福岡県弁護士会コラム(会内広報誌「月報」より)

2007年9月 1日

多重債務対策支援講座報告

会員 大坪 知弘(55期)

平成19年8月3日、福岡県内の自治体及び団体等を招き、多重債務対策支援講座が開催された。これは、政府の多重債務対策本部から示された「多重債務問題改善プログラム」を受けて、行政と弁護士会をはじめとする民間団体との連携構築を進める手始めとして、県弁多重債務者救済対策本部が主催したものである。

当日は、台風4号の影響で開催が危ぶまれたが、幸い前夜に日本海へと抜け、中央市民センターにて無事開催に至った。

まずは、福島康夫県弁会長の開会挨拶に始まり、吉岡隆典県弁副会長による多重債務者の現状及び多重債務問題に対する県弁の取り組みについての基調講演がなされた。講演では、多重債務問題改善についての政府の基本方針として、自治体の積極的な対応が求められること、自治体内外での連携構築が急務とされている ことが紹介され、続いて、我が国における多重債務問題の経緯及びそれに合わせた県弁の多重債務者救済体制の変遷について詳細な報告がなされた。

吉岡副会長の講演の中で、最も熱がこもったところは、自治体が多重債務問題に関し連携を構築すべき関係機関として、我々弁護士会が最も適しており、その理由として、(1)多重債務相談が無料化されたこと、(2)弁護士が必ず直接面談による相談に応じていること、(3)受任の場合の手数料基準が定められていること、(4)原則として受任義務があること、(5)司法書士と異なり破産や個人再生の申立代理権があり、金額に関係なく過払金請求訴訟の代理人となれること、(6)情報の共有化により各人が適切な事件処理のスキルを維持していること、(7)県内全域に相談センターがありアクセスが容易であることなどの紹介部分である。

要は、自治体としては、多重債務問題の解決に当たって、基本的に弁護士会の相談センターを紹介することで足りる、という取り組み易さがアピールされた。

続いて、椛島敏雅会員から、多重債務者の具体的救済方法について、破産、個人再生、任意整理、ヤミ金対策を中心として紹介がなされた。併せて、市民に身近な自治体職員が、多重債務問題の解決に大きな役割を果たしうる例として、テレビでも取り上げられている奄美市職員橲久孝一さんの活動が紹介された。相談者に対しどんな問題でも解決できるとの展望を与えるべきだ、との同氏の言葉は、約20年間、多重債務者からの切実な相談を聞き取り続け、弁護士過疎地域での相談窓口拡充に尽力してきた方ならではの説得力がある。続いて、椛島敏雅会員から、多重債務者の具体的救済方法について、破産、個人再生、任意整理、ヤミ金対策を中心として紹介がなされた。併せて、市民に身近な自治体職員が、多重債務問題の解決に大きな役割を果たしうる例として、テレビでも取り上げられている奄美市職員橲久孝一さんの活動が紹介された。相談者に対しどんな問題でも解決できるとの展望を与えるべきだ、との同氏の言葉は、約20年間、多重債務者からの切実な相談を聞き取り続け、弁護士過疎地域での相談窓口拡充に尽力してきた方ならではの説得力がある。

また、多重債務問題に関する連携構築のコーディネート役が期待される、福岡県からは、県庁生活労働部生活文化課消費者班事務主査である楢橋優氏が出席し、県の取り組みが紹介された。同氏によると、既に、県の主導の下、県南、北九州、筑豊及び福岡の各地域において、ネットワーク構築が徐々に進められており、その構成要素として、自治体、県警、県弁及び民間団体などが組み入れられる予定とのことである。

各講演終了後、地区別協議会として、県弁担当者と各自治体担当者が個別に面談をし、多重債務問題に関する自治体の取り組みの状況及び弁護士会に期待されることなどの聞き取りがなされた。多くの自治体は、相談体制の拡充や徴税への好影響を期待し、県弁との協力に極めて積極的であった。

もっとも、自治体側からは、相談センターに行った債務者から、「相談したが真剣に答えてくれなかった。」「言われていることが理解できなかった。」「怒られただけだった。」との苦情が寄せられていることや、電話でちょっとしたことを気軽に相談できるシステムも望まれていることなどが報告され、今後の弁護士会(ないしは弁護士個々人)の課題も突きつけられることとなった。

今回の講座は、参加者が約100名(参加団体数は約60)にも上る盛会に終わり、改めて自治体の本問題への関心の高さが示されたと共に、弁護士会を要とする連携構築の確かな足がかりとなったはずである。

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