福岡県弁護士会コラム(会内広報誌「月報」より)

2013年7月号 月報

東日本大震災復興支援対策本部・災害対策委員会報告

月報記事

災害対策委員会
宮 下 和 彦(46期)

今回は、これまでの福岡県弁護士会における東日本大震災に関連する相談状況のご報告とごく一部ですが最近の震災関連の立法状況のご報告です。

県弁では大震災発生直後に東日本大震災復興支援対策本部を設置し、県内19カ所の各法律相談センターにおいて、30分の相談枠を1時間に拡大して無料法律相談を開始するとともに、1昨年9月からは、無料出張法律相談も実施しております。また、平成23年12月を第1回として、平成25年5月26日まで計9回にわたり天神弁護士センターにおいて、原発賠償問題を中心とした東日本大震災被災者のための相談会(当初は説明・相談会)を開催してきました。以上の相談結果について集計しましたところ、これまでの累計相談数は62件(福岡地区52件、北九州地区6件、筑後地区3件、飯塚地区1件)となっています。その相談内容は東京電力に対する賠償関係が半数以上を占めるものの、雇用問題、ローン問題、津波の被害、親族間のトラブル(離婚を含みます)、生活保護受給の是非、健康保険料の多寡など極めて多岐にわたっております。相談件数そのものについては、復興庁が把握しているだけで福岡県内に700名以上、自主避難者数を含めると2000名以上と推定される避難者数に比し、必ずしも多いとは言えないかもしれませんが、原発賠償問題について3年の消滅時効の適用が取りざたされていることなど考え合わせますと潜在的な需要は否定できないと思います。今後も執行部にご協力いただきさらなる広報、PRに務めたいと考えています。

近時、原発賠償に関する特例法(原子力損害賠償紛争審査会による和解仲介手続の利用に係る時効の中断の特例に関する法律)が成立し、一般に時効後も原発賠償の提訴が可能になった旨の報道がなされました。しかし、この特例法は、原子力損害賠償紛争解決センターにADRを申し立てて不調になった場合が対象とされているに過ぎず、根本的な解決とは程遠いばかりか、かえって「時効は関係ない」との誤解を招きかねないと思われます。1日も早く抜本的な対策が求められるところです。

また、災害対策基本法が改正され、災害時要援護者の名簿作成が市町村に義務付けられ、災害時には同意なしで外部に提供できることとなりました。個人情報保護法の悪しき萎縮効果が弱まり、障害者ら要援護者に対するきめ細かな支援が可能になることが期待されます。さらに、大規模な災害の被災地における借地借家に関する特別措置法が制定され、震災復興時に制定された罹災都市借地借家臨時処理法が廃止されました。加えて、大規模災害からの復興に関する法律が新設され、復興に関する諸行政手続の特例がひとまとめにされました。その他被災地域のより迅速、適正な復興を図るべく種々の法整備が進められている状況です。

今後も、災害対策委員会では、震災関連、原発賠償に関する勉強会を継続し、関連諸法令に対する知見を深め、より適切に会員の皆様への情報提供にも努めたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

  • URL

カテゴリー

Backnumber

最近のエントリー