かつ迅速な救済という観点から、本改正法が適切に運用されることこそが何よりも重要である。

本改正法の附則では、政府は5年ごとに本改正法の施行状況等を勘案し、証拠の目的外使用の禁止に関する制度や検察官が保管する証拠の一覧表に関する制度を含む再審制度の在り方について検討を加え、必要があると認めるときは所要の措置を講ずることが定められている。

本改正法の成立は、5年後見直しの始まりでもある。当会としても、本改正法の施行状況を徹底的に検証し、適切な再審手続、ひいては、えん罪被害者の適正かつ迅速な救済が実現されるよう引き続き尽力していく所存である。

2026年(令和8年)7月22日

                   福岡県弁護士会

                   会長  池  田  耕 一 郎


「国旗の損壊等の処罰に関する法律案」に反対する会長声明

カテゴリー:声明

1 事実経過
  2026年6月16日、自由民主党、日本維新の会、国民民主党、参政党は、「国旗の損壊等の処罰に関する法律案」(以下同法を「国旗損壊罪」、同法案を「本法案」という。)を共同で衆議院に提出し、本年6月30日に衆議院本会議にて可決された。今後、本法案の審議の場は参議院に移ることになる。

2 思想及び良心の自由、表現の自由の侵害
 国旗損壊罪の保護法益は、国旗を大切に思う国民感情であると説明されている。
 しかし、国旗に対する評価や感情は国民の間で一様ではなく、国旗を尊重する国民の感情の保護を理由として国旗損壊罪を創設することは、そのような価値観を有しない国民にとっては、憲法第19条が保障する思想及び良心の自由を侵害するとの批判を免れない。
 また、国の現状や政策に対して異論を述べるための象徴的表現として国旗の損壊を伴う表現行為が、政治的少数派の国民によって用いられることがある。しかし、本法案は、政治的少数派が多数派に対して異議を唱え、現状の変革を訴えるための政治的表現を委縮させてしまうもので、憲法第21条第1項が保障する表現の自由を侵害し、民主主義の健全な機能を歪めるおそれがある。
 なお、本法案には、3年を目途に、国旗を大切に思う国民感情を保護するのに必要かつ十分なものとなっているかなどを検討するという附則が規定されているが、これは国家による監視の宣言であるとも受け取れるものであり、自由な意見表明が妨げられる社会に繋がるおそれがある。

3 罪刑法定主義違反
 憲法第31条は、市民にとって自らの行為が処罰の対象となるかどうかを予測できるよう、犯罪とされる行為の要件が明確に規定されていることを要求しており、これにより、処罰対象となる行為以外の行為が自由であることが保障される。
 しかしながら、国旗損壊罪は、客体や行為態様が不明確であり、憲法第31条が定める罪刑法定主義に違反するおそれがある。
 損壊等の客体となる「国旗」は、国旗及び国歌に関する法律(以下「国旗国歌法」という。)が定める国旗として社会通念上用いられていると認められる有体物と定義されている。しかし、この「国旗として用いられている」という要件は、判断基準が「社会通念」という抽象的概念に委ねられており、適用範囲が不明確である。例えば、国旗国歌法が規定する日章旗をどの程度デフォルメした場合に国旗性が失われるのか判然としない。結果として、「国旗」として扱われる範囲に実質的な限定がなく、定義としての機能を果たしていない。
 また、本法案は「損壊」、「除去」、「汚損」という行為態様を規制しているが、その外延が不明確であり、これらの行為に風刺やパロディ等が該当するかの判断は非常に困難である。規制対象となる「損壊」等の行為は、「人を著しく不快又は嫌悪の情を催させる」ものとされているが、「不快である」、「嫌悪感を覚える」といった抽象的かつ感情的な要件の該当性判断は、一義的には定めがたく、難解な評価を伴う。処罰の対象とするかどうかも、「行為の外形、周囲の状況やその他の客観的事情を総合的に勘案」して判断されることから、予測可能性を欠く。
 このように、国旗損壊罪は、その客体や行為態様が不明確であり、処罰の対象となるか否かが一義的に定まらないことから、憲法第31条が定める罪刑法定主義に違反するおそれがある。

4 結語
 以上のとおり、本法案は、憲法第19条が保障する思想及び良心の自由、憲法第21条第1項が保障する表現の自由を侵害するおそれがあり、憲法第31条が定める罪刑法定主義に違反するおそれがあるので、当会は、国旗損壊罪の制定に強く反対する。

2026年(令和8年)7月3日
福岡県弁護士会        
会  長   池田 耕一郎

刑事法廷内の入退廷時に被疑者・被告人に対して手錠・腰縄を使用しないことを求める会長声明

カテゴリー:声明

日本の刑事法廷では、勾留された被疑者・被告人(以下「被告人等」という。)は、手錠・腰縄をされた状態で刑事法廷内を入退廷させられることが法廷慣行であり、それにより、裁判官や傍聴人などに手錠腰縄姿が晒されてきた。

 しかし、このような状況は、被告人等の個人の尊厳・人格権、無罪推定の権利、防御権等を保障する憲法及び国際人権法等に違反するとして、当会は、2025年5月29日、「刑事法廷内の入退廷時に被疑者・被告人に対して手錠・腰縄を使用しないことを求める決議」を採択し、刑事法廷内で手錠・腰縄を使用しないように裁判所に求め、各会員においても、個別事件で、裁判官に対し、被告人等の入退廷時に手錠腰縄を使用しないことを求める申入れ活動をしていた。

 その後、2026年1月26日、最高裁判所事務総局刑事局は、「刑事裁判の法廷における被告人の戒護について(事務連絡)」を下級裁判所に発出し、同日、法務省矯正局も「刑事裁判の法廷における被告人の戒護及び手錠等の使用について(通達)」(法務省矯成第126号)を刑事施設等に発出し、これにより、各裁判所は刑事法廷内に被告人出入口付近に衝立を設置し、当該衝立内で被告人の手錠及び腰縄を解錠・施錠することを原則的な取扱いにすることとなった。これを受けて、福岡高裁・地裁管内でも、同年4月以降、刑事法廷の出入口付近に衝立を設置して、当該衝立内で手錠腰縄を解錠・施錠する運用が開始されている。

 これにより、被告人等が手錠腰縄姿を傍聴人には晒されなくなったことから、被告人等の人権侵害状況が一定程度改善した点は評価できる。

 しかし、裁判官には被告人等の手錠腰縄姿が見える位置に衝立が設置されることが予定されているため、裁判官はじめ訴訟関係人にも手錠腰縄姿を晒される状態は依然として残っており、被告人等が対等な当事者として扱われているとはいえず、いまだ被告人等の人権侵害状態が続いている。 

よって、当会は、被告人等の個人の尊厳・人格権、無罪推定の権利、防御権等の基本的人権を十分に保障するために、裁判官、裁判所及び国に対し、改めて、以下の措置を早急に講じることを求める。

1 裁判官は、刑事訴訟法287条1項但書が規定する事由があり、必要やむを得ない場合以外は、刑事法廷内で手錠・腰縄を使用しないこと。

2 国は、刑事訴訟法287条1項本文が規定する刑事法廷内における身体不拘束原則を入退廷時の被告人等に対しても確実に保障するため、同法に287条の2を新たに設ける等して、入退廷時の被告人等に対しても身体不拘束原則が及ぶことを明記すること。

3 国及び裁判所は、被告人等の入退廷時に手錠・腰縄を使用しないための施設整備(例えば、手錠・腰縄の着脱が可能な待機室あるいはスペース等の設置)を講じること。また、たとえ上記最高裁事務連絡・法務省通達を前提にする場合であっても、裁判官はじめ訴訟関係人が被告人等の手錠腰縄姿を見えないような位置に衝立を設置すること。

を求める。

2026年(令和8年)7月1日

 福岡県弁護士会        

                 会 長  池田 耕一郎

福岡県弁護士会 〒810-0044 福岡市中央区六本松4丁目2番5号 TEL:092-741-6416

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