福岡県弁護士会コラム(会内広報誌「月報」より)

2021年11月号 月報

『国際ロマンス詐欺』にご注意! 悪質サイト・国際ロマンス詐欺無料電話相談(10月5日実施)のご報告

月報記事

消費者委員会 委員 井口 夏貴(61期)

無料電話相談会を行いました!

消費者委員会の企画により10月5日(火)午前10時から午後4時まで、悪質サイト・国際ロマンス詐欺の被害に関する無料電話相談を行いました。

国際ロマンス詐欺ってなに?

みなさんは、「国際ロマンス詐欺」をご存知でしょうか。

今年6月、兵庫等の4県警が、「国際ロマンス詐欺」グループ指示役とみられる外国籍の男を逮捕したとの報道がありました。

報道によれば、男は、今年3月、他のメンバーと共謀して、イエメン在住の韓国人医師と偽り、女性に「あなたは理想の相手だ」「新型コロナウイルス対応で大変な日本の医療機関に寄付したい」とSNSで虚偽のメッセージを送るなどし、現金の配送料や遅延金名目で約370万円を詐取したという被疑事実で逮捕されたようです。

上記のように、「国際ロマンス詐欺」とは、SNSやマッチングアプリなどインターネットで知り合った(自称)外国人と親しく連絡を取り合ううちに、様々な名目で送金を迫られるというものです。

国民生活センターは、昨年2月13日付報道発表で、「-愛のギフトを受け取ってほしい!?- それってもしかして「国際ロマンス詐欺」?」と題して、注意喚起を行っています。

上記発表によれば、消費生活センターへの相談は、2018年末頃から見られたようです。

送金の名目はいろいろありますが、荷物等を送るので代わりに受け取ってほしいと言われ、受け取る際に通関料や運送保険料などの料金を請求されるというものや、近時では、結婚資金作りのためなどとして投資を勧誘し、暗号資産などを送金させられるというものも急増しており、国民生活センターも、今年2月18日付で「出会い系サイトやマッチングアプリ等をきっかけとする投資詐欺にご注意を-恋話(コイバナ)がいつの間にかもうけ話に-」という発表を行って、注意喚起しています。

相手方とはSNSだけのやり取りしかなく、加害者の特定が困難であり、また、海外送金や暗号資産での送金をしてしまうと、その後の追跡も難しいということで、現状では、注意喚起して、送金の手前で被害者に気づいてもらう以外に有効な対策がないところです。

しかし、被害者には恋愛感情があり、相手方に騙されているという自覚を持ちにくく、周囲の注意にも耳を傾けにくいという状態にあることもしばしばであり、未然に被害を防ぐのも簡単ではありません。

そこで、消費者委員会は、今回、注意喚起と被害実態の把握、場合によっては被害の回復につなげることを目的に、国際ロマンス詐欺に関する無料電話相談を企画し、実施しました。

あわせて、新型コロナウイルスの感染拡大の状況下で、インターネット上の取引利用が増えたためか、悪質サイトによる被害の相談も増加傾向にあることから、悪質サイト被害についても、相談対象としました。

相談の結果

今回の無料電話相談は、事前に西日本新聞と朝日新聞に記事を掲載していただいたということもあり、合計11件の相談を受け付けました。

内訳としては、ロマンス詐欺類型が4件、その他の投資詐欺類型が2件、ロマンス詐欺ではありませんが国際貨物の運送保険料名目での詐欺類型が1件、ギャンブルの必勝法詐欺1件、インターネット求人広告被害1件、その他2件でした。被害金額が数百万円に及ぶものも、複数ありました。ロマンス詐欺や投資詐欺の6件のうち、3件は決済手段が暗号資産でした。

ロマンス詐欺、投資詐欺のいずれも、FacebookやLINEで知り合い、その後、LINEでのやり取りを通じて、最終的には投資資金名目で送金をさせられており、投資の結果が良好であるように見せかけられ、次々にお金の追加投資を勧誘され、出金しようとすると手数料や税金を支払わないと出金できないなどといわれて、お金が戻らない、という構造のほか、SNS以外のつながりがなく、加害者の特定が困難という点が共通していました。

今回の相談で見えてきたこと、感じたことなど

今回の相談結果は、近時、SNS等から投資詐欺につながる事案が急増しているという上記の国民生活センターの発表を裏付ける内容となりました。

LINEなどのSNS以外の連絡手段がないにもかかわらず、相手方を信用し、多額の金銭を支払ってしまう、というのは、奇異にも思えますが、IT化の進展に伴い、SNSを介した交流が一般的となり、SNS以外では現実に会ったことがない人ともつながりがある(と思っている)のが昨今それほど珍しくないことを考えると、このような傾向が止むことはないのではないかと考えています。

また、暗号資産という匿名性の高い決済手段の利用は、今後、ますます一般にもなじみとなっていくと思われ、消費者被害が発生した場合を想定して、救済のために法律等による規制が必要ではないかと感じました。

なお、一つ意外だったのは、送金先に、調査がある程度可能な国内の金融機関口座が指定された例もそれなりにあったということです。おそらく、不正に売買された口座が利用されており、容易に加害者にはつながらないと思われますが、口座の入出金状況から何らかの追跡が可能な場合も考えられ、このあたりを突破口にできる場合もあるのではないかと感じました。

注意喚起にご協力をお願いします

上記のとおり、ロマンス詐欺の類型は、いったん被害に遭うと回復が困難です。この記事を読まれたみなさまにも、周囲の方への注意喚起にご協力いただければと思います。

国際ロマンス詐欺については、国民生活センターのウェブサイトに注意喚起用のチラシが掲載されていますので、適宜ご利用いただければと思います(下記URLを参照ください。)。
http://www.kokusen.go.jp/mimamori/pdf/shinsen375.pdf

福岡県弁護士会『国際ロマンス詐欺』にご注意! 悪質サイト・国際ロマンス詐欺無料電話相談(10月5日実施)のご報告
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